大学2年の夏
総武高校を卒業しそれぞれの進路へと進んだ奉仕部の俺たち3人だが今でも縁は切れる事なくそれなりに良い付き合いをしている。
中でも雪ノ下雪乃とは良好なパートナー関係を継続していると思う。なんなら今隣で俺の肩に頭を預けて寛いでいる。
その他にも世間一般的に言うデ、デートとかSEXも何回も重ねている。
そんな恋人紛いの事を続けていれば自ずとその先の事も考える訳で
雪乃「八幡? そんなに神妙な顔してどうしたの?」
俺の中だけの未来予想図を展開していたら首元から暖かい吐息と共に心に染み渡る声が俺の鼓膜を鳴らす。
八幡「そんな顔してたか?」
雪乃「ええ。それはもうおぞましくて不気味で見るに耐えなくて....」
八幡「やめてやめて、もう分かってるから!自分が如何に愚かで杜撰で気持ち悪い奴だって分かってるから!!」
こんなやりとりが高校の頃から変わらないのが俺にとっては心地の良い事なんだが少し変わったことと言えば
雪乃「...それでも、ずっと見ていたい顔よ」ニコッ
八幡「...ッ!?」
時々昇天しそうになることがある。どうしてそんな顔をしていたか、もちろん先のことも関係しているのだが
雪乃「今度の挨拶のこと?」
八幡「ああ」
そう。俺たちは今週末に雪ノ下家へ挨拶に行くのだ。
しかし雪ノ下母(通称ママのん)とは既に何回か挨拶(という名の強制連行)に訪れている。今回の挨拶先は雪ノ下邸ではなく片田舎にある雪ノ下の祖父さんなのである。
なんでも少し前まで雪ノ下グループの会長を務めていたんだとか。
八幡「(多分ごっつくて左目に刀の切り傷があって黒服5人くらいはべらせてるんだろうな)」
雪乃「また失礼なこと考えてるでしょ」ハアッ
雪乃「お祖父様はとても温厚な人よ。少し昔染みた性格だけれど根は真面目そうだし私も昔はよくお世話になったわ」
そらグループ会長が孫娘には甘々なのは当たり前でしょう。
雪乃「大丈夫よ。余程のことが無い限りお祖父様は私たちを認めてくれるわ」
八幡「その余程のことが起きそうでならないんだが…」
かわいい孫娘に近づく男を邪険にするのは世の常、俺は生きて帰れるのだろうか。
八幡「ちなみに認められなかった場合はどうなるんだ?」
雪乃「….雪ノ下家の婚約は代々お祖父様たちが認めた場合のみ許されてきたの。母さんたちだってそう。でも、ちゃんと伝えて誠実な対応をすればきっと認めてくれるはず」
八幡「その伝える行為は俺たちが一番苦手とする所だけどな」
言わなくても分かる、けれど実際には言っても分からないことも世の中には溢れかえっている。分からないものを分かった気持ちになって、同情して、相手は共感を得たと錯覚する。これほど残酷な結果になろうとも人々は満足し何事もなかったかのように生きていく。
ならばいっその事言葉なんてなくして仕舞えばいい。言葉が全ての元凶ならばそれを排除して仕舞えばいい。自分の気持ちが言葉という媒体によって相手に100%伝えることなど不可能なのだから。
と、以前の俺ならこう考えていた。しかしこの数年で俺もまるっきり変わってしまった。
なぜなら
雪乃「それでも伝える。あなたとの未来のためだから」
八幡「…そうかよ」
こうやって言葉にされるのも悪くないと思い始めたからである。
雪乃「では時間もあまりないし挨拶の練習などやっておきましょうか」
八幡「お手柔らかに」
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八幡「千葉にこんな田舎な所があったとは」
バスに揺られること数時間、俺たちが降車したのはいつもの活気付く千葉の市街地とは真逆の山々に囲まれた緑の広がる片田舎だった。ポツポツ建つ家屋もコンクリートではなくそのほとんどが木造で柱の痛み具合からしてもその歴史を物語っている。行く人来る人もかなり歳のいった方々ばかりで若い俺たちが異質の存在に感じる。
雪乃「あっちの家も良いけどこうして田舎でのんびり余生を過ごしたいそうよ。」
八幡「たまに来る田舎は風情があって好きだがサイゼもなければマッ缶も売ってないような田舎では俺は生きていけん」
雪乃「相変わらず呆れるような精神ね」
しばらく雪乃と他愛もない会話をしていると向こう側に立派な神社の鳥居が見えそこを中心に村の住民たちがえっさえっさと慌ただしく作業をしていた。
太鼓や灯籠、屋台の骨組みなんかも運ばれている。
八幡「ずいぶんと大掛かりな作業だが祭りでもあるのか?夏だし」
恐らく当たっているであろう質問を彼女に投げ掛けた。
雪乃「………私も詳しくは知らないけど昔からこの村ではこの時期に特別な祭事を執り行なってきているみたいよ」
八幡「ほお、歴史ある祭りか。お前は行ったことないのか。?」
雪乃「あまり人混みは好まないから行ったことはないわ。姉さんは行ったことあるみたいだけど、姉さん珍しくその時のことは一言も話していないの。いつもならお祭りとかに行った時はうるさいくらい報告してくるのにこの時だけは何も聞かされてないの。」
八幡「…………….」
あのおしゃべりな陽乃さんにしては異常な行動だな。老人ばかりの祭りで余程つまらなかったか、もしくは、、、、、、
何かとんでもないものを見てしまったのか
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雪乃「ここよ。」
八幡「うへーーーーーーー」
相変わらず雪ノ下の家系はとんでもない所に住んでいる。ワンチャン総武高校よりも広いかもしれん。ごっつい扉の横には「雪ノ下 孝蔵」の表札がかけられている。
雪乃「行きましょうか」スッ
俺の躊躇も無視してスタスタと歩を進め屋敷の中に入っていく。俺ももう覚悟を決めて彼女の後を追うようにして屋敷の敷居を跨いだ。
その後屋敷の使用人に大きな応接室に通されしばらくここで待つように言われた。
八幡「…..キョロキョロ」
雪乃「あまり不自然な行動をしていると通報されるわよ」
八幡「今回ばかりは洒落にならんからかんべんしてくれ」
雪乃「ならもっと落ち着きなさい」
そうは言われても金持ち宅の独特な雰囲気は庶民の俺にとっては重圧でしかない。
そこで一応一呼吸おこうとした時
ガラッ
陽乃「あれ?雪乃ちゃんと比企谷くんだ。2人ともここに何しに来たの?」
開けられた襖の向こうからやけに耳に残る声がやってきた。
雪乃「ね、姉さん!?どうしてここに?」
突然の陽乃さんの来訪に俺たちは戸惑いを隠せなかったがさらに意外だったのは
葉山「ん?比企谷、お前も来てたのか」
陽乃さんの後ろから相変わらずのイケメンオーラバリバリ放っているのは葉山隼人。こいつとは縁が切れそうでなかなか切れない。
陽乃「あたしたちは純粋にお祖父ちゃんの挨拶に来ただけ。雪乃ちゃんたちは……….察するにお祖父ちゃんに交際の報告かな」ニヤッ
目を細め獲物を見定めるように俺たちを視界に捉え面白がる陽乃さん。ホントこの人いい性格してるわ。
雪乃「姉さんには関係ないわ」
陽乃「ひっど〜い。かわいい妹の恋路が気にならないお姉ちゃんなんていないんだぞ?隼人も気になるよね?」
葉山「い、いや、俺は別に」
陽乃「…..それに、明日はあの日だし」ボソッ
雪乃「姉さん?何か言ったかしら?」
陽乃「んーん。べっつにーー」
毎度よろしく美人姉妹の口論が展開されようとしたその時
孝蔵「いやあ待たせてしまったね。陽乃ちゃん、雪乃ちゃんようこそこんな遠くまで来てくれたね!」
全身に強く伝わるような力強い声とともに応接室に入ってきたのはかなりのご年配ながら屈強な体格をした大柄な男。間違いない。この屋敷の亭主、雪ノ下孝蔵である。
雪乃「ご無沙汰しております、お祖父様」
陽乃「久しぶり〜、お祖父ちゃん」
孝蔵「隼人くんもしばらく見ない間にとても男らしくなってるね」
葉山「お久しぶりですお祖父様。そちらこそ相変わらずお元気そうでなによりです」
孝蔵「そんなに畏まらんでもええよ3人とも。折角来たんだゆっくりしていきなさい」
雪乃が言っていた通り割と普通のじいさんなのかもしれないな。
孝蔵氏が馴染みの3人と挨拶を交わし終えるとその隣に座る俺に目を向けた。
孝蔵「ところでそちらに座っている方は?」
キタ、、、落ち着け、
八幡「初めまして。雪乃さんの高校の同級生の比企谷八幡と言います。この度は突然の来訪失礼いたします」
孝蔵「いえいえ、雪ノ下孝蔵と申します。わざわざこんな田舎まで足を運んでいただきありがとう。それでワシに何か用かな?」
陽乃「とりあえずみんな一度座ろっか」
陽乃さんの一言でとりあえずこの場にいた全員がソファーに腰掛けた。
孝蔵氏をむかいに俺、雪乃、葉山、陽乃さんという並びだ。
落ち着きが見えたところで改めて雪乃から今日の挨拶の旨を伝える。
雪乃「今回私たちがこちらを訪れたのはお祖父様に認めて頂くためです。」
孝蔵「認めるとは、もしかして」
雪乃「はい、私たちの関係を認めていただきたくやってまいりました。」
一気に部屋の空気が張り詰めるがその波に屈しない雪乃の強い意志を感じる。
俺も彼女だけにこの重荷を背負わせるわけにはいかないと彼女に続けて発言しようとしたが
孝蔵「そうかそうか!!!そうことだったんだね。いや〜これはめでたいなぁ。あの雪乃ちゃんにも将来を考える人ができてワシも嬉しいよ」ニコッ
張り詰めるた空気なんてなんのその。孝蔵氏は大袈裟にも心から喜んでいるそうで急に肩が軽くなる。
雪乃「で、では私たちの関係を認めてくださるのですね!?」
孝蔵「もちろんだよ。2人で末長く幸せになりなさい」
お祖父さんから許しをもらえた彼女は瞳を潤せ手も小刻みに震えている。その手にそっと自分の手を重ねこの言葉にならない喜びを彼女と分かち合う。
陽乃「良かったね雪乃ちゃん!」
孝蔵「さて、ワシは少し急用ができた。君たちは遠出でお疲れだろう。離れを貸すから今日はゆっくり休みなさい。明日から村の祭りも始まるからそれも楽しむといいよ。ではワシはこれで失礼するよ」
少し急ぎばやに応接室を後にした孝蔵氏。彼がいなくなっただけで部屋の圧力がかなり下がった。
雪乃「お祖父様が仰った通り今日はもう休みましょうか。疲れが一気に来てしまったわ」
陽乃「まあ雪乃ちゃんと比企谷くんは相当お疲れかもね。隼人はどうする?」
葉山「俺は近所の人たちに挨拶してくるよ」
陽乃「相変わらず外面はいいんだから。あたしもその辺散歩してこよーっと」
各々がその後の行動を決めて解散となり挨拶は無事終了した。明日から始まる祭りも雪乃とまわってみたいという気持ち悪い願望を持ちながら俺は一日を終えた。
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みんなが寝静まる少し前の孝蔵邸
陽乃「(なんか目が冴えちゃった。雪乃ちゃんと比企谷くんの関係も認めてもらえたけど、、、なんかつまんないの)」
静まり返る孝蔵邸の廊下を物思いにふけるようにただギシギシと音を立てながら歩く。
ふと目をやると一室だけ明かりが付いている。
陽乃「たしかあそこはお祖父ちゃんの部屋….」
何を思ったのか忍足で彼の部屋に近づき中から聞こえて来る声に耳を傾ける。
孝蔵「ああ、今年の祭り……雪乃ちゃん……タイミ….ばっち..だ。 相手は……くんだ。その2人が今…..挨拶…来て……」
陽乃「ふ〜〜〜〜ん」
前言撤回♪ 今までの人生で一番楽しい夏になりそう♫
第一話 了
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あとがき
お久しぶりです。ZRYYです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
まず初めに前作「寝取られ彼女 雪乃」のラストで次回作について触れましたがこんなにも間隔が空いてしまい申し訳ありませんでした。
こんな自分の作品を待ち望んでいらっしゃった方々には深くお詫び申し上げます。
今後このように読者様の期待を裏切らないよう努力致しますのでよろしくお願い致します。
さて、第二作目の今作ですがテーマは村の因習×NTRとなっております。この組み合わせは作者が1番好きなジャンルでしてそれを全面に押し出した自己満100%な作品となっております。完結までどれくらい続くか分かりませんがどうか最後までご一緒出来ればと思います。
では、また次回お会いしましょう。