────世界がこんな風に変わってしまったのは、いつからだろう。
仕事帰りのOL
恵子を取り囲んでいるのは、ただの変質者ではない。
……いや、変質者と言えば変質者なのだが、それとは別に、彼らを明確に区分する言葉が存在しているのだ。
────『戦闘員』。
それが彼らの名称だ。
西暦202X年に日本で発掘された未知の建造物──一説では遠い過去に飛来したUFOではないかと噂されている──によって
だが、それに付随するようにして、その技術を悪用する者たちが現れたのだ。
いわゆる『悪の秘密結社』や『悪の組織』と呼ばれる存在だ。
悪の秘密結社や悪の組織はなぜか、どの組織も新技術を独自に発展させるほどの科学力を有しており、それらを好き勝手に利用して社会を大混乱に陥れた。
その目的や思想はそれぞれだが、共通していることがいくつかある。
その一つが、『戦闘員』と呼ばれる使い捨ての兵力を大量に有している事だった。
戦闘員は組織の構成員の中でも最下級に位置するのだが、決して侮っていい存在ではない。
彼らの正体は組織によって様々だが、大抵は謎の科学力によって作り出されたホムンクルスやアンドロイドであり、その身体能力は並の人間を凌駕しているのだ。
ただのOLにすぎない恵子が敵うような相手ではないし、隙を突いて逃げることも不可能だろう。
戦闘員は大抵「E~~~!」とか「OHO~~~!」とかしか喋らないので、意思の疎通も期待できない。
……しかし、恵子はそれほど取り乱してはいなかった。
確かに状況は絶望的だ。
場所はビルの狭間にある薄暗い路地裏、周囲に人の気配はなく、このままでは戦闘員に何をされるか分からない。
だが、世界に悪の組織が溢れかえったように、それに対抗する者もまた、数多く存在していた。
「……待て、
恵子の期待に応えてか、路地の先から声が響いた。
それは低く、重く、まるで俳優か声優を思わせるようないい声だった。
恵子と戦闘員たちが声のした方向に視線を向けると、そこには一人の男が立っていた。
黒い革ジャンを身に纏い、使用感のあるジーンズを履き、ティアドロップ型のサングラスを装着した背の高い男だ。
「G~~~!」
男に対して、戦闘員たちが威嚇するような声を上げる。
どうやらこの戦闘員の鳴き声は「G~」らしい。
そしてその鳴き声を切っ掛けに、男が動いた。
「はあっ!」
離れていても腹に響くような気合いと共に、履いていたジーンズを一気に脱ぎ捨てたのだ。
「えっ」
その奇行に、恵子は思わず声を上げた。
そして次に男の股間に目をやり、息を飲んだ。
男の股間にぶら下がっているチンコが、あまりにもご立派だったからだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ………!」
唖然とする恵子を余所に、男はさらなる奇行に出た。
なんと腰に手を当て、巨大なイチモツを時計回りに高速回転させ始めたのである。
あまりにもあんまりな行動に、戦闘員すら鳴き声を上げるのを忘れ、恵子と共に黙って男の姿に見入っていた。
すると────
「変、身……っ!」
力強く放たれたその言葉と共に、高速回転する男のチンコから目もくらむような
説明しよう!
男の正体は
悪の組織
彼の普段の姿は、チンコが異常に大きいだけのただの人間だ。
しかし隼人は、チンコを時計回りに高速回転させることによって、さながら手回し発電機のようにエネルギーを発生させ、正義のヒーロー『仮面ペニッシャー』へと変身することが出来るのである!
こんな訳の分からん変身機構を開発した科学者は殺していい。
────光が収まったとき、そこに立っていた男の姿には、先ほどまでの面影など全く残ってはいなかった。
上半身を包む、甲虫のような光沢を帯びた黒いボディアーマー。
同質の素材で出来ていると思われる、手甲と脚甲。
そして頭部全体を包み込む、まるで
以上だ。
チンコは変わらずむき出しのままであった。
「……ぉ……ゎ……ッ」
戦闘員を指さし、くぐもった声で仮面の男が喋るが、くぐもり過ぎて何を言っているのか、恵子には分からなかった。
実はヘルメットの外部通話スイッチを隼人が入れ忘れているだけなのだが、それもまた、恵子に分かる訳がない。
だが、指をさされたこと自体が気に食わなかったのか、戦闘員たちは「G~~~!」という怒り(?)の声を上げながら、仮面の男に向かって走りだした。
人外の身体能力を持つ戦闘員たちの動きは速く、距離は瞬く間に縮まっていく。
そしてその距離が5mほどに達した、その時。
先頭を走っていた戦闘員の一人が、何の前触れもなく横向きに吹っ飛び、ビルの壁に激突した。
「Gッ!?」
残りの戦闘員が警戒して立ち止まるものの、そこはすでに仮面の男────いや、『仮面ペニッシャー』の間合いであった。
そう、触手のごとく5mの長さにまで伸びたペニッシャーのチンコが、戦闘員たちをなぎ払ったのだ。
チンコの振るわれる速度は音速にまで達しており、おそらく人外の身体能力を持つ戦闘員たちですら、その動きを視認することは出来なかっただろう。
故に、決着はあっという間に付いた。
路地に倒れ伏す戦闘員たちを無視して、ペニッシャーが恵子のもとに歩いてくる。
「……ょ……ぅ……?」
そして恵子に話しかけるが、相変わらず声はくぐもっていて、なんと言っているのかは分からなかった。
むき出しの巨大なチンコが間近にあることもあり、恵子の困惑は増すばかりである。
そんな恵子の様子に何を思ったのか、一度悲しげに頭を振った後、ペニッシャーは背を向けて歩き出した。
だが、数歩進んだところで立ち止まり……
「……ぉ……ゃ……」
顔だけ振り返ってまた何か言葉を発したが、やはり恵子には、何を言っているのか分からないのだった。
恵子さんはヒロインでも何でもありません。
ただのモブです。