正直、今回は自分で書いてて首を傾げました。
ただ、どうしても2人が結ばれる話を書いてみたかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『こんなこと』があるなんて、あの頃の彼に聞いたら、有り得ないと言われるかもしれない。なんでだよ、ぜってーないって、と言うだろう。
彼女の妹が聞いたのなら、絶対に許さないし認めないと言っていたかもしれない。
彼らだけでなく、彼の周りにいた人間だったら、誰もが同じことを言っていただろう。
特にあの頃を知っている人間なら、親しい人間なら、尚更目を剥くに違いない。
いや、本当はどうでも良くて、ただ、そうなんだ、程度にしか思わないのかもしれない。
彼も、そうなるだなんて思っていなかった。
彼女も、そんな気持ちになるだなんて思わなかった。
でも、有り得ない『こんなこと』は、現実で起きていた。
紆余曲折、という言葉では表しきれない経緯を経て、彼らは大人になった。あの一時の中で、みんなが沢山傷ついて、傷つけて、殴られて、叩かれて、後悔して、挫折して、コトバとコエをぶつけ合って、卒業した。
再会を果たしてからさらに数年が経ち、彼らの友人も知人も顔見知りも、各々が外の世界で藻掻き苦しみながら生きていた。そこには喧嘩だってあるし、涙だって、罵倒だって、後悔だって、恋愛だってある。中には家庭を築いた奴だっている。その間には、たくさんの思いや感情が今も生まれている。
「しょおあく…………」
そして、大人になって、経験を積んだ石田将也と西宮硝子に生まれたのは、紛れもない恋愛感情だった。
友達ごっこから友達になって、さらにその先を行っていた。
過去に虐めていた側の将也と、虐められていた側の硝子の間に、異性という意味での恋愛感情が生まれていた。
あんなに虐めていたのに、あんなに虐められていたのに。『死にたい』と言わせるほどに追い込んだのに、どうしてなんだろう。
誰もが2人の心境の変化を不思議に思うかもしれない。その真意は、2人しか知らない。
当然、ここに行き着くまでトントン拍子に事が進んだというわけではない。
『あの時期』は、2人にとっては、みんなにとっては、色んなものが動いて。けど、今はそんなのとは比にならないくらいにもっと動いていて、呑まれそうになっている。その中で生きているのだから、都合良くは進んでくれない。
それに将也はあの夜、彼女に告白したけれど、そこにはやはり恋愛感情というのはなかった。彼自身、彼女への罪滅ぼしと罪悪感で動いていたから、異性という意味での感情が湧くだなんて思いもしなかっただろう。
あの時点では、2人の間には何も無かった。そう、『何も無かった』のだ。
しかし、だからといって、2人が『そういう関係』にならないだなんてことは0ではない。
0じゃなかった。
0ではなかった。
0ではなかったからこそ、また再会を果たし、気づきあって、長めな経験を経て、理解を深めて、片方が一歩を踏み出して、こうして一室の中で共に過ごしている。
こんな可能性だってある。
その可能性がこうして実現していた。
少しずつ、成人式の日に、同窓会で水門小の同級生達と向き合ってから、『あの2人』とも向き合えてから、将也は変われた。
そして、無意識に生まれていた可能性は、その時から着々と進み始めていた。
いつ頃からか、いつの間にか、彼にも芽生えたあの気持ちは、徐々に背を伸ばしていた。
傷ついて傷ついて、傷つけあった日々。その先にある1つの可能性を掴み取り、2人は『そういう関係』に辿り着いたのだ。
「西宮」
と将也が言葉と手話で名前を呼ぶ。すると、硝子は首をぶんぶんと横に振って、後ろに結いたポニーテールを揺らし、頬を膨らませながら『名前で呼んで欲しい』と返した。
彼が彼女のことを苗字で呼ぶのは昔から変わっていない。『そういう関係』になってからも、将也は彼女のことを苗字で呼んでいる。もちろん名前で呼ぶこともあるが、それは本当にたまにだった。
でも、こういう雰囲気の時くらい、いい感じのシチュエーションの時くらいは、彼女も名前で呼んで欲しいと思っていた。
深い関係になってからは、彼女も本心を隠さずに、より正直な気持ちを彼に伝えるようになっていた。
将也は眉間を親指と人差し指でつまむような仕草をし、伸ばした指先を前に下ろして『すみません』と謝る。そして訂正するように「硝子」とやり直した。硝子は頷き、気を取り直すように唇を動かし始めた。
「しょおあくぅ」
今日は2人にとって特別な夜になる。だからこうして、2人きりで部屋の中に篭っている。
「……ちゅ……ちゅ……」
高校時代よりも少し汚さが増した部屋の中で、硝子はとある言葉を告げようと唇を尖らせた。
二人の関係は、親しい人間達の殆どが認めていた。
美也子も、八重子も、今頃思う存分だべれる場所で、2人に対する愚痴を零しあっているだろう。あの子はああ見えていざと言う時に前に出ないとか、あの子はああ見えて結構肉食っぽいところがあるからたっぷり搾り取って半殺しにするだろうとか、2人が聞いたら赤面するであろう話題をペラペラと話しているだろう。
結絃は、『これで何もないとか無しだからなー』と言いつつ、マリアと数年前に石田家に新しく加わったファミリーを連れて、別の場所へと避難している。流石に幼子に大人の密会を見せる訳にはいかないのだ。
そして仲間達も、祝福の言葉と少しの皮肉を贈ってくれている。
永束は、式を挙げる時は、ムービーの撮影と友人代表スピーチは任せてくれと張り切って言ってきている。将也のビッグフレンドは、今も尚健在だった。
植野は、知らせを聞いて早々に容赦ない言葉を2人にぶつけてきた。笑いながら色々と言いたそうにしていたけど、気がつくと泣いていた。硝子と仲良くできる日まで、あと少しのようだ。
佐原は、素直に喜び、祝いの言葉を贈った。もしもやるなら、式のドレスのデザインを任せて欲しい、という冗談か本気か分からないことを述べていた。
川井は、純粋故の一言を交えつつ、純度100%の涙を流しながら2人を応援した。そして相変わらず真柴を追いかけていた。
真柴は、普通に祝福をしていた。そして、自分のなりたいものをようやく見つけたようだった。川井とは少しだけ何かが進展したらしい。
みんな、2人の関係には反対しなかった。
だから、後ろめたさなんて必要ない、後ずさりすることなんてない。
「ちゅ…………ちゅ…………」
なのに、どうしてあの言葉が出てこないのか。喉の奥でつっかえているそれは、まだ眠いと、産まれることを拒む胎児のように頭を出してくれない。
たったの2文字。夜の将也の部屋、明日まで2人きり、脱ぎやすいラフな格好、布団の上、入浴済み、歯磨き済み、口臭ケアバッチリ、ただしゴム無し。『そういう関係』になった2人にとっては、またとない環境だった。
しかし、硝子はどうしても言葉を詰まらせてしまう。詰まったものは、何度も胃の中へ落ちて溶かされ、泡に包まれて消化されていく。次は言おうとしても、なかなか出てきてくれない。
あの時は感情の高ぶりもあってちゃんと言えたのに。伝わらなかったけど、ハッキリと自分の声で伝えたのに。結絃とだって、練習したのに。もう大人なのに。
硝子の体温が上昇し続ける。
心臓の鼓動がいつの間にか早くなっていて、胸元を抑えた手の平にも届く。
それは将也も同じで、彼の場合は、鼓動の音も、緊張して息を殺しているかのような息継ぎの音も、必死に何かを伝えようとする硝子の声も、全てが耳の中に届く。
「……しょおあ……くぅ」
一旦止めて、硝子は名前を呼んだ。じっと彼の目を見ながら、ちゃんと伝えるからと訴えてきた。
「……?」
将也は胸に当てられた彼女の手を優しく握る。当然の行動に硝子は首を傾げそうになる。
何度も言う、2人はもう『そういう関係』だ。硝子から一方的に想いを伝える、そんなことはない。
将也は彼女の手を握ったまま、どの言葉で想いを伝えようか、どうやったらちゃんと伝わるのか、一瞬の中で、将也は考えた。
そして将也は握っていた硝子の手の平と、自分の手の平を重ねる。
頭の中で同じ言葉を反芻させる。無言の中に、その言葉を形作っていく。
彼女は、彼にとって生きるために必要な存在になっている。
それは、あの夜の告白よりも、贖罪という意味を超えて、もっと深い意味を持つものになっていた。だから、その気持ちを伝えたい。
伝えたい言葉が形を作り、喉から這い上がる。喉は吸い込んで溜めていた息をバネの代わりにして、勢いをつけて飛び出した。
「 す き 」
口元をはっきりと、聞き取れるようにゆっくりと動かす。
本当にたったの2文字。
彼女に言われた時は気づかなかったその言葉は、言うなら簡単なその言葉が今、彼の思いを孕んで彼女に降りかかった。
「…………」
将也の瞳に硝子が映り、硝子の瞳に将也が映る。
手話を使わずにやったから、ちゃんと伝わったのか、彼の中に不安が渦巻く。
けど、その心配は無用だった。
彼女にはちゃんと伝わっている。音の殆ど聞こえない世界で、彼の言葉を、硝子は確かに受けとっていた。
「しょおあくぅ……」と名を呼んだ彼女の顔が、みるみるうちに火照っていく。
嬉しさ、恥ずかしさ、複雑に絡む感情が、ぶわっと大きな泡玉を作って膨れていく。膨れたそれは、パチンと弾けて、彼女の顔に笑顔を作った。
生まれる沈黙。
交差する瞳。
立ち込める空気を打ち破るように、硝子はこくりと頷いた。
その笑顔は、愛想笑いなんかじゃない、本物の笑顔であり、それが本物であることは将也も分かっていて、釣られるように照れくさく笑った。
『そういう関係』、許しあった心、承知の上での行為。なら、この先にやることは、既に決まっている。
受け入れても、未だに好きになれない過去の自分。硝子はそれを包むように、将也の身体に寄りかかった。
「んっ」
重なる2つの唇。しばらく密着したまま、押し付け合う。
「ん……あっ、ちゅ」
くっつく2人の顔が動き、リップ音と水気を帯びた音が後ろから続くように響く。
「しょおあ……んっ」
こんなにも色っぽい硝子の声を将也は初めて聴いた。ぎこちない舌先が、慣れない彼女の初心さを表している。
それは将也も同様で、彼女が気持ちよくなれるように、傷つかないように舌先を畝らせている。親達が見たらなんてもどかしい、もっと勢いつけて食べる勢いでやっちゃいなさいと文句を言うかもしれない。それほどまでに2人のキスは慎重で、針にでも触れるかのようだった。
「ふぁ……っ、あ、あ、んっ」
将也は手を彼女の体に伸ばす。
彼の男らしい指先が彼女の体を這うように撫でると、聞こえない世界の中で、硝子は露声を上げた。
脇腹を擦り、流れるように背中の窪みに触れる。服の上から触れているそれは、円を描くように数回擦り、徐々に下の方へと移動し、臀部の谷間へと潜り込んだ。
「ん、あっ、あっ」という甘い声が彼女の喉から流れる。2人の体と心の熱が上がっていく。
潜り込んでいた手が、硝子の敏感な部分に触れて、触覚にピリリとしたものを走らせた。
ピクリ、と体が跳ね上がる。
声が殆ど聞こえない、感覚のみだからこそ、その刺激は余計に深くまで刺さった。
「あぁ…………! あっ、あ゛…………しょう……うん……」
硝子の声が彼の耳元にまで届く。彼は答えるように、声を出しながら片方の手を彼女の胸部へと伸ばした。
「ふぁっ」と色気着いた悲鳴が漏れる。
将也は思わず『ごめん』と謝ろうとするが、硝子の手が彼の手を掴む。掴んだまま、ニコリと顎を引いた。
許しを得た将也の手はそのまま膨らみを掴み、沈ませた指をバラバラに動かす。下着をつけていないため、硝子の柔らかな脂肪が指の動きに合わせて形を変える。
「あっ! ん、ふぁ、んぅ……! あぁ……!」
優しい彼の手は優しすぎて、少しくすぐったい。その擽ったさが、逆に彼女の感じる部分を刺激する。
異性から胸を揉まれるだなんて、彼女にとっては未経験なこと。このまま揉まれ続けたらどうなるのか、硝子は怖がりながらも胸をワクワクさせた。
直後、将也は突然手を離した。
はえ? という顔で硝子が見つめると、彼は『服、脱がしていい?』と手を躍らせるようにして訊いた。
訊いた途端に硝子の顔がかっと赤くなる。目がぶれて、如何にも恥ずかしそうにしている。そういう経験は今日が初めてなので、彼女の反応は仕方ないと言えば仕方ないことだった。
将也はすぐに気がついて会話をしようと手を動かす。しかしそれよりも早く、硝子は『一緒に脱ごう?』と言った。
『じゃあ、まずは俺から脱ぐから、その後に、硝子が脱いで』
『うん』
『目は、閉じててほしい。大丈夫、どこにも行かないから』
『……うん』
将也の言葉を信じて硝子は目を閉じた。
目の前が暗闇に包まれ、彼女に無のような世界が訪れる中、彼は纏っているもの1枚1枚を脱いでいく。上着も下着も、彼女の顔を見ながら、ついに全裸になる。
とんとんと手の平を叩かれて、硝子は瞼を開いた。目の前では、一糸まとわぬ姿の将也が、股間部分を隠すように正座をしていた。
つい目を下に向けると、隠しきれていない茂みが見えてしまった。ただでさえ赤かった硝子の顔が更に赤みを増して、唇に波なみとさせる。
だが、いつまでもモジついているわけにはいかない。
硝子は今度は私が脱ぐから、将也君は目を閉じて欲しいと伝えた。
言われた通りに将也は目を閉じる。
音だけは聞こえる暗闇の中で、服と肌が擦れ合う音がざわめき、鼓膜を擦る。
この瞼の向こうで彼女が脱いでいる。
開けたいという衝動を、理性で何とか抑えた。
「いいお」
という声が聞こえ、将也は目を開いた。開いたまま、そのまま目を見開いて、目の前の光景に口を開く。
「…………」
同じく一糸まとわぬ姿なのに、彼女の体は別物に見えた。昔、たくさん傷つけて、そして殴りあって、跨りあった彼女の体は、綺麗だった。肌も、太腿も、二の腕も、そして2つの丸みを帯びたものと、その先に着いた薄い色のものも、全てがさらけ出されていた。
将也は唾を飲み込む。顔から火を吹きそうなほどに内側が熱い。だって今、目の前に硝子の裸がある。彼の人生にとって、絶対に必要な存在になった彼女のあられもない姿が目の前にある。
硝子も当然、顔は赤くしたままだ。けれど、どこか一安心したような、覚悟を決めたような表情で彼を見つめている。
どうするのか?
どうしたいのか?
どうやるのか?
2人には、もう言わなくても、手を使わなくても分かる。けれど、やっぱり初めてだから進みずらい。
最初に進んだのは、硝子だった。
彼女は両手と膝でハイハイをするように歩き、ポニーテールを揺らしながら将也の下腹部に近寄る。彼は焦りながらも、正座させた足を開かせた。
「お、お…………」
初めて見た将也のモノ。子どもとは違う大人のそれをたらんと垂れさせているそれを見て、硝子は一瞬硬直し、将也に上目を向ける。向けられた彼は、本当に大丈夫か訊ねた。
「たいおうぅ」と、口元をニコリとさせながら、硝子は将也のモノに触れた。どの部位よりも柔らかくて、不思議な触り心地だった。
「ん…………」
目前の謎の物体に戸惑いながら、ゆっくりと、掴んでいる手を上下に動かす。細い指に包まれる中で、彼のモノが扱かれていく。
初めて、初めて、初めてのことだらけ。
彼女が自分を見ながら、手を動かして、下についているアレを弄ってくれている。気持ちよくさせようと必死に、慣れない手つきで指の輪を動かしている。
間近にある彼女の顔を見ると、嬉しさが込み上げてくる。そう思っていた将也は、気持ちよくなる前に、何か彼女にしてあげたいと思った。
だから将也は彼女に向かって『硝子、俺も、硝子のこと、気持ちよくしたい』『……胸、触らせて』と伝えた。
硝子は驚きながらも頷いた。
将也は空いていた両手を彼女の胸へと伸ばし、もう一度、今度は生の膨らみを掴んだ。
「ふぁっ、あ」
硝子は甲高い声を漏らす。気持ち良さから来る、純粋な声。しかし、モノを扱くその手は止めない。
将也も手を休ませず、両胸を揉みしだき始めた。
指に弾力を跳ね返すそれは、柔らかい。柔らかくて、慣れない彼の手を優しく受け止めてくれる。
沈む指が、硝子の声に艶を彩る。
「し、しょおあく…………ん」
硬くなる。お互いの敏感な部位が、硬さと熱を帯びていく。
2人で目を閉じてしまう。片や真っ暗な空間の中で体を触る指を感じ、片や声と吐息と胸の感触で相手を感じる。
「……しょおあくぅお……あちゅ……」
彼女の手の輪で上下に擦られる将也のモノに血が巡る。だらんと萎えていたものが、真っ直ぐに芯を付けて反り立ち始める。
硝子の胸先の突起もまた、ピンとその身を立たせており、彼の指に挟まれて平たく潰され、コリコリという音を立てて嬲られ、奥を疼かせる。
「んぅ……しょおあくぅ、おっはい、ほちぃ?」
手話を使っていない。なのに、将也には彼女がなんと言っているのか理解出来た。分かったから、頷いた。
「いいお」と返事をされて、彼は早速、左胸を手で持ちあげて、口の中へ含んだ。
「ひゃんっ!」
高い声が硝子の喉から漏れる。
昔、佐原が巫山戯半分で揉んでいた。あの時もこんな感じの柔らかさだったのかな、なんて雑念が彼の中に湧いてきた。
「あっ……ひゃ……あかひゃ……うんっ……!」
吸引する音を立てながら、将也は硝子の隆起を咥えて吸い出す。赤子みたいに、母親のものを吸っていた赤ん坊時代のように、甘い味のする彼女のそれを、彼は美味しそうに吸っていく。
硝子は背中に走るゾクゾクとした刺激にピクリとしながら、彼のモノを扱く手の動きを速くする。
中に詰まっているものの熱が手の中に伝わる。弾力のあったものが硬さを持ち始めて、ついには硝子のお腹を啄きたいと微動を始めた。
「ふぁ、く、くすうた…………んんっ」
将也は舌先を丁寧に操り、隆起の先で立つ彼女の硬い部位を嬲るように畝り舐める。咥えて居ない右胸を揉みしだく手にも少しだけ力を入れて、胸の頂をより平たくつぶした。
「ふっ、んっ…………ぁ」
将也は彼女の胸から口を離す。離れる瞬間、ちゅぽんという音が静かに鳴りながら、乳頭が小さく揺れた。
含まれていた先は、たっぷりと唾液で濡れており、微光を跳ね返している。
耽る硝子は視線を下に向け、将也のものを見ると、目元を細めながら『大きい』と伝えた。
グロテスクなそれは、教科書に載っているモノよりもゴツゴツとした形をしていて、黒かった。これが体の中に入るだなんて想像出来ない。
でも、今から入る、将也と繋がる、それが今の二人の関係。
硝子は、潤みを持った瞳を向けながら『将也君と、繋がりたい』『一緒になりたい』と訴える。将也が『いいの?』と返すと、彼女はこくりと頷いた。
過去はどうあれ、いや、過去を受け入れた上で、2人は一緒にいる。
止まる必要なんて、どこにある。
もう、あの頃とは状況も、関係も、違う。
将也は両手を彼女の肩に乗せて、向き合う形でじっと見つめる。右耳に自分が付けてしまった傷跡があって、時折見えると彼の胸をズキズキと突き刺す。
それを察した硝子は『大丈夫』と伝えた。ね? と表情で訴えている。
将也は、硝子の体をゆっくりと押し倒す。昔みたいに取っ組み合いの喧嘩にはならず、彼は彼女を包むように覆いかぶさった。
硝子は息を呑みながら、閉じている太腿を開いて、隠していた股間部を彼に見えるようにさせる。
整えられた茂みと縦に割れた唇。さらに硝子が指先で唇を開くと、隠れていた穴が露わになり、将也のモノを求めて早くもひくつかせていた。
「…………いいお」
甘い誘惑に誘われるように、将也は自分の硬いモノの先端を、硝子の秘穴にあてがった。
唇が太さに合わせて広がる。閉ざされた穴の中へ、男の硬直したモノが押し込まれていく。
「いっ……! しょおあ…………くっ……!」
割れ目が裂ける。
痛い、とっても痛い、けど、昔受けていた痛みに比べれば全然マシかもしれない。自分か傷つけて来た人達のことを考えれば、この程度の痛みは比にならないと思った。
しかし、やはり痛いものは痛くて、硝子は将也の匂いが染み付いたシーツを両手でギュッと握り、皺を作った。
「くぁ…………ぁあっ!」
激痛に顔を顰める彼女を見て、将也は何度かやめようと言いかけた。しかし、彼女の目はやめないで、最後までやって欲しいと訴えていた。折角だからこのまま突き進んで欲しい、受け入れさせて欲しいと。
将也は挿入を進め、硝子の中へどんどん潜り込んでいく。閉じられていた彼女の中を、少しずつ開通させていく。肉が解けていく音は痛みとなって彼女に届き、締め付ける感覚は、彼女の呻く声になって将也の耳に届く。
どんどんと、中へ将也が入ってくる。硝子の体の中に、彼の形が刻まれていく。
「ぁ…………」
掻き消えそうな声とともに、将也のモノが根元までくい込んだ。黒くて硬いそれは、彼女の柔らかい肉の壁を押し広げている。硝子には中へ棒状のものが挿入された痛みが、将也には硬いモノを締め付けられる感覚が走っていた。
「しょおあくぅの…………あぅい」
硝子は下半身に目を向ける。将也の硬いモノが、自分の股間の間に入り込み、大事な場所を貫通している。
ああ、痛い。凄く痛い。でも、お母さんもこうやって私と結絃を産んでくれたのかな、そして今度は自分がその番なのかな。そんな気持ちが湧いてきて、緊張と喜びが交互にやってきた。
それは将也も同じであり、彼の場合、硝子のことが異性として本当に好きになったのだと実感した。
『動くよ』
『うん』
短いやり取りをし、将也は腰を引いた。
貫通したばかりの硝子の局部はキツキツで、あまりのキツさに彼は声を上げてしまう。
「んぅぅぅ…………!」
しかし、彼以上に硝子は眉根を顰めて苦しそうに呻いた。やはり、どうだろうと痛いものは痛い。裂けそうな激痛が局部から突き抜けるように身体に走る。このまま真っ二つになってしまうような幻覚に襲われ、涙まで出てきた。
「うぁぁ、ぁぁ、おぅ、あ゛……」
あまりの痛さに耐えきれず、獣のような声を上げてしまう。変な声と言われ続けた声が出てしまう。
「大丈夫だから」と将也は彼女を見ながら伝える。そしえ、引き抜いた腰を今度は奥へと押し込んだ。
「あぁ゛ぅ!」
ぐちゅり、という生々しい音が響き、硝子な悲鳴をあげる中、将也は腰を動かす。
1、2、3と往復を重ねて、ある程度中の肉を解したところで、腰を一定の速度で揺さぶる。
「ぁ、あっ、あぅあ……あ゛……っ!」
将也のモノが穴から出入りする。硝子の膜が破れ、肉が拡張されたことで血が流れる。引き抜かれる度に、一部は臀部を滴り、一部は彼の黒い体に絡みつくように表面にまとわりついた。
「ひゃう、しょおあ……しょおあ……んぁ!」
彼の名前を呼びたい、でも痛みがそれを遮らせる。
自分の中にある道が将也のモノを締め付ける。締め付けて、圧縮して、でも進むときだけ弛緩して、それの繰り返し。
「んひゅ、あ、ひぃ……! ひゅ、かぁうえ……あちゅい」
体が彼の動きに合わせて揺さぶられ、同じように胸部の膨らみも前後に揺れて、隆起が乱れ動く。
将也も彼女の腰を両手でそっと掴みながら、その圧に顔を顰める。彼女の苦しむ声が少しでも痛みを和らげるようにと、動きを小さくしながら、彼自身も耐える。
自身の幹を通して伝わる、根元ごともぎ取りそうな締め付けと全身に巡る快感に、意識を飛ばしそうになる。
「しょおあ……くぅ…………」
気がつくと、硝子が目の前で苦しい顔をしながら、
『もっと、激しくしていい』『もっと、将也君を感じたい』
と、震える手で必死に訴えていた。
将也は一息つく。
そして、腰の動きをより大きく、より強くさせた。
「うぁ、あぅ、あって! あ、ぅあ……!」
猛攻にも似た彼の腰振りは、硝子の中をより熱く擦り上げ、全方位に拡張させる。
水気のある音と肉と肉が衝突して弾け合う音。
硝子にはその音は聴こえない。けど、感じることは出来る。
将也の動き、彼の吐息、汗、下腹部を出入りする剛直なモノ、飛沫になって飛び散る血と体液、視覚・痛覚で捉えている全てのものを、硝子は受け入れた。
「しょおあ、おうあ゛……う゛んんっ!」
ああ、痛い、痛いけど、奥を突かれると、途端に全身がピリピリとしたものが走って、気持ちよくなる。
将也と繋がっている、一緒になって感じている。
硝子は目を閉じてみる。何も無い世界、音は掠れて、目の前も暗い。あるのは、痛覚のみ。
けど、分かる。彼が気持ち良くさせようと、激しくしながら痛みがないように優しく動いているのが。
「しょおあくぅ……」
目を開いてみる。目の前には将也の顔がすぐそこにあった。
彼が何をしたいのかくらい分かっている。彼女も同じことを考えていたから。
「んぅ……ちゅっ」
硝子は両手で彼の頭を挟んで、自身に近付けて口付けを交わした。
「ちゅ、んっ、あ゛、んちゅ……れろっ、んむっ……!」
唾液がまた熱を帯びて混ざり合う。舌と舌が絡まって、お互いを舐め合うぬめりのある音が、曇った物になって硝子の頭に届く。
「んっ……しょおあく……しょおあく……しょおあぁ……」
口元が離れて、白い糸が2人を繋ぐ。
名前を呼ぶ声が止まらない。硝子も、将也も、止まらない、止めたくない、終わらせたくない。
2人は1つの可能性の中で、愛した。
好きになった。
嫌いだったのに、好きになれた。
壊したくない、でも溶け合いたい。
溶けて1つになりたい。
1つになって、そして…………
「しょおあ、しょおあ……て、ちゅないえ」
手話も忘れて、硝子は強請った。
でも、彼には伝わっていて、将也は両手で硝子の手の平に自身の手を重ね合わせた。
指の一つ一つが間に入って、より密着してつながる。
『握手』じゃない、手の繋ぎ方。
2人が進んだことを証明する繋ぎ方。
将也の声が、硝子を呼ぶ声が、より熱がこもる。腰振りも、中で暴れるモノも、熱を帯びている。
「しょおあっ、しょおあっ、しょおあっ……っ!」
硝子もまた、彼の名を呼んだ。「あちゅい、あちゅい」「ちぇっくぅ、ちぇっくぅ、きもひぃ」と、悲鳴を何度もさけんだ。
茹だる、頭も体も、意識も、とろりとした中も、彼の芯が通ったモノも、全てが溶ける。叫びも、息も、涙も、全てが一体になる。
「あっ、あ゛っ、あ…………あ゛ぁぁあぁあぁぁっ!」
そして、将也の尖端が硝子の奥深くにある敏感な口を突き上げると、彼女に絶頂を迎えさせ、金切り声のような甲高い嬌声を上げさせた。
同時に、将也の幹に通った管を渡って、彼の遺伝子が詰まった白い粘液が迸り、灼熱を纏って硝子の中に飛び出した。
「……あ……あっ……あ」
硝子の体が、脈動に合わせて彼と共に震える。
粘液を搾り出す感触が体内からキこえる。包んで、搾って、吐き出させて、小さな部屋の中へと誘う。
生まれ変わって、関係を持って、初めての2人の夜。
お互いの胸の鼓動が重なって、大きなオトになる。
体が繋がったまま、溶けて、1つになる。
そんな幻を見ながら、2人は絡めた手を強く握りしめた。
◇◇◇
『西宮……本当に、俺で、いいの?』
夜が降りた橋の上、あの日と同じ背丈、同じ格好で、硝子は座り込んでいた。
そして目の前には、同じように座り込んで項垂れる石田将也が、彼女に訊ねていた。
その姿は、大人になった今の彼にも見え、彼女と再会した高校生の時にも見え、彼女を傷つけた、彼女を諦めさせた小学生の時の子どもの姿にも見えた。
『どうして、そんなこと言うの?』
硝子は訊ね返す。
石田将也は曇った表情で手を動かし、口頭でも、ポツポツと話しだした。
『俺は、西宮のこと、たくさん傷つけた』
『過去の自分を受けいれたとしても、過去の自分のことを好きになれない』
『俺が西宮を傷つけて、追い込んだ事実は、どう足掻いても消えない』
『俺にとって、西宮は必要な存在だ。でも、俺が一緒になることは…………』
『西宮のことを、また、傷つけるかもしれない』
『西宮の傍にずっといる資格は…………』
少しずつ、彼の声にも手にも勢いが弱まっていく。
俯く彼のコトバを、硝子は黙ってキいていた。
硝子は最初、石田将也が嫌いだった。
加害者意識のある彼女でも、水門小学校の中で、一悶着をした彼は特に嫌いな人間として記憶されていた。
嫌いな人間でもあり、自分のせいで幸せを壊された犠牲者だとも思っていた。
5年後、彼が突然自分に逢いに来た時は、驚きと混乱で逃げ出した。
そして彼は、自分に謝りたいと言ってきた。そんな彼が、彼女は不思議でならなかった。
けど、捨てたはずの筆談ノートを彼がずっと持っていて、自分に返してくれたことは、嬉しかった。
諦めていたものを、彼は持ってきてくれた。
彼は、彼女に希望を運んでくれた。止まっていたものが動き出した瞬間だった。
硝子にとって、石田将也は特別な存在になっていった。
彼に対して好意を持ったことには、彼女自身も驚いた。
その理由は、話したくない。
希望を運ぶ。しかしそれは同時に周りを不幸にしていく自分を思い出させることでもあった。
不幸が重なり、彼と彼の友達の関係を壊したあの日、彼女はとうとう決断した。
決断して、準備を整えて、彼に助けられて、彼が落ちた。
自分が犯した罪の重さ、理解者と思えたカノジョからの叱責、壊れたものの修復。
そして、今いるこの場所で、彼は告白した。それはプロポーズではない。けど、将也が真の意味で彼女に謝罪し、彼女を理解した瞬間でもあった。
「しょおあくぅ」
長い言葉なんていらない。あやまちも、過去の彼も、過去の自分も、受け入れる。
そして、今ある彼のことが好きという気持ちは確かなもの。だから伝えられる。
彼に対する気持ちが、ぶわっと湧き上がってくる。
再会してから、その後、そして今。
「…………それぇも、わらひは、しょおあくぅのことぁ、ちゅき」
硝子は笑みを浮かべて、目の前の石田将也に向かってそう告げた。
◇◇◇
「………………」
静かな世界で、硝子はパッと目を開いた。彼女にとって、目を開けたらその時が朝の始まりであり、しかし今は外が暗く、朝にすらなっていない。
口の中に、睡眠後特有の苦味と将也から飛び出した粘液の苦さが広がっている。あの後、硝子は将也のモノを口に含んだり、胸で挟んだりと、たくさんの卑猥事を試した。その結果、体も口も汚れてしまっている。危うく彼を干からびさせるところだった。
「………………」
そして今、硝子は彼と向き合いながら眠っている。裸の彼の胸に顔を埋めるようにしながら、彼に抱かれて、同じ布団の中で眠っていた。
彼が寝息を立てる度に、埋めた胸が内側から膨らみ、縮む。
頭に心音が響く。
背中に彼の手が回されて、離さないようにしている。
いつの間にか解けた長髪に、彼の手が触れている。
まるで子どもを抱擁するような、なんて優しい抱き方なのだろうか。
「…………しょおあくぅ」
硝子は、今さっき見た夢がなんだったのか。呆然とする意識の中で考えた。
あれは、間違いなくあの橋の上で、そしてあの時の姿をしていた。
けれど、将也だけは何かが違っていた。
大人にも子どもにも見えていた彼は、一体なんだったのか。
もしかしたら、自分が将也のことを好きでいる事に対する影の部分、何処か踏み出せない潜んでいた彼への不信感が現れたものなのではないか。
今更になって、自分は何処かでまだ、将也と『そういう関係』になったことに不安を感じているのか。
「………………」
いや、もう大丈夫。あの夢を見ることは、おそらく無いだろう。答えをきちんと返したのだから。
「しょおあ」
硝子は目を閉じて、将也の背中に腕を回して、自分も抱き返した。抱き返して、胸の膨らみを押し付けて、目を閉じて、彼を感じる。
この先、どんな未来が待っているのか。
2人で美也子の店を継いで、一緒に理容室をやっていくのか。
それとも、彼と何処か他の場所でお店を開いて、2人でやっていくのか。
もしかして、別の道に進んで想像もできない未来へ行くのか。
「……ちゅき」
大丈夫。たとえどんな未来が待っていようと、硝子は彼とならどこまでも行ける。
どんな未来が来るのかな。明日はどんなことをしようかな。そんなワクワクとした気持ちを抱えながら、硝子は彼の胸の中で眠りについた。
死にたいという気持ちは、とっくの昔になくなっていた。
2人の関係って特別だけど、単に恋愛とかそういうのとは違って、もっと複雑で深いものだと思ってて、漫画を読む限りではくっつくとかそういうのにはならないだろうなと思った。良くて親友止まり。
あるとしても、何かしらのきっかけとか大きな転機とか、どちらかの家族の後押しとか、どちらかの熱烈な告白とかがないと発展しなさそう。
むしろ石田と植野が結ばれる方が全然可能性があると思った。それか結絃。
どっちかと結ばれたとしても西宮は普通に喜びそうだし、そっちの方がみんな仲良くやれてそう。
植野もようやく西宮と語り合える関係になれると思う。
ただ、2人が結ばれるのも見てみたいと思った。
経験を経た2人なら、そういうのももしかしたらあるんじゃないかと思った。あとくっついたらくっついたで何のかんのやっていけると思う。石田の場合は好きというより『西宮を支えたい』って思いが強そう。