オリ主(男子生徒)×既存キャラの組み合わせなので、苦手な方はご注意ください。
1年ぶりの二次創作なので、色々と変かもしれません。また、色々とツッコミどころもあると思います。
◇◇◇◇◇◇
その日、ヴァルキューレ警察学校生活安全局の事務所には、一時の平穏が訪れていた。
といっても、普段から多忙かと聞かれればそういうことはなく、日によってはむしろ暇を持て余している。生活安全局とはそういった部署であり、それ故に悪い奴らや不良からは完全に舐められている。が、それさえ気にしなければ、暇と平和を愛するものにとっては、まさに理想的な職場ともいえるのだ。
「くぁ……んー、よく寝た」
その暇を象徴するかのように、生活安全局一の怠け者こと、合歓垣フブキは目を覚ました。ヘイローを浮かべ、ゆっくりとデスクから頭を起こすと、「今日も平和だ〜」と両目を擦りながら大きな欠伸をかいた。
「面倒事もなく、何にも邪魔されず、ゆっくりとお昼寝できる。これこそ
腕を伸ばし、筋肉と骨をゆっくり鳴らす。そして幸せを味わうかのように顔を緩ませ、は〜っと息を吐いて赤い瞳で天井を仰いだ。
都市を震撼させるような大事件もなにもない、負担になるような面倒事も舞い込まない、汚職がどうと騒ぐ輩もいない、キヴォトス滅亡やら云々もない、これならゆっくりとお昼寝ができる。
彼女にとって、今この瞬間こそが理想としていたヴァルキューレライフといっても過言ではなかった。
「ねー、〇〇もそう思わない?」
フブキはデスクに突っ伏し、すぐ隣に座る『彼』に首を捻った。
──いつまでも現実逃避してないで、フブキも
そんな愚問に、彼は目の前の書類と向き合ったまま答えた。
彼のデスクには今、かなりの量の書類が積み重なっている。フブキが
「……もう少し寝てから」
──はいこれ。今日中に欲しいって。
眠そうに目をしょぼつかせるフブキの戯言を無視して、彼は先程幹部から回された書類の束を突き出した。
この生活安全局自体、民間の依頼から市民のお悩み相談まで、地域に密着した活動を主にしている。ある時はパトロールで街の安全を守らなければならないし、時には他の局からの要請に応じることもある。確かに他と比べれば忙しくはないし、大概は暇なのは事実であるが、少なくとも常に暇を持て余す時間はなく、昼寝なんてものは以ての外だ。
つまり何が言いたいのかと言うと、フブキの行為は立派な職務怠慢であり、単なる逃避なのだ。面倒事も何もないなんて、そんな日は1日たりともない。今日なんか特に忙しく、通報も苦情も鳴りまくりで、さらにはこうして書類業務に追われている。同じ局員のキリノは別件で外に出ているため、ここにはいない。そんな状況下で、彼はフブキがぐうたらぐうすかと怠けた分を、仕方なく肩代わりしているのだ。
「大体さぁ、〇〇は仕事を捌くのが下手すぎ。それなんか幾つかは他に回せただろうし、私みたいに工夫して適度に手を抜かなきゃ」
フブキは嫌々ながら書類を受け取り、自身のデスクの上に放り投げた。フブキの場合は手を抜きすぎだろ、と彼が言うと、「まーねー」と力の抜けた返事を返した。その手抜きのせいで今まで散々な目にあってきたというのに全くめげないのだから、最早一種の才能とも言える。
「ま、とりあえず」
フブキはのっそりと体を起こすと、脇に置いていた箱から丸いドーナツを2つ取り出し、「一旦、糖分とったら? もうそろそろ頭の電池、切れるころじゃない?」と彼に1つ差し出した。
──じゃ、遠慮なく。
彼はペンを置いて掌を軽く拭い、ドーナツを受け取った。久方ぶりの糖分に、無意識に口の中で唾液が湧く。
「あーむ……ん~、甘い」
頬を蕩けさせる彼女を追うように、彼もドーナツを1口齧った。ふわふわとした食感が口の中を包み、ストロベリーの甘酸っぱさが舌と鼻奥に広がった。
「ね? なにごとも無理なく、のーんびりとやってかなきゃ」
椅子の背に凭れながらドーナツをパクつくフブキに、相変わらずのんびりしすぎだな、と彼は数時間ぶりに表情を緩ませた。
フブキののんびりは今に始まったことじゃない。『昔からそうだったな』と毎度のように彼は思っている。そのおかげで救われることもあれば、とんでもないやらかしに巻き込まれることもある。
──でもまあ、のんびりもいいもんだな。
「そうそう、のんびりサイコ~」
フブキと〇〇。2人がこういった関係性を築いたのは、随分と前からだった。それこそヴァルキューレに入学する前からで、入学してからも、巻き添えで反省文を書かされたり、たまに停学になったりと、仲良くやっている。
付き合いが長い故に、お互いの良いところも悪いところも、面倒臭いところも把握している。だから、遠慮なく物も言えるのだ。
──けど、食べ終わったらちゃんと仕事してくれよ。
「えー、めんどくさー……」
そんなのもあって、二人の関係が本当はどんなものなのか、どういう進展をしているのか、知る者は一人もいない。同じ局員でさえも仲の良い相棒程度の認識で、その実態には気づいていない。
「ん? ぇ、警備局」
……と、穏やかな雰囲気を破るように一本の連絡が室内に響いた。やな予感、とフブキは顔を顰めた。
「はーい、こちら生活安全局……いやいや、間違いなく本物だよ。たっぷり扱かれたから反省して…………え? あー……それは、随分急な…………それ、うちじゃないと……交通とか公安に……公安は既に動いて…………え、うちの局長にはもう…………あ、はい……はーい」
フブキは天井を仰ぎ、そのまま落胆するように机に突っ伏した。
──なんだったんだ?
「幹部から、市街で張り込みの応援、別の事件で人員を割いてて、それで人手が足りないからこっちに協力要請、今すぐ出動……タイミング悪すぎ……暇じゃないときに限ってこうなんだよねぇ」
どうやらこれ以上の昼寝はお預けのようだ。
しゃーない、と彼は苦笑し、残りのドーナツを頬張ると、出動の準備を整えた。手錠と警棒とその他の装備を身につけ、支給品のライフルを片手に担ぐと、行くぞ、とフブキを促して一足先に席を立ち上がった。
「ぁ〜、めんどくさ、だるっ……まあ、命令違反の始末書とかもっとめんどうだし……行きますか」
フブキも怠そうに立ち上がり、ドーナツを齧りながらノソノソと彼の後ろに続いた。
◇
場所は変わって市街の端っこのどこか。
ここは不良生徒が屯ろして姦しく騒いでいるだとか、銃撃戦が激しいだとか、爆弾バンバン鳴りまくりとか、そういうあからさまな治安の悪さはない。カツアゲや脅しもないので、一見すればむしろ治安が良いように見えてしまう。
だが、裏を見れば集まる輩はどれも怪しい者ばかり。スーツや黒いサングラスを付けたドンっぽいやつ、まさに悪い輩の溜まり場ともいえる場所で、ヴァルキューレも特に警戒しているエリアだった。
幹部からの命令で、フブキと彼は現在、ターゲットと思しき集団が潜伏しているという雑居ビルの入口がよく見える場所で、一般車に偽装した警察車両で張り込みをしていた。なんでも、その組織は白昼堂々と犯罪行為をしているとかなんとかで、兎に角とっても悪い奴らだという。今日は奴らを捕まえるチャンスということで、生活安全局の彼らも協力に駆り出されたのだ。
「いい天気ー。強すぎず弱すぎず、車内で日向ぼっこするにはちょうどいい日差しだね」
辺りを暖暖と照らすお日様の穏やかな光をフロントガラス越しに浴びながら、フブキは目を細めてコーヒーを飲んだ。助手席のシートに腰を深く任せながら、真ん中に綺麗な穴の空いたまんまるドーナツを片手にのんびりと過ごしていた。連絡を受けた直後とは大違いだ。
「うん? 大丈夫大丈夫、2人で見張ってるんだから、見逃すことはないでしょ。それにほら、こうしてちゃんと車内で張り込んでるんだから、サボってるとは思われないって」
カラカラと笑うフブキを運転席の彼は横目で見、すぐに視線を戻してコーヒーを啜った。熱すぎないホットな味が舌に広がった。
「それにしても、まさかこんなところで、こんなに美味しいドーナッツにありつけるなんて。いやぁ、真面目に仕事するのもいいもんだ〜」
フブキが食べているこのドーナツは、ここへ来る途中に偶然見つけた屋台で購入したものだ。なんでも、マスタードーナツに並ぶと噂の有名ドーナツ店の出張販売らしく、それを見つけた瞬間、敏感なセンサーが反応したフブキは誘われるように屋台へと向かった。読み通り、ドーナツは絶品の部類であり、フブキにとっては思わぬ幸運だった。
──前の張り込みもこんな感じにサボってたのか?
訊かれたフブキはドーナツをもきゅもきゅと咀嚼しながら「先生と二人でね」と答えた。
あの日、彼は諸事情で休暇を取っており、彼女が先生を誘ってブラックマーケットまで足を運んだことは後になって聞かされた。ついでに張り込みは口実で、実はドーナツを食べることが目的(?)だったのも苦笑しながら聞かされた。
「別にサボってたわけじゃないよ。ちゃんと警察官としての仕事は真っ当したわけだし、ドーナッツはそのお供。よく言うじゃん、張り込みにはあんぱんと牛乳、それとおんなじ、張り込みにはドーナッツとコーヒー。糖分で頭を働かせて、カフェインで眠気を覚ます、まさに張り込みの必須アイテムでしょ」
分かるような分からないような理論を捏ねるフブキに、まあいつものことか、と彼は言い、ヘッドレストに後頭部を預けた。ぎゅっと目をつぶって開き、眉間を指でほぐす。自分もフブキのようにどんな状況でも楽しめるようになりたいと、顳かみを押し揉みながら呟いた。
「ほら、〇〇もドーナッツ食べれば? コーヒーだけじゃ口寂しいでしょ?」
そう言ってフブキは袋からドーナツを1つ取り出し、彼に差し出した。
なんとも歪で奇怪なそれは、色からして果たしてドーナツと名乗ってもいいものかどうかも怪しい。なんでもここ最近発売された新作らしく、とある美食団体からお墨付きを貰ったとかなんとか。ただ傾向的にはかなりゲテモノな部類で、なにか勘違いを起こして魔改造方面に走ってしまったような、これが本当に人気なのかと疑うような代物だった。唯一、中心に空けられた穴が辛うじてドーナツというアイデンティティを保っていた。
当然ながら、フブキはドン引いた。なんでこれが流行るのか、そもそもこれをドーナッツと呼んでいいのかと疑問に思った。しかし同時に、先生も口を抑えたあの大きいキュウリドーナッツを美味そうに何個も食べていた〇〇ならもしかしたらと思い、試しに1つだけ購入したのだ。
彼はドーナツを受け取り、一口食べてみる。「どお?」と訊かれ、結構イケる、と返し、美味そうに食べ進めた。咀嚼の度にドーナツらしからぬ音が聞こえた。
「昔からそう言うゲテ……変わった料理、結構好きだったもんね。買っといて正解だったよ」
フブキは半ば感心したように呟き、ドーナツを1口齧った。
張り込みからしばらくの時間が経ったが、犯人は未だ外に出ておらず、動きも見られない。
ドーナツとコーヒーをツマミに、フブキと彼は適当な話題で時間を潰した。犯人の特徴は小さいおじさんみたいなワンワンだとか、取り巻きが4人いてみんな真っ黒なスーツを着てるとか、公安局長のアイドル衣装姿の写真が裏取引きされてるらしいとか、その写真を先生が買って本人から締めあげられたとか、そんな話をした。
だが、やはり一向に奴らは出てこない。
彼は寝落ちしないようにコーヒーをチビチビと飲んで眠気を覚ます。苦さの中に辛さのようなものが混じっている気がした。
「そーいえば」
隣で寝息を立てていたフブキが突然、何かを思い出したかのように口を開いた。
「キリノ、この前シャーレの当番から戻ってきたとき、すごい照れてた」
キリノが? と彼は首を傾げた。
「なんか、もう顔真っ赤で、試しに何があったのって聞いたら、『私は警察官として恥ずべき行為を』って……どう?」
──先生と何かあったな、それ。
「だろうね。まぁ、最近のキリノって、先生のことになるとちょっとおかしいっていうか、あからさまに動揺してることが多いんだ。まったく、なにがあったのやら……」
──あの子も先生のこと、かなり慕ってるからな。
笑いながら、彼はゆっくりと肩を解した。
先生は、このキヴォトスの外からやって来た人間である。そして、徹底して生徒の味方をしようとする大人でもある。ときに身体を張って皆を導き、寄り添い、守ろうとするその姿に、数多くの生徒が救われた。
それもあって、生徒の多くは先生のことを慕っており、中には惚の字な者もいる。それこそ、各学園に1人はいると言ってもいい。
「〇〇は、どう思う?」
──どう思うって?
「あーやって先生が色んな女の子から慕われてるの、嫉妬したりする?」
──嫉妬? なんで?
「男の子って、そういう生き物だってラジオで言ってたから、〇〇もそう思うのかなーって、ちょっと気になっただけ」
フブキの言葉に彼はそれはない、と返し、むしろこっちはあの人が心配だ、と繋げた。
「心配?」
──あの人は、先生として自分達生徒のことを守ろうとする。最初は胡散臭がったけど、今は違うし、これまで何度もキヴォトスを救ってくれたし、感謝してる。
──ただ、それはそれとして変なところで子どもだし、変態だし、凡ミスするし、無茶するし、人たらしだし、脆い体なのにたまに冗談みたいな洒落にならないミスをして死にかける。嫌いではないし寧ろ好いているけど、そういう抜けたところはどうにかして欲しいし、そうそう放っておけない。
──もういっその事誰かに常に面倒を見てもらってもいい気がするな。自分は流石にそんなことはできないけど、それでもできることをしてあげたいと思ってる。
「……〇〇って、ホント先生のこと、好きだね」
半ば呆れるフブキの指摘に彼は肩を竦め、自分なりにあの人の手助けをしたいだけだ、と言った。
しかし彼が重い感情を向けるのも仕方がない。皆と同じで、彼にとっても先生は警戒心なく信頼できる人だった。初めて出会った時はあんなに警戒してたのに、今ではこの有様だ。彼の方こそ、実は惚の字なのかもしれない。
「ま、私も先生のことは好きかなぁ。いつも頼りになるし、なんのかんの言ってサボりに付き合ってくれるしね〜」
フブキは答え、ドーナツを頬張る。彼もホワイトチョコレートのオールドファッションを齧った。
「でもなぁ……」
──?
「目の前の『
フブキの言葉に、彼は思わず噛んでいた塊を飲み込み、喉に詰まらせた。拳で強く胸を叩いても微動だにせず、コーヒーで一気に流し込み、やっとの事で食道から胃へと滑り落とす。詰まった感覚が下って落ち着いたところで、彼は一息吐いてようやくフブキに目を向けた。
表情はいつもと変わらない……ように思われるが、彼にはどこか怒っているような、拗ねているように見えた。
──……どうした?
恐る恐る彼が訊ねるが、フブキは「べつにー」と素っ気ない口調で返すだけで、視線は外に向けている。あからさまに彼と目を合わせないようにしていた。
「……この前のパトロール」
しばらくの沈黙を挟んで、フブキは口を開いた。
「終わったら、一緒にドーナッツの美味しいお店に行こうって約束したの、覚えてる?」
──そういえば、確か。
「それで、いざ行こうってなったときに、〇〇、先生が困ってるらしいから今日は無理って、ドタキャンして行っちゃったじゃん?」
確かあのときは、先生からモモトークで『もし手が空いてるなら手伝ってくれないかな?』とメッセージが来た。それでこういう場合の先生は大体ピンチでかなりやばい状況だと彼は思い、フブキに一言伝えてあの人の許へ走ったのだ。実際かなり危うかったので、駆けつけたのは正しい判断だった。正しかった、しかし……。
「結局お店には行けてないし、行く約束もできてないし……それどころか、今の今まで絶対忘れてたでしょ?」
──ごめん。
フブキの怒りをようやく理解した彼は頭を下げた。が、「それだけじゃない」とフブキが続けた。
「最近、先生のとこばっか行って、全然一緒に出かけてないし、夜も相手してくれないし……それっておかしくない?」
フブキの問に彼は言葉を詰まらせる。
確かに思い返せば、ここ最近はずっと先生のことばかりを考えていた。
先生に頼ってもらえるのが嬉しくて、ついあの人を優先してしまっていた。
「めんどくさいことは言いたくないし、〇〇が先生を慕ってるのは分かるけど…………私だって、ほったらかしにされたら、寂しいに決まってるじゃん」
最後の方になるとセリフが尻窄んだ。
今、フブキは本気で落ち込んでいる。
こんな姿は彼がいる時ぐらいしか見せないし、普段から早々見せることはない。
彼は、フブキを放置しすぎたのだ。
普段と変わらずのんびりしていると、彼女の傷にも気づかず、勝手に都合よく解釈してしまったのだ。
──……ごめん。
再度、沈鬱な面持ちで謝った。
フブキは顔を逸らしたまま、ドーナツを片手に窓の外を見るともなく見続ける。
食べ終えると、そのまま背もたれに深く身を任せ、彼に見られないよう帽子で顔を被った。
気まずい沈黙が車内を包む。
外の騒音や何処かから聞こえる犬の鳴き声が微かに届く。
内側では、彼とフブキの呼吸だけが空気を伝う。
吐いた息は外へ逃げることもできず、車内の天井に張り付くように彷徨う。
張り込みとはまた違った緊張感と気まずさが2人の間に漂う。
『そういう関係』を持つ男女特有の、喧嘩したときのそういう雰囲気が重くのしかかる。
「……ドーナッツ」
沈黙を破り、フブキが口を開いた。
「マスタードーナッツの、新発売の高級グレーズド、1箱分奢ってくれたら、水に流してあげる」
彼が分かった、と答えると、彼女はようやく帽子を取って彼を見た。いつもの眠そうな顔を浮かべていた。
また時間が経った。
フブキは視線を前に向け、フロントガラス越しに見えた物に「あっ」と声を洩らした。
どうしたんだ、と彼は聞こうとしたが、ビルの出入口を見た瞬間に彼も目を瞠った。
出入口付近に、真っ黒なスーツを着た如何にもあやしそうなロボット型が4人、辺りを注意深く見ている。
そしてビルからぬっと抜けるように、ボスらしき人物が出てきた。短い手足に柔らかそうな肉球、上半身のスーツと目許を覆う黒いサングラス、いかにもな格好のその臀部からは、柴犬のくるんとしたキュートな尻尾が伸びていた。
「……当たった」
嘘から出たまこと。
唖然とするフブキを横に、集団は出入口近くに停車した高級車へと乗り込む。
状況を確認しながら、彼は早速幹部生徒に報告した。奴らの行動その他を逐一報告し、幹部からの質問にも応答した。
そして奴らを乗せた高級車が広い車道へ出たタイミングで、機器越しに幹部生徒が告げた。
『ご苦労だった。あとはこちらに任せろ。君達は本部に戻っていいぞ』
ぷつっ、と通信が切れる。
フブキはふうっと吐息して「よっしゃ終わったぁ、さっさと帰ろー」と元々抜いていた肩の力をさらに抜いた。
彼も一息ついて体を伸ばした。解放感からか、今まで溜まった疲労を吐き出すように大きく深い欠伸をかいた。
ようやく帰れる、あとは戻ってあの大量の仕事を片付けるだけだ。いや、その前にフブキに謝罪のドーナツを奢らなければ。あと、ちゃんと謝らないと。お店の約束も。
「ん?」
と、リラックスしているところに、2人の端末にメッセージが届いた。フブキは画面を見た瞬間、「あー、これはまた」と苦笑した。
どうした? と訊きながら、彼も自身の端末でメッセージを確認し、その内容に思わずフブキと同じような声を上げた。
メッセージを送ったのは、今日シャーレの当番だった局の仲間だった。どうやら当番中に大変なことになったようで、フブキ達に助けを求めたようだ。
どうしようか、と言う前に、新しいメッセージが来た。どうやら一仕事終えたキリノが、近くにいるからと向かってくれるらしい。
──俺たちはこのまま戻ろうか。
「……あのさ」
不意にフブキは身動いで顔を近づけ、彼の耳許で鼓膜にベタっと貼り付くような粘っとした声色で囁いた。
「今日、そっちに行くけど……いいよね?」
──分かった。
頷き返すと、フブキは「はいっ」と食べかけのドーナツの欠片を彼の口許へ運んだ。彼はそのまま頬張り、ゆっくりと咀嚼する。ドーナツの甘みとフブキのぬるい唾液の苦味が舌の上に広がった。
「なんなら、今ここでやってもいいけど……やる?」
悪魔の囁きのような誘いに、彼は一瞬逡巡とし、すぐに被りを振った。フブキは残念がる素振りも見せず、ただ「そう」とだけ返して姿勢を戻し、コーヒーをストローで啜った。
彼は体を起こし、車のエンジンを入れようと手を伸ばした。
が、その前に体がシートに引き戻され背中を軽く打った。引き戻されたというよりは、体重を掛けられて座席に押し戻された。
突然のことに頭の中が一瞬真っ白になる。そしてなにが起きたのか把握する前に、眼前が青色に覆われた。
固まった表情と心を緩めてくれるような、いつも隣で嗅ぎなれているほんのりとした香りが鼻腔を満たす。その一方で、塞がれた口の中には冷たく苦いものが流し込まれている。歯と歯の間に舌先が差し込まれ、コーヒー特有の舌を痺れさせるような酸味が注入されていく。
「んっ、んっ……」
フブキの喉に合わせて彼の喉も鳴る。唾液の混じった黒い液体が食道を通って胃の中へ、口の中に残っていたドーナツごと洗い流すように落ちていく。
コーヒーを移し終えるとフブキは唇を離し、至近距離で彼を見た。睫毛が震え、細めた眼の中の瞳が彼を捉える。舌先同士を繋ぐ褐色混じりの糸が切れてから、
「今日は約束、破んないでね」
と、いつになく強い口調をぶつけた。
──ああ。
彼が放心するように返すと、フブキは口許を拭ってシートに座り直し、「それじゃあ、ドーナッツ買って帰ろっか~」と普段と変わらぬ口調で言った。
──今夜はすっからかんだな。
胸の内で独り言を零しながら、彼はフロントガラス越しに見えるキヴォトスの空を呆然と眺めた。彼のことなんか知ったこっちゃないと言わんばかりに、この世界の空は今日も青々と透き通っていた。
◇◇◇
『キヴォトス』において、ヘイローを有する生徒として存在するのは女子のみである。
何故そうなのか、如何なる理由があってヘイロー持ちの男子生徒がいないのか、そもそも人間型の男子または男性は存在するのかしないのか、実際は男子生徒が存在していて単に描写されてないだけなのか、先生の性別はどっちなのか、それはこの世界を構築した神のみぞ知る禁忌なので、ここでは説明することも語ることもできない。
少なくとも、この物語のキヴォトスでは、人間型の男子生徒は存在しない。そのはずだった。
しかしそんな中、
それが彼、〇〇である。
他の生徒達と同様、頭上に独特の形をしたヘイローを有しており、姿形は紛れもなく人間のものであった。生物学的にも男性で間違いなく、身体構造等々含め、一般のキヴォトスの生徒達とは明らかに異なっていた。
そんな彼は、皆と同じように学園に通い、ヴァルキューレの生徒として、仲間達と共に無理のない程度に日々の業務と適度な治安維持活動に勤しんでいる。
「……ん、すぅ…………」
深夜、ヴァルキューレ生徒寮にある〇〇の部屋の中で、行為を終えたフブキは小さく寝息を立てて眠っていた。首や鎖骨辺りには赤いキスマークがいくつもある。髪留めの着けてない2色の鮮やかな長髪はしっとりと濡れている。小柄な裸体は艶やかに潤い、呼吸に合わせて肩が上下した。
横臥するフブキと向き合うようにして、彼は女体を見つめた。というよりは、腕を枕替わりにされているのでこうせざるを得ない。ちょっと痺れてきている。しかしフブキの淫靡な姿を拝められるのだから、不満はない。
……それにしても、今日のフブキは激しかった。
お預け状態だったのもあるだろうが、まるで発情した獣のように、フブキは彼を貪り食おうとし、彼もフブキを貪り返した。
部屋に招いて早々に、フブキはがっついた。怒ってるとは思えないほどにデレデレで、何度も胸に顔を埋めては軽く頭突きをし、可愛い恨み節に乗せて放置したことを責めた。責めるというよりは甘えていた。
キスをすればお互いの舌はひとりでに動き、唾液を絡め合った。彼女の細い舌は彼の厚い舌に絡め取られ、唇の熱を重ねて粘ついた銀糸を伸ばしあった。どちらが堕ちるか、唇が唾液でベトベトになるまで鍔迫り合い、舌を吸いあった。
フブキの胸に顔を埋めると、乳頭は固くしこり、汗という名の仄かに甘い汁を吹き出した。前戯の指使いもあって、フブキは呻き小股を悶えさせ、膣の入口から愛液を溢れさせた。
仁王立ちする彼の腰を抱きながら、フブキは無我夢中で逸物を啖い、頭を激しく前後に揺らした。口いっぱいに広げなければ入らず、咽の奥まで呑み込んだ。
そして炸裂したその瞬間も、ひたすら放たれたザーメンを飲み続けた。口の隙間から溢れようが、鼻の穴に逆流しようが、ただ赤い瞳を爛々と輝かせながら、咽奥を開いて豪快に胃の中へ落としていった。引き抜いたあとは口全体が精液にまみれ、唇や舌先から糸を引いて滴った。奥はドロドロな白色に支配され、フブキは舌肉で必死に掻き混ぜていた。
終いには、久方ぶりに裸体と裸体をぶつけ合った。
セックスにおいてフブキは受けであり、彼に翻弄されることを好んだ。
じゅぶっ、じゅぶっ、ぱん、ぱん、ぱんっ!
『おっ、ぉ゙……おっ、あ゙っ♥あ゙〜♥』
逸物と肉壺が擦れ合う卑猥音を奏で、肌と肌が衝突し皮膚を波打たせる乾いた音。次第に湿り気を帯び始めるなか、フブキは普段は聞かないような雌声で喘ぎ、秘部から透明な愛液を垂らしてベッドシーツにシミを溜め込んだ。
バックでやれば、フブキはひたすら喘いで恥骨がゴツゴツとぶつかる痛みと快感を味わった。枕やシーツに顔を埋めながら這いつくばり、手首を掴んで叩きつければ狂い悶えながら『おぅ♥おゔ♥』と喘いだ。
立ってやれば、足をプラプラと宙に浮かせて涎を床に撒き散らした。
抱きしめながらやれば、フブキは手脚を彼の背に回してしがみつき、突き上げる快楽を受け入れた。
使用済みのゴムを結んではすぐに放り投げ、次のものをつけてすぐさま突き上げ、単純な行動をひたすら繰り返した。おかげで部屋には白濁色の水を貯めた生臭い水風船と丸めたティッシュが散乱している。
そして今、数戦を終えた2人はこうして寄り添い寝ていた。久しぶりだったためか、いつも以上に長時間、しかも何度絶頂したしさせたのか忘れるくらいに交わりあった。おかげ様で室内の空気は生臭さと酸っぱさで歪んでいる。この匂いのキツさの分だけ、2人は性を謳歌したことになるのだ。
「……んー……あ、〇〇……そっかぁ、起きちゃったんだ」
じっと見つめていると、フブキの閉じられていた瞼が開き、彼を捉えた。寝ぼけ眼が捉えてそうそうに、ぽけっとした表情が浮かぶ。
「今何時〜……あー、もうそんな時間かぁ……」
ふわぁ、とフブキは大きく欠伸をかいた。彼女の生温い吐息がすぐ間近の彼の顔を覆う。その匂いに釣られるように、彼はフブキの額にキスをした。頭頂から跳ねた髪の毛が鼻先を擽り、良い香りで鼻腔を擽った。
「久々にやったけど……やっぱセックスって、きもちーけど、だるい……」
彼の首元に鼻先を押し付けながら、フブキは気怠そうに彼の汗を舐めた。塩辛く苦い味が舌肉を突いた。
「でも……やっぱり、やるとスッキリする。ドーナッツのカロリー、一気に使ったかも」
頭を僅かに引いてフブキの表情を窺う。上目遣いな赤い双眸を向けつつ、柔らかな微笑みを浮かべていた。
艷やかで、卵のようにつるりとした肌。平面に宿るほんの少しの膨らみが、微かな谷間を造り上げる。
そんなフブキの姿を見て、使い尽くしたはずの彼の分身は硬く漲った。血液を滾らせて感情を昂らせ、潜り合うタオルケットの中でフブキの腹部を強く押した。
「ん? また元気になった……〇〇、相変わらずゼツリンすぎ」
フブキは悪戯に丸い頬に皺を作ると、片腕をタオルケットの中へと潜らせ、腹部に貼り着く逸物を撫でた。
小さく細い指が、乾いた表面を擽るように愛撫する。浮き出た血管に沿って爪でなぞり、ときに陰毛に指を埋めた。
──フブキは、まだ大丈夫なのか。
「うーん、正直眠いし、だるいから、寝たいけど、まだちょっと物足りない気もする……誰かさんにずっと放ったらかしにされたせいだろうねぇ」
彼が苦笑して謝っても、意地悪なフブキの指使いは止まらない。気持ち良いが決して絶頂に至るような刺激は与えない、意地悪な扱きを与えている。
彼も空いた手を同じように潜らせると、彼女の割れ目にそっと触れた。
フブキは「んっ♥」と目を細めて眉間に皺を寄せた。
彼はそのまま指を使い、秘裂を愛撫していく。びらびらとしたものが時折爪に引っかかり、カリカリと優しく引っ掻く。
「ん、んっ♥……ふぅ……ぁ……そこ……ぉ♥」
フブキのものよりも大きな手と指が、閉じる腿に隠れる唇の裂け目に入り込み、膣穴の中を掻き回す。
小さい女体の秘口は、条件反射のように瞬時にきゅっと閉じ、中指の関節を咥えると、そのまま飲み込もうと微かな蠕動運動を繰り返す。その吸い付きは、赤子が母親の母乳に吸い付くような感覚に似ていた。
「んっ、ちょっと、くすぐったいよぉ……♥」
フブキは肉棒を擦り続ける。亀頭から溢れた先走り汁を指腹で絡め取り、肉茎の周りに塗りたくる。
彼もフブキの陰核を攻める。爪の先でカリカリと引っ掛け削りつつ、たまに摘んで潰すと、「ぁぅ♥」と抑えた悲鳴が聞こえた。
ぐっ、と彼が壁の肉に指を押し込む。
フブキが呻きを零した。
指を引き抜き、フブキの目の前に粘液に濡れた自身の先を見せる。酸味の強い粘ついた愛液に、白く泡立つ恥垢がまとわりついていた。
「……ぁむ♥」
そして惹かれるように、フブキは指を咥えた。ちゅぱちゅぱ、ちゅうちゅうと、唇を尖らせて吸い付きながら、舌で指の腹を畝り取る。酸味と垢の苦味を唾液に溶かした。
彼は吸われながら口腔を探り、くちゅくちゅと掻き混ぜる。「え、ぉ♥」「ぁえっ♥」とフブキは嗚咽に似た喘ぎを洩らし、目端に涙を浮かべた。白く汚れのない歯と赤い歯茎がアウアウと微動し、口端から涎を垂らす。
同時に逸物を撫でる彼女の指先の動きも速まり、握る力も強くなる。硬い陰部の凹凸が掌全体に伝わり、先端からさらに我慢汁が溢れ出した。
「へぁ、ぁ……♥」
熱気をそのままに、彼は肢体を動かしてフブキを仰向けにさせ、覆い被さった。腕枕を引き抜き、その手で脇腹辺りを探る。体のラインに合わせて指を走らせ、べたつく肌をゾクゾクとさせた。
「ぁ、あっ……♥」
小さな手が肉棒から離れる。代わりに肉棒は圧迫する姿勢でフブキの腹部を押した。
この裏側には、彼女の体を守るために薄く蓄えられた黄色い脂肪の奥には、フブキの小さな子宮が、何度も突き上げた臓器が埋まっている。そう思うだけで腰の揺れは興奮度を増していき、腹の上に裏筋を擦り付ける。
「あ、は、ぁ、ぉ♥ま、おは……つふれ……ぅ♥」
ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、と亀頭が腹を圧迫する度にフブキは声を上げた。時折臍の孔を突くと、股間部にビリつくような刺激が迸り、喉で呻いた。外から内臓に圧をかけられる苦しみと、敏感な箇所を的確に押し潰す快感、その両方が子宮を襲い、激しい疼きを生み出しているのだ。
剛直で灼熱のような熱さを保つ逸物は、フブキの小柄な体にとっては凶器を突きつけられたようなものだ。だが、決して自分を傷つけるためのものではないこと、自分に快を与えてくれるものだと理解してしまえば、不安に思うことはない。
「あぇっ♥」
口から指を引き抜く。多量の唾液が口と指先で糸を引くのを見ながら、彼は両手でフブキの体を探り、舌先で首元を舐めた。甘みの目立つ汗が肌にじわりと染み出しており、弄るとすぐに舌肉にまとわりついた。
舌をそのままに、体を後退させていく。乳首、鳩尾、臍と順番に唾液の跡を残していく。敏感な箇所をザラザラな舌肉でこそぎ落とすように舐め上げ、ベトベトに濡らしていく。「ひぅ、あ♥」「はぁ、ぁぁ♥」と弾む声がフブキから上がると、彼女の下半身もまたビクンと弾んだ。
やがて、彼の頭はフブキの足の間へと移る。タオルケットを後ろへ払い、フブキの細い足を開脚させ、目の前に聳える女性の性器を目視した。
淡い色に染まる小ぶりな大陰唇の周りには、髪の毛と同じ色の陰毛が茂みを作っている。陰毛は2人の体液で濡れ濡れに潤っていて、先の行為で出た泡状の垢がこびりついている。
彼は両手で肉弁に触れ、左右から裂け目を開いた。
開いた花弁の奥で、赤みがかったフブキの性器が姿を現し、小さな女口が小刻みに開閉を繰り返していた。ヒクヒクヒクヒクと、愛液をとろりと垂らす。尿道口付近からは白く濁った体液を分泌させている。試しに指先で陰核を刺激すると、「ひぅっ♥」という悲鳴とともにラブジュースが溢れ出した。
「も〜、そんなに焦らさないでよ〜♥」
フブキはなかなか入れようとしない彼に不満を垂れるが、その表情は恍惚としきった悦びに満ちていた。
赤く紅潮した頬は蕩け、目許はとろんと溶けている。
皺のある膣口を窄ませて、早く欲しいとお強請りをしている。
勃起は絶えない。フブキの小ぶりな乳頭は充血して固く隆起している、陰核は皮からはみ出してプリプリとした身を赤く染めている。いつでも受け入れる準備はできているようだ。
彼は上目遣いでフブキを見据える。彼女は媚びをたっぷりと含んだ眼差しを向けたまま、へらりと笑った。
「いいよ、ゴム無しで……やろ?」
淫蕩に浸るフブキの姿に、逸物は血管を筋ばしる。一気に血液が流れ、更に充血して肥大し、剛直さを増した。
彼は肉貝に亀頭を当てがい、ヒクつく膣口を撫でる。
指で突くようにつんつんと優しく啄き、たっぷりと蜜を染み出させる。
くちゅり、という音を鳴らして溢れたものを、掌で軽く胴体に塗りつける。
一気に、ゆっくりじゃなくて、一気に、やって。
鈴口を擽る孔がそう訴えている。
淫らに笑うフブキの目がそう求めている。
自分の情欲がそうしたいと雄叫びを上げている。
…………ずぶんっ!
勢いよく、彼女の中を力強く分身で穿った。
狭い戸口が、侵入した亀頭によってドーナツの輪のように一瞬で大きく開かれ、そのまま固い胴体部分がフブキの女芯を貫いた。
「おおおぉ゙ぉぉ゙♥♥!?!?」
穿った瞬間、フブキの股間部がベッドから飛び上がった。激痛と快感が入り交じって襲い掛かり、脳の中で光が弾ける。目を限界まで瞠り、白い部分を剥き出しにしながら背中を仰け反らせて本能のままに叫びを上げた。
ぷしゅうぅぅ♡♡
小さな噴射音とともに、秘部からイキ潮が飛び出す。
絶頂を主張するかのように、彼の肉茎を乳白色で汚した。
ゴムのない、生でしか味わえない感覚。有るのと無いとじゃ大差ないというが、そうではない。0.01mmの壁を無くしたことで、蜜壷に無数に生える肉襞の細かな先端の繊細な動きを感じ取れる。入り込めなかった隙間という隙間をチロチロと舐めている。肉が溶かされてしまいそうな生温さを保ったまま、肉の無花果は肉茎を根元から吸い上げる。
「あ、す……ごいっ……ぃぃ♥」
体を小刻みに顫わせながら、フブキは脳天に突き刺さる快楽に陶酔の表情を浮かべた。
初夜以来、ゴム越しでしか味わえなかった肉茎の熱、皮の形、浮き出た血管、生の感触。それら全てが自分の膣内に収まり刺激しているという事実。
快感に耽った吐息が喉を迫り上がり、湿り気を帯びてだらんと開かれた口から洩れ出した。胸元が激しく上下し、艶やかな肌に再び汗が吹き出し始める。玉のような汗が額から伝い落ちる。
「……へへ、固いっ♥」
フブキは左手で自分の腹部に触れる。
細く脂肪の少ない腹越しでも、逸物の硬さと大きさを感じ取れる。
初めて入れたときは、あまりの狭さに激痛が走って大変だったのに。腹が突き破るんじゃないかと錯覚するくらいに怖かったのに。このまま死ぬんじゃないかと恐怖するくらいに体が顫えたのに。
でも、同時にひとつになれた嬉しさもあった。そして回数を重ねていくうちに、狭隘なフブキの中は柔軟になっていった。
彼女の小柄な体は、兇悪な雄を受け入れてしまうほどに調教されてしまったのだ。
……ぐちゅっ! ぐちゅっ! ぐちゅっ!
「ひ、ぐぅぅ♥んぁ、あぁっ! ぁ゙、お゙♥」
痙攣するフブキをそのままに、彼は腰を前後に揺さぶっていく。
膣壁全体が自らを絞り、侵入してきた雄を無数の襞達で絡みつき、搾り上げる。結合部から愛液を垂れ流しにしながら、大きな水音を鳴らして2人の体が衝突し合う。
「お゙っ、ぉ、あ゙!? しゅごっ、いぃん゙っ♥んおぉ、あぁ♥あぁ、ぁうっ、い、ア……っ゙♥」
悲鳴に近い嬌声を吐き出しながら、フブキは彼の動きに身を任せた。
荒い息使いとともに、激しく腰を振るう。
始めの頃のような初々しい慎重さはなく、お前は俺の女だと主張するかのような独占欲に塗れた獰猛な荒々しさが滲み出ている。
その証を刻もうと、肉茎は蜜壷を擦り上げて媚肉を刮ぎ取る。
「あぇ、っ゙、いぐぅっ♥ぉ゙、ぉぉ゙〜、ぉ、ぉゔ♥」
フブキはこの黒い逸物に体を貫かれた。
処女膜を破かれ、血を流し、未開通だった肉穴を押し解された。
痛みに全身が顫えた。
1つになれたという事実に心が昂った。
そして幾度も、幾度も、黒く煤けた獣はその身をゴムに包み、フブキの純潔に傷痕をつけ続けた。
しかし、それはあくまでゴム越しでしかない。ゴム越しでは隔てる壁の異物感が拭えない。愛液は常に潤滑油と混合するだげで、本物の愛蜜にはなれない。傷痕も結局は偽物も同然であり、絶頂による満足感はあっても、真に求めているものとは程遠かった。
だからこそ今夜、こうして隔てる物なく繋がっていることに、フブキも彼も歓喜していた。こうして実際に肉同士が擦れ合い、熱を分け合い、蜜を掛け合わせながら、本物の傷を刻み合うことに、芯が破裂する快を覚えた。
だぽっ♡だぽっ♡だぽっ♡だぽっ♡
「お、ぁ、あぁ〜♥は、あぅ、そ、そこ、いいっ♥いいっ♥ぅあ゙っ! あっ! は、ぁあ♥あ、ぅあ゙っ! ぁあ♥」
前後に擦るのに合わせて、肉壺の中は弛緩と収縮を使い分ける。
膣穴は隙間なく、動作の度に根元から胴体にかけて常にキツく搾り取る。
まるで貫通したばかりの、破瓜したてのヴァギナのような締まり具合を保っている。
彼のモノを味わってきたフブキの女性器は、最早彼専用の穴と化していた。彼に開発されたといえばそうともいえるし、彼女が彼のモノを、そして自分を満足させるために覚えたともいえる。
「ひ、ぐぅぅ! ぅ、ン゙っ! だ、それ、だっ、やらっ、めぇ♥」
彼は体を前に倒し、フブキに覆い被さる姿勢を取った。細い脚が持ち上がり、下半身がより密着し合い、亀頭が膣天井を深い鰓で擦り上げる。特に敏感な箇所を刺激しているようで、フブキは口蓋垂を震わせて喘いだ。
「や、やめっ♥らめっ、ら゙めぇっ゙♥ぉぉ゙!?」
やめろ、というのは建前で、もっと、というのが本音だった。人間、許容を超えた快感を味わえばその恐怖から否定が先走る。しかし本当は味わいたくて、今のフブキも結局は両脚で彼の体を挟んでしまっている。
ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡
「ぃ、お、おぉ゙♥おおぉ゙っ♥っ、! んおっ゙っ゙♥」
フブキの胸部に実る薄桃色の乳暈と固い峰先が、体の揺れに合わせて乱れ狂う。
全くないわけではなく、ほんのりと控えめだが確かに実っていた乳房は、少しずつ、しかし確実に膨らみを増している。セックスを重ねていく度に、フブキは少女から女性的な身体へと肉体を変化させていた。
ずちゅっ♡ぬちゅっ♡ずちゅっ♡ずちゅんっ♡
「あ、あぁっ♥、っ、あ、ア、っ゙、っ!!! っ゙♥」
目下で揺れる誘惑に誘われるように、彼は体を折り、顔を近づけ、だらだらと涎を垂らす唇を左の峰先に押し付けた。
乳暈ごと口の中に含み、じゅるるっ! という卑猥な音を立てながら吸い込む。さっきまでの行為で沁み出した汗のほんのりとした甘みが、口を、鼻腔を、食道にかけて満たしていく。固くしこる乳首を舌先で屠る度に、フブキは喉の裏辺りから「んんっ♥」という小さな声を洩らした。
左、右と味わい、それぞれを強く噛む。千切るつもりはなく、しかししっかりと歯型を残す勢いで歯を立てて啖う。
「あ、ちょ、いた……ち、乳首、ちぎ……っ! ぉ゙ぉ゙ぅ゙♥」
痛みに顔を歪ませ、しかし快にも浸り、2つの表情が入り交じり、フブキは自分自身の表情を見失う。いや、実際は見失ったわけではない。2つの表情が入り交じることで、新たな彼女の顔が生み出されているのだ。
「ふ、ぁ、っん、お♥ぉ、ぉ、ぁ゙♥…………あぐぅ──っ゙!?!!?」
動作の勢いのままに、彼は下半身をフブキの下半身に力強く叩きつけた。
刹那、赤黒く膨らんだ亀頭が子宮の入口の顎を押し潰した。
性感帯の中でも特に過敏で早々触れられることのない箇所。フブキはしかし、そこをゴム越しで何度も何度も突かれてきた。その甲斐あって、またはそのせいもあって、彼女の子宮口はどの箇所の中でも一番の敏感さを有していた。
そして今、その場所を、熱を帯びた肉頭に突き上げられた。どろどろと火照った子宮に、勃起した胸先に、性を育む全身に、快を孕んだ振動が伝播する。
その快感が如何程のものなのか、どれ程の悦びを身体が味わっているのか、それは言葉では言い表せず、フブキにしか分からない。
────ぷしゅ…………ぷしゅうぅぅぅ♡♡♡
フブキは目を瞠り、体を思い切り弓なりにさせた。
秘部からイキ潮が噴き出し、自身と彼の体を濡らす。一眠りする前に散々絶頂したというのに、その量はかなりのモノだ。
「っ゙っ゙っ゙♥…………!!」
背で曲線を描いたまま痙攣は続く。
蜜壷は一気に狭窄し、彼を根元から引きずり込もうと波を打つ。
その快感に彼も思わず呻き軽い絶頂を迎える。射精はせず、鰓辺りが脈を打って尿道の途中で抜けていくような小さな快感が走る。
だが、逸物自体の硬さは保たれたままで膣肉を圧迫し続ける。
「…………ぉ゙……♥……ぃ…………くぅ……っ♥」
フブキの体がベッドに沈み、彼は乳房から口を離した。
べしょべしょに濡れた両房には赤い噛み跡が残り、ぬらぬらとてかっている。唾液の中の小さな無数の泡が音もなく弾ける。彼の目下には、半目を剥いたフブキが弱々しい息を吐いていた。
──ごめん、放ったらかしにしたつもりなんて、なかったんだ。
姿勢をそのままに、彼は肩で息をしつつ、小さく謝罪した。
彼はただ、先生の役に立ちたかった。
確かに初めて邂逅したときは好意的な気持ちはなく、むしろ胡散臭いと、取り繕った笑顔の裏で疑っていた。
しかし関わっていくうちに、彼は先生のことを尊敬していった。どの生徒とも関わり、生徒の味方であろうとしてくれて、自分のような者でも快く受け入れてくれるあの人を、身体を張って証明してくれたあの人を、彼は今では親しく想い慕っている。
この人の為になにかしてあげたい、守ってあげたい。ずっとそう思い行動してきた。
でも、ダメだった。
あの時も、あの時も、あの時も。
先生が大変な目にあっていたのに、なにもできなかった。守りたくても守れなくて、肝心な時に役に立てなくて、自分が無力であることを思い知らされ、幾度も苦汁を呑んだ。
だから、せめて別の形で、自分ができる範囲で先生を支えようと考えた。
ちょっとでもいい、あの人の負担を減らして役に立つ、困っていることを手伝う。それが唯一自分のできる恩返しと罪滅ぼしだった。
だから、向こうから頼ってくれるようになったのは嬉しいことだった。
しかし、結果的にそれは、フブキという大切な人を放置し、傷つけてしまうことに繋がってしまった。
先生が悪い訳ではない、これは彼自身の責任なのだ。
キリノをあれこれ言う自分こそが一番先生に対して盲目的で、救いようのない奴だったのだ。
「……〇〇」
耳朶を噛むような囁きが彼の迷う心を引き戻す。
目を向くと、仰向けに対面するフブキが媚びをたっぷりと含んだ瞳で見ていた。
「んぁ……♥」と口を開き、赤い舌肉を突き出し、左右に揺らして下唇と下歯を裏側で撫でるように濡らす。その動きはまるで別の生物のようで、彼に強請っていた。
……彼は、珍しい。
そして珍しいがために、生まれてから様々な経験をしてきた、それもいいものとは言い難い経験ばかりを。それ故に苦しみ、酷くささくれ立った時期もあった。
生まれを呪い世界を憎む、なんて大袈裟かもしれない。しかし本気でそういった気持ちを湧かせてしまうほどに、匍いても匍いても上がれない砂地獄に嵌ってしまったような、藻掻き苦しむ日々を送っていた。みんなと同じ女生徒として生まれたかったと、何度胸の内で嘆いたことか。
…………けど、そんな彼の傍に彼女が──合歓垣フブキがいてくれた。
今こうして、自分を自分と認められるのも、自分がそういう存在であるのを受け止められたのも、フブキの存在が大きいのだ。
……本当に、彼女を放ったらかしにした自分を馬鹿野郎と罵りたい。
実際、馬鹿野郎なのだ。
鉛色の曇り空を青く晴らしてくれる存在を蔑ろにした〇〇は、どうしようもない大バカ野郎なのだ。
「ぇ゙~♥」
早く欲しい、とフブキの舌が畝る。
彼は口の中で、舌を下部に押し付ける動作を繰り返し、唾液をたっぷりと染み出させ、舌の上に拾うようにして溜めていく。
フブキに顔を近づけ、唇を開き舌をだらんと垂らした。
舌先から溜めた唾液が粘って滴り、濁った糸を引いて落ちていく。
「あ〜……ンクッ♥」
フブキの舌はそれを受け止め、喉の奥へと誘う。時折ゴクリと飲み込めば、咽頭を下る苦い味が鼻腔を突いた。
苦い、しかし美味しい。
甘いくない、けれど甘い。
落ち切った唾液を飲み込むと、フブキは湿った吐息で彼を撫でた。上唇を舐めずり、目を潤ませ、目尻と眉を下げた。
……ずぶんっ♡ずぶんっ♡ずぶんっ♡ずぶんっ♡
「っ゙! ぇ、あ、ぉ、っっ、ぁ♥ぅ、んあ〜っ!!」
姿勢をそのままに、彼は再び腰を振るう。
狙いを定め、やや小さくて硬いポルチオを繰り返し突く。
肉襞は逸物の形に沿って吸い付き、ひとつに溶け合うような熱で溶かそうとする。いや、感覚的には既に溶け合っている。女蜜と男汁がグチャグチャにシェイクされた肉壺は、陰部を通じて2人を溶かしていく。肉体的に、というよりは、精神的に、意識と意識を癒着させていく。
「あ、え♥ん♥ぐ、っっ、ぅぅ゙♥ぁ、いぐ、いぐ♥」
喉を嗄らすようなフブキの嬌声が、さらに荒々しく濁ったモノへと変わっていく。蕩け落ちそうな甘い声は、そのま表情すらもトロトロに変える。彼女の伸びた薄色の髪の束が乱れて、汗で濡れた頬と顎と首元に貼り付けた。
顔だけでない。胸元、腋の下、全身の至る所から吹き出る汗は、互いの体を艶やかに粘つかせて、混ざりあって、弾けている。
肉と肉がぶつかり合う度に、弾けた汗は体液とともに飛沫を描き、空気を澱ませる。
しかしそんなことに構い無しに、2人はそれすらも興奮剤として受け入れ、乱れた。
「あ、ぐ、ンン゙っ♥……んんんっ! っ……♥」
彼はさらに姿勢を前に倒し、彼女の臀部を浮かせるような姿勢をとった。そして両手首を掴み、這わせて掌を重ねさせると、そのまま彼女の唇を自分の唇で塞いだ。
苦い、栗の花と同じ臭い。
つい数時間前までフェラチオで逸物を扱かせ、射精したザーメンを口許から溢れるほど飲ませたのだから、当然だった。
「ん、ン゙ッ……じゅる、え、れろ、ちゅ♥ん゙、ぢゅる♥ぢゅずっ、ンンゥ゙♥れろ、ちゅっ♥」
だが、もうそんなことはどうでもよかった。
思考を放棄し、肉体の赴くままに従うことを選んだ2人には苦味なんてものは、キスを盛り上げるためのスパイスの1つでしかない。
ぷしゅ♡ぷしゅ♡ぷしゅんっ♡
「れ、れろっ、んぇ゙♥んっ──っ゙! んぅ゙ぅっ♥」
無我夢中に唇で啄きあい、舌先を押し込みあい、濡れた性器同士が滑る音の中にリップ音を捩じ込む。
フブキは潮を連続して噴きながら、彼の獰猛な動作に子宮を疼かせた。ポルチオは突かれすぎて最早感覚は麻痺している。骨盤の軋みでさえ、今の彼女にとっては悦びの痛みでしかない。悦びは伝播し、末端部分まで全身を快楽物質で埋め尽くす。
ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡ぱちゅっ♡
「っ、あ、ぁぇ♥いぃ゙っ、おぉ゙っ♥ぉ、お、んぉぉ゙っ♥あぅ゙っ、っっ、ぅ──んぁぁ゙♥おっ゙〜っ♥」
唇を離し、間で唾液の糸を撓ませながら、彼は腰振りを強めた。裸体と裸体が重なり合い、飛沫を散らし、お互いの喉から喚き声と喘ぎ声を洩らす、その姿は性欲に溺れた獣の姿そのものであった。
彼は呻く。全身の筋肉に緊張が走り、肉茎に、特に裏側に這い上がるような感覚が迸る。もう何度も吐き出しているが、今度はゴムの隔たりがない。直に注ぎ込むことになる。
フブキはどう答えるか。
いや、答えは出ている。
彼女は悲鳴と喘ぎを上げながら、両脚を彼の背中に回してしがみついた。弱々しいながらも締め付けようと脚に力を入れている。つまりは、このまま絶頂してもいいと彼に訴えているのだ。
そうなると、彼も要望に応えようと動作を強める。
より激しく、卑猥に、獣臭く、汗臭く、水音を反響させながら、肉茎でポルチオを殴り続ける。
じゅぶっ♡ぼちゅっ♡じゅぶっ♡じゅぶっ、じゅぶっ、じゅぶっ♡
「んぉ、ぉぐ、ぉ゙っ! っ、っ゙、あ──っ、はぅ、ん〜゙っ♥んぁ、い、ぃ、ぃ゙♥っ! ぐっ♥ぃぐっ♥ぁ……」
────ぶちゅんっ♡♡♡
激しい動作のまま、彼は腰を深くまで押し付る。肉をめり込ませ、骨を砕く勢いで、体全体をフブキに密着させ、亀頭で小さな子宮口の穴を突いた。
「あ゙ぁぁっ゙っ゙!?!? ♥♥」
膣奥から脳天にかけて穿かれたような快感が迸る。
脳細胞が一つ一つ弾けて焼き尽くされ、あらゆる電気信号が遮断され、目の前も思考も全てが白く落ちる。
その僅か1秒にも満たない時間の間にフブキは絶頂を迎え、今夜一番の嬌声を上げた。
艶かしく、喉を破裂させるような善がり声が、ぬるく澱む空気を介して彼の部屋に響いた。
両脚が彼の背をキツく締め上げ、彼の手に指先の爪を食い込ませ、腹辺りに潮を噴っかけた。
────びゅるるる〜♡♡、びゅるるっ、びゅるるる♡♡ぶびゅ〜〜♡♡、びゅ、びゅるるっ、びゅる♡♡
瞬間、逸物は最硬直し、彼の雄叫びとともに炸裂した。
狭い子宮に弾丸を撃ち込む勢いで、白く濁ったザーメンが生々しい音を立てながら放たれる。
睾丸がぎゅるりと引き締まり、捻り出すように尿道が熱く迸り、一脈毎に縦割の砲口から精が射たれる。
絶対に抜けまいと、肉茎は硬さを保ったままフブキの肉壺を圧迫し続ける。
それに応えるように、蜜壷に生える粒粒とした果肉が逸物に吸い付き、根元から先にかけて飲み込む勢いで蠕動を繰り返す。下手に抜こうとすれば引きちぎってしまいそうなくらいにキツく、時折挟む弛緩で飴を与えるフブキの収縮は、彼の精を搾り、空にする勢いだった。
びゅぶっーー♡びゅるるっ♡びゅ、びゅる、びゅっ、びゅっ、びゅッ、ビュッっ♡ドピュッ゙ーー♡♡
「ぁ……あっ…………つぃ……すっごい……りょう………………ん゙ぅ……ふぅ……どろどろ……こんなに、出しちゃったら……あかちゃん……できちゃう、かも…………ン゙ン゙♥」
互いに密着しあい、肉茎の脈動の度に腰を震わせる。
その時間は長く、数秒、数十秒と続き、子宮内はドロドロと熱を帯びたマグマのような白濁液で満ち満ちていく。
彼の頭の中もまた白く弾け、意識が朦朧としている。分かるのは、自分の息と、フブキの胸の鼓動と、陰部の射精、そして溶けて融合し合う肉体と精神のみである。
そしてようやく収まると、果てた2人は重なり合ったままベッドに沈んだ。体に気怠さがのしかかり、身動きする気力を奪う。これ以上腰を動かすことはもうできないだろう。
しかし、膣肉は締め付けを保ったまま肉茎を圧迫し続ける。一滴も漏らさぬよう入口まで窄ませている。このまま確実に孕もうというフブキの生殖本能が働いていた。
──……フブキ。
言葉という概念自体が脳からバラバラに崩れ落ちそうな中で、彼は絞り出すように彼女を呼んだ。
もう放置なんかしない、蔑ろにしない、寂しい想いはさせない。
「…………へへ♥」
フブキは火照り上がったトロ顔を浮かべた。
言葉はない、だが表情で「も〜、仕方ないなぁ~」と答えている。
フブキの表情を見て、彼は笑みを返した。
やがて意識は遠のき、2人は深い眠りに落ちる。
2つのヘイローがぶつかり、避け合い、重なり、そのまま溶けて1つになるように消えていった。
◇◇◇
微睡みから目を覚まし、フブキは薄く目を開く。
一体どうしてここに、自分はなにを?
そういう考えが一瞬過ぎって、すぐさまさっきまでの出来事をフブキは思い出した。左手の甲を額に当てると、じっとりと寝汗で濡れていた。
「あー、そっかぁ……やったん、だっけ……?」
そのまま前髪をかきあげ、フブキはゆっくりと目を瞬いた。全身を倦怠感が包んでいる、快感に身を任せて思考を麻痺させていた代償なのか、痛みと眠気と気怠さが身体を襲う。脳がプカプカと浮いているような感覚が頭蓋骨の内部に鈍く漂っている。
不意に、すぐ隣から寝息が聞こえた。頭を捻ると、正面をこちら側に向けて眠る彼の寝姿が、目と鼻のすぐ先にあった。完全に疲れきったのか、深く呼吸と小さな寝息と鼾をかいている。呼吸の度に、一定のリズムで体のラインが微かに揺れる。いつも形までは分からないが、ぼんやりとは認識できるヘイローがない、どうやら熟睡しているようだ。
「ふふっ、よーく寝てる……ほんと、寝顔は可愛いなー」
成長した顔立ちに残る幼さを見て、フブキはふっと小さく笑った。
「あっ……」
直後、下腹内部が鈍く畝り、膣穴から精液が漏れ出した。陰部には、子宮からごぽりと逆流した精液が滴り貼り付く異物感がある。あれだけ大量に吐精したのだ、ザーメンは彼女の股下を伝い、ベットシーツに白濁の山と濁ったシミを造っていた。
「あーあ、こんなに漏れちゃって……これは買い替えかなぁ……」
なんて言いつつ、フブキは鉛のように重くなった怠い右手を陰部に伸ばし、指先で軽く精液を絡めとった。時間が経って、粘着力の強い固形物に変化していた。
「あむっ……にがっ」
フブキは指先を含み、舌先でザーメンを絡めとり、そのまま咽へ落とした。射精したてのものよりも苦味と臭みが増している。一部は食道にへばりつき、咽の渇きを悪化させた。
「はぁ〜……らしくないなぁ」
フブキは右手を腹部に添え、未だ子宮にたぷたぷと溜まって揺れる濃厚な白濁液の熱を感じ取る。そして自嘲した微笑を、暗い天井に向かって浮かべた。
昼間の自分は、かなり『らしくなかった』と思う。ああやって口移しキスをするなんて、普段なら思い至らない積極的な発想だろう。
それどころか、あのとき彼が頷いていたら、本気でヤるつもりだった。
警察が勤務中に、しかも張り込みの車両の中でセックスするなんて、バレれば良くても停学だろう。けれど、そんな考えすら脇に追いやるほどに、フブキは黒いパンストに潜ませた淫唇を濡らしていた。
正直、奇行だったと思う。
けど、そうでもしないと、この先生大好きっ子はこうやって抱いてくれなかっただろう。『昔からそうだった』と言えば簡単だが、手間がかかるったらありゃしない。
「ほんと、めんどくさいよねぇ、〇〇ってさ」
自分でもそう思わない? そう言ってフブキはのっそりと体を横向きに変え、彼と向き合う姿勢をとる。片手を枕替わりにしながら、あらためて彼の寝顔を見た。
幼さも残ってて可愛いが、結構ヘンテコ、口端から涎なんか垂らしちゃって、子どもというより赤ん坊のようだ。
本当に、めんどくさい。昔からよーく知っている自分が告白に頷かなければ、目の前の男子生徒は、一生誰とも付き合えなかったし、付き合わなかったに違いない。仕事とプライベート問わず、
「……ほんとう、男の子って──」
フブキは彼の頬に手を添える。試しにむにっと摘んでみると、彼は眠りながら顔を顰めた。エーギルで動けないのをいいことに散々頬をムニムニしてきたのだから、これくらいの仕返しは許されるのだ。
「へへっ、可愛い」
フブキは意地悪そうに微笑んだ。
そういえば、〇〇がヴァルキューレを、そして生活安全局を志望した理由は、荒れていた時期に当時の生活安全局長に世話になって、それで恩返しの気持ちと憧れを抱いたからだった。先生といい局長といい、随分と他人に惚れやすい体質のようだ。
正直、公安や警備の方に行かなくて良かったと、自分と同じ局に配属になって良かったと、フブキは密かに胸を撫で下ろしていた。彼の能力なら他の局でも十分やっていけるとは思うが、如何せん無茶と無理をするため、下手をすれば潰れてしまうかもしれない。今でさえこの有様だ。自分がのんびりとぐーたらに誘って休むことを教えなければ、今頃どうなっていたことか、想像するまでもない。
「……世話が焼けるなぁ」
人に一途で、なのに鈍くて、無理して傷つくこともあって、いちいち落ち込んで、そういうところが偶に癪で、哀れで、面倒臭くて、愚かで、不満で、それも含めて、心の底から愛おしい。
もしもキリノから先生のことで相談を受けたら、同僚として答えられるだろうか。自分も自分でちょっと毛色が違うから、普通の恋愛について語れるかは怪しい。けど、まあ愚痴ぐらいは聴けるかもしれない。自分も自分で、彼の愚痴を吐くかもしれない。ああ、でもその前に、彼との関係を話すのが先になるから、ちょっとは驚くかもしれない。
「ま、この先どうなるかわかんないけど……とりあえず、
そう言うと、フブキは彼の唇に口付けを交わし、そのままゆっくりと瞼を閉じ、再び意識を離した。
翌日、2人は疲れのあまり無断欠勤をやらかした。当然幹部からは叱られ、始末書を書かされた。また、どこで見られたのか、彼の部屋から首元にキスマークをつけたラフな格好のフブキが出てくるのを目撃されてしまい、局員の仲間達から質問攻めに合うことになった。
しかしキリノ曰く、2人は苦笑しつつも、どこか満更でもなかったという。
…………そしてしばらくの月日が流れたある日、フブキの下腹部に小さなヘイローらしきものがぼんやりと浮かび、それが原因で先生を巻き込んだ一騒動がヴァルキューレで巻き起こるのだが、まだ誰も知る由もない。
イマイチ、フブキの話し方がコレジャナイ感が・・・