ディアーが大げさに手を広げ、唱える
ディアー「鏡の牢獄(ミラープリズン)」
エルベロは都市全体を覆っていく巨大な魔法を見て目を見開く。それと同時にエルベロの冒険者としての勘が囁く。
奴は危険だ。排除しなければならない。
エルベロは仲間に答えを求めて、独り言のように呟く
エルベロ「ッ!?…なんだ?魔法は!?」
答えはない。仲間達は空を見上げ呆然としている。他の冒険者達も驚きを隠せないようだ。
エルベロ「皆!気を引き締めろ!来るぞ!」
四武器メンバー並びに、冒険者達はエルベロの言葉に皆が目を覚まし、臨戦態勢を取る。正面には悠然と歩みを進める怪物が一匹
皆の緊張感が一気に高まる。
四魔法「前列用意!…放て!」
一斉に様々な魔法が放たれる。炎、水、風、雷、礫、様々な魔法が一匹の怪物に向けて飛んで行く。
エルベロはほとんどの魔法が防がれることを予想していた。都市全体を覆うほどの大魔法を1人でやってのける魔法詠唱師なのだ。ほんの少しだけでもダメージを与え、前門に到着するまでに防御のために魔力を使わせるつもりだった。
しかし、予想は大きく外れる。
全ての魔法が怪物に直撃する
エルベロ「防御しない…?やったのか…?」
そう言葉にした時だった。煙の中から何事も無かったかのように怪物は現れる。そして、先程までと同じようにただ前門に向かって歩みを進める。
四魔法「こ、後列と交代!後列用意!」
四武器の魔法詠唱師は一瞬狼狽えつつも、指示を出す。
リリネットがエルベロに向けて悲鳴にも似た声で問う。
リリネット「ど、どういうこと?!当たったわよね?!」
エルベロは頭をフル回転させる。駆け出し冒険者の頃から現在のミスリル級冒険者に至るまでの経験や知識を総動員させ、考える。だが、彼女の質問に答えられない。エルベロも何が起きているのか分からない。
四魔法「後列構え!…放て!」
魔法が通用しないと考えた四武器の魔法詠唱師は後列の弓兵部隊と交代させ、弓矢による攻撃を試みる。
先程の魔法部隊より圧倒的に数が多いため、先程放たれた魔法よりも多くの矢が怪物に向けて放たれる。
四武器盗賊(以下、盗賊)「この数の矢、さすがに全ては防ぎ切れないだろ!」
盗賊が祈るような声で叫ぶ。しかし、そんな彼の望みは目の前で起きた事象により一瞬で砕かれる。
ディアー「魔法壁(マジックシールド)」
怪物に注がれた百もの矢は、あろう事か、たった一つの魔法で防がれた。怪物に向け放たれた矢は無惨にも弾かれ、騒がしい音を立てて地に落ちる。
そして、矢も魔法も物ともせず悠然と歩むその姿は、冒険者達に絶望を与えるのに十分であった。
「う、うわぁぁぁ!!!」
そう言って、1人の冒険者が下へ続く階段を駆け下り逃げ出した。それを皮切りに、多くの冒険者達が我先にと逃げ出す。
盗賊「お、おい待てお前ら!」
残った冒険者と盗賊が逃げ出す者を止めようとしたが、彼らはそれを振り切り、転げ落ちるように逃げ出す。
前門から直接飛び降りる者、階段を駆け下りる者、飛行魔法を使って逃げようとする者、様々な方法で怪物から離れようと都市の外へ逃げ出す。
しかし、怪物は逃げる者を止めようとはしなかった。いや、止める必要が無かった、という方が正しいのかもしれない。
逃げ出した冒険者「お、おい!なんだよこれ!通れねぇぞ!」
彼らは怪物が張った魔法の薄い壁に阻まれて、逃げ出せずにいた。
逃げ出した冒険者2「クソっ!ぶっ壊してやる!火球(ファイヤーボール)!」
魔法詠唱師の放った火球は一直線に壁に向かって飛んで行く。しかし、火球がぶつかると同時に壁は奇妙な音を鳴らせた。
キュイィィン!
奇妙な音が鳴ったと思うと、その火球は魔法を放った術者へと向かって跳ね返る。
逃げ出した冒険者2「うわぁっ!熱っ!焼ける!!誰か!!!」
周りの者に助けを求めるが、皆はそんな彼を見て呆然としていた。
逃げ出した冒険者「ど、どうすれば逃げられるんだ…」
逃げ出した冒険者3「ど、どうかお慈悲を…」
逃げ出した冒険者4「私が間違ってました!ディ、ディアー様!お助けください!」
逃げ出した冒険者5「頼む!出してくれ!俺には家族がいるんだ!お願いだ!!出してくれぇ!!!」
怪物は彼らに目もくれず、前門を目指し、歩き続ける。
残った冒険者達でどうにか止めようと、投石、魔法、投擲、様々な方法を試したが、結果、怪物は一切足を止めることなく、前門間際まで迫る。
エルベロ「ここからは私達の仕事だ!ついてこい!」
エルベロは四魔法、リリネットを連れて壁の内側に降り、大通りにて怪物を待ち構える。
エルベロ「強化魔法を」
エルベロは四魔法とリリネットにそう伝えると、四魔法とリリネットはいくつもの強化魔法をエルベロにかける
そうしているうちに怪物は前門まで到着する。
ディアー「邪魔だな」
そう言うと、怪物は人差し指を前門に向ける。
ディアー「龍雷(ドラゴンライトニング)」
轟音と共に前門が焼き焦げ、破壊される。上にいる冒険者達に被害が無かったのが不幸中の幸いである。
立ち上る煙の中から怪物が姿を表す。
ディアー「さて、最後の砦は君かな?」
不敵に笑うその表情はどこか楽しんでるようだった。およそ、敵国の領地へ進行してくる兵士のものでは無い。エルベロは臨戦態勢を取る。そして、四魔法とリリネットに下がっているよう伝えた。
ディアー「改めて…私の名はディアー。魔道国へ杖を捧げ、魔導王陛下に忠誠を誓うものだ!」
怪物は誇らしげに名乗りを上げた。エルベロはトマホークを握り直す。如何なる動きにも対応出来るよう、相手のありとあらゆる動きを予測する。
ディアー「…名を伺っても?」
エルベロは驚く。戦士らしく、相手の名を聞き、誇りを持って戦おうと言うのか。エルベロはモンスターを相手にするつもりだった為、このような戦士らしい対応に動揺しそうになるが、気を引き締め答える。
エルベロ「…スカマ・エルベロ」
ディアー「エルベロ…覚えておこう。では、何か縛りをつけようか?」
エルベロは怪物が何を言っているのか、一瞬理解出来ずにいた。「縛り」とは?…まさか、自分の力に制約をかけて戦おうと言うのか。ミスリルと言う、冒険者の上位層にいるエルベロにとって、これ以上の侮辱はそうそう無いだろう。
エルベロ「何を言っている…貴様!」
エルベロは怒りを込めて怪物に叫ぶ。
ディアー「あぁ、失礼ながら…私が本気を出すと一瞬で終わってしまうので、力に制約をかけようと思うのだ」
エルベロの怒りは増していく。バカにするにも程がある。
エルベロは「上には上がいる」と考えている。決して自分が最も強い、などと奢ったことは無い。しかし、これほどまでに己の実力を否定されたことも無い。
エルベロ「舐めるな!!!貴様には私達がそれほどまでに貧弱な存在に見えるのか!!!」
エルベロは沸き立つ怒りを全て言葉に込め、怪物へぶつける。
ディアー「…失礼。戦士としての誇りを傷つけてしまったようだな。だが、認めろ。君は本気の私に決して勝てない。」
ディアーはエルベロの目を真っ直ぐ見る。
ディアー「まぁ、そう言われても納得しずらいだろう。君が縛りを決めないのなら、私が勝手に縛りを付けさせてもらうよ。そうだな…私が使う攻撃魔法は第三位階までとしようか。これでどうだね?」
エルベロは湧き出る怒りを抑え、平静を保ちつつ怪物に伝える。戦いにおいて、冷静さを欠いた者は真っ先に死んでいく。それをエルベロは思い出したのだ。
エルベロ「負けた時に、それを言い訳にするなよ」
ディアーはエルベロからの挑発を受けて不敵に笑う。
ディアー「あぁ、もちろん」
次回・決戦
かなり長めになってしまいました…次回はエルベロVSディアーの戦いです!会議室でアインズと守護者達がディアーの戦いを見ているシーンも書くつもりです。ぜひ、ご覧下さい!
では、ご覧いただきありがとうございました!
Byハーブマン