ナザリック 談話室にて
アインズと階層守護者達がディアーの戦いを見守っていた。
アインズ「ここまでは順調だな」
アインズは表情を崩さずにディアーを見る
シャルティア「アインズ様?この都市の制圧にどうして同盟者殿を行かせたのでありんすか?あの程度の都市なら、同盟者殿の幻術をかけた上で、デスナイト達アンデッドでの制圧で十分だと思うのでありんすが…」
アインズは他の階層守護者達に悟られぬよう、必死で頭を回す。ここで「ただの興味本位です」などと言えるわけが無い。何か明確な目的を告げなければならない。
アインズ(どうしよう。まともな言い訳考えなかった!どうにかして誤魔化さなきゃ…不自然の無いように、ナザリックの利になる理由を…)
アインズはディアーの戦いを楽しみにしすぎて、本来なら忘れるはずのない言い訳作りを失念していたのだ。
アインズ(こうなったら…奥の手だ!)
アインズはデミウルゴスの方をキリッと見つめ、支配者らしい威厳のある声で伝える
アインズ「デミウルゴス…お前なら私の狙いなど、看破している事だろう」
デミウルゴス「看破などと…私にはアインズ様の…」
アインズ「よい!」
アインズはデミウルゴスの言葉を遮り、他の守護者達を見渡しながら告げる
アインズ「デミウルゴスよ。お前の読み取った私の考えを皆に分かりやすく、丁寧に!説明することを許可する」
デミウルゴスは手を胸に添えて深々と礼をし、守護者に話始める
デミウルゴス「アインズ様が同盟者殿を行かせた目的は私が読み取れたとこだけで2つある」
アインズは頭を抱える。ディアーを行かせることをそんなに深く考えていなかったのだ。
シャルティア「2つも…でありんすか?」
デミウルゴス「あくまで、私が読み取れたことだけで2つだ。きっとアインズ様ならもっと多くの目的があったのでしょうが、私の知力では2つが限界でしたね」
他の階層守護者達から感嘆の声が上がる
そんな時、アインズは「いや、2つも考えてないよ!」と全力で叫びたい気持ちを堪え、焦りを見せないよう気丈に振る舞っていた。
デミウルゴス「まず1つ目は、同盟者殿の実力を見ること。これは流石に皆理解していたね?」
守護者達は頷く。アインズもここまでは想定通りだ。しかし、もう一つと言うのが気になる。あと何があるというのだ。
デミウルゴス「そしてもう一つは…」
アインズは息を飲む。また「世界征服」と同じレベルのことを言い出さないか心配でならない。
デミウルゴス「我々に学習の機会を下さったのだよ」
アインズ(へ?)
アインズは心の底なら何を言っているのか分からない。学習?何の話だろうか。全く身に覚えがない。
シャルティア「学習…?とは、一体何を学ばせていただけるのでありんすの?」
アインズ(そうだよ!俺が教えられることなんてPvPのコツぐらいしかないけど?!)
アインズは自分が教鞭を取らねばならなくなるのでは無いかと心配し、本気で焦り始める。
デミウルゴス「それはアインズ様の持つ強大で、貴重な、我々に無い力…『ねたびるど』なるものについてだよ!」
アインズの思考は一瞬止まる。ネタビルド…?なぜネタビルドについて知りたいのか。と言うか、教えるとは何なのか。
予想だにしない回答に思考がバラバラになる。
アウラ「え?!アインズ様はそんな力をお持ちだったんですか?!」
アインズ「えっ?!あぁ、まぁ…え?」
アインズは必死に頭を回していたせいでアウラの質問に対してハッキリと答えられなかった。
デミウルゴス「皆はなぜナザリックより規模の小さいギルド・天空の森と同盟を結んだか、分かるかね?」
アルベド以外の階層守護者達は皆、首を横に振る
デミウルゴス「それは、あの同盟者殿がアインズ様と同じ、『ねたびるど』なる力を持っているからだよ」
アウラ「アインズ様と同じ?!」
コキュートス「マサカ…アインズ様ト同ジ力ヲ…」
皆がざわざわと騒ぎ始める。アインズはそんな光景を見てどうするべきか考えていた。ネタビルドは別に強大な力でもなんでもない。ただのおふざけ構築。どちらかと言えば弱い。
どう説明すべきか。遠回しに伝える必要があるのだが、上手く伝える話術などアインズは持ち合わせていない。
デミウルゴス「以前、アルベドが『ねたびるど』についての説明をして欲しい、とお願い申し上げたことがあったのだが、その時は明確な説明はいただけなかった。それは恐らく、アインズ様がいつも言っておられる、『自分で考えて行動すること』を我々守護者に望んだからではないか、と私は考えた。つまりアインズ様は同盟者殿の戦いを見て、我々に考え、行動し、学んで欲しいと考えていらっしゃるのだよ!」
アインズはネタビルドについてのものすごい勘違いを訂正したいと考えつつ、「自分で考えて行動する」について守護者達が真面目に考えていることを嬉しく思っていた。
デミウルゴス「では、諸君、同盟者殿の戦いを通し、存分に学びましょう!…あぁ、それと、アインズ様がこの戦いにこの2つの目的以外で、どんな目的を持たれていたのかも一緒に考えましょう」
アウラ「はーい!」
マーレ「あぁ、あの…はい」
シャルティア「分かったでありんす!」
コキュートス「承知」
アルベド「えぇ!ぜひそうしましょう!」
アインズはデミウルゴスの最後の一言にビクッ!と肩を震わせる。アインズもこの戦いを通して、どんな目的を作るか、考える必要があるようだ。
ナイウーア領にて
エルベロ「負けた時に、それを言い訳にするなよ」
エルベロからの挑発を受け、怪物は不敵に笑う。
ディアー「あぁ、もちろん」
怪物からの回答を得ると、エルベロは分身(ドッペル)の発動と同時に怪物との距離を一気に詰める。魔法により強化されたエルベロの身体能力は格段に上がっていた。
ディアー「雷撃(ライトニング)」
真っ向から突っ込んでくるエルベロに対し、ディアーは雷撃で迎撃する。
雷撃は打ち出されてからでは避けるのは不可能と判断したエルベロは発動する前に体をよじらせて攻撃をかわす。
ディアー「早い!いい反応だ!!」
エルベロは着地と同時に体制を立て直し、再び距離を詰めようとする。
ディアー「…だが」
着地した瞬間、エルベロは左腕に強烈な熱を感じる。
ディアー「少々惜しい」
左腕の一部が焼き焦げていたのだ。
エルベロは困惑する。エルベロは雷撃を確実に避けた。自分の横を雷撃が走り去ったのを目で見ていた。それなのに、事実、エルベロは怪我を負っている。
リリネット「中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)」
四魔法「どういうことだ!確実に避けていたはず…」
仲間の魔法詠唱師でさえ、何が起きたのか分からなかったみたいだ。
エルベロ「分からないなら、考えたって仕方ない。2人とも頼んだ!」
四魔法「下級敏捷力増大(レッサー・レクスタリティ)!」
エルベロは2人にそう告げると、四魔法は強化魔法を更にかける。先程よりも早く怪物との距離を縮めた。
ディアー「特攻か…私に対しては有効な手段だ。正直、ダメージ無視で突っ込んで来られた方がこちらとしては苦しいのだよ。だが、これはレベル差が無かった時の話だぞ?」
怪物はそう言うと、再び構える
ディアー「雷撃(ライトニング)!次は避けられるかなぁ?!」
エルベロ「武技・重要塞!」
エルベロは怪物から放たれた雷撃を避けるのではなく、受け切った。怪物は受けられることは予想していなかったようで、動揺する。更に距離が縮まり、あと数歩で懐に入れる距離まで来た。
ディアー「ッ!!寄るな!!!魔法二重化(ツインマジック)ライト二…」
怪物が動揺し、一瞬隙が出来た。その隙をリリネットは見逃さなかった
リリネット「太陽光(サンライト)!」
あまりの眩しさに怪物の目が眩み、よろめく。それと同時に四魔法がエルベロに強化魔法をかける
四魔法「下級筋力増大(レッサー・ストレングス)!」
怪物は頭に血管を浮かび上がらせ、叫ぶ
目を瞑りながら両手を前に突き出し、魔法を発動させた
ディアー「舐ぁぁぁめるなぁぁぁ!!!魔法二重化(ツインマジック)雷球(サンダーボール)!!」
怪物は目を閉じたまま、正面に向かって2発の雷球を打ち出す。打ち出した直後に怪物は目が多少見えるようになり、片目を開ける。
しかし、そこにエルベロの姿は無く、正面にあるのは打ち出された雷球のみ。
刹那、怪物は地面に、自分の影に重なるもう一つの影の存在に気づく。
エルベロ「殺(と)った」
次回 終幕
次回で貴族領編は終わらせます…多分
Byハーブマン