ヘロヘロヘロー。
私は夏油傑の双子の姉であり、夏油傑の子宮である。
そう、この夏油傑は両性である。
これはあれだ。
五条悟とくっつけという事だな!?
「勘弁してよ、姉さん」
心を読むな、弟よ。そして、子宮の所有権は私にある。これをどう使おうと私の勝手だ。前の棒と後ろの穴はお前の好きにするがいい、弟よ。
「後ろは使わないよ!? 大体、私は今度は呪いには関わらないからね」
親友は良いのか。
「……悟は私がいない方が幸せになるよ」
介入しないと悟は死ぬし、それでなくともメロンパンが調整するから、大体は同じ未来を辿ると思うぞ、弟よ。
「う……確かにね。メロンパンって人はほんとにいるの?」
姉を疑うか。公衆の面前で女装するぞ。
「ごめん、やめて」
で、どうする?
そして、呪専スカウトである。
こそこそして見たが、やはりバレてしまった。
悟と硝子に会い、我が弟は真剣な面持ちで言った。
「姉さん。私、死にたくない。死にたくないよ。それに、またあの子達と友達になりたい」
そうか、弟よ。気持ちはわかる。一つ良いニュースがある。
六眼も体内は見通せなかったようだし、私が頑張れば切り札になれるやも。
何せ、私と弟の術式は別な上に、私の術式は二つあるからね。
いざという時は、五条悟に術式を使えば一発よ。
「チートだよねぇ」
とはいえ、学生時代を楽しませてあげたいので、出来るだけ先延ばしにするつもりではあるが。私の術式は、本来の未来を見せること。
大人の記憶なんて持ってるもんじゃないんだよね。
それはともかく、私は実際にあった二人がクソガキで驚いたぞ。
「クソガキなんて……良い子達じゃないか」
弟は陽キャ屑だからな。それは合うだろう。
「だまってよ、陰キャ屑」
クリスマスの日。
弟は、私の事を打ち明ける事にしたらしい。
「実は、私二重人格なんだよね。術式も二人分」
「は?」
「何それ」
「姉さんって呼んでる人格がいるんだけど、二人にだったら会わせてもいいし、姉さんの術式を受けてほしいかなって。同じ人に一回しか掛けられないって制約はあるけど、役立つと思うから」
「術式って?」
「未来観測」
「そんな術式お前にはねぇよ」
「あるんだなぁ、それが。で、来年春に、悟、瀕死の重傷を負うんだよ。未来は変わるし、信じてくれるなら、それまでに使わせてほしい。私を信じて気持ちが定まったら教えてよ。あ、これ内緒ね」
「じゃあ今やって」
「私も」
「わかった。お願い、姉さん」
任せなさい。
私は、まず硝子に術式を使った。
「っ なんだこの術式!」
呪専の警報がなる。私のは登録してないしね。
硝子が倒れる。
「硝子!」
「未来を夢見てるだけだよ。大丈夫」
「どうする、悟?」
「いいぜ。やってみろよ」
私は、悟にも術式を使った。
悟も倒れた。
「ベッドのある所でやるべきだったかな」
そうね、失敗失敗。
二人は、なかなか目覚めなかった。
目覚めなさすぎて、クラスメイトの暗殺の罪で、危うく秘匿死刑になる所だった。
悟と硝子が全力で庇ってくれて助かった。
「お前な、もっと考えて行動しろよ!! 危うく秘匿死刑だぞ!! 夜蛾センが俺を無理やり起こして術式解除してなかったら死んでたんだぞ!」
「本当だよ!」
「ごめんよ、悟。硝子」
「お前、未来どこまで見たの」
「私は胎児の時に見せられたから、もう殆ど忘れちゃってるかなぁ。ちゃんと覚えてるのは、悟が殺してくれた時だけ。悟達はどこまで?」
「……必要な所までは見た」
「同じく。しかしさぁ。殺される時の事を嬉しそうに言うなよ、クズ」
「重いわ。いや重いわ」
「あくまで本来の未来を辿った場合の死ぬまでの記憶、なんだけど。本当の記憶じゃないから、そこは気をつけろって姉さんが。だから、記憶の中で出来た技も、改めての訓練とかは必要だよって」
「そりゃそうだろ。てか、その前に襲撃自体防ぐから」
「今度こそ理子ちゃん救えるかな?」
「ごめん。そこは無理かな……。じゃー役立ちそうな情報すり合わせするぞー」
ということで、頑張っていたのだが、弟はろくに力になれなかった。
まあ、胎児の時の記憶だしね。
「あと、傑姉、ちゃんと紹介しろよ!」
「そうそう」
「えっとね。私、本当は双子だったんだ。でも、姉さんは胎児の時に術式発現してね。私に未来で殺される事を悟った姉さんは、術式暴走させた後に私と戦った。姉さんの術式を受けた私も、応戦した。それで、食い合った結果、一つの体になって今があるんだ。でも姉さんのパーツは多分どこかにある脳と子宮ぐらいかな。あ、私、生理あるから硝子、フォローよろしく」
「何それ」
「いや重いな。重いな!?」
「傑の体の話は後で聞くとして。傑のお姉さん、灰原と七海にも未来見せてほしいんだけど、出来る?」
構わないが。
「構わないそうだよ」
そういうわけで、七海と灰原の入学を待って、術式を使った。
灰原は1日で復帰したけど、七海はしばらく寝込んだ。
「はぁ……なんだか学生時代に逆行した感じがします」
「そうだね。死んですぐに蘇った的な」
「まあまあ、学生時代をもう一回送れると考えようぜ」
「そうです、ね。今度は死なないように頑張らないと!」
「あの依頼は頑張っても無理だと思います。五条さん、どうにかしてください」
「わかってる。学生時点で政争は正直きついけど、なんとかやってみる。傑、傑姉の術式開示するから、俺と縛り結べ」
「縛り?」
「俺の許可がないと、未来視は使わない。リピートアフタミー」
よかろう。
「悟の許可がないなら、未来視は使わないよ」
五条悟の許可なくば、未来視は使わない。
カチッと頭の中で何かが嵌る。
翌日、早速私は上層部に単身で呼ばれた。
「未来視ができるとのことだったが、やってみせろ」
「悟の許可がないとできないですね」
「なぜだ」
「縛れって言われて縛りました」
「簡単に縛りを結ぶとは、愚かな!」
「ええー……その、怒るようなことですか」
「どういう術式なのだ」
「どういう術式……使用にも許可が必要なものなのに。言えません」
「未来情報を何か言ってみろ」
「私自身は未来について殆どわからないんです」
そうこうしているうちに、灰原や七海まで連れてこられた。
「「未来情報は五条さんの許可がないと言えません」」
「うーん、悟すごい」
その分、反感と圧力を一身に受けることになるな。
「悟、大丈夫かな……」
今背負ってるのは、傑や七海や灰原の未来じゃなくて、命なんだよ。
ここで頑張らないと秘匿死刑だからね、弟よ。
「なんで?」
未来の特級呪詛師がそれいう?
「さっきから誰と話しておるのだ!」
「ひゃっ!? すみません、姉さんと話してましたっ」
あっ馬鹿!
「姉とは誰だ」
「私、二重人格で、その」
「二重人格? そんな程度で術式が二つになるはずがない」
「ふむ。身体検査をしろ」
ああああああ。弟よ、お前。
「う、ごめんよ姉さん」
「馬鹿な。脳が二つあるだと?」
「ええ!?」
「なるほど。二人で一人だから、術式が二つ……かなり珍しい症例だな」
あっ てめっ そこは私のテリトリーだぞ! 変なもん入れんな!
ということで、まるっと調べられてしまった。レディに失礼ですぞ。私は怒っておりますぞ!
男子寮でも女子寮でもまずいという事で、ちょっと離れたへやに移ることになってしまったのだ。
悟はプンプン丸である。私もぷんぷん丸である。
あんたちょっとは考えなさいよ、弟よ。
「ごめん……」
いや、本当に孤立無縁で上層部に何か仕掛けられても、悟も硝子も助けに行けないわけよ、この位置だと。
「わ、私、自衛頑張るよ! 困ったらすぐ電話するし!」
「おう、そうしろ。で、データ見せて…………お前、ねーちゃん大事なら今後一切の近接禁止ね」
「う」
「うじゃねーんだなぁ。お前さ。気が抜けてるんじゃね? 自分が特級呪詛師になったの覚えてる?」
「でも悟、私は産まれる前に未来を一回見ただけなんだよ? そんなの忘れちゃってるよ」
「そっかぁ。そうだよなぁ。傑だけ精神年齢普通かちょっと上くらいなのか……。じゃあ、なるべく俺達でフォローするから、傑もがんばれよ? とりあえず、考えるべきは天元様の依頼だな……」
それからしばらく後。
「駄目だった! 甚爾は禪院家には関係ねーって! 甚爾なんとかして天内なんとかしねーと、傑が……!」
「ああ、天元様に呪霊操術効いちゃうんだっけ?」
「なんで知ってるんだよ」
「姉さんが、一度だけの未来史で死後以上の物をチラッと見えたらしくて」
「早く言え! で、お前は弱体化してるんだから、もうちょっと焦れ!」
「悟がなんとかしてくれるんでしょ?」
「するけどさああああああああああああ!! あーもう。傑は子供、僕は大人! 飲み込め自分!」
無理をするな、大人になった気がするだけでお前は子供だよ、悟。
「姉さんが、記憶を一回見ただけで大人になれるはずがないって」
「そうだけどさぁ! 大人にならなきゃ死ぬんだよ!」
そこで五条悟よ、提案がある。学校サボらない?
「学校サボるのかい、姉さん?」
「は?」
学校サボって効率的に役立つ呪霊を確保していかないか。訓練も兼ねて。
「学校をサボって、私と一緒に修行を兼ねて呪霊狩りに行かないかって。穴場は君が知ってるんじゃない?」
「っ それしかないか……。よし、硝子と七海と灰原も誘ってしばらく学校休むぞ!」
学級崩壊ならぬ学校崩壊だが、仕方あるまい。
何より、身の危険を感じるしな。
ということで、ギリギリまで頑張って修行の旅をしたのち、しこたま夜蛾先生に怒られて、学校に戻り、天内の護衛依頼を受ける事になった。
一緒に沖縄旅行に行って、楽しんで、最後に甚爾に襲撃される。
予定調和である。
だが、なんとここで! 弟が! 甚爾の顔を見て!
さくらんした!!!!
何がどうした弟よ、私まで錯乱中である。
ツーカここで錯乱したら死ぬ、死んでしまう。
「ああああああああああ! 猿! 猿! 猿! 猿! 猿!!! 私は! 私は、猿なんか守りたくない!!」
やばい、弟の中でトラウマスイッチオン! 記憶の再生GO! 状態になっている。
しかもその後掴まって攫われてやんの。
バーカバーカ! って私のことなんだよなぁぁぁぁぁ!!!
とりあえず弟の意識をぶん殴って体の支配権を奪取する。
そして、呪霊をこっそり一体逃す。
「伏黒甚爾!」
「あ? お前、姉の方か。案外わかるもんだな」
「貴方の目的は天内のはず。なんで私を?」
「両性の未来師。宗教家じゃなくても大好物だろ? とりあえず、お前は売る。抵抗したら片方の脳みそを潰す」
「ぐっ……呪霊操術使ってる方の脳みそを潰したら厄介かもよ?」
「どっちも相手の術式を使用可能だろ。ほんっとチートで恵まれてるよな」
うーん、強敵。
そして、私は肉体の操作の練度も呪霊操術の練度も高くはない。
私は、そのまま盤星教「時の器の会」から、カルト教団へと売られる事になってしまった。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
頼りない弟は、非術師に囲まれることでパニックを起こしてしまっていて、とても体を返せる状態ではない。
服を剥がれ、オークションに出されたその時。
「なっさけなぁ。ちょっとたるんどるんやないですか、せんぱぁーい?」
論外の男が現れ、私を抱き上げて逃亡した。うーん、マッチポンプの予感。
知ってても惚れるがな!!!