転生したらスライムだった件 スライムは彼女たちを愛する 作:有頂天皇帝
今回は2章に向けての幕間ということでリムル以外の一部の陣営たちの視点になります。独自の設定などもありますのでどうかよろしくお願いします。それでは本編をどうぞ
かつて氷雪吹き荒ぶ極寒の大陸として恐れられたその地は数ヶ月前から吹雪が昔に比べて弱まっていた。しかしそれでも永久凍土の氷原に囲まれ、マイナス120度を下回る、ほぼ全ての生物の生存を許さぬ大地。そしてその大地に適応したBランク越えの魔物たち、氷雪系のドラゴン《ツンドラドラゴン》、捕食のみを生きる目的とする無数の頭を持った猛獣《ヘルボロス》、巨大なマンモスの姿を持つ獣《ガムート》、鬼のような恐ろしい姿をした獣《ゴシャハギ》など多種多様な魔物が跋扈している。そんな魔物たちですら中央部に屹立している城の周囲に近づくことは無い。
見た目は美しく幻想的な宮殿。しかしその正体は想像を絶する膨大な魔力にて、この世に具現化された悪魔の城《白氷宮》。最古の魔王が一人にして原初の悪魔の1人《
その城の廊下を悠然と歩く人物がいた。
魔王レオン・クロムウェル。《
まるで自分の城であるかの如く、自然な動作で廊下を進む。その先には、彫刻が美しく設えられた大きな扉があった。この城の主が待つ、謁見の間へと繋ぐ扉である。レオンの目的はこの城の主である魔王ギィ・クリムゾンであった。
レオンが扉の前に立つと、大柄な悪魔が二体がかりで大扉を開く。そして、
「魔王レオン・クロムウェル様が到着なさいました!」
扉の内側に控えた美しき女性型悪魔が、高らかにレオンの来訪を告げた。
扉の内側には、力有る
だが、それさえも・・・謁見の間の奥、その中央の玉座にて座る魔王ギィ・クリムゾンの眼下に控える6柱の悪魔と2人の人間の威圧の前には霞んでしまう。
それは、
その戦闘能力は、
───だが、その者達でさえ、この場での自由な発言を許されていない。この場には、越えられぬ実力の壁が存在する───
今レオンの来訪を告げた緑髪の悪魔と、レオンを案内している青髪の悪魔。そしてギィの傍に控えている黒髪に銀のプレートに包まれた尻尾を持った悪魔。緑髪の悪魔のミザリーと青髪の悪魔のレインは人の欲望を具現化したかのような、美しい容貌をもち、そのたおやかな肢体は、暗黒色のメイド服に隠されている。黒髪の悪魔デミウルゴスはストライプが入った赤色のスーツと丸眼鏡をしている。
ミザリーとレイン、デミウルゴスこそが、代弁者。絶対的支配者たる魔王ギィ・クリムゾンの側近として仕えることを許された存在であり、ミザリーとレインの階級は《
そしてデミウルゴスは《
レオンが中央を通り、玉座の真下まで到達する。ミザリーとレインはそこで一礼し、ギィの左右に並び立った。同時に、玉座の主が立ち上がる。この場にて動く資格のある者は、二名の魔王のみとなった。
「久しいな、我が友、レオンよ。息災であったか?よくぞオレの呼びかけに応えてくれた。礼を言うぞ」
美しく良く通る声、真紅の瞳は銀の星を秘め、燃える様に真っ赤な髪は、血の色よりも濃く深い。背はレオンと同程度。女性の様な美しさのレオンに対し、ギィの美しさは傲岸で他者を寄せ付けない。覇者としての風格が漂う、そんな妖しい美貌。
レオンに声をかけながら、玉座の置かれた高みからレオンの下へと歩みよる。
そしてレオンの背中に腕を回し、抱きしめた。
迷いなくレオンの顔に手をかけて、接吻する。
レオンは顔を顰めてギィを押しのけると、いつもの様に文句を言った。
「止めろ。俺は男と付き合う趣味は無い。何度も言っているだろう?」
レオンは迷惑そうな表情で、ギィを睨む。
「あっはは。相変わらず連れない男だな。お前が望むなら、オレは女になってやっても良いのだがな。まあいい。場所を変えよう」
ギィは愉快そうにそう言って、レオンの返事も待たずに歩き出した。それは毎度の光景である。
この極寒の地にて、ギィの衣装は異様だ。羽織るような服装で、肌の露出も多い。しかし、寒さなど関係の無い悪魔であるギィにとっては、なんの問題もないのである。
レオンの唇を味わった感触を思い出しているのか、ギィは妖艶な美貌を妖しい笑みで彩っている。
真紅の唇を、ペロリと蛇のような舌で舐め上げて・・・その姿は、匂い立つ妖しい魅力を醸し出している。
性別自在であるギィににとっては、男も女も性欲の対象なのだった。
彼───あるいは彼女───こそが、魔王ギィ・クリムゾン。
この城の主にして、最強最古の魔王。
ギィは、レオンを案内する訳でも無く先に進む。その後を当然のように付き従うレオン。
彼等が謁見の間から出て行くまで、誰一人として動く事は無かった。
それは許されざる行為だったから。皆一様に頭を垂れ、自分達の支配者とその客人が立ち去るのを待っていた。
レオンの退出を確認し、ミザリーとレインが立ち上がる。そして、一言。
「散れ」
レインが端的に、配下の者達への命令を下した。
それからデミウルゴスはギィの命令で別室に待機しているものたち呼ぶために、ミザリーとレインは客人の為のお茶の用意をするべくその場を後にする。
この城の悪魔たちの中で最高位の存在であるミザリー、レイン、デミウルゴスだが、その仕事は彼女達の主である魔王ギィ・クリムゾンの身の回りの世話だけであった。そして、その仕事こそがこの城に於いては全てに優先されるのである。
───主の不興を買う前に、彼女達は速やかに仕事を開始する・・・。
レオンはギィに続き、最上階にある氷のテラスへと。そこは、吹き抜けとなっているのも関わらず、一切の氷雪の進入を許していない。完全に調和した、快適な環境となっている。
ギィはあらゆる環境の影響を受けないので、この場所の空調はレオンの為に整えられているのだ。
傲慢なギィだが、自身で認めた者や友人への対応には細心の心配りがなされている。
相変わらずだと思いつつ、レオンは勧められるまま椅子に座る。
「それで?例の噂は本当なのか?」
荒々しく椅子に身を投げかけるレオンだが椅子が柔らかくその身を受け止める。何時の間にかテーブルが出現し、レインがお茶を並べ始める。
ミザリーは、テラスの入り口にて何も言わずに立っていた。
彼女達が主たちの言動を邪魔する事は無く、許しを得ずに言葉を発することも無い。対等な関係などそこにはない。命令あるまで、その感情を表すことさえゆるされてはいないのだ。もしも主の命令もなく勝手に行動した場合、与えられるのは速やかな死であった。彼女たちほどに強大な強さを持つ
だからこそ、例えレオンがギィに攻撃を仕掛けたとしても、彼女達が自ら動く事は無い。
ギィは絶対支配者であり、ギィの身の安全を心配するなど不敬でしか無いのだ。
そんな訳で、彼女達の存在は無視されて会話は続行される。
「ヴェルザードのことならば事実だ。アイツは俺の元から去ったよ」
「にわかには信じがたいな。彼女は君のことを強く想っていた。そんな彼女が君の元から去るなど・・・」
レオンはギィからの返答を聞いても信じきれないでいた。ヴェルザードがギィに執着していたことをレオンは白氷宮に来る度にギィのお気に入りとなっていたレオンを敵視していたことを知っている身としてはヴェルザードがギィの元から去ったなどなにかの冗談だとしか思えないでいた。
「アイツは俺に愛を求め続けていた。だが俺にとってアイツは友人の妹でしかなかった。だから俺はアイツの気持ちに答える気はないと告げた」
ギィは少し居心地悪そうにレオンにそう答える。ギィは亡き親友でありヴェルザードの兄であるヴェルダナーヴァの願いにより《調停者》としてこの世界を見守る存在となった。故にギィは世界のバランスを保つためだけに動くことを決めたことからヴェルザードが自身に向ける想いに応えることは無いと決めていた。
「・・・まぁ私が気にすることでもないからそのことに関してはあまり追求しないでおこう。それより例の邪神共の眷属たちについてだが・・・」
「全く面倒なものだよ。いくら潰したところで湧き続けるのだからな」
レオンはヴェルザードのことはこれ以上聞いても無駄だと感じ本題に入る。そのことにギィは珍しく頭をかきながらため息をこぼす。
彼らの言う邪神の眷属とは近年暴れ回っている転生者たちの存在である。邪神とはギィたちのいるこの世界とは別次元に存在する神達の中でもゲスな連中で上位神たちによって神の称号を奪われながらもその事実を認めず逃走したもの達のことである。本物の神に数段以上力は劣るものの腐っても神であるためその力は下手な魔王よりも強いため始末に負えない。
邪神たちは再び神として成り上がるために信仰と贄を求め死んだ人間の中で簡単に操れるような欲望に正直な連中に少量の力を与え、ギィたちの世界に転生させては好きに暴せてはその過程で得られる魔素や人間や魔物の死体を供物として獲得し、さらにまだ規模は小さいものの《邪神教》と呼ばれる邪神たちを崇め奉る宗教が存在するため信仰心も獲得している。
「とは言ってもそこまで奴らのことは気にしなくてもいいだろう。女神たちに手を出したことで死神たちが動き出しているのだからな」
ギィはそう言いながら紅茶を嗜む。ギィの言う通り、力を取り戻し初め調子に乗っていた邪神たちはアクアのような戦闘力はないものの神としての力が高い女神や神に使えし神官たちに手を出し始めたことで上位神たちの怒りを買い、邪神たちを滅ぼすために神殺しの力を持った《死神》などを魂ごと存在を消し去る力を持ったもの達が動き始めていた。故に邪神たちのことをギィたちが気にしても仕方がないことである。まぁもし何かとち狂って邪神やその眷属たちがギィたちに攻撃を仕掛けた場合は地獄など生温い絶望に襲われるだろう・・・
「ギィ様。葉王様たちをご案内いたしました」
「あぁ、わかった」
扉の前にやって来たデミウルゴスはギィにそう伝えるとそのまま部屋の隅に移動し後ろにいるもの達が通れるようにする。
「やぁギィ。君が僕たちを呼ぶなんて珍しいね」
そうギィに右手を上げながら笑顔で声をかけてきた黒の長髪の少年────《
「ふん、わざわざ使いまで寄越して呼んだのだ。つまらぬことであるならばすぐに帰らせてもらおう」
次に部屋に入ってきたのは黒いライダースーツを着た金髪の青年───《英雄王》・ギルガメッシュ。はるか昔とある大国が兵器として運用すべく召喚したが有象無象に従う彼であるわけがなく、彼によって瞬く間に国を乗っ取られ暴風竜ヴェルドラと彼の眷属である《風翔龍》クシャルダオラとのじゃれ合いという名の災害に巻き込まれるまで大国としてその名を馳せていた。その後ヴェルドラのやらかしの謝罪としてヴェルダナーヴァが訪れたのをきっかけに交流を深め、今では人類の発展を見守っていた。
『そう文句を言わなくてもいいじゃないか。久しぶりの集いなんだ、楽しもうじゃないか』
次に部屋に入ってきたのは《
「・・・・・・」
そして最後に入ってきたのは全身を黒い甲冑で包み、浅黒い肌と黒い髪に赤い瞳をした男性《ギュリエディストディエス》ことギュリエ。別世界で《真なる龍》と呼ばれる存在であり、この世界とは別世界の多くのドラゴンたちを配下に持つ彼は想い人である《サリエル》の命を繋ぐためにヴェルダナーヴァにたちに願い、ギィたちに協力することとなった。
「なんだアリエルの奴は来なかったのか」
「彼女は何か気になることがあるらしく今はジュラの大森林に向かっているそうだ」
ギィはこの場に揃っていないもう1人の同盟者であるアリエルの姿がないことを聞くとギュリエがアリエルがどこに向かったのかを伝えてくれる。ギィはアリエルが向かった場所を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をする。
「よりによってそこかよ・・・まぁいいお前たちも知ってると思うがつい先日ヴェルドラの気配が消滅した。だがヴェルドラの封印されたその洞窟に中々面白い存在が生まれたようだ」
「へぇ、君がそこまで言うとはね・・・」
ギィほど長く生きた悪魔がそれほど言う存在に興味を持った葉王たちはギィの話に耳を傾けようとする。
「まぁ俺自身が直接目にした訳では無いんだが、デミウルゴスがヴェルザードの奴から聞いた話だがなんでもあのヴェルドラの洞窟に人間の記憶を持ったスライムがうまれたらしい」
「ほぅ、人間の記憶を所持した魔物か・・・それはなんとも珍しいな」
ギィの言葉に最初に反応したギルガメッシュはそう呟くが、それはギュリエ達も同じだった。人間の転生者はこれまで多く確認されてきたが別世界の人間が魔物へと転生される事例はこれまで数える程度しか確認されていない。そんな存在がヴェルドラが消滅した洞窟で生み出されたなど何か起きる前触れではないかと勘ぐってしまう。
「そのスライムの名はリムル=テンペスト。現在はジュラの大森林の中でホブゴブリン、獣人、ドワーフ、人間。さらには俺自身ですら見たことの無い魔物たちを従えているそうだ」
ギィはデミウルゴスから受けとった
『プレイヤー・・・ではなさそうだね。もし彼がプレイヤーならもっと大胆な行動を起こしているだろしね』
「それよりも何故あのメイプルがいる。まさか彼女までそのリムルとやらの配下になったのか?」
「まさかあの《人間要塞》がスライムにご執心とはね・・・」
ツァーたちは件のスライムとその配下たちを見てザワつく。雷狼竜や大海竜、氷狼竜などかつて見た別世界の竜たちと似た姿を持つ魔物たちに懐かしさを感じながらも別世界の竜がいることに危機感を感じるギュリエ。かつて世界に災いを呼んだ一因であるユグドラシルのプレイヤーではないかとリムルを疑っていたツァーは今ある情報からプレイヤーとは異なると口にするもののまだ疑いの目を向けるツァー。かつてメイプルがとある聖騎士と冒険者たちと共に暴れた際に自領が巻き込まれかけたギルガメッシュはあんな厄ブツを懐に入れているリムルに警戒を、葉王は面白そうなものが見れるだろうと期待を込めてリムルがこれから何をやるのか見守る気だった。
(シズエ・イザワ・・・まだ生きていたか)
ギィが流している映像の1つに映ったリムルを抱える少女──シズエ・イザワの姿を見たレオンはそう心の中でつぶやく。かつて召喚しイフリートを与えたが、魔人にならず人間としての生を選んだ彼女はそう遠くないうちに亡くなると思っていた。しかし彼女はイフリートに蝕まれている気配もなくそれどころか自分の配下でいた時よりも明らかに魔素量が増加していた。
レオンはもしかしたらこのリムルというスライムを利用すれば自分の目的を成し遂げられるのではないかと考え、接触すべきか考え始めていた。
それぞれ思惑は異なるが誰もがリムルというスライムに興味を抱いていた。それほどリムルとその配下たちはこの世界の調停者であるギィたちから見ても異質であり彼らの存在は間違いなくこの世界に大きな騒動を起こすだろうと誰もが口には出さないものの思っていた。
(にしても・・・)
そんな中ギィは1人、映っている映像の中の1つでリムルとギィの元を離れたヴェルザードが幸せそうに笑いあっている姿を見て驚いていた。ヴェルザードには幸せになって欲しいと願っていたギィだが思っていたよりも早くというか本当に想いあえる相手と出会えたことには正直驚いた。
(まぁあいつが幸せそうなら別にいいか・・・なぁ、ヴェルダナーヴァ・・・)
ギィは亡き親友であるヴェルダナーヴァのことを思いながらヴェルザードの幸せを願うのだった・・・
◆◆◆◆◆◆◆
特殊な手段を用いてのみ入国ができる
「おう、悪いなサンラク。いきなり呼び出しちまってよ」
「い、いえヴァッシュの兄貴からの呼び出しなら何時でも伺いますよ・・・」
ヴァッシュは手に持っているキセルのように細い人参を齧りながらラビッツの客人であるハシビロコウの頭の被り物をした半裸の青年《サンラク》は冷や汗を流しながらヴァッシュの話を聞くために正座していた。
「お前さんたちにちっと頼みてぇことがあってな。お前さんらにジュラの大森林に調査しに行って貰いてぇんだ」
「ジュラの大森林?それって確か先日封印されていた暴風竜ヴェルドラが消滅したって場所ですよね?」
暴風竜ヴェルドラはこの世界にクランメンバーを含めたゲーム仲間たちと飛ばされてからそれなりの年月を過ごしているサンラクですら有名な存在である。ヴァッシュからヴェルドラが消滅したと聞いた時はサンラクたちも驚いたものであった。
「
「はぁ・・・(ヴェルドラ様?もしかして兄貴は暴風竜と親しい関係だったのか・・・?)」
サンラクはヴァッシュの言葉にヴァッシュとヴェルドラは親しい関係だったのかと考察する。そんなサンラクの考えを読み取ったのかヴァッシュはふぅーと煙を吐きながら話を続ける。
「お前さんには話してなかったが俺等やリュカオーン、ウェザエモンを含めた7体の魔物は《七星獣》って名称で昔ヴェルダナーヴァ様に使えていたのさ」
(ヴェルダナーヴァ!?それって確か昔いたっていう竜種の一体だよな・・・。そんな存在とヴァッシュたちユニークモンスターたちとの間にそんな繋がりがあったとは・・・)
「その時にヴェルドラ様を含めた他の竜種の方々にも世話になったもんさ」
ヴァッシュはどこか懐かしそうに思い耽って虚空を眺めながらそう呟く。それは今は亡き主との思い出を思い出しているのかサンラクにはヴァッシュの表情から何も読み取れず触れるべきではないと考え静かに聞き入るのだった。
「っとすまねぇな。ちと昔のことを思い出しちまってな・・・」
「いえ、問題ないです・・・」
「まぁそんなわけで俺等たちとヴェルドラ様たち竜種の方々とは縁があるってわけよ。それでヴェルドラ様の封印に関しても他の竜種のお二方から関わってはいけないと厳命されてたんだがなぁ・・・」
そこまで言ってヴァッシュは一瞬言葉を区切ると人参を咥えなおしてから話を再開する。
「・・・ヴェルドラ様の気配が消滅したその日にジュラの大森林にヴェルザード様の気配を感じた」
「ヴェルザード様・・・それって確か現在いる竜種たちの中で最強の《白氷竜》のことですよね・・・?」
「おうよそのヴェルザード様のことよ。それにヴェルドラ様が消えヴェルザード様がジュラの大森林に現れてからあの森を含めたその周囲にざわつきが見えている。何かあると俺等が思っていたらある奴がヴェルザード様のことも含めて調べたいって言ってきてな。お前さんらにはそいつと一緒にヴェルドラ様とヴェルザード様たちのことを調べて欲しいのよ」
「なるほど・・・ちなみにその同行者というのは・・・」
「あぁそいつを今紹介するぜ。おい、入りな」
ヴァッシュは扉の奥に待機している存在に声をかけるとそれは襖を開けて中に入ってきた。それは蟷螂と蟻を融合させたような直立歩行するライトブルーの2.5mの巨大な蟲で、背中には氷柱の様な鋭いスパイクが無数に飛び出している。口に該当する場所には、虫特有の大きな下顎を持った4本腕の蟲人だった。身体から発せられる冷気は抑えてはいるのだろうが半裸のサンラクはそれでも十分寒気を感じるものだった。
「ヴァッシュ殿。此度ハ私ノ我儘ヲ聞イテクレテ感謝スル」
「そんな畏まるこたぁねぇよコキュートス。俺等はヴェルザード様に数え切れねぇ恩がある。その眷属であるお前さんの頼みくらいどうってこたぁねえよ」
蟲人の魔物────コキュートスとヴァッシュの会話を聞いているサンラクだが、会話の内容は頭に入らずコキュートスから感じ取られる威圧感に押されていた。
(なんっ・・・だこの化け物!?力は抑えているんだろうがこの威圧感は半端ねぇ!?下手したらウェザエモン並じゃねぇのか・・・!?)
サンラクは長年のクソゲーマーとしての勘とこの世界での戦闘経験からコキュートスをウェザエモンやリュカオーンたちのようなユニークモンスターたちと同等の威圧感を感じ、思わず戦闘態勢をとりそうになってしまった。
「ヴァッシュ殿、コノ者ガ・・・」
「おうよ。別世界とはいえあの死に損ないにトドメを刺した奴だ。腕は保証するぜ」
「ホゥ・・・」
(あっ、何か嫌な予感・・・)
ヴァッシュの言葉に目を輝かせたコキュートスはサンラクを見る。コキュートスの目にどこぞの幕末に汚染された天誅人斬り侍や無限スタミナのアメリカゲームチャンプ、リュカオーンにご執心のとある女クランマスターなどが向けるのと同じ狙った獲物は逃がさないと言わんばかりの強い眼をしているとサンラクは察してしまった。
「出発マデ時間ハアル。ヨケレバ一手手合ワセ願エナイダロウカ?」
「ア、ハイ・・・」
かなり近い距離に接近されての顔面ドアップと試合の申し出のダブルコンボにサンラクは迫力負けして試合をすることになるのだった。
────その後、ラビッツの闘技場にてコキュートスとサンラクの軽い手合わせが行われたのだが、互いにヒートアップしたために手合わせから本気の闘いに変わってしまい闘技場を破壊しながらコキュートスとサンラクは互いにテンションをぶち上げながら何時間も闘いを楽しむのだった。
あとがき
はい今回は最古の魔王の1人であるギィ・クリムゾンとシャングリラ・フロンティアの主人公である陽務楽郎ことサンラクたちの周囲の話になります。もし気が向けば今後章の合間にこのような他陣営の視点を入れるかもしれません。ちなみに本編で語られた《七星獣》とはシャングリラ・フロンティアに登場するユニークモンスターたちのことであり、今作のオリジナル設定としてヴェルダナーヴァの眷属の一種にしました。それとハーメルンの同じ転スラのR18小説を投稿なされている方の小説にモンハンの古龍が登場なされているのを見て自分の小説でもモンハンの古龍たちを竜種たちの因子を色濃く受け継いだ龍として登場させることにしました。他に考えているものとしてはドワルゴンの鉱山の1つの地下深くにある地脈の一角、『地脈の黄金櫃』にはマム・タロトが眠っていたり、いくつかの国も古龍が守護神のように眠っているなどと考えていますがまとまった設定は今度投稿しますね。
次の話から2章を始める予定ですが色々と原作とかけはなれたオリジナル展開をする予定なので投稿する前にこれまでのまとめとして現在登場している主要キャラたちの設定やリムルのハーレムメンバー、村にいる種族達のまとめなどを書いてから書き始めようと思いますのでもしかしたら2章の投稿が遅くなるかもしれませんができるだけ早く投稿できるように頑張りますのでどうかよろしくお願いします・・・っ!!ちなみに2章ではサンラク以外のシャンフロキャラやオーバーロードからザリュースを始めとしたキャラたちも出すつもりです。