※この作品はR-18です。

転生したらスライムだった件 スライムは彼女たちを愛する   作:有頂天皇帝

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前書き
今回でベニマルたちもオーク達との戦闘に本格的参戦します。リムルとオークロードとの戦闘も徐々に近づいております。また先日この小説のお気に入り人数が1000人を超えたこととても嬉しく思います。これからも頑張るつもりなのでどうかよろしくお願いします


第二十九話 動き出す小物と強者

シス湖では現在ガビルとザリュースを中心としたリザードマン部隊とネコマムシを中心とした獣人部隊が連携しあってオーク軍団と激闘を繰り広げていたのだが、数時間での戦闘によってかなり疲弊しておりガビルたちは追い詰められていた。

 

「どうしたトカゲ共。威勢が良かったのは最初だけか?」

 

「ほざけっ!吾輩たちはまだまだやれるぞ!!」

 

全身鋼鎧 (フルプレートメイル )を着た豚頭騎士(オークナイト )たちとゲリョスを始めとした多種多様な魔物たちの集団を率いる全身を血に染めたような漆黒の鎧を纏った醜悪なオーク、豚頭将軍(オークジェネラル )の一体がその手に握る片手斧を振り下ろしてくるのをガビルは水渦槍(ボルテクス・スピア)で受け流すが、捌ききれず後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「ガビル!」

 

「よそ見をしている余裕があるのか、トカゲ風情が!!《雷撃(ライトニング )》!!」

 

「くっ!?」

 

ガビルがオークジェネラルの一撃で弾き飛ばされ地面を這いつくばっている姿を心配して声を上げるザリュースに向けて死者の大魔法使い(エルダーリッチ )のイグヴァがその手から一直線に進む雷撃砲を放つが、ザリュースは既のところで回避することに成功したがその一撃はザリュースの後方にいた仲間のリザードマンに当たり、一瞬にして倒れ伏してしまった。

 

「ええ加減にせいよこの豚どもがっ!!」

 

「そちらこそ、そろそろ限界なのではないか?」

 

「抜かせっ!!」

 

既に《月獅子( スーロン)》を発動したネコマムシはオークジェネラルに対して鋭い爪撃をくらわせるが、長時間の戦闘とスーロンを発動したことによって限界が近づいているのか最初の頃に比べてその爪撃は遅く威力も足りないためオークジェネラルの鎧を浅く傷つけるだけで返しの大盾によるシールドバッシュをまともにくらってネコマムシをはじき飛ばす。

 

ゲルミュッドの卑劣な罠によってガビルとネコマムシたちは敵陣のど真ん中に飛ばされてから既に3時間は経過しており、何とか今のところ死者は出ていないが負傷者は全体の3分の2を超えておりガビルやザリュース、ネコマムシを始めとした有力な戦力もまだ残ってはいるものの圧倒的な数の差を前に押し込まれていた。リザードマンやゴブリンの兵士たちの中に絶望が生まれ死を受けいれ諦めようと心が折れているものたちが現れ始めている中でネコマムシやペドロたち獣人のメンバーは心が折れるどころかむしろ戦意を滾らせながらオークジェネラルたちを睨む。

 

「理解出来んな。この圧倒的な戦力を前にして尚戦意を保てるとはな。貴様らは力量の差を理解出来ぬほどバカなのか?」

 

オークジェネラルはネコマムシたちに対してそう見下すように言うが、それに対してネコマムシは笑みを浮かべながらオークジェネラルに対して言い返す。

 

「まだワシらの牙は折れておらん。ワシら牙が折れん限り戦いを止めるなど有り得んしリムル様に申し訳無いじゃろうが」

 

ネコマムシが獰猛な笑みを浮かべるのに合わせてかれらペドロたちもまた好戦的な笑みを浮かべながら武器を構える。それをオークジェネラルはバカにするように見下す。

 

「下らんな。そのような意地を張ったところで貴様らは我らの餌になるしかないのだよ。わかったら大人しく────」

 

オークジェネラルが最後まで言葉をいい切る前に戦場の後方で天が落ちたかのような轟音が戦場に轟いた。ガビルたちはオーク軍が何かをしたのかと疑ったが、オークたちの方でも予想外の出来事であるのか驚愕で顔を歪ませていた。両軍が突然の轟音に驚いている中、ネコマムシたちはそれが誰によるものなのかを瞬時に理解していた。

 

「ようやく来よったか・・・!」

 

ネコマムシが獰猛な笑みを浮かべていたのとほぼ同時にリザードマンたちを囲んでいたオーク軍を薙ぎ払いながら現れたのは三体のオークナイトを噛み砕いているスカーを筆頭としたタイラントサウルスたちを中心とした魔獣部隊がオークたちを蹂躙しながら突破してきた。スカーたちの姿を見たことのあるガビルとザリュースはそれが援軍だと気づいたが、他のリザードマンやゴブリンたちは突然現れたスカーの姿に本能的に恐怖してしまい動きが止まってしまっていた。だがそんなリザードマンたちのことなど知ったことかと言わんばかりにスカーは咥えていたオークナイトたちを鎧ごと噛み砕くと次の獲物としてオークジェネラルにその牙を向けた。

 

「っ!?ええいっ!!」

 

スカーの牙がこちらを捕らえていることに気づいたオークジェネラルは混沌喰を発動させながらその手に持つ片手斧をスカーの頭部に振り下ろすが、オークジェネラルの一撃がスカーに当たるよりも先にスカーの牙がオークジェネラルの胴体を噛みちぎり絶命させた。混沌喰もスカーに襲いかかっていたがスカーの体表に触れた瞬間燃え散ってしまいその腐食の力はスカーを傷つけることは叶わなかった。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「おいおい、戦場で余所見とは随分余裕だな?」

 

「なっ!?」

 

一瞬にしてオークジェネラルが倒されたことに驚いたイグヴァが思わずスカーの方を見てしまうが、そのような無防備な姿を見逃す訳もなくスカーたちに紛れて接近したサンラクはイグヴァの背後に回ると同時にその両手に握る両刃の片手剣《傑剣の憧焉終剣(エスカ=ヴァラッハ )》を構えると同時にイグヴァに攻撃を仕掛ける。

 

「《ドリルピアッサー》!!」

 

「ぐぎゃっ!?」

 

螺旋状にエスカ=ヴァラッハを回転させながら放ったその一撃はイグヴァの胴体に風穴を空け、さらに追撃による十字切りによってイグヴァは完全に絶命し塵となって消えた。スカーとサンラクの登場をきっかけにベニマルたちを初めとした援軍が戦場に到着しオーク軍へと攻撃を開始した。なお、アルベドやアイズなど一部の戦力はリムルと ペンシルゴンたちの捜索をしているため援軍の数は当初に比べて減ってはいるものの質に対してはオーク軍を上回っているため彼らはその力を存分に振るうのだった。

 

「赤、黒・・・足して緋色!《混合拳気 火緋彩(ヒヒイロ )》!」

 

2色の闘気を混ぜ合わせ拳に黒色のオーラを纏わせ自身を強化させたオイカッツォは石の棍棒を振りかぶってくるミノタウロスの一撃を回避し、その懐に潜り込むと同時にその拳をミノタウロスのがら空きの胴体に叩き込んだ。

 

「《デュアルインパクト》!!」

 

オイカッツォの左手に刻まれた十字の刻印をミノタウロスの胴体に叩き付けその胴体に十字の刻印を浮かび上がらせその刻印目掛けて右ストレートを叩き付けることによって凄まじい衝撃がミノタウロスを襲い、ミノタウロスは勢いよく殴り飛ばされた。

 

「雷鳴八卦!!」

 

ヤマトは大口を開けながら食い殺そうと襲ってくるインファントドラゴンの頭部に稲妻のような膨大な覇気を纏わせた建を叩きつけるとインファントドラゴンは頭と牙を砕かれながら勢いよくぶっ飛ばされオークやアンデッド獣たちを巻き込みながら地面を転がっていく。

 

「《アポカリプス》・・・!!」

 

サイガ-0が《神魔の大剣(アンチノミー)》をダイミョウザザミに向けて勢いよく振り下ろすとその硬い外殻ごと真っ向から砕きながら切り裂いた。

 

絶氷魔凍風(ブリザードストーム )!!」

 

雪泉はその手に握る鉄扇を振ると強力な吹雪が発生し湿地帯の水面を凍らせながら襲いかかるドスイーオスとイーオスたちの群れを一瞬にして氷像に変えると同時に粉々に砕いた。

 

「我が主より受け継いだ力、その身で味わうがいい!!」

 

ランガは抑えていた力を解放させ《嵐牙族》から《黒嵐星狼 (テンペストスターウルフ )》へと進化を果たす同時に雷の柱が辺りに乱立し天と地を結び、巻き起こる数柱の竜巻が発生しオークナイトやオークジェネラル、ギガントバジリスク、怪鳥ルパンダたちを嵐や雷により次々と殺戮するエクストラスキル《風操作》と《黒稲妻》を併用させることで発動する広範囲攻撃技──《黒雷嵐(デスストーム )》を放つ。

 

「《断刀鬼刃》!!」

 

「《朧・流水斬》・・・!!」

 

「《狐火流 火柳一閃》!!」

 

シオン、ハクロウ、錦えもんを筆頭とした元オーガの里の剣士たちはオーク達に強い怒りを抱きながらオーガの里に受け継がれてきた剣術と鬼人族へと進化したことで得た新たな力、鬼の巣窟にて入手した新たな武器たちを用いて次々とオークたちを斬り捨てていく。

 

「ったくどいつもこいつも好き勝手暴れてるな・・・。まぁ俺も気持ちはわかるがな」

 

「何を、言っているんだっ!?」

 

ベニマルは指示もなく好き勝手に暴れ回る仲間たちに呆れながらも愛刀《紅蓮》でオークたちを撫で斬りしながら歩みを進めていく。そんなベニマルに恐怖してオークジェネラルたちは思わず後ずさりしてしまう。

 

「お前たちには関係ない事だ。さぁどいつから焼かれたい?」

 

ベニマルは右手に黒炎珠を生み出しながらオークたちを脅すと同時にそれをオーク兵の密集地点に向けて投げ、黒炎球が内包する破壊力(エネルギー )を解放させ黒炎球の到達地点を中心にして半径百メートルにも渡る範囲を黒い半球形(ドーム )が覆う。ドームの中にいたオーク兵たちは一瞬にして燃え上がり、灰も残らないほど焼き尽くした。黒いドームが数秒して消え去った後、そこに残るは焼けた地面のみ。湿地帯であったその場所は、恐るべき高温によって変質し水分が蒸発し表面はガラス状に焼けただれていた。これこそがベニマルが鬼人族へと進化した際に獲得したエクストラスキル《炎熱操作》、《黒炎》、《範囲結界》。そして自身の妖炎術を加えて編み出したベニマルの《自己流術式(オリジナル)》である広範囲消滅攻撃《黒炎獄(ヘルフレア )》である。

 

「道を開けろ、ブタども!」

 

ベニマルは邪悪な笑みを浮かべながらオークたちに告げながら歩みを進めていく。ベニマルたち圧倒的な強者の出現はユニークスキル《飢餓者》と《洗脳者》の影響にあるオーク兵と魔物たちですら心の奥底に潜む根源的な恐怖を呼び起こす程のものであり、先程までリザードマンたちへの強気な態度などなかったかのように怯えが見え始めていた。

 

────ベニマルの一撃は、この戦場にベニマルたちが参戦したという狼煙があげられることとなったのだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ベニマルたちが参戦したのと同じ頃、リザードマンの巣窟にも首領たちの元に援軍が辿り着き彼らを守りながらオークたちを殲滅していた。

 

「オラオラァ!死にてぇ奴からかかってきな!!」

 

先陣を切ったクーフーリンは巧みな槍さばきを用いて次々とその手に構える朱槍《ゲイボルク》でオークたちの命を刈り取り、それ以上の数を離れた場所でスカサハが蹂躙していたり、

 

「ブレイズエンド!!」

 

「フォトンエッジ!!」

 

クーフーリンたちに続いてリムルがメイプルたちから貰った(メイプルたちがダンジョン攻略した際に入手した)魔導人形達のうち戦闘に特化した2人である、ホムラとヒカリはそれぞれの武器である赤と白の大剣を用いて襲い来るディノハウンドやスカルデビルたちを切り伏せていく。

 

「フハハハ!!さぁ次は誰が相手をする!!」

 

ベルディアはバスターソードでオークやその配下の魔物であるトライホーンホースやヘルハウンドなどを倒しながら倒した者たちをアンデッドへと変えて配下を増やしながら奥へと進んでいく。

 

(やはりワシの選択は間違っていなかった・・・)

 

リザードマンの兵士たちの治療を受けながらクーフーリンたちの援軍たちの戦いを見ている首領は自分の判断が間違っていなかったのだと判断し、リザードマンたちの未来は潰えないのだと安堵していた。

 

「ば、バカな・・・」

 

「理解したか?これがリムル様の配下である我らの力だ」

 

ソウエイの糸によって体を雁字搦めに拘束されているオークジェネラルは目の前に繰り広げられている光景に動揺しているのを無視してソウエイはオークジェネラルの前に立つと氷のように冷めきった目で見下ろす。

 

「さて・・・見えたか?オーク共を操る者よ」

 

ソウエイは拘束しているオークジェネラルの頭を掴むとその瞳を覗き込みながらこちらを見ているだろうゲルミュッドに対して宣言しながら糸を握る手に力を込めた。

 

「次は貴様の番だ。オーガの里を襲い我ら鬼人とリムル様を敵に回したこと」

 

「まっ────」

 

「精々後悔するがいい」

 

ソウエイはオークジェネラルの命乞いを無視して糸を指で弾くと糸はオークジェネラルの体にくい込みそのままバラバラの肉塊へと変えた。その様子をオークジェネラルの視界越しに遠く離れた場所で水晶で見ていたゲルミュッドはワナワナと怒りで体を震わせながら怒り任せに映像が映らなくなった水晶を地面に叩きつけた。

 

「クソっ!あのスライムを封じたってのにどうしてこっちが押されてるんだ!?」

 

ゲルミュッドはグラファから与えられた宝珠の力でリムルを封じることに成功したことを確認したことでこれで勝利は確実であると確信していたのだが、結果はそう上手くいかず数はまだオーク軍が上回っているがベニマルたちの圧倒的な力を前にその数を減らしていきこのまま何もしなければその数の差も覆されてしまうと不安を抱いていた。

 

「このままでは最悪オークロードまでもが・・・っ!いや、そんなことはさせてはならん!」

 

ゲルミュッドはオークロードを討伐されてしまうという最悪の事態が頭によぎってしまい、もしそうなればゲルミュッドはお仕えするあの方によって消されてしまう恐怖で体を震わせながらなんとしてでもそれを避けるために手段を選んでいられないと焦っていた。

 

「おい奴隷ども!とっとと武器を用意して出撃の準備をしろ!!」

 

「「「「「「はい・・・」」」」」」

 

ゲルミュッドはさっきまで魔物たちの性処理道具として使っていた香織たちに罵声を浴びせながら命令を出すと香織たちは黒く淀んだ瞳をしながらゲルミュッドの命令に従いながら最低限の衣服とゲルミュッドが用意した低品質の武器を装備し始める。彼女たちにはゲルミュッドに逆らう力も気力も既になくし心が折れているためゲルミュッドに従う人形と成り下がっていた。

 

────彼女たちの心を縛る鎖は硬く結び付けられこの異世界に対して強い絶望を抱いていた。しかしそれもこの後出会う1人のスライムによって変わってしまうなどと誰が思うだろうか。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

隠れアジトにて脳無と戦闘を繰り広げているリムルは終始脳無たちを圧倒していた。

 

「どうした木偶の坊ども。少しは歯ごたえのある所を見せたらどうだ?」

 

「・・・!」

 

リムルは脳無の剥き出しの脳みそにかかと落としを決めて脳無を絶命させると同時に近くにいた別の脳無に対して挑発するように手招きすると、挑発に怒った脳無たちは牙をむき出しにしながら三方向からリムルに殴りかかってきた。リムルはそれをスライム状態になることで回避すると同時に脳無の背後に回ってそのがら空きの背中に攻撃を仕掛ける。

 

「《狂飆の覇剣(ヴォーテクスエッジ )》!!」

 

リムルは閻魔に嵐を纏わせるとそのまま脳無の背中に斬撃を繰り出し、脳無は背中をズタズタに切り裂かれながら上半身と下半身を分けられ上半身のみとなった脳無はすぐさま再生させようと下半身と繋げようとしたが、再生させるよりも先にリムルは上半身と下半身をそれぞれ黒稲妻と魔氷牢球(アイシクルスフィア )によって消し炭と氷漬けにすることで再生を防いだ。

 

「・・・!」

 

「遅いんだよ!」

 

仲間の脳無が倒された隙をつこうと右腕を肥大化させリムルに拳を振り下ろそうとする脳無だが、拳が届くよりも先に天羽々斬によって拳を切り裂かれた。脳無はすぐに再生させようとするが切断面を凍らせられているため再生を阻害され再生ができず、その隙にリムルは《邪悪喰》を発動して脳無を一瞬にして肉片が残らないほど喰い散らかした。

 

「・・・・・・」

 

最後に残った脳無は同胞である4体の脳無が為す術もなく倒されている姿を目の当たりにして迂闊な手を出せないと考えるが、そんな考える時間を与えないと言わんばかりにリムルは閻魔と天羽々斬に黒雷と黒炎のエネルギーを纏わせながら十字に刀を振るうと十字型の斬撃波が放たれた。

 

「《混成魔導十字斬波(サザンクロスブレード )》!!」

 

2つの属性魔法が混ざった十字型の斬撃波は脳無の体を十字に切り裂くと同時に黒雷と黒炎によって体を焼き瞬く間にその肉片を炭へと変えた。これによって五体の脳無を倒しきったリムルは春日部から情報を引き出すために脅迫しようと先程まで春日部がいた場所に視線を向けるがいつの間にか逃走していたのか影も形もなかった。

 

「面倒な。まぁいい隠れてるなら虱潰しに探せばいいだけだ」

 

リムルは刀を鞘に収めながらも戦闘態勢を解かずに《魔力感知》で春日部を探ると隣の壁から奇妙な魔力たちと春日部の魔力を感じとり、そのまま壁を蹴り砕いて壁の奥へと進む。そこでリムルが見たのは辛うじて人型を留めているが醜い肉塊が部屋の至る所に木箱の中に押し詰められている姿と部屋の奥で息を荒らげている春日部の姿があった。

 

「お前のご自慢の脳無は全部倒したぜ。大人しく情報を吐いてくれるなら命だけは勘弁してやるぜ?」

 

「だ、黙れ下等なスライム風情がっ!!まだ私には切り札がある!!」

 

春日部はそう言うなり懐から注射器を取り出して自分の腕に刺した。すると春日部の体はボコボコッと膨らみながら肥大化し筋肉ダルマのような姿へと変貌させた。見た目だけでなく体内に保有する魔素量も上昇したことから今のは投薬によるブーストなのだとリムルは判断した。

 

「フハハハ!!どうだ見たか!これこそが私の最高傑作!!脳無どもとそこの失敗作共によって完成したこの《ディアボロスの雫》さえあれば私は無て─────」

 

春日部は自分の力に酔いしれているかのように叫びながらリムルを殴り飛ばそうとしたが、その拳が振り下ろされるよりも先に一瞬にしてリムルによって氷漬けにされ氷像へと姿を変えた。春日部の停止を確認したリムルは春日部が失敗作と吐き捨てたこの肉塊たちを調べることにした。

 

「大賢者、これらは一体何なんだ」

 

《解。彼女たちは体内の魔力が暴走したことによってその制御が効かずこのような姿になっていると推測されます。》

 

「治すことは可能か?」

 

《解。魔力回路を罹患者に合わせて改変・治療することにより治療は可能です。》

 

「ならやってくれ」

 

《告。了解しました。》

 

リムルは目の前の醜い肉塊となってしまったものを助けられる可能性が分かるとすぐに大賢者のサポートを頼りにしながら魔力回路の治療を始める。魔力が暴走していることによって魔力回路はズタボロな上に複雑に絡み合っていたが、リムルは大賢者のサポートによってものの数分で魔力回路の治療に成功した。

 

「嘘・・・」

 

魔力回路を正常にしたことによって醜い肉塊だったものはスタイル抜群の金髪エルフ美少女へと姿を変えた。エルフ美少女は自分の姿が戻っていることに困惑しながら嬉し涙を流していた。元の姿になったのを確認したリムルは次の子を治療しようとエルフ美少女に背を向けると部屋の扉を壊しながら入ってきたのはホブ剣と護衛エルフを始めとしたリムルの街から逃走した裏切り者たちとトロールやレッサーオーガなどの魔物たちだった。

 

「クソスライムをぶっ殺すだけで女を抱けるってんだから楽な作業だな」

 

「そうだな。それに全てが終わった際には村の管理は我らに任せてもらえるというのだからあの方についたのは正解だったな」

 

ホブ剣と護衛エルフは実力差も分からないのかスライムだと言うだけでリムルを格下扱いしてこの戦いが終わったあとのことを考えていた。リムルはホブ剣たちの会話を聞きながらそんな叶えられない夢物語を語っている彼らを鼻で笑いながら運が良かったと笑みを浮かべる。

 

「ちょうど良かったよ。お前らみたいなクズ共なら遠慮しなくていいからな」

 

「ハ?何言って────」

 

ホブ剣の部下であるゴブリンがリムルをバカにするようなことを言いかけたが最後まで言い切るよりも先にその上半身を食いちぎられた。突然のことにホブ剣たちが動揺する暇もなくゴブリンを食いちぎった存在───リムルの分身体が擬態した《嵐蛇(テンペストサーペント )》は口元から血を滴らせながら次の獲物を狙うと言わんばかりにホブ剣たちに襲いかかった。そしてそれはテンペストサーペントだけでなく、リムルは次々と分身体を生み出してはエビルムカデや嵐牙族、オークジェネラルなどリムルがこれまで捕食してきた魔物たちに擬態させてはホブ剣たちを襲わせ食い散らかしていく。

 

「助かったよ。彼女たちを治療した後にオークロードと戦闘を控えてたから魔力が足りなくなるところだったんだ」

 

リムルは分身体たちから送られてくる魔力を使って治療を行い、ホブ剣たちに視線を向けずに作業を続けていた。転移される前に大量の魔物たちを捕食したことでかなりの魔素量を体内に蓄えていたリムルだが、このまま戦闘を続ければオークロードとの戦闘に不安を感じさせられるところだったがホブ剣たちの登場によって最悪の事態は避けられるだろうと考えた。

 

────その後リムルは擬態した分身体たちがホブ剣たちを食い散らかしている間に500人以上のエルフ、獣人、人間たちの魔力回路を治療しその体を元の姿へと戻し全員がリムルへと忠誠と敬愛を向けることとなった。そしてそれからリムルはペンシルゴンが見つけてくれた時と空間を操る魔道具を停止させ、隠れアジトにあった転移陣を使用してリムルもまた戦場へと赴くのであった。




あとがき
今回最後の方に《陰の実力者になりたくて》のヒロインであるアルファたちがちょろっと登場しましたが本格的な登場はまだ先になります。予定としては次回リムルとゲルミュッドが出会いリムルとオークロードと本格的な戦闘をさせたいなと考えています。リムルとオークロードの戦闘は原作と変更する点があるかもしれませんがよろしくお願いします。
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