※この作品はR-18です。

余だけのマスター   作:若杉優太(テト/teto)

8 / 11
今回のお話は完全にスピンオフ的な物語です。(アーケードのドラコーは出てきません)



スピンオフ
麗しき余のマスター(前編)


「はぁ……今日も余の旦那様は居らぬのか……」

 

 食堂の隅にて、珍しく落ち込んだ姿を見せるのは立香の妻・ドラコー。

 普段は元気よく他のサーヴァントと談笑している彼女だが、今日はテーブルに突っ伏し、見るからに元気がなさそうな状態で時が過ぎ去るのを待っていた。

 その理由は。

 

「ぅぅぅ……昨日には帰ってくると言っていたのに、全然帰ってこないではないか!」

 

 「2日ほどで帰ってくるから」と言葉を残し、そそくさレイシフトへ向かってしまった彼。

 いつものことではあるが、案の定2日で戻っては来ず、3日目が過ぎようとしていた。

 もちろん、立香に帰って来れない事情があるのはドラコーも理解はしている。

 彼がどれだけの思いを持ってマスターとして戦っているのかも全て知っている……だが。

 

「(少しは余がどんな思いをしてそなたを待っておるのか考えろ……ばか)」

 

 無茶ばかりする馬鹿真面目な夫、立香。

 この場には居ない彼に頬を膨らましながら愚痴を溢しつつ、ドラコーはおもむろに席を立った。

 

「ここに居ても気分は晴れぬな。少し、外の空気でも吸うとしよう」

 

 がっくりと肩を落とし、とぼとぼと食堂を後にするドラコー。

 どんよりとした雰囲気を周囲に撒き散らすようにして立ち去っていく彼女の姿に、他のサーヴァントは心配そうな表情で見つめつつも、声を掛けることができずにその後ろ姿を見送るのだった。

 

 

**

 

 

「何か……楽しいことでもないものか……」

 

 食堂を出た後も、ドラコーは幽鬼のようにふらふらとストームボーダーの廊下を歩いた。

 傍から見れば怖気がするような暗い表情を見せ、行く当てもなくストームボーダー内を徘徊する彼女に対し、職員やサーヴァントは怪訝な瞳を向ける。

 だが、そんな目線を気にする余裕もないほどにドラコーは傷心していた。

 

「(マスター、そなたはどこに居るのだ?)」

 

 レイシフトのため、今はストームボーダー内に絶対に居ないであろう愛しき夫。

 彼が一緒に居ないだけで、不安で胸がいっぱいになる。

 余計な心配だと分かっていても、ついつい立香の身を案じてしまうのだ。

 

「何事もないとよいのだがな……」

 

 そう願い、ドラコーはふと廊下の正面に視線を向ける。

 すると、駆け足でこちらへ向かってくる黒髪の女性が目に入った。

 

「(ん?何か余に用事でもあるのか?)」

 

 見た所カルデアの職員のようだが、ここに来てからは初めて見る顔だ。

 もしや侵入者か……?

 一瞬だけその可能性を考えてみたものの、侵入者にしては妙に弱々しく見える。

 怪訝な瞳で女性を再度眺めると、ドラコーは首を傾げた。

 

「(むぅ、やはり見たことがない顔だ……少し、警戒しておくか)」

 

 そうして、ドラコーが疑り深く女性を観察していると、息を切らした様子の彼女がようやくドラコーの前へとやってきたと同時に――その場へと倒れ込んだ。

 

「なっ……!?だ、大丈夫か!?」

「はぁ……っ!はぁ……っ!つ、疲れた……」

 

 敵かどうかを探りを入れる暇もなく、大の字になってぐったりとなってしまった謎のカルデア職員。

 ドラコーは警戒心をすぐに解き、女性の傍へと駆け寄る。

 

「おい、しっかりしろ。一体、そなたに何があったのか教えるのだ」

「ぅ……うーん……やっぱり、体力が落ちてるみた……い」

 

 よほどの全力疾走をしていたのか、女性はうわ言を呟きながらドラコーの腕の中で意識を朦朧とさせている。

 見た限りでは外傷はなく、単に走り過ぎでばてているだけのようだが、このままでは話を聞くこともままならないのは明らかであった。

 

「きゅぅぅぅぅ……」

 

 完全に伸びきってしまった状態の彼女を無理矢理起こすわけにもいかず、かといってこのまま放置するわけにもいかない。

 となれば、取るべき手段は一つしかなくなってしまう。

 

「はぁ、仕方あるまい……特別に余が介抱してやる」

 

 何とも面倒くさいことに巻き込まれてしまった。

 ドラコーは大きく溜息をつきながらも、女性の手と足をひょいと持ち上げ、そのままお姫様抱っこの体勢で自身の部屋へと歩みを進める。

 

「(とにもかくにも、この者から話を聞かねば)」

 

 見かけない顔ではあるが、立香のことについて何か伝えようとしていたことを考えると、カルデアの関係者であるのは間違いないのだろう。

 結局、ドラコーは腕で気絶する女性が何者か分からぬまま自室へと急ぐ。

 彼女の右手の甲が、赤く光っているのに気付かないまま……

 

 

 

**

 

 

 

「まったく……ただでさえ旦那様が帰らないというのに、何故余が一人で見知らぬ女を介抱せねばならんのだ」

 

 ぶつぶつと文句を言いながらも黒髪の女性を自室のベッドに寝かしたドラコーは、怒り心頭な様子で女性の回復を待っていた。

 だが、かなりの疲労がたまっていたせいか女性は一向に目を覚ます気配がない。

 

「(ぐぬぬぬ、早く起きぬか馬鹿者!余は早くそなたから話を聞きたいのだぞ!)」

 

 穏やかな表情で吐息を立て、ぐっすりと眠る女性の寝顔。

 その頬を引っ張って叩き起こしてやろうかと思う程にフラストレーションを溜めていたドラコーだったが、彼女が何者か分からない以上は下手な真似はできない。

 それが分かっているからこそ、ドラコーは大人しく彼女の眠る姿を眺めることしかできなかった。

 

「ああ、マスター……余はそなたとの交わりが恋しい」

 

 元々、そこまで性欲がない立香ということもあって、ドラコーが交わったのはウエディングドレス姿で彼へ迫ったあの日が最後だ。

 それ以降は交わりどころか接吻すらまともにしていない。

 もちろん、ドラコーから何もアプローチをしなかったわけではないが、立香に夜の誘いをかける度にやんわりと断られてしまっていた。

『ごめん、今日はそんな気分じゃないんだ。また今度の機会に誘ってほしい』

 そんなことを言われ続け、気付けば数週間。

 ドラコーは完全に欲求不満の状態に陥っていた。

 

「むぅぅぅぅ!!どこに居るのだ、マスター!」

 

 備え付けのテーブルに腰を掛けつつも、足をジタバタとさせながら立香のことで頭をいっぱいにするドラコー。

 食堂の時のようにテーブルへ突っ伏し、拗ねた顔でいつになるかも分からない女性の回復を待ち続ける――

 

「ん……ぅ。すぅ……すぅ……」

 

 ドラコーが複雑な表情で見つめているのにも気付かず、穏やかな顔で眠り続ける黒髪の美女。

 相も変わらず呑気に眠る彼女に苛立ちを覚えるものの、やることもないドラコーはじっと彼女の顔を眺めた。

 

「……」

 

 背中まで伸びる美しいストレートの黒髪はもちろんのこと、全体的に細く整った身体が特徴的である彼女。

 こうして顔を見るまでは地味な女だと思っていたドラコーだったが、近くでまじまじと彼女を観察してみると相当な美女であることが伺える。

 

「(こやつ……顔も相当に良いが、中々身体も良い身体をしておるではないか)」

 

 身体のラインが見えづらく、露出も少ないカルデア職員の制服の下に眠る美麗なボディに気付いたドラコーは、ジト目で彼女の観察を続けた。

 当然ながら特段興味があったわけではなく、暇潰しのつもりで彼女を観察していたドラコー。

 最初はダルそうな瞳を向け、あくびすらしていたのだが……

 

「もっと、そなたの身体を見せるのだ」

「んん……ぅ」

「くくっ、やはり美しい身体だ。もしも余が結婚していなければ、もしかしたら……」

 

 女性が眠りについているのをいいことにし、ドラコーは手慣れた様子で着ていた制服を脱がせてしまう。

 だが、そうなっても彼女の目は覚めず、下着姿ののまま未だに気持ちよさそうに眠っていた。

 

「ふふっ、不思議だ……そなたを見ていると無性に襲いたくなってしまうぞ。襲ってそのまま、余の物にしてしまいたくなる」

 

 同性ではあるが、目の前の麗しい女性を自分の思うように犯してみたい。

 この女性の可愛らしい顔と、顔に似つかわしくない豊満な胸に目をやりつつ、ドラコーはその瞳を欲望にまみれたものへと変えていく。

 そう、獣(ビースト)らしい邪悪な瞳に。

 

「食べても、よいか?名も知らぬカルデア職員よ」

「んん……ぅ、ぅぅ……」

「大丈夫、少し気持ちよくなるだけだ。危害は加えないから安心するとよい、ただ――」

 

 言葉を溜めると共に邪な笑顔を浮かべ、ドラコーは女性へと語り掛ける。

 

「今後、余でしか満足できなくなるかもしれぬがな?」

 

 最早相手がカルデア職員であろうと知ったことではない。

 自分の欲望を満たすため、まだ誰かも分からぬ女性を犯す。

 もちろん、頭の片隅では自身が相当まずいことをしているのを分かってはいたが、彼女の服を脱がしてしまった今では引き返すことなど無理だ。

 なら、後は後悔の残らぬよう全力で楽しむに尽きる。

 

「(そなたで発散させてもらうぞ、余の内に溜まった性欲を……)」

 

 時折溢れ出そうになるよだれを口内に留めつつ、ドラコーは下着だけの姿となった彼女を見つめた。

 蕩け切った淫らな目で。

 

 

**

 

 

「さて、まずは乳房を改めさせてもらおう」

 

 美しい見た目に反して、黒色の地味なブラジャーを付けた目の前の職員。

 そんな彼女のブラジャーを何の躊躇いもなく剥ぎ取り、ドラコーは嬉しそうな表情で露わとなった乳房を眺める。

 

「やはり相当に大きいな、もしかしたら余の胸より大きいかもしれぬ」

 

 自身よりもたわわに実った二つの大きな玉。

 着痩せするタイプだったのかは分からないが、これほどまでに豊満な胸を持っているとは思いもしなかった。

 ある意味、自分はとんでもない掘り出し物を引き当てたのかもしれない。

 

「(余は運がいい、こんな極上の獲物を食べることができるのだからな……)」

 

 すっかり理性のタガを外してしまったドラコーを止める者が居ない中、ドラコーは自身の欲望のままに職員の柔らかな乳房へと手を伸ばす――

 

「ひ……ぅ、っ……!?」

「とても愛らしい声だ……♡もっと余にその声を聞かせろ」

「ん……ぅ!ぅ……!」

 

 まだ性経験が浅いのか、目の前の彼女は胸を軽く揉まれただけで激しく身体を震わせる。

 だが、そんな彼女に容赦をすることなく、ドラコーは両手を使って乳房を揉みしだいていく。

 

「ほら、ほらほら……っ!余はかなり溜まっておるからな……っ!あまり優しく愛撫はしてやれんぞ……!」

「ん……っ!ぁ……!」

 

 中々彼女が起きる気配が無いのをいいことにし、ベッドを大きく揺らしながら彼女の胸を上下左右に揉みつつ、その感触を全力で楽しむドラコーの姿。

 ドラコー自身は既に夫を持つ立派な人妻であるはずなのだが、まるで女に飢えた男のように職員の乳房へがっついている。

 これまで立香に相手をしてもらえなかった鬱憤を晴らすが如く、溜まりに溜まった性欲をぶつけた。

 

「む……?まさか、もう秘部を濡らしてしまったのか?」

「っ!んっ、んっ……!」

「くくっ、少し胸を揉んだだけで濡らすとは中々淫らな娘だ。そなたも余と同じように溜まっておったのか?ん?」

「ふぁ……んぁ……!」

「安心するがよいぞ、余はとても優しいからな。そなたのような生娘の秘部をいきなり責めたりはせぬぞ、その代わり……」

 

 胸を揉む手の動きを少し緩め、若干間が空いたかと思ったのも束の間。

 職員の乳首へ、ドラコーの舌が当てられる。

 

「んふふ……♡じっくりと、下ごしらえをさせてもらうからな?れる……んんっ」

 

 いきなり乳首をしゃぶることはせず、ドラコーは自身の舌でつつくようにして乳首の先端を責め立てつつ、彼女の顔を愛おしそうに見つめた。

 

「(ああ、何と愛い顔をしておるのだ。何故そこまで余の心を滾らせる?そこまでして余の寵愛を受けたいのかそなたは?)」

 

 顔自体はとても美人ではあるものの、漂う雰囲気は良く言えばほんわかとしており、悪く言えば地味な雰囲気をしている彼女。

 正直、探せばどこにでも居そうな普通の女性であるように思えるのだが、不思議とドラコーは目の前の彼女のときめきを覚えていた。

 そう、立香と初めて会った時と同じときめきをだ。

 

「れる、れる……どうら?しょろしょろ、れりゅ……んちゅ。起きてもよいではないのか?」

「ぁ、ん……ん、ぅ……」

「むぅ、やはり起きそうにないな」

 

 眠り姫の如く一向に目を開けようとせず、ただ一方的にドラコーからの責めを受け続ける女性職員。

 ドラコーとしてはかなり激しい快楽を与えているつもりなのだが、彼女は多少の喘ぎ声を出すだけで目を覚まそうとはしない。

 

「(まさかここまでしても起きぬとはな……よほど疲れておったのだろうか?)」

 

 当初は単なる疲労困憊だと思っていたものの、これ程まで身体を触って目を覚まさないのは流石におかしい。

 もしや、何か身体に重大な異常でもあるのだろうか?

 そんな考えが一瞬浮かぶと同時に、熱に浮かされていたドラコーの思考が徐々に冷静さを取り戻していく。

 

「(よくよく考えれば、とんでもないことをしでかしてしまっておるな……余)」

 

 廊下で倒れたまま動かなくなってしまったカルデア職員を介抱して自室まで連れて行き、そのままベッドへと寝かした。

 ここまでなら何の問題もなかっただろう。

 だが、寝かした職員の身体を好き勝手に弄り、自分の欲を満たしている今の状況は確実にバレたらまずいことになる。

 特に立香に知られれば、大きな失望を買ってしまうことは間違いない。

 

「ど、どうしたものか?このまま不完全燃焼で終わるのも、少し残念なのだが……」

 

 胸を散々揉みしだき、乳首まで舐めたとなっては最後まで極上の獲物を最後まで味わい、彼女を全て自身の物にしてみたい。

 しかし、立香のことや今の自分の立場を考えれば、この辺りで彼女との戯れは止めておくべきだ。

 そう頭の中で理解しているが――

 

「……」

「すぅ、すぅ……」

 

 未練たらたらな様子で女性の顔を見つめ、一体どうするべきかと悩むドラコー。

 このまま自身の欲望を優先するか、それとも頭の片隅に少しだけ残った理性を働かせるのか。

 難しい顔をしたドラコーが判断を決めかねていた、その時だ。

 

「ん?何だ、その手は……?」

 

 ふとドラコーの目に入ったのは、女性のしなやかな右手。

 つい数秒前までは特に関心を持つことなくぼんやりとその手を眺めていたが、よくよく見るとその手の甲には赤い紋様が刻まれていることに気付いた。

 

「(タトゥーか?いや、にしては妙に光っているような)」

 

 疑問に思ったドラコーが彼女の右手を掴み、その紋様を数秒間観察した……次の瞬間。

 ドラコーは一気に顔を青ざめさせた。

 

「なっ……!ぁ、ぁ……っ!こ、これは……令呪、ではないか!?」

 

 令呪、それはマスターが持つサーヴァントへの絶対命令権。

 そして、マスターの証とも呼べるものだ。

 これを目の前の女性が有しているということは、この女性は間違いなくサーヴァントを従えるマスターということになる。

 

「(待て、どうしてカルデアの職員が令呪など持っておるのだ?このカルデアには、立香以外にもう一人しかマスターは居らぬはずではないのか……!)」

 

 立香以外で令呪を持っているのは、銀髪金眼の元クリプター・カドックだけ。

 その他で令呪を持っている者など、カルデアには存在しないはずである。

 となれば、自ずと目の前の彼女が何者であるかは分かってきてしまう。

 

「ま、まさか……な」

 

 自身の嫌な予感が間違いであってほしいと願い、ドラコーはもう一度彼女の顔や身体全体に目を凝らしてみる。

 確かに、男である立香とは似ても似つかぬ美麗な顔や並の女性顔負けの大きな胸を持っていることもあって、パッと見ただけではこの女性が立香などとは全く信じられない。

 だが、その顔には僅かながらに立香の面影が残されており、彼が身体に負っていた覚えのある傷もうっすらと見えた。

 全て偶然だと思いたいが、偶然にしては出来過ぎている。

 

「(この女が、余の……余の旦那様?)」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。