「リンちゃんはやってくれたよ?」 作:アキラゼミ
黒服との会話を終えた後に、場面が戻りました。
アップする都合で前後が分かりにくくなってしまい申し訳ありません。要反省。
「……ただいま」
「ただいま帰還しました。ピースピース」
「おかえり先生、トキさん」
黒服との会話を終え、執務室に戻ると、ソファに座ったアルがカヤに膝枕していた。ムニャムニャと可愛らしく口を動かしスヤスヤ眠っているらしい。ヘイローも、綺麗さっぱり消えてしまっている。
「ついさっき寝ちゃったのよ。ホントにさっきよ?パソコン仕事は終わったみたいな事を言ってたわ。そうしたら、眠いって泣き出しちゃって……」
「えぇ……」
精神ロリカヤも可愛いけれど、そこまでなのか。小学生くらいだと思っていたけれど、幼稚園児とか保育園児とかそれくらいの幼さなのかもしれない。
そういえば確か、それくらい幼い子だと「将来、パパと結婚する」と言い出す時期があるんだっけ。今のカヤはそんな状態なのかな。だからさっきは、あんな事を……。
「先生。代行……カヤさんの事は
「お願いできる?」
「はい。私は完璧なメイドですから」
「ありがとう、頼んだよ」
「ではアルさん、少し失礼します」
「ゆっ、ゆっくり抱っこするのよ!?起こしたら、また泣き出しちゃ────」
「んぅ……?」
「「「!?」」」
カヤが目を覚ましてしまった。急に身体を支えるモノが腕2本だけになれば、嫌でも目を覚ますか。ましてやアルの太ももはユウカに勝るとも劣らないムチムチさだものね、そんなものが頭から離れれば目も覚めるよね。
分かる。私もアルちゃんの膝枕で昼寝したとき、彼女がお手洗いの為に席を立とうとして、私の頭を下ろして離れた瞬間……目を覚ましたもの。
「せんせぇ……?帰ってきたの?」
「ただいま。さっきのお仕事、終わらせてくれたんだって?」
「うん……えへへ……カヤ、ちょーじん……だもん♪」
「よくできました。あとは、ゆっくり休んでてね」
「ん……先生……ちゅー、して……?」
「「「ッッ!?」」」
「おやすみの、ちゅー……いつもしてた…………ような気がする……?」
「…………………………」
いやまぁ確かにシてたけど!どうしてそういう事だけは覚えてるのかな。カヤは本当に幼児退行して記憶喪失になったのか?なんにせよ、アルとトキの見ている前でカヤにキスするのはマズすぎる。
「……先生?そうなの??」
「成程、先生は精神的童女趣味でしたか。ばぶー、私もたっぷり先生に甘えます」
「待って2人共……。あとトキ、それは童女どころか赤ちゃんだよ……」
「せんせぇ……ちゅーしてくれないの……?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっ……!!」
ウルウルした涙目で私を見上げる。トキにお姫様抱っこされているから、まさに本物の幼女のように目線の高さに差がある。
黒服も「もう少し生徒を信じて」と言っていた。だけど────そうだ。そうだよね。エデン条約のときに、私が、ナギサや皆に言ったことだったね。
説明すれば、アルもトキも分かってくれるよね。カヤと持った肉体関係については言わないにせよ、それを除いても説明できる事は……あるはずだ。
それに、今のカヤにメチャクチャ懐かれてるのは誰が見ても明らかだろうし、アルには、ついさっき説明済みだものね。
「……そうだね。おやすみ、カヤ」
「んっ♡」
「わお……大胆……」
(うっ、嘘でしょーーーーっっ!!?せせせせっ、先生が、カヤ代行とチュっ……ちゅちゅちゅ、チューしちゃったぁあああああああーーーーーっっ!?)
軽く口付けしてみると、カヤは満足そうに微笑み目を閉じた。ヘイローもゆっくりと消えていった。どうやら、すっかり眠りに落ちたようだ。
トキを見ると、ほんのりと頬を赤に染めている。アルを見ると白目を剥いたままで、魚のように口をパクパクと動かしている。
「……じゃあ、トキ、任せたよ」
「任されました」
音もなく寝室の方へ向かう。天然な所はあれど、彼女は本物のエージェントなんだな。メイドなのかエージェントなのか、今もあまり分からないけど。
「さて、仕事だ。アルちゃん、手伝ってくれる?」
「チュー……先生と……チュー……キス、キス……うぅ〜……」
どうやら、ショックがまだ抜けきらないらしい。仕方ないので、アルの事はソファに座らせたまま、私はカヤのパソコン業務の確認をする。
やってくれたはいいが、イチから修正しなくちゃいけないだろうな────そう思っていた私はつい目を剥いた。思わず大声を出しそうにすらなった。パソコンでの書類作成は、私が見る限り、非の打ち所がないくらい完璧だったからだ。
「一体どうして─────」
画面を見ながらそんな事を考えていると、ふと、この画面に違和感を覚えた。何かが、私の記憶するパソコン画面と違う。……そうだ。
画面の縁に貼っておいたメモ紙が、剥がされて、カヤの目線らしき高さの場所に移動している。そのメモ紙というのは、リンちゃんに注意されてきた、書類作成をする上での注意点を細かくまとめたメモなのである。
「嘘っ!?……き、今日の、全部終わってる……」
パソコンのは終わったらしいとアルから聞いてはいたが、そんなの冗談だとか、そのファイルだけが終わったとか、そういうのだと思うだろう。
ファイル名に日付が振られているからか今日の分全てに手をつけて、終わらせたようだ。
私が黒服と喋っている間に、全て────確かに少し長話はしていたけれど、この量の書類なんて、数時間単位で終わらせるようなモノ。それをたった1時間以内に、しかも不備無く終わらせるなんて。
「────そうか」
そもそもの話になるが、連邦生徒会に抜擢される時点で、カヤが無能なワケが無かったんだ。有能なカヤが、どうしてあんな事をしでかしたのかはまだ分からないけど……。
どう考えても、連邦生徒会に、しかも幹部として身を置いていたんだし、今はどうあれ加入時点ではまず間違いなく、生徒としては上澄み中の上澄みの存在だったんだよな。
「……後で、もっとしっかり褒めないとだなぁ……」
カヤが無能なら、私はどうなんだろう。確かに、色々な事件を私の助力で解決してきた実績がある事自体は自覚している。けどそれは、大人のカードやシッテムの箱、ひいてはアロナにも頼ってきたから成し遂げられた事が多い……。
エデン条約のときなんか、私がケガをしたせいでヒナにも傷を負わせて、泣かせてしまった。正直、今でもあの時の負い目がある。ヒナも、私に対して同じように思ってるらしいけれど。その度に私は、ヒナに「気にしないで」って意味の事を言ってる。それでも、足りてるワケがないんだったよね。
「どっちが無能だよ……全く……」
「せ……先生……どうしたの?」
「────ごめん、何でもないよ。カヤの凄さに、思わずビビっちゃったよ」
「本当に全部、終わっていたの?」
「完璧〜。今日はパソコン業務する必要ないなって感じかな。あとバックアップ保存して印刷して紙にまとめたらパソコンの方は終わりかもね」
いや待て、バックアップまでも保存されてるぞ。マジか、カヤ。マジでか。……本当は記憶戻ってるんじゃないのかな……というか最初から演技……?
「そんなに!?適当にカシャカシャ打ち込んでて、それに疲れたから眠たがってたのかと……」
「確認してて驚いたよ。見てる限り完璧なんだよ。数字も、ちゃんと漢数字だしね。よーし、さっさと仕事なんか終わらせて、ゆっくりしようか……!」
「そっ、そうね!私も手伝うわよ、先生!私は何をすればいいかしら?」
「とにかくハンコ押しまくって!あんまりズレないように、素早く……丁寧に!」
「承知したわ!」
私は書類にペンを走らす。インクが滲まないよう素早く、且つ丁寧に。アルは、ハンコをトントンと軽快に押していく。流石は社長だ、ハンコなら押し慣れているらしく、実に綺麗な書類捌きだ。
そしてハンコを押しながら、アルが話し出す。
「……ねぇ、先生。カヤ代……カヤさんとはどういう関係なの?」
「それは……どういう意図で聞いてるの?」
「先生は、記憶喪失の子を騙して身体を弄ぶような人じゃないわ。だから気になるのよ」
「…………」
「もしかして先生、カヤさんが記憶を失う前から、そういう関係……だったんじゃないの?カヤさんも、それを心のどこかで覚えているから、数年単位もの記憶を失っていても、先生の事はよく覚えていた。そんな感じ……かしら?」
「………………うん」
「…………………………そう、だったのね……」
あー気まずい。最ッ悪な空気だな本当に。でも、この話に関してなら嘘はついてないよね。確かに、カヤが記憶を失う前から肉体関係は持っていたし、記憶喪失、幼児退行したカヤを騙しての肉体関係を持ったワケでもないから。ギリセーフだね。
優しいアルの事だ。きっと私とカヤが恋仲だとか考えたなら、私から距離を置こうとするんだろう。生徒達の好意に気付けないような、ラブコメ漫画の主人公みたいなニブチンじゃないからね、私。
少し辛いところでもあるし、自意識過剰みたいで自分で嫌いなところでもあるんだけれど……。
「アルちゃんはさ。『ポリアモリー』って考え方、知ってるかな?」
「ぽり森……?いえ、知らないわ」
「ポリアモリー。掻い摘んで言うと『関係者達から了承を得て、複数人と親密な関係になりたい』って考え方の事なんだ。アルちゃんはさ、これについてどう思う?」
「複数人と親密…………えっ?」
「……後はもう、何も言わないよ、私は」
「えっ?ええっ!?……カヤさんと…………ええっ!?それって……えええええぇぇーーーっっ!!??」
あ、完全にカヤの事しか頭にないな。アルちゃん自分がそこに含まれてるとは微塵も思ってないね。そんな所が可愛いんだけど。
「アルちゃん、声のボリューム落として。その顔は見たかったけど声は落として、カヤが起きる」
「あっ、ごめんなさい!」
アルちゃんは見栄っ張りなところはあってもバカじゃないからね。全部は言わなくとも察せるよね。それにしてもアルちゃんの驚き顔、これまで何回も見てるけど、ホントに飽きないな……。
◆
一方その頃、トキは────。
「……!はい、もしもし」
『もしもしじゃねーっ!朝からどこに行ってんだ!中々電話にも出ないし!このアホ新人コラァッ!』
「ネル先輩……。潜入任務中ですので、サイレントのモードにしていました」
『潜入任務だァ?誰がそんな事を命じた!?』
「昨晩、先輩方がシャーレへの潜入任務について、お話されていたので。なので、一足先に来ました」
『ハアアああぁぁ〜〜〜!?あんなモン受ける事は無いって話をしてたんだよ!!依頼人も不明だし、報酬も不明!「調査してくれ」の一点張りでまるで話にならねえ!オマケにシャーレへの侵入なんて、百害あって一利なしだろうが!連邦生徒会絡みかもしれねーってのに!ネットの有志の集まりの話とか聞く価値もねーんだよッ!どうせ動くんだったら、その程度の下調べくらいしてから動きやがれ!猪かお前は!猪突猛進するな!』
「……まさか、そんな事になっていたとは」
『はぁ……。まっ、行っちまったモンはしゃーねー。報酬はビタ一文出ないぞ。説教は、帰ってきてからたっぷりしてやる』
「了解です」
『タダ働きになっちまったようだが────トキ、お前はシャーレで何を見た?先生の行動範囲が妙に狭まっている理由……何か、分かったのか?』
(……言うべき、でしょうか。護送中に襲撃を受けたカヤ代行が、記憶を失った状態で生きていると……。カヤ代行のお守りをしていて、あまり動けない状態だったと言っても……大丈夫なのでしょうか……?)
◆
「よしっ、ハンコは終わったわよっ!先生、追加の書類はまだかしら!」
「うーんちょっと待って……」
「もう少しかかりそうなら、ちょっと便利屋の皆に業務連絡をしたいから、少し席を外してもいい?」
「うん、全然いいよ。連絡してあげて」
「ありがと!」
私が書類にサインをしまくっている間に、アルに渡した分の書類へのハンコは終わったらしい。業務連絡なんてしてるんだなぁ、と思いながら、アルの背中を見送る……。
「────もしもしカヨコ?私よ」
『お疲れ、社長。早いね。何か分かったの?』
「ええバッチリよ。急な依頼でビックリしたけど、当番が私で丁度良かったわ♪」
『……何かイイ事でもあった感じだね。それはまぁ、後で聞くとして、まず仕事の方を聞かせて。メモの用意はできてる』
「OK!先生ね、どうやら────メチャクチャに仕事が溜まりまくってるみたいなのよ」
『……は?』
「それでね、仕事が溜まり過ぎていて、シャーレに缶詰め状態っていうか……。そんな感じらしいわ」
『そんなに仕事溜まってるの?徹夜上等な先生が?二徹、三徹は普通にやってるような人でしょ……』
「そ、そうなんだけど……。ほっ、ほら、カヤ代行のクーデターや、リン代行の復活とかあったでしょ?だから、いつもと少し、ワケが違うっぽいのよね。下手したら1000枚単位の書類があるくらいよ?」
『うぇ……流石にそんな書類の山は……』
「ね?外出なんか、そう簡単にできないでしょう?期日は守らなくちゃいけないし」
『シャーレ周辺でカヤ代行を探してるっていうのはどうだった?』
「カヤ代行を探した事は無いみたいよ」
『探してすらないの?』
(本人から聞いたわけじゃないけど、カヤ代行からシャーレに来たのなら、先生は探してない事になるからね。うん、ギリギリだけど嘘じゃないわねっ!シャーレに缶詰め状態ってのも、カヤ代行のお守りという名の「仕事」があるからね!)
『そこからしてまず違ってたのか……。まぁ掲示板のまとめサイトでのやり取りが発端だからね、今回の依頼に関しては……。殆どタダ働きだよ』
「嘘でしょ!?」
『ホント。私の方からは会話ができなくなったよ。切られたね。アク禁か。報酬を明確に提示しないし怪しいとは思ってたんだ』
「え、ええぇ〜……」
『でもま、社長は丁度当番なんだからさ。これも、1つの教訓って事で。……ね?』
「うぅ……確かにそうだけど……タダ働きでも何にも支障なんか無いに等しいけどぉっ……!」
『あ。依頼人の方に関しては、ムツキとハルカが、適当に爆破してくるって。書き込みから特定したり色々やってくれたよ』
「……2人には相応の報酬を出さなくちゃね」
『交渉してた私にもね、社長?』
「もちろんよ。じゃ、こっちでの仕事を終えて少し先生と過ごしたら戻るわ」
『了解。気を付けて』
◆
私が書類へのサインをしていると、連絡中のアルよりも早く、カヤを寝室に寝かせに行ったトキが、一足先に戻ってきた。相変わらず無表情に近いが、どこかそんな無表情の中に少し焦りのような普段と違う色が見え隠れしている。
「トキ、どうかしたの?」
「いえ。……ネル先輩から、連絡を受けまして。早く戻ってこい、と……」
「ありゃ。まさか勝手に抜け出してきたの?」
「はい。シャーレに来ている事は伝えてあります。しかしそれでも、早めに帰ってきてくれとの事で。ですので私はこれで失礼します」
「うん、分かった。ありがとうね。私の護衛やら、カヤを運んでくれたり」
「メイドとして当然です」
「あはは、言うと思った。……ね。今日、ここで見た事は、皆には秘密だよ?」
「はい。先輩方にも『先生は大量の書類に囲まれて泣いていた』とお伝えしておきます」
「それはやめてね!?」
「冗談です。しかしカヤ代行の事については、何も言わないでおきます」
「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」
「その代わりに、口止め料を要求します」
「おっ。口止め料ときたか。何が欲しい?お菓子?新作スイーツとか?」
お菓子だろうか。何か特訓とかに付き合って、と言われるのだろうか。ネルやカリンならともかく、トキだから予想が全くできない。
トキは私の机の前まで来ると、口元を緩め優しい笑みを覗かせた。
「その前に────先生、睫毛が抜けていますね。取って差し上げますので目を瞑ってください」
「え、ほんと?ありがとう」
「…………」
「……トキ?」
「動かないでください。睫毛は細いんです。目潰しされたくないでしょう?」
「あ、ごめん」
やたら声が近いな、と思った次の瞬間、プニッと柔らかなものが唇に当たる。反射的に目を開けるとそこにはガッツリ私に口付けしているトキの姿が。
「とっ、トキ!?何してるの!?」
「カヤ代行は良くて私はダメ、なんて不平等な事……先生なら言いませんよね?」
「っ……そ、そう言われると弱いけど……でも!」
「口止め料……確かに頂戴しましたわ♡」
「!?」
ベリベリと顔の皮を剥ぐ。するとトキではなく、慈愛の怪盗────七囚人の1人、清澄アキラが、そこには居た。
「あ、アキラッ……!?」
「あら。覚えててくださったんですね、先生♡」
「な……なななっ、なんで……ここにっ!?」
「ふふ……先生の唇を頂戴できる、またとない機会と見たので、つい……♡」
「…………いや待って、色々聞きたいけどトキは!?まさか最初からアキラの変装だったの!?」
「いいえ?トキさんでしたら、カヤ代行をベッドに寝かせた後、先輩さんから連絡をもらったようで。急いで窓からお帰りになっていましたよ」
「窓から!?」
「侵入も窓からですから、不思議ではありません。かくいう私も、窓から侵入させて頂きましたから」
まぁアキラは怪盗だからね。怪盗だから分かるがトキも窓から来ていたのか。いや、そうでもないと確かに急にベッドの中に現れるのなんておかしい。
ここは高層階だから、泥棒の心配もないだろうと思って、夜間は換気の為にも窓を開けていたんだ。網戸にしていたけど、虫は防げてもキヴォトス人の侵入は防げないのか……。
「ちょっと待って、ホントに待って、なんでそれも知ってるの?まさか朝も早くからシャーレに居た?それとも近くに居たの?」
「近くと言えば近くであり、遠くと言えば遠く……、そんな所でしょうか」
「ヘイローは?どう見てもトキのヘイローだった。なのに今はアキラのヘイローになってる」
「小型の立体ホログラムで、それっぽく見えるよう投影していました。初めてお会いした際、皆さんのヘイローの形はデータとして収集しています♡」
「……じゃあゲーム開発部の皆も……」
「身長の問題があるにせよ、まぁヘイローでしたら誤魔化せますよ。フフフッ、先生が次に会うのは、果たして本物の生徒なのでしょうか……♡」
メッチャクチャ可愛いのにやってる事がエグイ。ヘイローなんて誤魔化しようがないのに、そんな、ホログラムで誤魔化せるんだっけ?
確かにキヴォトスでは、ただの通信で通信相手のホログラムを投影したりするような、超がつく凄い技術がありふれてるけれど。確かに、理屈としては分からなくもないんだけど。
「……アキラ」
「なんでしょう♡」
「シャーレに来るときは、金輪際、他の生徒達には成りすまさないこと。これは約束してくれるかな?記録に残らないよう、侵入してもらってもいいよ。でも、他の子に成りすますのだけは絶対にやめて」
「それは────……」
真剣な顔でそう言ってみると、流石のアキラも、笑顔を失って目を泳がせる。ちょっとチクリと心が痛むけれど、ここは、ビシッと言わなくちゃ。
「その子と話が合わなくなるとか、そういう都合もあるけどさ。でもそれよりも、私は、初めて会った時にも言ったけど、アキラも生徒だと思ってるよ。生徒は、いつでも先生に会いに来ていいんだから。わざわざ他の子に成りすまさなくてもね」
「……もしも、私が私としてシャーレに来たとして。先生は今のように油断して、トキさんに──いえ、私を相手にして、睫毛を取る為に身を委ねてくれたでしょうか?私を前にして、目を閉じましたか?」
「うん」
「即答ですか……!?それは……どうして……?」
「だってアキラは、凶悪犯罪者とかじゃないもの。葛藤もなく平気で人を殺すような人なら、生徒でも難しいよ。だけど、他でもないアキラだもの。目を瞑るくらい、どうって事ないよ」
「…………」
「でもまあ……その…………キスしたいってんならさ、素直にそう言ってくれると……助かるんだけどね」
アキラも可愛いからなぁ。推したくなる気持ち、分かる人も多いと思う。基本的にキヴォトスの子は大体が推しと言えるくらい大体の生徒達は推せる。その中でも、このアキラはかなり上位に食い込むと言ってもいい。
「……へッ!?ま、まさか先生、また私とキスしてもいいと……?ふふ、そ、そんな……ふふふっ……///」
「いや、心の準備とかそういう話だよ!?急にキスされたら、心臓が破裂するかと思うじゃない!」
「それは……分かります……!」
「でしょう?私は拒否しないから。基本的に来る者拒まずの精神でドカッと構えてるつもりだからさ、お願いとかあるなら、変装とかしないで素直に私に言ってね?」
「っ……わかりました……///」
照れ顔アキラ可愛すぎか?このムラつく気持ち、どう抑えようか。いつもだったらカヤを抱き潰すんだけど、幼児退行カヤは流石に抱けないかな……。
「では先生っ……さ、最後にもう1回だけ……♡」
「っ!」
「今度は、先生からお願いしても……?」
素直に言って、と言ったそばからこれだ。これを拒否したら、アキラからの私への信頼は、地の底に落ちる事になるんだろう。
「……分かったよ。動かないでね。手を取って、キスしよう」
「ああ先生っ……キスのみならず手まで取って頂けるなんて……っ……♡」
私は席を立ち、机の前に移動。生唾を飲み込み、私は左手で彼女の右手を掴んだ。恋人繋ぎのように指を絡めて手を握り、右手で背中を抱き寄せ、顔を少しだけ傾け、砂上の楼閣に指で穴を開けるが如く優しく、ゆっくりと、唇を重ねた。
「……♡」
「!?」
瞬間、アキラが私の背中をガッシリ押さえ込み、離れられないよう手で固定する。慌てる私を他所にアキラは強く唇を押し付けて来たかと思うと自分の唇で私の唇をこじ開け、ジュルンッと蛇のように、舌を挿入してきた。
「ん゙むっ!?」
「……♡」
アキラとのキスは、激しかった。絡めるどころか口の中で鞭打つように舌を動かし、私の口内を強く激しく蹂躙してくる。
「はっ……ちょっとアキラ……激し……っ」
「先生っ……私、もう我慢が……♡」
「!!」
机を背にしたのが災いしたのか、発情したらしいアキラによって押し倒されて、机に押し付けられてしまった。手もガッシリ掴まれ、壁ドンのように、私の足の間にはアキラの足がある。
「待って待って、まだ午前だよ……っ、昼前なのに、もうセッ……エッチは早くないかな……?」
「愛の営みに早いも遅いもありませんわ、先生♡」
「それはまぁ……分かるけどさ……」
「それに、ほら……先生のココも、膨らんで……♡」
「っ……」
「ベッドでは代行が寝ていますし……ね?
「そ……それもい────」
それもいいかもね、と言いそうになってしまったその瞬間、連絡の為に執務室を出て行ったアルが、何食わぬ顔で戻ってきた。
「先生、戻ったわよ……ええええーーーっっ!?」
「あっ」
「あら。もう戻ってきたのですね。ふふっ、これは仕方ありません。また来ます。せ・ん・せ・い♡」
「アキ────」
「
そう言ってパチンとウインクしたアキラは、懐に手を入れて、アルの方に向き合うと……。
「お騒がせしました、私はこれにて失礼します♡」
「待ちなさ……」
「
アルが銃を向けて来るのもお構い無しな様子で、煙幕を床に叩きつけると、煙に紛れて堂々の逃走。恐らくは寝室に向かい、トキのように窓から逃亡を図る為だろう。執務室の入口はまだアルが居るし。
「ケホッケホ……逃げられた!先生、無事っ!?」
「う、うん……私に被害は無いよ」
「被害は無い?机に叩きつけられておいて?それは無理があるわ!」
「あー……」
そっか、私にとっては「押し倒された」んだけどそれを傍から見れば叩きつけられたように見えてもおかしくはないか。
「……?せっ、先生、怪我してない!?ちょっと首、見せてみなさい!」
「えっ?」
「赤くなって……あら、これは……アザ?こんなの、さっきまであったのかしら?まさか先生、アイツに首を絞められたんじゃ!?」
「そっそれは無いよ!えーと、鏡、鏡────き、キスマーク付けられてる!?」
執務室の机に常備している手鏡でアルが指摘する場所を確認すると、薄らではあるが目が良い人なら普通に気付けてしまうくらいの濃さで、首筋に濃いピンクのキスマークがつけられていた。本当にいつの間に付けられたんだか。
アキラを抱き寄せたあの瞬間くらいしか、そんなタイミングは無かったはずだ。
「キスマークじゃなくて怪我でしょう?」
「え?」
「キスマークって、口紅がくっつくものでしょ?」
「………………」
ピュアっピュアかよッ!!(2回目)
「というか今のって慈愛の怪盗……よね?どうして、何にも美術品を持っていない先生のところに……」
「それは、私にも分からないけど……」
全くあの子は。アキラ、来るだけ来ておいて私の心まで盗みやがって。私の中での「激しいキス」の概念がアキラに塗り潰されてしまった。
今後、カヤを責めるときがあったら、意識してもしなくともあのような激しいキスになる事だろう。
「とりあえずヴァルキューレ呼びましょうか?」
「いやそれだとアルも面倒な事になるよ」
「うーん……そうかもしれないわね。私はいいけど、じゃあこのまま放置でいいの?」
「いいよ。七囚人と言えど私の生徒だよ」
「先生ってそういうところがお人好しなのよ?」
「え〜」
そんな話をしつつ、ボチボチ仕事を再開しようとアルと2人で席について間もなく、今度はスマホが連続で通知音を鳴らす。
黒服といい、アキラといい────今日は少し、朝から忙しすぎる。カヤがパソコンの仕事を完璧に終わらせていてくれなければ徹夜必至だったろう。
アキラと交われるのなら徹夜しても良かったが、それが無いなら徹夜なんかしたくない。が、しかし連続で通知が鳴るというのは、緊急性がある場合が殆どだ。せめて、確認だけでもしておこう。
「ん……サオリからだ」
これはどういう事だ先生
一度顔を合わせて話がしたい
時間を作ってほしい
可能なら今すぐ会いたい
シャーレに向かっている
実はこの作品を書くとき、ブルアカのBGMは殆ど聞かないようにしています。
聞いたとしてもUnwelcome Schoolくらいで。あとたまにBlack Suitとか……。
本編の先生の聖人さ、透き通る世界観に浄化されてなんて酷い先生を書いてるんだろうか……とちょっとショボンな気持ちになるからです。
敢えて改変してるとはいえ、聖人でちょっと変態な先生ってイメージが強いですよね、ブルアカ本編。ごめんね生徒のみんな、うちのシャーレの先生は、これからもこんなんだ……。
トリカス描写は原作の方が圧倒的に上ですね。多分俺がいくら修正しても、原作のトリカスっぷりには追い付けないのでしょう。
よろしければ回答をお願い致します。参考にさせて頂きます。また、数字についてはおおよその目安であり、今後書く話の文字数を限定するものではありません。
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