※この作品はR-18です。

「リンちゃんはやってくれたよ?」   作:アキラゼミ

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「信じて信じられ、愛して愛されて」

「やぁ、サオリ」

 

「先生……ッ」

 

 数分後、シャーレの執務室にやってきたサオリは私を見るなり、カツカツと足音を立て、肩を怒(いか)らせ椅子に座る私の前にやってくる。

 念の為に、アルは別の階に避難中だ。

 

「これはどういう事だ、先生!!」

 

「!」

 

 画面の割れた彼女のスマホは、ニュースサイトを開いていた。そこでは、ヘルメット団が不知火カヤ元代行を襲撃し殺害した、という事件を扱っている記事が掲載されていた。

 

「どういう事って……どういう事?」

 

「とぼけるな!あの護送車の中には誰も居ないと、先生がそう言ったんじゃないかッ!!」

 

「そうだよ?」

 

「だったらこのニュースは何なんだ!私達が、私が不知火カヤ元連邦生徒会長代行を殺した疑いが、と書いてあるじゃないか!!」

 

「それは、外野が勝手に騒いでいるだけだよ。現にヴァルキューレは『捜査打ち切り』と発表してる。世間的に見て不知火カヤは死んだ事になりかけてるけれど、殺された証拠が無い以上は、『行方不明』でしかない。カヤはあくまでも『行方不明』だよ。サオリが心配する事なんか、何一つ無いんだよ」

 

「そうじゃない!!」

 

「!」

 

 ガッと私の胸倉を掴み、強制的に立たせる。凄い気迫だ。下手したら漏らしてしまいそうなくらいの鬼の形相、しかし少し悲しみが含まれているような怒りだけではない目線にも感じる。

 

「先生はっ……私に、人を殺させたのか……?」

 

「……」

 

「あのとき、先生は────『あの護送車を粉々に破壊する事が、人助けに繋がるから』と────。確かに、私にそう言った。違うか?」

 

「言ったよ」

 

「私は先生に恩返しがしたいと思っている。先生は急いでた様子だったから、深く理由も聞かず、ただ先生の言う通りにしようと、人助けになるならばと思って、ヘルメット団の先輩にも協力を要請して、あの護送車を木っ端微塵に破壊してやったんだ」

 

「……そうだね」

 

「それがどうした!このザマは!あの護送車には、不知火カヤが乗っていたッ!!しかし焼け跡からは遺体も何も見付からなかったとされている!私が、木っ端微塵に破壊したからっ!!証拠が残ってないだけなんだろうっ!?」

 

「違う。サオリはカヤの事を殺してなんかないよ。サオリは間違いなく、人助けをしたんだ」

 

「嘘だッ!ならば何故ニュースサイトはこんな!」

 

「クロノスチャンネル以外は信用しない方がいい。それ以外は殆どが木っ端。末端のニュースサイトやニュース番組は、記者が自分の妄想をただひたすら書き連ねているだけの、愚かなマスメディアだよ」

 

「!?」

 

「サオリ。ろくに説明しないで、ごめん。これは、間違いなく私の落ち度だ。ちゃんと説明するから、まずは、落ち着いて私の話を聞いてくれるかな?」

 

「……ッ…………あぁ……」

 

「ありがとう。──アールグレイでも淹れようか。紅茶は気持ちが落ち着くと思うよ」

 

 サオリに解放された私は、紅茶を淹れる。私は、コーヒーよりは紅茶が好きだ。ナギサとのお茶会に定期的に行くのは、彼女との会話も目的ではあるが半分くらいは彼女の淹れる美味しい紅茶目的な所も無くはないんだ。

 私に紅茶を出されると、サオリは少しだけ申し訳なさげに、おずおずと口をつける。

 

「さて────何から説明しようかな。順を追って説明しようか?それとも質問に答える形がいい?」

 

「私が聞く。私は先生に、何を頼まれたんだ?」

 

「そうだね、私がサオリに頼んだのは、紛れもなく人助けだよ。そこは安心していい。ただ、隠蔽工作というか陽動作戦というか。とっても色んな意味が込められた『人助け』だ。でも間違いなく人1人の命を救っている人助けだよ」

 

「人、1人の命を……?あの破壊活動が?」

 

「不知火カヤ元連邦生徒会長代行が、弾劾裁判後、私、シャーレの先生の管轄下に置かれるよう判決が下されたのは知っているね?私が口出しをしたのも知ってるかな?」

 

「ああ……それくらいなら」

 

「でも世間的に見て、私のこの行動は大間違いだとされているんだ。カヤは民間企業と組み、稀に見る大犯罪を犯したんだ、本来なら矯正局行きだ、と。これについては────クーデターを起こした者がどんな目に遭うのか、サオリなら、知ってるね?」

 

「っ……!!」

 

「追われ続ける、だ。今でこそ、ミサキやヒヨリ、アツコはシャーレの生徒だし、サオリだって二足の草鞋を履いてはいるが、シャーレの生徒だ。だから今は追われていないけど、カヤはそうもいかない。特別な境遇なんだよ」

 

 私が保護していたって、スクワッドの皆が未だに追われているという話を聞かなくもない。カヤなら尚更、長く追われ続けるだろう。

 

「……不知火カヤが、連邦生徒会の者だからか?」

 

「そう。だからカヤは気軽にシャーレの生徒として私が保護できる立場になかったんだよ。サオリが、アリウスを中退したあの時みたいな、いやそれより大変で、より面倒な立場にあるんだ」

 

「……」

 

「だからカヤには、世間的に見て、死んでもらうか行方不明になってもらう必要があった。でないと、キヴォトスを混乱に陥れた彼女は、私が保護しても保護しきれない。延々と、いや、永遠に批判の渦に晒され続ける。誰かに追われ、ただ逃げ続けるのと何も変わらない。それじゃ『保護』の意味が無い。そうでしょ?」

 

「……ああ」

 

「そこで、私はサオリ────ヘルメット団に依頼したんだ。カヤが護送中という事になっている(・・・・・・・・・・)車を襲撃し、木っ端微塵に破壊してくれ、とね」

 

「そこだ。そこが分からない。私達が破壊すれば、世間からの矛先は、私達に向くはずだろう。現に、このサイトでは『ヘルメット団が』と書かれているじゃないか」

 

「まさにその部分こそ、そのニュースサイトが信用できないっていう証拠なんだよ。コメント欄まで、よく見てごらん。大抵のニュースサイトはコメント機能、コメント閲覧機能も実装されているはずだ」

 

「コメント欄?…………ッ!!」

 

 サオリの見ていたサイトのコメント欄は、なんとヘルメット団を擁護する声で溢れていた。確かに、ヘルメット団とはキヴォトスでは極めて有名な不良グループだ。多数の派閥や分派もある極めて巨大なグループ、それがヘルメット団。

 ────しかし現在確認されているどの派閥も、たとえ強盗はすれど、決して人殺しは(・・・・・・・)しない(・・・)のだ。

 

「『ヘルメット団がこんな事するはずないよね』?こっちは『ヘルメット団なら中の人は死んでないし死んでるならヘルメット団じゃない』……だと?」

 

「『誰かがヘルメット団になりすましてカヤ代行を襲ってるな』とも書かれているね」

 

「なっ、何で……どうして!?」

 

「皆、こんなニュースより、自分達の目で見てきたヘルメット団という組織を信じているんだ。それにクロノスチャンネルや、大手のニュースサイトは、この事件を、このように報じているんだよ」

 

 そう言って私は自分のスマホで、大手のサイトのニュース記事を見せる。そこには「何者かが」と。また別なサイトでは「ヘルメット団の格好の」と。決して「ヘルメット団が」とは断定しない書き方で報道がされていたのだ。

 信頼できるニュースサイトは、こうだ。不明瞭な事なら報道しない。報道しても断定しない言い方、書き方で報道する。それこそが正しい報道だから。

 

「────分かったかい?サオリは決して、人殺しなんかしていないよ。実際そうだし、それを抜きにしても、世間一般的に見ても、この事件の犯人だと思われていないんだよ。オマケに遺体らしきものも痕跡も見つかってない。人殺しと騒ぐ方がおバカ。そういう事なんだ」

 

「……だから先輩も、笑ってたのか……」

 

「笑ってた?」

 

「ああ……私はこのニュースを見てすぐに、先輩達に知らせた。でも『そんなのは嘘っぱちだよ』と……。そう言ってまともに話を聞いてくれなくて……」

 

 ヘルメット団員もシャーレの先生、つまり私を、それなりに信用してくれているようだ。これからも頼りにできる場面があったら、頼りにしたい所だ。

 

「……すまない、先生。私はまだ、先生を心の底から信じきれていなかった。ヘルメット団の先輩すら、先生を信じて『自分達を使って人殺しさせた』とは考えていなかったというのに……本当に私は……っ」

 

「いいんだ。急いでたからって、説明不足だった。事が落ち着いても……まだ落ち着いてないんだけど、サオリに説明していなかった私が悪い。私の方こそ説明義務を怠ってごめんなさい。この通りだ」

 

「そんなっ、先生が頭を下げるな!確かに、説明は欲しかったが……それだけ急を要する事だったんだと今では理解しているし、納得もしている!」

 

「……そうだね」

 

 事実、ヘルメット団員が護送車を破壊してから、緊急通報されて報道されてから、どこの誰が先に、破壊された護送車にやってきただろうか?

 それは、実はマスコミでもヴァルキューレの生徒でもない。野次馬、そしてカヤ批判派だったのだ。

 だから現場に到着したヴァルキューレの仕事は、本来なら現場の安全確保と捜索、捜査のはずだが、野次馬を追い出す事が第一の仕事になった。

 しかし当然、私は、人目のあるところで護送車を破壊してくれと頼んだワケじゃない。寧ろ、人目の無いところに襲撃を掛けたように見せ掛けてね、と再三頼んだんだから。

 

「そうか……ヘルメット団…………思っていたよりも、世間の信頼があるんだな」

 

「不良グループなのに世間からの信頼ってのも妙な話だとは思うけどね……」

 

「……ははっ。確かに……そうかもしれないな」

 

「別に、私は、他の団体に頼んでも良かったんだ。ブラックマーケットにだって、知り合いはいるし。でもね。それだと、お互いに信頼が無いでしょ?」

 

「!」

 

「だから私はサオリを頼ったんだ。サオリなら信頼できる生徒だ、私が指示を出せばそれ以上でもなくそれ以下でもなく完璧に任務を遂行してくれると。そう、信じていたんだ」

 

「先生……」

 

「そもそもの話になっちゃうけど、護送車の襲撃に使用した弾薬って、何処の弾薬を使用したっけ?」

 

「っ!……全て私が先生から預かったものだ。先生の指示通り、襲撃に参加する先輩達にもそれらを全て配ってから、護送車の破壊に臨んだ」

 

「そう。爆弾も銃弾も全て、私がサオリに預けた。アレはシャーレの在庫なんだ。万が一にも違法性があって殺傷性が認められるモノが使われないよう、細心の注意を払って、ね。だからヴァルキューレも首を傾げてたよ?『あんなモノで中の人の事なんか木っ端微塵に殺せるはずないだろうに。カヤ代行は咄嗟に脱出したんだろう』ってね」

 

「だから、ヴァルキューレの捜査はすぐ打ち切りになったのか?」

 

「そうだよ。今のヴァルキューレには、正体不明のヘルメット団そっくり団を追う暇なんて無いから。厳密には、一部のヴァルキューレ生徒は行方不明のカヤを探しているけど、暇潰し程度らしい。カヤはヴァルキューレにもキツく当たっていたからねぇ」

 

「成程……」

 

 ヴァルキューレにキツく当たってたせいで、いざ行方不明になってもまともに捜索してもらえない。だから、殆ど「死んだ」扱いされているのだ。

 これだけでカヤの人望の無さが分かるというものだろう。ざまぁみろと言うか、今はそれに救われているんだけどね。

 

「世間にこういう情報を流しておけば、批判派も、無闇にカヤの移送先であるシャーレを攻撃する事はできなくなるでしょ?『行方不明』なんだからね。シャーレに居ないのに、シャーレに襲いかかっても無駄だもの」

 

「!!」

 

「カヤの安全を守る為には、世間的にはカヤは行方不明になってもらう必要があった。その為に私は、サオリを通して、ヘルメット団に依頼したんだよ。これが、護送車襲撃事件の全貌……って感じかな」

 

「そうだったのか……やっぱり私はまだまだだな……本当にすまなかった、先生。先生を疑うだなんて、どうかしていた。許してほしい」

 

「……ううん。それでいいよ」

 

「────えっ?」

 

「私だって、間違える。選んだ選択肢の全てが正解だった自信なんて無いね。きっと今の時点で、私は何個も何個も選択肢を間違えているハズだよ」

 

「そんな事は……」

 

「だからね。例え後からだろうと、サオリみたいに私の判断でも疑ってくれる生徒は有難い。だって、もし、私が何かを間違えていたら、サオリが教えてくれるんだし。『どうしてこうしたんだ?』って。誰かにそう言ってもらえれば私も『そうかも』って冷静になって自分を省みる事ができるんだ」

 

「……!!」

 

「盲目的に従う事だけが『信頼関係』ではないよ。これは、覚えていてほしいかな」

 

「盲目的……」

 

 遠い目になるサオリ。きっと、ベアトリーチェに盲目的に従っていたあの頃の事を思い出しているんだろう。しかし、そこに────ベアトリーチェとアリウススクワッドとの間に、信頼関係など無い。

 ベアトリーチェは彼女らを駒としか見ていない。スクワッドの皆も「植え付けられた恨み」によって盲目的に奴に従わされていただけなんだから。

 

「サオリ。今回は少し間違っていたかもしれない。でも、私を疑った事は、決して謝っちゃいけない。私だけが正解じゃないんだ。今回はたまたま、私の判断が正解……だったのかもしれない。それでもね、あくまで『かもしれない』なんだ。ただ、それだけなんだよ」

 

「っ!」

 

「だからサオリは、私を疑った事について、決して自分を責めてはいけないよ。……分かったね?」

 

「────ありがとう、先生。気が楽になった」

 

「……うんっ!それなら良かった!」

 

「あと……やっぱり、ごめんなさい」

 

「え?」

 

「胸倉を掴んだ事について、謝らせてほしい」

 

「あー……あははは……そうだったね、確かにそれについては、謝るのが正解かも。うん、もういいよ。大丈夫、私は気にしてないからね」

 

「……なら、良かったが……」

 

「それについては説明義務を怠った私が悪いから、サオリは気にしないで」

 

「ああ──そうするよ」

 

 気持ちに整理がついて、心がスッキリしたのか、晴れやかな笑顔を見せてくれた。やはりサオリには笑顔が似合う。元が、モデルみたいに綺麗だしね。

 相変わらずスリムだよねぇ。そんなエッチな格好しちゃって、警戒心も何も無いのかな。もしも私が行動力のある変態だったら、すぐに押し倒してると思うよ。まぁ……私にそんな力は無いんだけどね。

 

「ところで、先生。まだ疑問はあるんだ。あの破壊活動がカヤ代行の命を救った、という所までは理解したよ。そのカヤ代行は、今、どこにいるんだ?」

 

「カヤなら、当初の予定通りにシャーレに居るよ」

 

「えっ?ここに……?」

 

「護送車って目立つでしょ?ヴァルキューレよりも早く野次馬や批判派が現れたのは、恐らく、狙撃手みたいに、遠くから護送車を監視(・・)してた連中が存在してたからなんだ。そこでサオリ達に護送車を襲撃してもらい、野次馬達をそちらに引き寄せた。当のカヤは、別ルートでシャーレに向かったってワケ」

 

「『陽動作戦の意味も』とさっき先生が言っていた意味が分かったよ。野次馬や批判派を、あの現場に集め、カヤ代行が通る安全なルートを作る為の陽動という事か」

 

「そういう事。だから、護送車を破壊するときには木っ端微塵にって言ったんだよ。時間をかけて破壊すれば、それだけ引き寄せられるし、派手にやればやるほど、野次馬も集まりやすくなるでしょ?」

 

「確かに。……色々納得がいったよ、ありがとう」

 

「こちらこそ。ろくに説明しなかったのに、完璧に任務を完遂してくれてありがとうね。お陰でカヤは元気にここ、シャーレで暮らしてるよ。生憎、今はお昼寝中なんだけどね」

 

「なら良かった。……じゃ、私はそろそろ失礼する。また勝手に抜け出してきたから、先輩方に怒られてしまうだろうな……やれやれ」

 

「ありゃまぁ……。じゃ、最後に1つだけいい?」

 

「……?なんだ?」

 

 本当は、今日言うつもりじゃなかったんだけど。でも、どうせサオリからシャーレまで来てくれたし言うには良い機会だ。さっきの黒服じゃないけど、ついでに言うにはグッドタイミングかもしれない。

 

「もしサオリさえ良ければなんだけどさ。ちょっとお願いがあるんだ。────カヤがここに居るのと同じく、これも、機密事項って事でお願いしたいんだけど。……どうかな?『お願い』、聞いてくれる気あるなら……私としても嬉しいんだけど」

 

「もちろん。先生のお願いなら、なんだってやる」

 

「ありがとう。助かるよ、本当に。それじゃ、また連絡するね」

 

「えっ?今、言うんじゃないのか?」

 

「今それを言っても良いんだけど、生憎、今すぐに始められない事だからさ。────いや、いいや。やっぱ、今言うか。サオリには、時間ある時だけでいいから、私の訓練に付き合って欲しいんだ」

 

「訓練?……先生が、なんの訓練を?」

 

「戦闘訓練だよ。アズサから聞いてるよ。サオリがスクワッドの皆を鍛えたんだってね。特にアズサはサオリに育ててもらった部分が大きいとか?」

 

「確かにスクワッドの皆やアズサの事は、私が色々面倒を見た。だが先生は……っ」

 

「……一度の被弾が致命傷になりかねないだろって、そう言いたいんだよね」

 

「っ!!」

 

 言い方が悪かったかな。あのとき、サオリが私を撃った時の事を思い出させちゃったら申し訳ない。だけど本当に、これはサオリにしか頼めない事だ。

 

「でも、いつか、私も戦うべき時が来ると────そう思っているんだ。でもこんなの、誰に頼める?誰にも頼めないよ、皆、揃いも揃って私を守ろうと私の前に立つんだから!私が前に出ようとしても、押し戻されて終わりなんだよ」

 

「……」

 

「これは予知にも似たただの確信めいた想像だよ。私が前に立たなきゃいけない、そんな機会はいつか確実に来る。……私は、それに備えたいだけなんだ。だから────お願い。私を鍛えてくれないかな」

 

 ギュッとキツく唇を結んでいたサオリだったが、私と数秒間目を合わせていて、やがて諦めたようにフゥッと息を吐いた。

 そして緊張が解けたような優しい目で、やんわり微笑みながら、言う。

 

「分かった。傷つかない程度に、先生を鍛えよう」

 

「ほんと!?ありがとうっ、サオリ!」

 

「……目が変わったな、先生。出会った頃とはまた、似て非なる目だ」

 

「え……そう?」

 

「優しさの中に強さがあるのは、変わらないけど。それでも────何か『自分の手で守りたいモノができた』って目をしているよ。あの時のアズサに、そっくりに見える」

 

「……そっか。じゃ、サオリにも似ているね」

 

「!」

 

「アツコを……皆を守ろうと、頑張っていたからね。私もそんな目になれているのなら、私も嬉しいよ」

 

「そんな……私なんて…………」

 

 どうやらサオリは、まだ戦闘以外では自己評価が低いらしい。もっと自分に自信を持っていいって、これまでにも何度も言ってきたんだけどね。

 サオリは良くも悪くも正直な子だ。でも、その分こちらも信頼できるまである。

 

「よしっ!サオリがOKしてくれた事だし、仕事の合間に準備を進めておくよ。準備が整ったら、また連絡する。その後、サオリが空いてる日ができたら教えてね!」

 

「あのっ、先生……それについてなんだが、私達には非致死性でも、先生には致死性だろう?どうやって訓練すると言うんだ?もし訓練で死んでしまったら元も子も無いと思うが……」

 

「幼稚園児用のオモチャの銃を使うよ。BB弾ね。これなら、私でも死にはしない。怪我らしい怪我もしないしね。当たった時にちょっと痛いくらいさ」

 

「そうか……。確かに、BB弾なら安心だな。ただしゴーグルかフェイスマスクは着けるようにしないと危険だ。下手をすると失明してしまう」

 

「そうだね。それも含めて用意しておくよ。まずはサオリがOKしてくれないと話にならないからさ、用意とか全くしてないんだよねぇ。断られた場合、強制するつもりも無かったからさ……トホホ……」

 

「どうしてそこまで私に拘る?それこそ、アズサに頼めばいいだろうに……」

 

「分かってないなぁ。サオリは、こうと決めたら、それをどこまでも貫けるからだよ。あぁもちろん、アズサもそういう強さはある。でも、私が絡むと、それが鈍ってしまう所があるんだよ」

 

「!」

 

「それがアズサの長所であり短所でもある所だね。優しさは、時に武器にもなるけど、弱点にもなる。サオリも優しさは持っているけれど、その優しさを使い分けるのが上手だ。私の知る誰よりも……ね」

 

「っ……買いかぶりだ、そんなの……」

 

「私、お世辞は言わないよ。買いかぶりもしない。お世辞を言うタイプなら、今、弱点がどうのなんて言ったりしないよ」

 

 これは本心だ。だからこそ私はアルでもトキでもユウカでもミカでもなく、サオリに頼むんだ。私に優しくしてくれるのは嬉しい。けれど優しさとは、時に残酷なものだ。その優しさを、時には、厳しさという名のオブラートで包んでもらいたいんだ。

 でも、私が弱いせいで、それができる子は極めて少ない。居ないと言ってもいい程だ。だけど……。

 

「だから私は、サオリにお願いしたいんだ。『私を鍛えてくれないか』ってね」

 

「……分かった。私が、責任をもって先生を強くしてみせるよ。先生が守りたいモノを、先生自身の手で守れるようにしてみせる……!」

 

「うんっ!頼んだよ、サオリ!」

 

「────連絡を待つ。それまでは、私も、自己を高めていよう」

 

「私も、自分でできる範囲の事はやっとかないと。あっ、ヘルメット団に戻ったら、先輩には『先生に呼び出された』って言ってね。じゃないとサオリが怒られちゃうから!」

 

「ッ!……分かった。有難く、そうさせてもらう」

 

「それから、私の訓練に付き合ってくれる時には、バイト代も出すからね。レッスン料って言った方がイイかな?時給1万円でどう?私のポケットマネーじゃなくて、シャーレの経費で落とすけれどね」

 

「ほんとか!?いっ……1万円もっ……!?」

 

「サオリのレッスンにはそれくらいの価値があると思ってる。これでも安いくらいだね。ま、アリウススクワッドとの戦いは厳しかったし、特にサオリは手強かったからねェ」

 

「そうか……よしっ、俄然やる気が出てきた。気合を入れて鍛えてやろう……!」

 

「期待してるよ、サオリ先生っ!私も頑張るから、よろしくお願いね!」

 

「ああ!改めて、よろしく頼む!」

 

 こうして、サオリは、シャーレを去っていった。足取りは軽やかで、今にもスキップが始まりそうな明るさ、軽快さがあった。

 

 ◆

 

 その後、アルを呼び戻して仕事を再開した。少し早めのお昼寝から目覚めたカヤと3人でお昼ご飯を食べ、私とアルは仕事の続き、カヤは勉強をしつつそれぞれ午後を思い思いに過ごしていた。

 午後は黒服やサオリなどの来客も無かったから、仕事をサクサク進める事ができた。けれども私は、ビナーの出現に備えたりと、書類仕事以外でもまだやる事がたんまりと残っている。

 果たして、本当の意味で羽を伸ばして休める日は来るのだろうか。……来ない気がするなぁ。

 

「……今日も一日ありがとうね、アルちゃん。散歩、夜になってごめんね。しかもカヤの寝かしつけまでしてもらっちゃって……」

 

「いいのよ。私にできる仕事が終わったあとだし、散歩に誘ったのも私なんだから。先生こそ、昼から休んでない気がするけれど、大丈夫なの?」

 

「うん。こうしてアルちゃんと星空の下を歩くのが休憩だよ」

 

「もう、先生ったら……///」

 

 眠い眠いと目を擦ってグズるカヤを寝かしつけに行ったアルは、まさに「母親」に見えた。アルなら良い母親になるだろうなぁと常々思っていたけど、まさか、カヤが幼児退行した事で母親アルの一面を見る事ができるなんて……。

 将来の姿を垣間見たような、そんな気がした。

 

「アルちゃんはきっと、良い母親になるねぇ」

 

「や、やだもうっ、先生ってば!」

 

「だってカヤ、凄く安心してたしさ。明日の当番の子にも、アルと同じように説明するつもりだけど……カヤがあんな風に落ち着いてくれるとは思えない」

 

「たまたまよ。他の子でも、あんな風に落ち着いてくれるわ」

 

「だといいんだけどね」

 

 多分、そうはならないんだろうな。カヤのあの、心から安心したような顔────あの顔は誰にでも見せられるようなものじゃない……。

 

 ◆

 

「本当にここでいいの?もう少し送って行けるよ」

 

「ううん、もういいわ。先生は早くカヤさんの所に戻ってあげて。夜泣きで起きるかもしれないわよ?そしたら先生が居ない事に気付いて……なーんて」

 

「夜泣きって、それはもはや赤ちゃんじゃないか」

 

「まぁね。でも、ありそうな気がしたの。何となくなんだけどね」

 

「……分かった。こんな夜までありがとうね。今日も一日、楽しかったよ」

 

「私もよ。次の当番の日が楽しみだわ」

 

「ははっ!早めにアルちゃんになるように、当番の予定、サクッと組み直しちゃおっかな〜?」

 

「ふふっ、もしそうするなら他の子にバレないよう丁寧に組み直さないとね?」

 

「そうだね」

 

 こうしてアルを見送った私は、コンビニにすらも足を運ぶことなく、シャーレに直帰。幸いな事に、昼間のうちに黒服と共にエンジェル24で買った栄養ドリンクが1本残っていたから、とりあえず今夜はアレを飲んでやり過ごそう。

 カヤの活躍やアルの手伝いもあって仕事は一段落しているけど、対ビナーの作戦やら部隊編成やら、それから弾薬の注文と、私(わたし)用の訓練道具の購入申請書類なども作っておかないと。

 そしてそれらの書類は、ユウカは通さずに、連邦生徒会に直接、提出しなきゃ。アオイは、頭が硬いように見えて案外話が分かる子だから、訓練の為と素直に言って良い気がする。

 

「ただいま戻りましたっと……さぁて書類書類……」

 

「……せんせぇ……?」

 

「……ッ!?」

 

 執務室に戻ったその時、暗がりから、か細い声が聞こえてきた。思わず足が止まる。執務室も既に、省エネの為に最低限の明かりしか点けてないから、あちこちに大きな影を落としている。そのせいで、その声が聞こえてくるまで私は────カヤの姿に気が付けなかった。

 

「……カヤ!?」

 

「せんせぇ……どこ、行ってたの……?せん、せぇ……ううっ……カヤのこと、おいてかないで……せんせ……うぅ……うえぇぇぇぇん……せんせぇぇ……」

 

 わんわんと声を上げて泣き出してしまった。夜の静かなシャーレには、よく声が響いてしまう。私は慌ててカヤの元に駆け寄り、すぐ泣き止ませようと四苦八苦。

 

「ごっ、ごめん、カヤ!あのっ、えっと、そうだ、アルちゃんのこと見送りに行ってたんだ!もう帰る時間だからっ……ごめんね、カヤのこと1人にして!もう私が居るから安心して!ねっ?」

 

「やだ……せんせぇ、ねる……せんせーと、ねる……」

 

 そう来るか。いやしかし、これもまた仕方ない。書類は明日の朝イチでやるとして、作戦なんてのはこれまで通りでも別に支障は無いし、何なら脳内で立てられる。

 だから今は、とりあえず、カヤを落ち着かせて、寝かせなければ。まさか、アルの言う通りになると思わなかったけれど……。

 

「先生、お休みのチューしてない……」

 

「うん、そうだね。ほら、おやすみの……」

 

「チュー……」

 

 幼児退行してからは、まだ二度目くらいのキス。しかしカヤは慣れたような様子でアッサリ私の唇を奪い、ギュッと優しく抱きついてくる。このまま、真っ直ぐベッドに向かって、カヤと寝たい。エッチしたいワケではなくて、そのままの意味で、カヤと一緒に寝たい。……寝られるかな。

 

「さ……今度こそ寝よっか。今回は私も寝るよ」

 

 上着は脱いだとはいえ、スーツのまま寝るヤツが何処にいる。カヤを寝かしたらすぐ着替えないと、ベッドの中は動きにくくて敵わない。

 

「先生……ちゅー……」

 

「おやすみのチューはさっきしたでしょ?」

 

「んーん……もっと、チューしたい……」

 

「甘えん坊さんだね、カヤ。……っ……ほら、これで寝れるかな?」

 

「……だめ。もっと、ちゅーしたいっ♡」

 

 ギュー!と自分で口にしながら抱きついてくる。まるで新婚夫婦か何かのような密着ぶりだ。当然、このままくっつかれても暑いだけなので、かる〜く優しく「コラコラ」と押し退けるが、カヤはまるで意に介さない様子。

 にひひひっ、とヤギのような瞳を覗かせて笑う。どういうワケだか、幼児退行カヤはキス魔らしく、二度や三度のキスでは満足できず、私の頭に両腕を回してでも、何度でも唇を押し付けてくる。

 

「……あのね、せんせぇ?」

 

「ん、なぁに?」

 

「カヤね、せんせーとチューすると、おまたがね、キュンキュンって、痺れるみたいな感じになるの」

 

「……」

 

「ヘンだなーって、触ってみたら……えへへ…………。なんかね、パンツの中、ドロドロになってるの♡」

 

 そう言ってベッドを捲ると、パジャマのズボン、その中のパンツを自分で下ろし、トロトロになった陰部を見せ付けてくる。

 既にパンツはぐしょ濡れ、さっさと脱がせて交換しなくてはいけないだろうに、私は、初めて見る、何もせずとも解されてそうな彼女の陰部から、目を逸らせなかった。

 

「ねぇせんせ、見て♡ こーやってね、おまたね、くちゅくちゅ〜ってイジると……んっ♡ なんかね、ピリッて気持ちぃの♡」

 

 知識ではなく、本能で、オナニーを理解しているようだった。机の角に跨る女子が、自然と角オナに目覚めるように。一輪車に乗る少女が、股間(サドル)からの刺激に無意識に腰を動かすように……。

 

「せんせー……もっと気持ち良くして♡」

 

「カヤ……ッ」

 

 やっぱり我慢は良くないんだろう。カヤが誘ってきてるんだ。据え膳食わぬは男の恥ってね。ここは据え膳を食べなければ無作法というものだろう。

 

「……触るよ」

 

「うんっ♡……あっ♡ んっ……ふぅっ……ふぅ、ん、んぐっ……ひうっ♡」

 

 今のカヤは覚えていないだろうが、カヤのことはもう何回も犯しているから、指での拡張は驚くべきスピードで可能となっている。最初から2本の指、次いで3本目の指を挿入。

 

「あんっ♡ やっ……おまた、広がってるっ♡♡」

 

「痛い?」

 

「んーん、痛くない♡ 気持ちイ……お゙っ!?♡」

 

 掛け布団を引っペがしカヤのパジャマのズボン、パンツを脱がせ、同時にグチュグチュグチュグチュ激しく手マンしてやる。するとカヤは舌を出して、M字開脚しながら腰を浮かせる。

 

「おっ♡ ふおぉっ♡ ひぐっ、んぐっ♡ はぁ、はぁっ……はぐっ♡ なっ、なんかでりゅっ……♡」

 

「いいよカヤ、そのままイッちゃいな!」

 

「イッちゃう……?っ、んっ、カヤ、もうイッちゃ、んぅっ、はぁっ、はあぁっ♡ イッちゃうっ……♡」

 

「カヤ、舌、出してっ……」

 

「こ、こぉ?……ん゙っ!?んっ……ぐっ……ぅ……♡」

 

 昼間のアキラとのキスとは正反対に、私がカヤの口内を蹂躙する。肉食動物が草食動物を追うように激しく、SMプレイの女王様が豚に鞭打つように、私の舌でカヤを激しく責め立てる。

 やがて、腰をより一層ビクンと跳ねさせたカヤはプシッと何度か潮を吹き、脱力。浮いていた腰も、絶頂後はあんまり力が入らない様子で、陰部だけをヒクヒクとヒクつかせて、痙攣していた。

 

「はーっ♡ はーっ……♡ せんせ……♡」

 

「……セックスしようか。お股、開いてくれる?」

 

「カヤ、セックスは……よく分からないけど…………。でも、先生なら……いーよ……♡」

 

 くちゅ……と愛液に濡れた陰部を自分の手で開いて見せ、受け入れる準備は整ってると、これでもかと見せつけてくる。

 鼓動が早まると共に、呼吸が浅くなってくるのを感じる。全力疾走した後のように脇腹が痛い。私の肉体が休めと、止まれと絶叫している。今のカヤは肉体こそ高校生だが精神的には小学生やその程度。これ以上は────これ以上は、もう、戻れない。プラナの言う「回帰不能点(ポイント・オブ・ノー・リターン)」だ。

 

「挿れるよ……っ」

 

「ひっ♡ ひぁあっ♡ あんっ♡ なに、これぇ♡おなかっ、広がって……んあぁあっ♡♡」

 

「!」

 

 軽く腰が跳ねた。イッたのかはよく分からない。けれど、カヤが痛がっているのではなくて、快感を覚えているという事だけは分かった。

 正常位、しかもプレスするように挿入したから、カヤの顔は私の目の前。感じてるカヤが可愛くて、何も考えず、勢いのままに唇を重ねる。

 

「ん゙っ♡ んぷっ……じゅるるっ♡ ぢゅっ……♡」

 

「カヤ……はぁっ、カヤ、カヤ……あぁっ……!」

 

「あっ、はぁっ、あんっ♡ せんせぇ、きもちぃ♡きもちぃよぉっ♡ 私のおまた、コツコツってぇ♡あんっ♡ せんせーの、おちんちん♡ すっごく、きもちぃ♡♡」

 

「っ、待ってカヤ、そんなこと言われたら……、私もイッちゃうっ……!」

 

 情けない声が漏れる。けれど腰は私の意に反してピストンを早めていく。このままでは間違いなく、カヤに種付けプレスというかガッツリ中出しする。中出しはいつもの事だけれど、今回のはいつもよりずっと激し過ぎていつもより精液の量が多そうだ。

 荒ぶる呼吸を落ち着かせようと、ピストンはもう腰に任せるとして、呼吸くらいはキチンと意識して行おうとするが、そんなとき、カヤは私の耳元で、いつもの声で────幼さの残る口調で囁いた。

 

「いーよ、せんせっ♡ カヤでイッちゃって……♡」

 

「っ……カヤ、こっち見て!私の目を見てっ……」

 

「うんっ、見てる♡ 見てるよぉっ♡」

 

「目ぇ開けて!カヤの目を見てイキたいっ……」

 

「だめっ……カヤの目、気持ち悪いってっ……よく、色んな人にゆ(・)われるから……やだよ……っ」

 

「気持ち悪くない!カヤの目が好きなんだよっ……!だから早くっ……くぅっ……!」

 

「……ホントに?」

 

「うッ────!」

 

 プツッと、じゃない。ブツンと、太い何かが私の中でブチギレた。防波堤を乗り越える荒波のよう、または決壊したダムのように、私のドス黒い欲望が白濁液という形を取り、一気に溢れ出した。

 

「っ……あぁっ……!」

 

「ひあぁあっ♡ せ、せんせぇ……膣内(ナカ)で、アツイの出てるぅ……♡」

 

「……ッ……カヤ……大好き……離さないからねッ……」

 

「うん……カヤもせんせーのこと、大好き……♡」

 

 射精感の残る、白くボヤけた頭の中。私の最後の記憶は、カヤと愛を囁き合った場面であった……。

 

 ◆

 

「────せい。先生ってば。朝ですよ、さっさと起きたらどうなんですか?」

 

「……ッ!!」

 

「やっと起きましたか。やれやれ。先生が何歳(いくつ)かは知りませんが、いい歳した大人がこんなにグッスリ眠っているだなんて……。そろそろ仕事ですよ?」

 

「カヤ……?あれ……記憶、戻ったの?」

 

「はい?記憶……?何の話ですか?」

 

「えっ!?だっ、だってカヤ、子供みたいに……」

 

「はぁ?先生、まさか夢と現実の区別もつかないんですか?それはちょっと、私でも引きますよ?」

 

「……夢……か…………ごめん、変なこと言ったね」

 

 夢オチか。それにしても、楽しかった。アルとの擬似的な親子ごっこというか、母親アルの可愛さがよ〜く分かった良い夢だった……。

 いや待て。黒服とエンジェル24で栄養ドリンクを買ったり、トキに化けたアキラにキスされ、更には押し倒されて逆レされそうになったり、凄く激しいキスをしたのも夢なの?サオリに頼ったのも……?

 一体、どこからどこまでが夢だ?もしかして私、溜まり過ぎなのかな。確かにアキラも好きだけど、まさか逆レ願望あるのかな。

 

「まぁ夢の話は置いといて。今日の仕事の時間が、そろそろですので。朝食は用意しておきましたからさっさと食べて、別なスーツに着替えて仕事行ってくださいね。というかシャワーを浴びてください」

 

「うん、そうするよ。ありがとうね」

 

「……別に。先生が仕事を開始しないと、私に仕事が回ってこなくて暇になってしまうからですよ。別に先生の為ではありません」

 

「ふふ、そうだね。────えぇと、あれが夢なら今日の当番はアルちゃんかな?早く用意しないと、また待たせる事になっちゃうな……急がないと」

 

「はい?陸八魔アルは昨日(・・)の当番ですよ?日付感覚狂ってませんか?」

 

「え?」

 

「?──あっ。ちっ、違うんです、これは!私も、私も寝ぼけてたんです!違うんです、先生っ!!」

 

 どうやら夢オチではなかったらしい。

 カヤには昨日の記憶が鮮明に残っているようだ。あの幼女ムーブが恥ずかしくて、誤魔化そうとしてしまったようだが、誤魔化しきれず、自分でボロを出してしまったようだ。可愛すぎかな。

 しかしカヤが言うには、記憶喪失などではなく、ましてや幼児退行とも少し違うと言う。カヤ曰く、昨日の幼いカヤ自身については「私(先生)から与えられた多大なストレス」が原因で生まれた「まだ幼い頃のカヤ自身という別人格」なのだとか……。

 幼カヤは昼寝していたし、夜も、寝てから起きて私と交わったワケだから、主人格と別人格は睡眠をキッカケに入れ替わるワケではないらしい。

 何をトリガーに幼カヤとカヤが入れ替わるのかが判明するのは、およそ、数日後の事であった……。

よろしければ回答をお願い致します。参考にさせて頂きます。また、数字についてはおおよその目安であり、今後書く話の文字数を限定するものではありません。

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