人にとっての死とは何か。
目的もなく流されるままに生きる事か?違う。
心臓が止まった時、頭が弾け飛んだ時?これらも違う。
自分という
ふとそんな台詞を思い出した。
最後の壁外調査に赴く際に、かつての団長の受け売りに自分なりのアレンジを加えた、部下を死地へ進ませた言葉だ。
何度部下に『死ね』と命じたか。
何度部下の『助けて』を黙殺したか。
俺はあまりに多くの人を死なせすぎた。
あまりにも多くの人を殺しすぎたんだ。
あげく最後は死に遅れた自分を呪いながら戦って死んだ。そしていよいよ死ぬって時の感情は恐怖ではなく安らぎだった。
散々に『死』という恐怖を人に振りまいた男の最後が安らぎだなんてふざけてる。
そんな俺がどうして───
相手もいない独り言。
失くしたはずの右腕を額に乗せた時、鍵の開く音と同時に突然部屋に明かりが広がった。
「オットー・ツヴァイクナー訓練兵、出ろ!」
懐かしい声に体を起こした先に居たのはキース・シャーディス教官だった。
扉の外に立つその姿は間違いなく恩師で、記憶の中よりずっと若い、されど皺の深い教官の顔に目が釘付けになっていた。
最後に会ったのは何年前だっただろうか。
「シャーディス教官…」
フラッと立ち上がった俺がどんな顔をしてたかは分からない。ただ教官の顔が困惑を孕んだしかめっ面に変わった辺り変な顔だったんだろう。
だがそれはすぐにいつもの厳つい表情に戻った。
「オットー、貴様の頭も冷えた頃だと思ってな。明日からの訓練への参加を許可する」
「ハッ……」
いったい俺は何をやらかしたんだろうか。
そりゃ訓練兵時代は時々バカやって、その度にぶち込まれた記憶こそあれどなにせ30年も昔の話。
この日にぶち込まれた記憶も理由も思い出せない。
「シャーディス教官、一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「
「……貴様は…何を言っている?」
「えっ?」
「「……」」
質問の意図が分からないという視線と、何故か口をついて出た言葉に驚いた視線が交わって沈黙をうんだ。
「あっいや、失礼しました!」
言葉に詰まって返事の代わりに敬礼を返した。
このくらいで誤魔化せるとは思ってないが、この空気から逃れる一助にはなってくれた。
教官の横をすり抜けて地上へ。
ただ地上に続く階段を上る間、ずっと背中に視線を感じていた。まるで『貴様は何者だ?』と問われているかのように。
――――――
食堂の前を通りかかった時、誰かがグラウンドが走っている姿が見えた。
自主練とはやるな、と目を凝らすと安定のサシャだった。
大方訓練中にアホけた事でもしてたか、盗み食いがバレたか…まぁその辺だろう。
「(あの様子だとクリスタは来てないんだろうな)」
サシャの表情は必死そのもので、文字通り死にそうになっている。
クリスタがあれを見てほっとくとは思えないから、多分ユミルに攫われて来れなかったんだと容易に想像ができた。
たしか部屋にドライフルーツがあったはず。
少しだけ分けてあげよう、と思い足早に部屋へ向かった俺は後悔することになる。
まさか飢えたサシャがあんなにケダモノだったなんて…!
「この匂い……フルーーツウゥゥゥ!!??」
「おわァァァァァァッ!!」
全部ッ…全部食われた!!