その日は朝からオットーの機嫌が悪かった。
言うまでもなく前夜にサシャに秘蔵のドライフルーツを1粒残さず食べ尽くされたのが原因だ。
オットーにとってドライフルーツはサシャにとっての肉。
事のあらすじを知らないジャン達はパンの3分の1をオットーに差し出して一生懸命に謝り倒してるサシャの姿に驚愕の表情を浮かべている。
「おい、サシャがパンを差し出してるように見えるのは俺がバカだからじゃないよな?」
「黙れバカ。芋女よりクリスタの方が大事だ」
「テメーはクリスタのママかよ」
そして始まるユミル VS コニー戦。
同じテーブルの同期には悪いが殆どの視線はサシャ達に向いて止める者がいない。
そして徐々に白熱していくユミル戦。
最終的にコニーが投げ飛ばされて決着となった。
一方、なんとかプンスコオットーにパンを受け取ってもらったサシャだったが、音を聞きつけてやって来た教官にミカサにより『サシャの放屁です』と差し出されてまさかの濡れ衣。
乙女としての何かとパンの交換という割にあってないレートで黙らされていた。
―――――――
まったく、とんだ災難だった。
迂闊に1袋丸ごと持っていった俺も少しは悪いんだろうけど、それにしたってドライフルーツを口いっぱいに詰め込んで食べるなんて人間のする事じゃないよ。
自家製だから良かったものの、店で買おうと思ったら結構いい額いくからね、ドライフルーツって。
でもひとまずそれは置いといて──
「(まずはトロスト区の駐屯兵団が爆薬を保有してるか確認しないとだよなぁ…)」
未だにしっくりこないけど前世(って事にした)だとトロスト区の前門付近の大岩の周りを工兵が掘り返そうとして失敗、続く試みで結構な量の爆薬を使って動かそうとしたもののそれも失敗して、余った爆薬だけは駐屯兵団で保管・管理していた。
問題は訓練兵である俺がどうやって爆薬の有無を調べるか、なんだけど…。
「いやぁあ?そんなん俺でも怪しむわな」
そう、怪しいんだ。
実際、俺だって使用目的をハッキリ言えないなんて奴に爆薬を渡すどころか有無すら教えない。
むしろ拘束して目的を無理くり吐かせるまでやるだろう。
そこで『俺には前世があって、その再現を──』なんて正直に言ったら最後、今度は精神病を疑われるまで見えてくる。
変わるのは拘束のされ方くらいだ。
「(忍び込むか?要は見つからなきゃ問題ないワケだし)」
バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。
なんてのは勘違いしたバカタレの戯言ですよ?バレてなくても罪は罪。ただ、バレなければ罰せられないってだけの話であって。
「やるか……」
計画は早い方がいい。
と、その時だった。
「なにをやるんだい?」
「!!」
「あっ、ごめん。そんなに驚くなんて…」
「いや、いいんだマルコ。朝練のやり方を変えようかと考えてたところでね」
「(聞かれた…か?)」
「それは悪いタイミングだったな、邪魔をしたみたいだ。じゃあ僕たちは先に戻ってるから。行こうかジャン」
「おう」
いつの間に後ろに来たのか、振り向くとマルコとジャンがいて、そこで初めて思い出した。『せやった、同居人おったんや…』と
昨夜はショックで周りを見てなかったから忘れてた。
ジャンはともかく、比較的眠りの浅いマルコを起こさないように部屋から抜け出すのはぶっちゃけ無理だ。
もし居ないのがバレて教官に報告でもされたら全てがご破算、誰も救えなくなってしまう。
それが1番嫌だから、だから計画の先延ばしを決めた。
朝練から始めていけばいいさ、と自分に言い聞かせて。