1.
僕らは、自慰を見せ合った――学校帰りに、僕の部屋で。
その日、制服のままベッドに並んで腰掛けて、僕たちはいつものように他愛ない雑談をぽつりぽつりと交わしていたが、そこに生じたちょっとした沈黙の後に、山田が何気なさを装って、ふと呟いた。
「ね……あれ、強烈だったね」
「……そうだな」
山田が言っていることはすぐに分かった。僕もずっとそのことを考えていたから。
四時間目の、保健体育の授業のことだ。
授業の内容は性教育、しかもお題が「マスターベーションについて」。
これがいっそセックスのことだったら足立あたりが無邪気にはしゃぐひとコマもあったかも知れないが、より身近な自慰行為となるとかえってヘタに手が出せない……ということなのか、生徒たちの居心地の悪さと強い関心とがない交ぜになって、教室内を異様な空気にしていた。
〔主に手で性器を刺激することで性的快感を得ます。〕
〔男子では、多くの場合射精を伴います。〕
〔女子であれ男子であれ、マスターベーションをすることは決して恥ずかしいことではありません。〕
〔体に負担をかけない範囲であれば、「自分のマスターベーションは回数が多すぎるのでは」と気にする必要はありません。〕
〔アダルトビデオなどの刺激的な映像にばかり頼ってマスターベーションをするのは、情操上の危険がありますので注意しましょう。〕
〔責任が取れる大人になるまで、男子も女子も、マスターベーションによって自身の性的欲求と付き合うことが重要です。〕
もちろん、内容としては皆がすでによく知っていることばかりだが、そんな教材の文言の数々が、妙に生々しく僕たちの心を捉えたのだ。
山田が、そっと僕の手を取った。顔をぐっと僕の方に寄せると、
「ね、京ちゃんも、する……?」
と、囁いた。
「エッ……?」
す、すす、するって……?
「……ひとりエッチ、するの?」
来たっ……!
ある程度予想はしていたとは言え、山田から振られたその話題に、僕はガチガチに固まってしまう。猛烈に恥ずかしい……しかしここで照れたりごまかしたりしたら、後でもっと恥ずかしくなるのは目に見えている。
僕は努めて平静を装い、こう返答した。
「そりゃ、するが……? 杏だって、するだろ……?」
そう返されて、分かりやすく顔を赤らめる山田。好きだ。
「うん…………する」
今度は、僕の顔が赤くなる。
(やっぱりするんだ、オナニー……!)
心中で、二人ともそう考えていたに違いない。
「ねえねえ、じゃあ昨日も、した……?」僕の袖を掴んで、今度はそう訊ねる。
「……覚えてない……」
した。
オカズだって覚えている。すけすけのランジェリー姿の山田とバックの体位でセックスする妄想で、昨晩はヌいたのだ。
そうとは言えず口ごもる僕を横目に見つめながら山田は、
「私はね……したよ、昨日……」
と告げた。
「……京ちゃんと、エッチすること考えながら……」
こういうのを言えちゃうから、山田には勝てない。
僕は山田の肩をぎこちなく抱く。大人しく抱かれてくれる山田。目を閉じた彼女に、僕は見上げるようにしてそっとキスをする。
唇が数度重なり合い、そしてどちらからともなく舌先が絡まって……んちゅ、んちゅ、と濃密なディープキスになっていく。
思い返せば、初めてのキスは唇が微かに触れるだけのものだったのに、いつしかこうして性欲むき出しのキスを、僕たちはできるようになっていた。
「んっ……」
「ぅん……」
静かな部屋に響く声。山田の色っぽい声を聞くと僕も釣られてつい声を出してしまう……すごく、気持ちいい。
もっと大人になれば、この先に進めるのだろうか……?
ぐいぐいと抱きしめ合いながら、舌と唇でお互いの肉体を感じ、味わっている……と、山田がそっと僕に両手をついて、体を離した。
潤んだ目で、僕を見つめている。
そして消え入りそうな声でこう言った。
「ね……してるとこ、見せてよ」
2.
「してるとこ、って……」僕は驚きでうまくモノが考えられず、そう聞き返す。
「もぉう、分かるでしょ……? ひとりエッチ」山田はちらりと僕の腰元に視線を落とした――制服のズボンの股間のところが、あからさまに盛り上がっている。
「で、でも……さすがにそれは……恥ずかしいって」
「でも、先生も言ってたじゃん、『マスターベーションをするのは全然悪いことじゃない』って……」
「そうだけど……」
どう対処すべきか分からず、視線を落とす僕。それを下からのぞき込むようにして、山田は小悪魔の表情で訊ねた。
「……京ちゃんは、私が
んんんんんんんんっ……!!
「それは…………見たいけど」
「そう? ふふ……じゃあさ、京ちゃん、まず見せてよ……」
確かに……裸にせよ自慰にせよ、見せるハードルは男子より女子の方が遥かに高いはずだ。
……じゃあ、まずは僕が見せるしかないのか……!
学習机の上の置き時計をちらりと見た。母さんはパートに出ていて、お姉もバイト……二人が帰ってくるまで、まだたっぷり二時間はある。
「……じゃあ、えっと、今……?」
「うん……今、見たい」
山田は今、強く欲情している。その様子に、こちらも性欲をムラムラと煽られる。
「分かった……でも……」
「……?」
「でも……杏も、脱いでほしい」
山田の目が僅かに見開かれた。視線を少し落として、
「……最初は……下着でも、いい?」
と訊く。視線がまた上向きになって、僕の目を射貫く。
「うん……」
す、すごいことになってきてしまった……なんだか、現実じゃないみたいだ。
僕が黙ってシャツのボタンを外していくのを、山田はすぐ傍でじっと見つめている。
僕はベッドに座ったままワイシャツとアンダーシャツを脱いで上半身裸になり、次いで靴下を脱いだ。そして山田の視線を感じながらベルトを解いてズボンを脱ぎ、ボクサーパンツだけの姿になった。その前面が膨らんで、しかも染みを作っている。
山田はそれを見過ごさない。
「これ……ひょっとして、ガマン汁、ってやつ……?」軽く人差し指で指しながら、そう訊ねる。
「……そう」
山田、ガマン汁を知ってるのか……! 何で知ったのだろう、マンガ? AV? そんなことを考えるとまた興奮の度合いが高まる。
「あ、むくむくしてきた……!」股間の膨らみに、嬉しそうに呟く山田。
ヤバい……このままじゃパンツすら脱ぐ前に射精してしまいそうだ……。
僕はそろりと膝立ちになって、山田に向き直った。
「じゃ、脱ぐぞ……?」
「うん……」
「…………ぇぇぃ、ままよ」
そうおどけてみせることでなんとか気持ちを振り絞って、ずるっ、とパンツを引き下ろす。が、前に突き出たモノがぐいと引っ掛かる。
そこを無理に引き下ろすと、ビキビキに勃起したチンポが弾みを付けてぶるんっ!と山田の前に姿を現した。
口を半開きにしてそれを凝視する山田。「あ……」という小さな声が洩れている。僕は山田の方へ突き出たそれを持て余したまま、黙って彼女の反応を待つ。
「すごい……ビンって張ってる……立派だね……!」
「そ、そうかな……」
「毛も、結構生えてるし……もう大人のモノって感じ……分からないけど」
「…………」
「思ってたより、大きい……」
本心なのか、それともそう言えば男が喜ぶと知っての言葉か……いやそれはそれで興奮するが……。
ぴくっ、ぴくっと微かに跳ねる勃起チンポを、山田は熱っぽい視線で見つめる。しかしフと我に帰ったように、
「じゃあ……私も、脱ぐね……」
と囁き声で告げた。
「うん……」
本当に、そんなことが……!?
半ば混乱状態の僕を前に、山田はくるりと後ろを向くと、丁寧な所作で服を脱ぎ始めた。
制服のシャツのボタンがゆっくりと外され、はらりと脱がれる。山田の広くすらりと伸びた美しい背中が、露わになった。背中の真ん中の微妙な窪みが強烈に色っぽく感じられる。薄い黄色のブラジャーの紐だけが、水平にその裸の背中を区切っている。
次いで、靴下を脱ぎ、そしてスカートを脱いだ。下に穿いていた体操服のズボンに手が掛かると……一瞬の間を置いて、それも脱がされていく。ブラジャーと同色のパンティー。尻の割れ目が、少しだけ覗いている!……ような気がする。そしてパンティーから伸びる、むっちりとした素肌の太股、そして脚……。
僕は思いがけない状況に軽い目眩を覚えながらも、一瞬一瞬解き明かされていく山田の裸の後ろ姿を、何の躊躇もなく食い入るように見つめる。完全に視姦というやつだ。触らなくても、チンポがぐんぐん硬く熱くなっていくのが分かった。
ふと、膝の辺りにポトリという感触があった――ガマン汁が垂れ落ちたのだ。
僕は熱を帯びたチンポをにぎると、山田に視線を戻した。そして亀頭に溜まったガマン汁を竿全体に塗り広げるようにして、ゆっくりとしごき始めた。
3.
下着以外を全て脱ぎ終えて、山田が恥ずかしそうにこちらに向き直る。と、その視線が、僕の腰元に……さっきよりも怒張したチンポと、それをしごく手に注がれた。
「あっ、もう始めちゃってる……!」
少しはしゃぐようにして、興奮気味に見つめる。
僕は僕で、正面を向いた山田の姿に引きつけられている。広がりのある両肩のラインから、くびれつつも健康的な肉付きを感じる腰とお腹、控えめに窪んだ臍まで……でも何と言っても、豊満な乳房の膨らみが、強く視線を捉える。もちろんブラジャーにしっかり包まれてはいるが、それでもなお、谷間のラインが充分すぎるほどに顕わになって僕の性欲をズキズキと刺激する。
現実の山田の下着姿を前にして、チンポを露出してそれをしごく自分……背徳感に胸がドキドキする。
僕は黙って、自慰行為を続ける。
「結構、ゆっくり動かすんだね……」
「うん……最初は。段々、速くしていく……いつの間にか」
「あ、私もおんなじ……!」
その言葉で、僕の手の中でチンポがまたピクリと反応する。好奇心旺盛な山田の眼差しに促されるように、僕は手の動きを少しずつ速めていく。ガマン汁が絡んで、ぬちゅ、ぬちゅ、という卑猥な音を立てる。
呼吸が荒くなっていくのが恥ずかしい。
僕のオナニーをまじまじと見つめる山田は、ふと僕の目を見て、
「なにか、シてほしい……?」
と訊ねた。
「えっ……!?」
そ、それって……!
「な、なにか、って……?」
「そのぉ、ポーズ、とか……?」
言っている山田自身も恥ずかしそうだ。
「あぁ……」
てっきり、手コキでもしてくれるのかと思ったが……そうなるともうオナニーじゃなくなっちゃうよな。
「じゃあ……えと……腋、見たい……かな」
僕が照れながらもそう答えるのを聞くと、山田はいたずらっぽく笑って、
「ふふっ、京ちゃん、そういうの好きだったんだ……エッチ」
と言うと、
「……いいよ……」
と言い添えて、僕を真っ直ぐ見つめながら両腕をそっと上げ、両手を首の後ろで組んだ。
ぱっくりと開かれた、綺麗な両腋……僕は思わず息を呑んだ。
これまで、制服の半袖からたまに見えるのをそれとなく凝視したことはあったが……それが今、これ以上なく顕わにされている――山田自身の意志で、他ならぬ僕だけのために。
その艶やかな姿態に大いに欲情を掻き立てられて、僕はチンポを大きくしごき上げる。オナニーを、恋人に見せつけている……いや、見せるように頼んだのは、その恋人自身なんだ。
僕の反復動作を見つめる山田の目が、興奮に潤んでいる……と、不意に太腿をもぞもぞと小さく動かした。それが時々起こる……もぞもぞ……もぞもぞ。
(ひょっとして……)僕は思い至った。
(ひょっとして山田も、オナニーしたがってるのか……?)
そう思うと、チンポをしごき上げる手の動きが、無意識に激しくなった。僕は理性が消えたようになってハァハァと荒い息をつき、山田をこのまま何発も何発も犯してしまいたいと強く念じながら、彼女に見せつけるようにチンポをしごき上げた。ガマン汁が激しく摩擦されて、ヌチュヌチュヌチュヌチュと性急な淫音を鳴らす。
もう、このままっ……!
そう思ったと同時に、どこからか理性が突然やって来て……僕の手をピタリと止めた。
「もう、ダメ……ここまで」
「えっ、どうして……?」
「これ以上したら……その、ホントに
そう告げると、山田は引き下がらず、
「やだ……
と、駄々をこねるようにして言った。
「っ……!」
山田から、そんなドスケベな言葉を聞くことになるなんて……!
「ね……私に掛けていいから……ほら……見て……どう……?」
《私に掛けていい》――そんなとんでもないことを、まるで懇願するように言うと、山田は改めて両腕を上げて自分の体を僕に
まるで山田に犯されでもしているような猛烈な興奮に捕われて、僕はまたチンポをジュコッ、ジュコッと激しくしごき出す。もちろん、山田のカラダを視姦しながら――絶頂の感覚が、ギュンと近づいた。
「……ううっ……イク……」
「どこに
「……胸、胸に
「……うん、いいよっ……!」
と、山田は両手を後ろに回して、躊躇なくブラジャーを解いた。ブラジャーが腰の辺りにストンと落ちるのが、まるでスローモーションみたいに見えて……そして、山田の完全な上裸が僕の眼前に解放された。
美しい曲線をたっぷりと描く乳房。その巨乳に相応しい大きめの乳輪。ぷっくりと膨らんだ、ち、乳首……。
そのあまりに上質なおっぱいをナマで目にした刹那、僕は熱く勃起したチンポを猛烈にしごき上げていて……数秒もしないうちに、限界を突破した。腰が、自分の意志とは無関係にガクガクと震えだす。膝立ちになっていた僕はベッドの上に立ち上がった。
「あっ、あっ……
「いいよ……! 来てっ……!」山田は自分の体を僕のチンポの前にさらけ出す。
「ぅう……んんぅっ!!」
最後に唸るような声が喉から洩れたと思うと、ビュルルッ! ビュルルッ!とほとばしるような勢いで射精が始まった。気が遠くなりそうなほどの、性的快感――それに全身を貫かれて、僕はチンポをしごき続ける。
熱く熟れた亀頭からピュッ! ピュッ!と射出される精液が、山田の透き通るように白い乳房に次々に掛かっていく。暗桃色の乳輪と乳頭が、僕の色に染まる……まるで、果実にソースを掛けるみたいに。
普段は、射精の様子なんて見ない。それが今は、山田の裸身にぶっかけて、それを見つめているなんて……。そして山田も、僕から目を離さないでくれている。
「ん……うぅ……!」
興奮と快感とで、無意識に声を洩らしてしまう。僕の精液を胸元に受けとめ続ける山田の目は欲情に輝いて、口元が小さく開いている。その様子が僕の絶頂の快感を更に押し上げた。
4.
「すごい……本当に白いんだ……」
自分の裸の乳房に掛かり、とろりと垂れ落ちていく精液を見つめながら、山田はぽつりと呟いた。
「匂うって聞いてたけど……よく分からない」そんなこと、どこで聞いたんだろう?
「すぐには……たぶん、時間が経ってから……」と僕は答える。
「そうなんだ……」
僕はウェットティッシュを二、三枚引き抜いて、山田に渡そうとした。が、山田が甘えるような表情で、
「拭いて……?」
と囁くので、請われるままに彼女の乳房にティッシュを這わせて、己の穢らわしい液体を拭っていく。ティッシュ越しに、柔らかな肌の感覚が伝わる。
僕に拭かれながら山田は、
「なんか、拭いちゃうの勿体ない……」
と、僕には理解しがたいことを呟いた。
匂いが部屋に留まらないように、僕は拭き終えたウェットティッシュをビニール袋に捨てて口を縛る。それを見ていた山田は、どことなく遠慮がちに、
「ね……それ、もらっていい?」
と言った。
「え、それって……」
「だって、匂いも知りたいし……ダメ? 恥ずかしい?」
「ダメ……じゃない。恥ずかしくはあるけど……」
「やった」
「……でも、その、家の人に見つからないように……」
こんなの見つかったら、エラいことだぞ……!
「うん、絶対気を付けるから……」山田は僕からビニール袋を受け取ると、そのまま自分のバッグにしまいこんだ。そしてまたこっちを振り向くと、ふいに笑顔になって僕の手を取った。
手を繋いだまま、僕たちは見つめ合う。
「ね……キモチ良かった?」
「うん……かなり……杏の、おかげで……」
「へへ……京ちゃん、すっごくエッチだった……」
「そう……?」
「うん……ね、キスして……」
僕たちは十数分ぶりにまた口づけを交わす。今度は最初から、ひたすらに濃厚なディープキス。
僕たちは舌を深く絡め合いながら、両手でお互いの体を夢中でまさぐる――お互いの、裸の体を。
山田の掌が僕の肌を這うたびに、僕の心と……そして性器が、また熱を帯びていく。ぐんぐんと高まっていく欲情に、二人とも息が熱い。
もう、どうにかなっちゃいそうだ……!
そんなふうに感じた刹那、山田の体が不意に僕を離れた。それでいて僕の目をじっと見つめている。頬が、興奮と欲情に上気している。
山田は手を伸ばして、僕の太腿をそっと撫でた。そして同じ手で、今度は自分の太腿を撫でる。一度、そして二度。
そして半ば囁くような声で、僕にこう訊ねた。
「ね、私も、ひとりエッチしていい……?」
【つづく】