あたしらしくない。
春斗くんを意識し始めてから、何度も調子を狂わされている。
……ここ最近は、付き合ってからは、特にそうだ。
夜眠る時が、一番ひどい。なにせこのベッドは、あの日のことを連想させる。ここで何度も、何度も春斗くんに抱かれた。思い出すだけで、全身が熱くなる。そして同時に切なくもなる。彼に会うまでは、そんな浮ついた感情とは一切無縁だったというのに……。
あたし達はあれ以来、ああいうことをしていない。
何故? そんなもの、決まっている。あたし達は神へ復讐しなければならない。本来なら、こんなことをしている場合じゃない。
それなのに……。
「春斗くん……」
その日の夜。つい、そんな声が漏れた。あたしは、眠る前に彼のことを考えながら、自分のものを慰めた。
寝巻を脱いで、ブラをたくし上げて、パンツを片足に引っかけている。右手で性器を撫でて、左手で胸を揉む。そうすると、春斗くんに愛されている気分が味わえた。
「あ、ん、ん、っ……」
クチュクチュと性器をいじる音が鳴る。
その音は段々と激しいものになっていく。それにつれてあたしの吐息も熱く、荒々しいものへと上がる。体温が上がり、頬も熱くなっていた。
「い、イク……!」
小さく呟くと同時に、体がビクン! と跳ね上がる。
快感が全身を駆け巡った。
そうしたオーガニズムの後にきたのは、結局のところ寂しさだ。
自分の手じゃなにも慰められない。
それどころか、切なさが増すばかり。
あたしは春斗くんが欲しくなっていた。
「このあたしが、色ボケだなんて……堕ちたものね」
自己嫌悪に陥り、自分の体を抱きながら、あたしは呟く。
自慰行為なんて、初めてする行為だった。
彼との手合わせの時も、どこか集中出来なかった。模擬用のナイフを打ちつけられ、痛さに小さくうめき声を上げる。相変わらず、彼の鍛錬は容赦がなかった。
「……お前、最近調子悪いのか? なんつーか、すげえ弱いぞ」
上の空なのが見透かされているのか、春斗くんがそんなことを言う。
あたしは重いため息をついた。
誰のせいだと思ってんだ、このバカは。
「そんなことないわよ……スランプなだけだから」
でも、あたしは思ったことをなにも言えなかった。
ボソボソとそう返すのが精一杯。
完全にあたしは、ポンコツになっていた。
「なら、いいけどな。なんか、らしくねえな」
「そうかしら? こういう時もあるわよ」
「……その返しもそうだし、自分で自分をスランプって言うなんて、本当にゆりらしくないぞ。なんか悪い物でも食べたか?」
「なによ。あんたはあたしをなんだと思っているのよ」
「いつものお前なら、「弱いだとぉ? 上等じゃない。ほら、次。構えろー」とか言いそうなのにな」
「そうだったかしら……」
「歯切れわるっ⁉ お前本当に誰だ?」
春斗くんがあたしの頬をつんつん突く。こういうじゃれ合いはしてくれる。けど、そういうのはいい。ぷいっ、とそっぽを向いてやった。
あたしはこの時、どんな表情をしていたのだろう。
めんどくさい女とか、思われたくないんだけど……。それこそキャラじゃない。
「ゆり?」
春斗くんが不安げな声を上げた。
だけど……なにかを感じ取ってくれたのか、春斗くんがあたしを抱きしめる。汗臭くないかな、あたし。
……というか、わかっているわよ。
たしかに、あたしらしくない。さっきから考えていることも含めて、全部。
「なにかあったか?」
「……笑うんじゃないわよ」
ゆりが俺の腕の中で、顔を上げる。その頬は赤かった。
「ああ。なんだ?」
「あの日以来……なんで、あたしになにもしないのよ?」
「っ⁉」
「キスもないじゃない……」
思わず、息を飲んだ。
あのゆりが、こんな切なそうな声を出すとは。
「い、いいのか?」
我ながらダサい返し。
動揺のあまり、声が裏返っていた。
ここは男らしくならないといけないのにな……。
「別に。いいんだけど。少しだけ、寂しいって……」
「色ボケするなとか言って、怒るかと思って」
「我慢しているの?」
「考えないようにしている」
「律儀ね。いいわよ、そんなこと。好きにしたらいいじゃない」
「好きにって、お前……」
「なによ」
「滅茶苦茶にするぞ、お前のこと」
こっちは男である。
我慢している反動はこちらの方が大きい。本来は、性欲の塊なのだ。この世界に来ている奴らは凄絶な過去のせいで、それどころじゃないだけで。でも、その本質はなにも変わっていない。
「……滅茶苦茶に、しなさいよ」
こくり、とゆりは頷いた。
俺は遠慮がちに、ゆりの唇を奪った。
最初はソフトに。途中から舌を入れた。ゆりはそれに応じた。互いの舌が絡み合う。くちゅくちゅ、と唾液同士が淫靡な音を立てた。
「ここでいい、から……こんな奥地。どうせ、誰も来ないわよ」
ゆりはパンツを降ろして、近くの木に手をついて尻を向けた。
「早くしなさいよ……」
「あ、ああ」
俺はズボンを降ろし、突き出たそれをゆりの中に入れた。淫靡な感触が包み込んでくれた。そしてそこはもうぐちょぐちょに濡れている。ずっと待っていてくれたかのような濡れ具合に、俺は思わず情けない声を上げそうになった。ゆりの中がこんなことになっているなんて……。
「っっっ……!」
我慢しているのか、ゆりは小さなうめき声を上げる。
腰を動かす。その度にゆりの愛液が俺のに絡みつき、絞るとるようにきゅっと優しく包み込んでくる。制服を着たままの行為。それがかえって淫靡さを演出する。スカートから見えるゆりの尻を俺は両手で堪能した。ゆりの尻はとても綺麗で、すべすべだ。
「っ、っっ、は、春斗くん! こうしたかった……ずっと、こうしたかった!」
「気持ちいいか?」
「お、おかしくなりそう……」
「ゆり……」
「は、春斗くんは……んんんっ!」
「すげえ良いよ、ゆりの中……!」
「あ、あ、あ、す、すごい」
ゆりの中がきゅんきゅん躍動する。その度に俺のが快感に震え、腰の動きが止まらなくなる。もう激しさが止められなくなり、パンパンパン! とピストン音が鳴り始める。誰もいないとはいえ、こんなとこで音は立てたくなかったが、快楽の前に理性は壊れ果てていた。
「ゆり、正面……」
「立ったまま? なによ、それ。どうやるのよ……」
「足、上げて。右足だけでいいから」
「こう……?」
ゆりは言われた通り、こちらを向いて右足を上げた。立ったまま、正面で入れる。ゆりの目はとろんとしていて、とても可愛らしかった。唇を重ね合う。舌を絡め合う。ぐちょぐちょに絡み合った。久しぶりだからだろうか、俺達は貪るようにお互いを求め合った。
パンパンパン、とピストンが鳴る。射精の感覚が近づいていく。ゆりと見つめ合いながら、腰を振る。もうダメだ……気持ち良すぎる。
「ゆり、もう……!」
「んっ……! 中で、いいから。春斗くん、出して……♡」
最後に早く激しい腰の動きをして、ゆりの中を好きなだけ突き上げた。
「あ、イク……あああああ!」
「ん、あああん♡」
快感の迸り。ビクビクと俺のがゆりの中で脈打ち、精液がドバドバと放たれた。ゆりの体をぎゅっと抱きしめる。ゆりも俺に力の限り抱きつく。射精が止まった後、俺達はキスを交わした。
「部屋……来るわよね」
「ああ。もう止まらないからな」
「そんなの、こっちのセリフよ」
ゆりが俺の目をまっすぐに見据えながら言った。
ようやく、ちょっとは調子を取り戻せたようだ。
夜。慎重にゆりの部屋へ忍び込む。二度目とはいえ、窓から侵入するこの方法に慣れることはない。靴を置いたあと、俺は無言でゆりの唇を奪った。
「ん……」
少しいきなりすぎるかと思ったが、ゆりはすんなりと受け入れた。それどころか舌を積極的に絡ませ、俺の口の中を撫でまわしていた。お互いの体をまさぐりながら、服を脱ぐ。ゆりは俺をベッドに座らせて、フェラチオをした。くちゅくちゅ、といやらしい音を立てて俺のをしゃぶる。この間と比べると、随分と上手くなっていた。
「春斗くん……」
「ん?」
「あんたが好きなこと、いくらでもしてあげるわよ」
ゆりはそう言って、二つの膨らみで俺のを包み込んだ。柔らかくて、暖かい胸の感触。両手で優しく上下運動されて、俺は悶絶した。ゆりの大きく綺麗な胸が、ペニスを包む淫靡な恰好と、とろけるような感触が全身に甘い痺れを走らせる。
「なんでも受け入れるから。もっと、あたしのことを好きにしてほしいのよ……」
普段の勝気な態度からは想像も出来ないくらいに、甘く切なそうな声を出される。まさかゆりがこんなことを言って、積極的なところ見せてくれるとは思わなかった。
ペニスをぎゅっと胸で慰めながら、先端を口でしゃぶり出す。ゆりは上目遣いでこちらを見上げた。ちゅぱちゅぱと吸われ、あっという間に射精感が高まっていく。端正で可愛い顔をじっと見る。
「ゆり、かけたい……」
ゆりが口をぱっと放す。
「ん。このまま?」
「ああ……」
「ふふふ。やっと、素直になってきたじゃない」
ゆりのパイズリがスピードを増していく。柔らかい圧力が、根本から上へと何度も波打つ。快感のボルテージが上がっていく。我慢できなくなって、射精した。白い液体が勢いよく飛び出し、ゆりの顔を汚していく。その背徳的な光景に、野性的な快感が満たされた。
「ん……すごい出たわね」
俺だって溜まっていたのだ。
ずっとお預けしていたわけだからな。
ゆりの顔を拭きとった後、俺達は再びセックスをした。バックで挿入する。ゆりの中は熱く、まだしっとりと濡れていた。とろけるような快感が迸る。
「っ、いい……春斗くん、まだ固いわね」
ゆりがバックの体勢で、ちらりとこちらを見やった。目はとろんとしており、声は甘えていた。丸く綺麗なお尻を両手で揉みしだく。しっとりとした感触をしていて、肌はすぺすべとしている。手を滑らせても、力を入れても気持ちが良い。ただ、俺はふとあることを思い出した。
「あたしに現を抜かすんじゃないわよ、とか言っていたのに、こんなにする気満々だったんだな」
「っ⁉」
「さっきもそうだが、すごい濡れていたぞ?」
「そ、そうよ……ふん。なによ」
ゆりは拗ねた様子でそういって、腰を浮かせてマンコから俺のを抜いた。そして俺をベットへと逆に押し倒し、ペニスを掴んで自分の中へと入れた。
「っ、ぁ……あたしが、動いてやるんだから」
「ゆり……?」
「生意気な口聞けなくなるくらい、アンタなんか抜いてやるんだから。覚悟しなさいよね」
ゆりはそう言って、腰を動かし始めた。かくかく、と俺の上で大きく腰をふるその姿はエロティックで、美少女なその姿とのコントラストが艶美だ。
「あ、あ、あ、あ、胸、触って、やん、あ」
ゆりの言われるがまま、目の前で大きく弾む胸を揉んだ。手の中で柔らかな感触がとろける。それを何度か楽しんだ後、上体を起こして乳首を舐める。乳首が舌の中で硬くなっていき、ゆりがそれにつれて喘ぎ声が大きくなった。
「ひゃあ♡あん、あ、あ、あ、す、すごい、あっ」
ゆりは己の中をかき回すように乱れた。腰の動きは激しくなり、ベッドの軋む音が大きくなっていく。シーツが乱れ、パンパンパン、と肌がぶつかり合う音が部屋の中に鳴り響く。
「あ、あ、イク、いっちゃうううううう♡」
ゆりが淫靡な声を上げて、のけ反った。
ビクビク、と数度体を震わせる。
「ゆりがイってるじゃねえか……」
「うっ……」
今度は俺がゆりを押し倒す。ゆりは俺の顔を見つめていた。前もそうだったけど、ゆりはちょっとだけ照れ隠しをする。長女気質だからか、リードをしたがるところもある。でも一方で、甘えたがる感情もあるのだ。まあつまり、可愛い。
「俺の、欲しいか?」
ちょっとの悪戯心でそう言うと、ゆりは観念したようにウインクした。
「……欲しい♡」
素直になってくれたことが嬉しくて、俺も同じように激しく腰を動かした。
「ひゃああああん♡ あ、あ、あ、あ、あ、あ、は、激しい、この前より……ずっとずっと、すごいっ。壊れちゃう♡」
ゆりの中を突き上げる。乱れた声を上げる彼女に、俺の中の理性は壊れる。もう気持ちよくなることだけを考えていた。ゆりの綺麗な体を、視覚で堪能する。揺れる胸。細い体。長い足。全てが愛おしくて、興奮させられた。
ぐしょぐしょに濡れた中を突き上げる。ゆりの膣は前より気持ちよくなっていた。俺の形に変わっているのかもしれない。前よりもフィットして、ぎゅっと俺を包み込んでくれている。
「ゆり、俺もう、イキそう……」
そう言うと、ゆりが両足で俺の腰をぎゅうううう、とホールドした。
「中! 絶対に、中が良い! 中でいっぱい出して!」
射精感の高まりと共に、腰を大きく何度も動かす。パンパンパン、という音と共にとろけるような快感がこみ上げる。俺は思わず情けない声を上げる。
「イク……!」
「ああああん♡ 出た……!」
射精の迸りは長かった。ゆりの中でペニスが何度も脈打ち、ドバドバと遠慮なく白い液を流し込んでいく。そのままぺたりとゆりの体の上に倒れ込む。ゆりの体からは甘い香りがした。ぎゅっと背中に腕が回される。
「ん……♡ 抜かなくていいわよ。受け止めてあげるんだから」
俺とゆりは一つになったまま、しばらく余韻に浸っていた。