夏祭りのオペレーションが終わり、日常は落ち着きを取り戻した。天界の使徒の動きに目立ったものはない。例のボーイズバンドも活動していない。ガルデモの復帰もあり、死んだ世界戦線はいつものドタバタとした日々を送っていた。
ゆりとの関係はというと、恋人関係、というものにはなるが……正直言うと、今までとあまり変わりがない。共に作戦を行ったり、屋上で喋ったり、稽古をしたり。劇的になにかが変わったかと聞かれると、そうではない。
というか……正直に言うと、どうすればいいのか、わからないのだ。
恋人。出来たことがないから、そういう関係になったら、具体的になにをすればいいのかなんて、深く考えたことはない。もちろん、さすがに知識としてはある。この世界に来てからは小説を読んだりしたし、NPCと会話をしたりもした。意外にも、NPCはNPC同士で恋をすることがある。だから、いわゆる恋バナなんてものも聞いたりしたのだ。
だけど、それをゆりとの関係にどう当てはめたらいいのか、まだわからないのだ。というか正直、なにか前と違うことをしたいのかと聞かれると、そうでもない。今まで通りでいいといえば、いいのだ。
だけどそれは、あくまでも俺の意見、ということで。
最近は戦線メンバーとも馴染めたことだし、余裕が出来てきた。
この日もいつも通り屋上へやってきたゆりに、さっそく切り出してみることにした。
「ゆり。デートとか、したいか?」
「はあ?」
で、このリアクションである。なんだ、はあ? って。
ゆりは珍妙な生物に出くわしたかのように、目を丸くしてこちらを見た。
「アンタ、悪い物でも食べたのかしら」
「失礼だな。そんなに珍しいかよ」
「珍しいわよ。任務と鍛錬一筋なあなたの口から「デート」なんて言葉、出てくると思わなかったもの」
「お前は俺をなんだと思っているんだ……」
呆れたようにため息をつく。
まあ、頭が固いのは認めよう。現に恋愛のれの字もわからないわけだし。
「俺なりに気を使っているつもりなんだ。なんつーか、付き合っているのに、恋人らしいことをしてないというか、俺がそういうことを出来ないというか……まあ、結構これでも悩んでいるだよ」
「別に、それでいいわよ。むしろ変に色ボケでもされようものなら、困っちゃうわ。いい?春斗くんは恋人であると同時に、戦線のメンバーでもあるのよ。あたしに現を抜かして、職務を忘れるんじゃないわよ!」
「ああ……まあ、たしかにそうだな」
「それにあたしだって忙しいのよ。戦線のリーダーよ? 本当なら、恋なんてしている場合じゃないわ」
ゆりがそれでいいのなら、安心である。
俺としても、女の子っぽくヒステリー起こされても困るしな。その時はその時で考えるけど。
「でも、そうね。せっかくだから、付き合いなさいよ」
「え?」
「デートよ、デート。あなたが言い出したんじゃない? たまには息抜きも必要よ」
「ああ。でも、待ってくれ。まだなにするか考えてなかったから……」
「いいわよ、そんなの。ほら! 座ってないで、早く行くわよ!」
強引に俺の手を引き、ゆりは駆け出した。
「お、おう。でも、どこへ行くんだよ?」
「さあ? 今から考えるわ!」
「ノープランかよ……」
呆れつつも、なんとなくこの破天荒ぶりがゆりっぽいのかもしれない、と俺は思った。
死んだ世界戦線の長年の活動によるものか、この学園内に様々なコネクションが出来ているようで、部活動の施設を借りたりして、スポーツをした。卓球だの、野球だの、バトミントンだの。体は使ってきたがスポーツの経験が浅い俺は、ある程度までしか出来ない。ゆりは持ち前のセンスでなんでもこなせるようで、俺を完膚なきまでに打ちのめした。
男として恰好がつかないと思ったが、打ち負かしたゆりは誇らしげに「ふふふ。いい気味だわ! 本当に! 弱いったらありゃしないわ! ふはははは!」などと、悪役みたいな笑いを浮かべご満悦だったので、まあいいかと思った。多分、稽古で毎日打ち負かしているから、その鬱憤を晴らした気分なのだろう。というか、そのためにこのデートプランにした節がある。
憎たらしい奴だ。
夕方頃になると、学園の離れである森の奥へと進む。この学園にも一応、怪談というか七不思議のようなものもあるようで、願うと恋が叶う、恋が成就するという祠があるらしいのだ。まあ、いわゆる恋愛系のパワースポットってやつだ。
いや、死後の世界にそんなものがあるわけないだろう、と思ったのだが……。
あっさりとそれは見つかった。
「きゃー♡ 春斗くん、恋のパワースポットよー!」
ゆりが白々しいテンションではしゃぐ。
まあ、いそうだな、そういうNPC。
「普通の女子じゃないのに、普通の女子っぽいリアクションだな」
「うふふ。なにか言ったかしら?」
「なんでもねえよ。影のあるにっこり笑顔のままこっち向くな、怖いから」
とは言っても、古びた小さな祠である。汚れているし、とても縁起が良いとは思えない。申し訳程度に設置された感がすごい。
「にしても、この学園にも怪談だの、七不思議みたいなのがあるとはな」
たしかに学園の定番ではある。NPCといい、ここは作り物のわりにはよく出来ている。さすがは神様といったところか。
「じゃあ、願うわよ」
「なにを?」
「そりゃ、二人の幸せを願うのよ。キャー♡ 恥ずかしい、なに言わせるのよ♪」
「まーた、普通の女の子みたいなことを、似合わねえ――いでででで、つねるな、つねるな!」
「普通じゃない経歴のアンタに言われたくないわよ!」
まあ、たしかに。
「にしてもお前、こんなの信じるのか? ボロボロだぞ。恋の神様だって、こんなところにいつまでもいてくれはしないだろ」
「あのね。こういうのは、実用性なんてどうでもいいのよ。アンタと一緒に来て、同じ時間に、同じことを願った。それだけで十分なのよ」
「そういうものか」
「そういうものよ。本当、アンタはなにもわかってないんだから。お堅いわね」
「そりゃ悪かったな。女の子とデートなんてしたことない、甲斐性なしで」
「別にいいわよ、そんなの。攻めているわけじゃない。むしろ、あたしとしてはそんなアンタでいいのよ。だって、それって……うっ」
ゆりはそこで顔を赤くして、目線を逸らした。
照れるポイントが全くわからんのだが。てか、どこに照れるポイントあった?
「なんでだよ? こういうのって、男がリードする方がいいんじゃないのか?」
主に小説とNPCからの会話で得た知識から話す。NPCの女子が、頼りがいのある男子がいいと言っていた気がする。
ああ、由比ヶ浜が言っていた好みのタイプも、似たようなものだよな。強い男、たくましい男って言っていた。
「んー、そうでしょうね。でも、そうじゃないと嬉しいこともあるのよ?」
「わけわかんねえ……女の子ってのは難しいな」
「あと、あたしだって青春はまともに出来なかったのよ? 全く学校へ行けなかった春斗くんほどではないけれど、同じようなものよ。そこは勘違いしないでよね?」
「ああ。まあ、この学園の奴らは、みんな似たようなものか……」
そんな会話をそこそこに、とりあえず俺とゆりは祠の前で手を合わせた。えっと、ゆりと末永く一緒にいられますように、と……これでいいのか?
「さて、行くわよ。もうこんな時間だし、お腹空いたわね」
一応、デートという体だが、食堂以外で食事を出来るところはないだろう。
「なんだかんだ、楽しかったな。ゆりといると」
俺がそう言うと、先を歩いていたゆりはくるりと振り返った。
「……この後、空いているかしら」
「この後? 大丈夫だが……もう夜になるぞ?」
「えっと、その……デートの最後といえば、やっぱり、あれじゃない……?」
ゆりは両手をもじもじとさせて、小さくぼそりと言った。
「あたしの部屋、来ない?」
本来であれば、この学園において生徒の住処というのは決められている。学生寮だ。そして学生寮は二人一組、という形で部屋を割り振られている。俺もその例外ではない。ちなみにルームメイトは原則、選べない。
ゆりはこの世界に来てから、ずっとNPCとの同室を拒否しているらしい。日向からもちらっと聞いたことはあったが、人じゃないNPCとずっと一緒なのは怖くてしょうがないから、追い出したのだという。
なんともひどい話だが、神に反逆心を持つ彼女らしい考えだろう。神の作りものであるNPCに対し、あまり好感を抱いていないのだ。
戦線のメンバーともシェアをしているわけでもないらしい。
そんなわけでゆりは一人部屋を独占。横暴な話だが、一人部屋自体はないわけじゃない。生徒の中には一人部屋を使用しているものがいるのだ。
成績トップの特待生、生徒会メンバー。こういったなにか特別な成果を上げている生徒は、拒否しない限りは一人部屋を獲得出来る、というシステムになっているらしい。
なので、生徒会長こと天使は一人部屋ならしく、その部屋も自分好みにカスタマイズしているらしい。
なんでそんなことをゆりが知っているんだと聞いたら、「天使の部屋に入ったことがあるからよ。あの子、可愛い水着とかパジャマ持っていたわよ」とのこと。
天使ってわりには、随分と女の子なんだなと、違和感を覚えた。神の作り物じゃないのか? まあ、見た目はかなりの美少女だし、そういう人格でも植えられているのだろう。なにせNPCがあそこまでよく作り込まれているのだ。天使が人間の女の子そっくりの感性を持っていても、不思議じゃない。
まあそこまでいくと、人とそうじゃない奴の違いってなんだよっていう、ひどくややこしい命題にぶち当たりそうだがな。
「……ああ、あれか」
森の木陰に身を隠しつつ、女子寮の部屋の一角から垂れ下がったワイヤーを目にして、俺は一気に駆け出す。
女子寮に潜入するのだ。てか、普通に逢引である。かなりリスクがある。見つかったらかなりの騒ぎになるだろう。出来るだけ素早く、足跡を消して進む。
NPCは模範生なので、こういうことは起きない、とはゆりの意見。
だけど、NPCと接してきた俺からすると、彼らが恋をすることを知っている。ぶっちゃけこういうことしているんじゃねえのかな、と思ったりしている。まあ、真相はわからない。この世界がどこまで作り込まれているかなんて、計り知れない。
ワイヤーを辿り、女子寮の一番上へと昇る。
「来たわね」
「……なんか、すげえ罪悪感あるんだが」
「まあ、現実なら死刑でしょうね。女子の花園に潜入なんて」
「だろうな」
「手引きしたのはあたしだけどね」
「じゃあ、俺もろとも処刑されるな」
「あたし達はもう死んでいるけれどね」
「おっと、そうだったな」
そんなこの世界定番の軽口を交わしつつ、俺は靴を玄関に置いてくる。部屋はごく普通であった。インテリアの類はなく、家具も最低限しか置かれていない。まあ、娯楽もある程度限られている世界だ。天使のように学園内で権限があるわけでもない。カスタマイズはあまり出来ないのだろう。俺の部屋も似た感じだ。
「お茶いれてくるわね」
ゆりはそう言って、紅茶の入ったカップを二つ持ってきた。丸テーブルを共に囲み、クッションの上に座って紅茶をすする。この紅茶も支給品ではなく、一般生徒が購入することはあまりない。どちらかというと、生徒会とか特待生が購入する娯楽品のようなものだ。だけどトルネードなどで巻き上げている戦線メンバーは、こういったレアアイテムを所持している。
「「……」」
会話がなくなる。
というか、妙な緊張感があった。
と、ここでゆりが顔を真っ赤にして、妙にぎこちない様子でぼそりと告げる。
「隣……の部屋、あるじゃない?」
「あ、ああ。明かりついてなかったな」
「そ、そう。……空き部屋、なのよ」
「っ! へ、へえ⁉ そう、なんだな! ちょっと騒いでも平気だな!」
「そう、ね……騒いでも、平気ね」
「お、おう」
思わず、変な声が出る。ていうか、お互いに様子がおかしくなっている。
なんていうのだろうか。さすがの俺も、わかっている。この状況が、どういうものなのか。ゆりが、隣のルームメイトの不在を告げた理由もわかる。いくら鈍くても、わかってしまう。しかしいざ口にされるととても気恥ずかしいし、困惑する。先ほどから心臓が張り裂けるんじゃないかと思うくらい、高鳴っている。
「「……」」
再び、不自然な沈黙。
紅茶はお互いに、飲み干していた。
ゆりは何故か体育座りして、顔半分を隠している。耳まで赤くなっていた。俺はゆりの隣に座り、その華奢な体を抱きしめた。
「ゆり」
「ん……」
俺の声に応じて、ゆりは顔を上げる。ソフトなキスが交わされる。夏祭り以来の、キスであった。
案外、スイッチは簡単に入った。密室で二人きりになり、極度の緊張に襲われた時はもうなにも出来やしないんじゃないかとも思ったが、キスをきっかけに緊張感はどこかへ消えていった。
キスをしながら、俺は左手でゆりの胸に触れた。一瞬だけ体をびくりとさせられたが、抵抗はなかった。ただそっと俺の右肩を、ぎゅっと握りしめただけである。
制服とブラ越しに感じる胸は、表面は堅いものの、その下にある柔らかさを感じることが出来た。思いのほか重量感がある。俺は両手を伸ばし、二つの膨らみを揉んだ。キスもソフトなものから、舌を絡ませるものへと変わる。甘い高揚感と痺れが、全身に走り出す。
「んっ、っ!」
ゆりは艶っぽい息を漏らしつつ、両手で俺の肩をぎゅっと握る。
俺がゆりの胸を揉み、舌同士が絡み合う度にその力は強くなっていった。
キスを終えると、ゆりは脱力したように俺の肩に顔をうずめた。胸を揉んでいた両手を腰の後ろへ回し、抱きしめる。
「も、もう声出そうになったわよ……」
「隣いないんだろ? いいんじゃないか」
「そ、そうだけど……恥ずかしいわよ」
羞恥に悶絶するゆりがたまらなくて、俺は彼女の服に手をかけた。するとその手をゆりは止めて「あ、アンタもよ」と言って、服を自分で脱ぎ始めた。一糸纏わないゆりの姿は、とても煽情的であった。華奢な体のライン。二つの大きな膨らみ。健康的だがとても綺麗な肌。自然体で、美しいスタイルの持ち主であった。
「こ、これって……すごいわね」
突き出た俺のものを見て、ゆりは言った。恐る恐る、といった手つきで触れる。ゆりの美しく柔らかい手に触れられ、びくびくとそれは脈打った。
「横になりなさいよ」
「あ、ああ」
言われるがまま、ベットの上にあおむけになる。上にゆりが乗り、顔を俺の下半身へと近づける。そのまま突き出た物を口に加え、優しく愛撫を始めた。
「っ⁉」
俺は初めて得る快感に、悶絶した。ゆりの口の中は暖かく、それでいて優しく唾液と舌が絡みつき、俺のものを慰めてくれた。ちゅぱちゅぱ、といやらしい音を立ててゆりがフェラチオをする。健気なのにひどく淫らな姿は、背徳感と共に凄まじい興奮を駆り立てた。こんなにも可愛らしい顔が自分のものをくわえていることに、快楽的な嗜虐心が煽り立てられる。やばい。ずっと見ていられる。
「な、なにか言いなさいよ」
上手く出来ているのかを知りたいのか、ゆりは口を離して、頬を膨らませた。俺は体を起こしてゆりの頭を撫でた。ふわりとした髪の感触が心地良い。
「良かったよ。すごく気持ちいい」
「それなら……嬉しいわよ」
俺はゆりの両胸を揉んだ。今度は服越しではない、生の感触だ。凄まじい柔らかさが、手の中でとろけていった。「ぁ、ん」とゆりが甘い息を漏らす。乳首を舌で舐めながら、ふにゃふにゃと揉んでいると、ゆりは突き出た俺を右手で握った。上下運動をして、柔らかい手で俺のを優しくしごいていく。興奮と快感のボルテージはどんどん上がっていった。もう俺の頭の中は、ゆりでいっぱいになっていた。
「あなた、胸、好きなの?」
「ゆりの胸、すごく綺麗だ」
「嬉しい……あっ!」
股の間へ手を伸ばし、指を入れるとゆりはのけ反った。左手で自分の口を覆い、声を我慢している。
「っ、っ!」
ゆりは右手を動かす。俺も手を動かす。お互いがお互いの性器を慰めあった。ゆりのそこはじんわりと暖かくなり、濡れている。ゆりは右手を離し、俺の右手を止めた。
「ま、待って……」
「痛かったか?」
「ち、違くて……ちょっとだけ、休ませなさいよ」
ゆりはそう言ってぎゅっと俺に抱きついてきた。柔らかな体が惜しげもなく押し付けられる。腰の後ろに手を伸ばそうとしたが、位置を間違えて尻に触れる。ふんわりと膨らんだそれを両手で揉む。胸とはまた違う感触に、俺は夢中になる。ゆりは横顔までぴったりとくっつけて、全身で絡みつくように抱きついた。
「ん……好きよ、春斗くん」
「っ⁉」
ゆりの、甘えるような囁き。
そういえば、好きだと言われたの、初めてだな。夏祭りの時、そういう返事は貰ってなかったんだ。
「もう、いれてもいいか……?」
俺の問いかけに、ゆりはこくりと頷く。
体を少しだけ離す。ゆりは突き出た俺を握り、自分の腰を浮き上げる。その中央へとゆっくりと導いた。この体勢のまま挿入するようだ。
「「っ」」
ずぶり、と淫靡な感触と共に、お互いの性器が一つになる。愛液にまみれたゆりの中は、とても優しく暖かい。そして性器を通じて全身を巡る甘い痺れは、俺の中にある欲情をとりとめもなく引き出す。
「……痛みとか、ないか?」
夢中になりそうだったが、俺が申し訳程度の知識から、そんなことを聞く。ゆりはこくりと頷く。
もう我慢なんて出来ない。俺は腰を動かした。ゆりは「あ! んっ!」と声を上げた後「や、やっぱり、待ちなさいよ……」と言ったので動きを止めた。
「きついのか?」
「だ、だって……声が」
そっちか、と思い俺はゆりの頬を撫でた。
「さっき隣はいないって言っていただろ」
「そ、そうだけど。下にはいるじゃない」
「まあ、そうだけど。さすがに声漏れはしないと思うぞ? よほど叫ばない限りは」
「き、気持ちの問題よっ。あと、叫ばないわよ! もう、こんなことなら、昼にすれば良かったわ……」
「昼? ああ、学校へ行っているからか」
「そうよ」
「でも、今更止められないけどな」
「っ、あ、あ、やっ! ま、待ちなさいよ! 止めて、止めなさい!」
ゆりの制止も聞かず、俺は夢中で腰を振った。互いの性器が快楽に酔いしれ、体温が上昇していく。呼吸が荒くなる。前戯では感じられない高揚と快楽が、俺達を支配していた。俺はゆりをそのまま押し倒す。ぼふ、と枕がゆりの頭を受け止めた。俺がゆりの上に乗る、正常位の形。こうなったらこちらからガンガンゆりの性器を突き上げることになる。それを悟ったのか、ゆりはぎゅっと両目を閉じ、そして両手で強くシーツを握りしめた。
「……やめるか?」
「え?」
そう言うと、ゆりははっとした顔を向けた。
「声、恥ずかしいんだろ?」
「そ、そうだけど」
「昼まで待つか?」
「っ……! あ、アンタ、そういうこと言うんだ。春斗くんのくせに」
焦ったように言うゆり。
そりゃ、止めなさいって言われたら、こうなるって。
「別に俺はやめてもいいんだが」
「よ、よく言うわよ。こんなに硬くなっているくせに!」
「まあでも、我慢出来ないほどじゃないから」
「なによ。我慢なんてしないで、あたしを好きにしたらいいじゃない」
「ゆりは結局、どうしたいんだよ?」
「このまましたいわよ! 春斗くんがほしいの! だから、あたしの中を突いて――っ、や、やぁ……は、激しいっ!」
腰をかくかくと振る。もう俺は制御が完全に聞かなくなっていた。動きが大きくなっていいる。パンパン、と俺とゆりの肌がぶつかり合う音。ベットがギシギシと軋む音。そしてどんどん大きくなっていくゆりの喘ぎ声。
「や、ぁ、あん、あ、あ、あ、あたし、もう……ん♡」
「ゆり……!」
「き、キス……して」
ゆりが両手を伸ばし、甘えた声で言うので、それに応じてキスをする。長く、長く舌を絡ませ合ったあと、再びピストン運動が始まる。俺の快感が絶頂に近づき、腰の動きがより一層跳ね上がる。部屋中にパンパン、といやらしい音が鳴り響き、それを掻き消すくらいのゆりの大きな喘ぎ声が上がった。激しさを物語るように、シーツがぐちゃぐちゃになる。見つめ合いながら、俺達は互いの性器で快楽を貪り合った。どこまでも、どこまでも。愛し合う喜びに、体と心が震えていた。
「ゆ、ゆり、もう……っ!」
「あ、あ、い、いいわよっ。は、春斗くん……っ!」
「うっ⁉」
性器を抜いて俺はゆりのお腹から胸にめがけて射精する。突き出たそれが脈打つたびに白い液体が勢いよく飛び出し、ゆりを汚していく。ゆりは顔を赤くして、とろんとした表情を浮かべながら、それを右手ですくうと「ベトベト……」と、呟いた。
「……ん?」
まどろみの中、目を覚ます。
「おはよう。というよりは、こんにちは、ね」
「なに?」
ベッドの上。隣に座り、コップで水を飲むゆりは、昨日の姿のままで、なにも服を着てはいなかった。「喉乾いたでしょ?」と言ってゆりはそのままコップをこちらへ突き出し。それを遠慮せずに飲む。乾いた体に、水が染み渡った。
時計を見ると、時刻は十時を回っていた。
……俺としたことが。寝坊かよ。
しかも本来は、早朝にここを出る段取りだった。
だけど昨日は結局……盛り上がり過ぎたのだ。一回では飽き足らず、あの後は何回もゆりと愛し合った。バックでゆりの尻を堪能し、騎乗位でゆりが腰を振る姿を堪能し、満たされたところで眠りについた。だけど体力は相当消耗したようで、おかげでお互いに起きれなかったようだ。
「にしても、すごいわね、これ」
ばさ、とゆりが毛布をどかす。
すると朝立ちをした俺の性器が現れる。まあ、これは生理現象だ。
「朝立ちだ。不思議なことじゃない」
「昨日あれだけ襲い掛かってきておいて、まだこんななのね」
「ただの生理現象だから気にするな……って!」
ゆりが俺のをくわえて、舌と唾液で慰め始めた。すっかり上手になった動作でちゅぱちゅぱとしゃぶり、俺のを完全に奮い立たせてしまう。自分でも驚くエネルギーであった。死んだ世界だから、ちょっと肉体が強化されている……ないか。そんなこと。
ゆりはそのまま、俺の上にまたがり、有無をいわさず己の中へと入れた。
「あ、ぐっ⁉ ゆ、ゆり……?」
「言ったじゃない。昼は、誰もいないって」
「だから続きを?」
「そうよ。今日ぐらい……色ボケしたって、いいじゃない」
「じゃあ、遠慮なく」
「ひゃあああ! あ、や、あん……♡ 大好きよ、春斗くん……♡」
しばらくの間、ゆりの嬌声が部屋に響き渡ったのであった。