※この作品はR-18です。

Angel Beats! ゆりルート   作:音有五角

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音無ルート 第六話「Family Affair 前編」

 クラスSSSに所属するため、俺は今後授業にも出ないし、テストも受けない。生徒会も突如として辞任した。無責任だと糾弾された俺は、極秘裏に作られた「第一反省室」へと放り込まれ、机も椅子もない空き教室のようなところで一日反省を促された。

 学園は混乱を極めた。天上学園の品性に関わる由々しき事態だ、と教員達が騒いだ。生徒会長立華はテストでふざけて0点を獲得、副会長の俺は突如として辞任。

 代わりに、生徒会長代理として直井文人が生徒会のトップに躍り出た。

 なにもすることがない、退屈な反省室の中で横になっていると、扉が開かれた。入ってきたのは、騒がしい戦線メンバーであった。

「あれ? 桜木じゃねーか。なんでこんなところに?」

 日向が目を丸くする。大山も「あ、本当だ」と声を上げる。

 まあ、そりゃ驚くだろう。まだこいつらは、俺が生徒会メンバーだと思っている。

「俺、生徒会を辞めることになった」

 突如とした告白。戦線メンバーが息を飲んだ。

「ううむ……どおりで、彼が生徒会長代理を名乗っていたわけか」

 松下五段が腕を組んで呟く。

「春斗くん?」

 ゆりがきょとんとした顔で俺を見つめる。

「ゆり。俺を戦線メンバーにしてくれ」

「はあ⁉ アンタが? なんでよ」

「お前の側にいて、お前のことを守りたいんだ」

「なっ――⁉」

 ゆりが顔を赤くする。TKが囃し立てて、口笛を吹く。藤巻が「他所でやれっつーの……」と肩をすくめ、大山が顔を赤くして「わあ。あ、愛の告白だね!」と冷やかした。

「ちょっとアンタね、そんな浮ついた動機で入隊させるわけないでしょ! いい? 戦線は神へ復讐する組織なのよ⁉」

「ああ、わかっている。お前の復讐に、どこまでもついていくつもりだ。地獄の底までな」

「っ⁉ 春斗くん……なんか、変よ? あなた、そんな人だった……?」

 音無が険しい表情でこちらを睨んでくる。

「桜木。本気で言っているのか?」

「なんだよ、怖い顔して」

「ギルド降下作戦で話してくれたこと。俺は、覚えている。お前はゆりのことだけじゃなくて、この世界のみんなを、とても大切に思っている。お前はそういう奴だろ」

「気が変わったんだよ。中途半端な立場じゃ、なにも救えない。だからせめて、ゆりの側にいて――」

「たしかにお前には、そういう選択肢もある。だけどあの時、言っていたいよな? それが本当に、ゆりを救うことになるのか、疑問だって。ちゃんとその答えを見つけた上で、納得して、出した答えなのか?」

「お前になにがわかる、音無。俺と会ったばかりの、それも記憶喪失の奴が」

「そうかもしれない。それでも俺は、あの時にお前を良い奴だと思った。だけど、今のお前は違う。ゆりの側にいたいと願う、ただのエゴイストだ」

 対立する俺と音無。その様子を見た日向が慌てて、間に入った。

「待て待て、なんだ、ケンカか⁉ なんだかよくわからねーが、落ち着けよ。な?」

 瞬間、激しい耳鳴りが鳴った。視界が歪み、たまらなくなって立っていられなくなり、其の場で崩れ落ちる。

「うっ……」

「春斗くん⁉」

 ゆりが真っ先に駆け寄って、受け止める。音無も駆けつけた。

「待て、ゆり。揺らすな。桜木、俺の声は聞こえるか? 手足の痺れや感覚は?」

「あ、ああ。大丈夫だ。ちょっとめまいが強いだけだ……」

「軽い脳震盪だな。本当は頭を冷やすといいんだが……ここじゃ用意出来ないな」

「平気だ。どうせ、こんな世界だしな」

 ただ、妙な感覚であった。いきなり頭を後ろから殴られたような、そんな感覚だ。

「とりあえず、あなたは落ち着きなさい。身の振り方はゆっくり考えること。いいわね?」

 ゆりの言葉に、俺はこくりと頷いた。するとゆりが驚くほど優しげな笑顔を向けてくれたので、ドキリと心臓が高鳴った。

 

 

「――出ろ」

 NPCが短く告げ、扉が開けられる。

 暗い部屋に突如として太陽の光が差し込み、戦線メンバーは各々意識を覚醒させていく。硬い床にこれだけの人数を寝かされたため、お世辞にも気持ち良い朝とは呼べない。

「立てるか?」

 音無が俺のところへ来て、手を伸ばす。俺はその手をとって、立ち上がった。

「ありがとう。悪かったな、昨日は」

「いや。俺もちょっと言い過ぎたよ」

「にしても……妙だな。なんで俺は、あんなことを言い出したのか」

「え?」

「俺、生徒会を辞めるつもりも、戦線に入るつもりもなかったんだが……気がついたら、ああなってんだよな」

「大丈夫か? 言っていること、滅茶苦茶だぜ?」

「大丈夫じゃねえな。なにがなんだか……まあ、とりあえず出るか」

 ゆりが体を伸ばし、欠伸をしながら出る。

 それの後に音無、俺が続いた。NPCは門番のように、無言で佇んでいるだけ。不気味な奴らだ。

「あー、首いてえ。固い床で寝かされたからなー!」

 藤巻がNPC達を抗議するように、わざと大声でそんなことを言う。TKはその後に、ステップを踏みながら元気よく続く。

「ちっ、不愉快な奴らだ……」

 野田がハルバートを抱えながら、苛立った様子を見せる。松下五段、椎名、と続き欠伸をしたゆい、肩をぐるぐる回した日向が出てくる。

「ひなっち先輩、あたしを襲ってないですよね?」

「誰が襲うか。興味ねーっての」

「やっぱホモか」

「やっぱってなんだよ⁉ 俺はノーマルだ! お前みたいな貧乳女に興味ねーだけだ!」

「んだと、おらあ⁉ 揉んだことねーくせに! この絶妙な柔らかさの胸を!」

 なんか面白い会話を後ろから聞こえたので、強引に俺が冷やかしを入れた。

「揉んでやったらどうだ、日向」

「するかよ⁉」

 大山、高松が出てきて、最後にガルデモメンバーが続く。ひさ子が「あーあ、シャワー浴びてぇ」とぼやき、入江が「首痛いよう……」と肩を落とす。関根が「汗が似合うお二人はノープログレムですね!」と余計なことを言い、岩沢は「いや、ライブでかく汗と寝汗は別物だ、さすがに不快感がすごいぜ……」と愚痴をこぼした。

 そんな元気のない状態で、橋の上を戦線メンバーがぞろぞろと渡っていく。改めて見ると、本当メンバー多いよな。

「桜木さんが生徒会長になり、この世界は我々の楽園になるのではなかったのですか。これでは、話がまるで違います」

 高松が上半身半裸でそんなことを言う。セリフがシリアスでも、見た目がネタだから、こっちの頭が混乱する。大山が冷静に「服着ないの……?」と突っ込みを入れた。

「妙なことを言うようだが、別に俺、生徒会辞めるつもりなかったんだよな」

「追い出されたのですか?」

「……なんか、それとも違うんだよな。昨日の俺は、何故か本気で生徒会を辞めて、戦線に入ろうとしていた」

「どういうことですか?」

「自分でもよくわからないんだよな」

「あなたらしくないですね。しっかりしてください。」

 記憶も混濁としている。直井 文人。あいつは何者だ。

 そして昨晩のことを思い出し、思わずゆりをちらりと見てしまう。ばっちり目が合い、お互いに顔を赤くして目を逸らした。

 昨日の俺は、なんて恥ずかしいことを公衆の面前で言ったんだ……。

 

 

 時間を置いてから、幹部をもう一度集めるという段取りになり、それまではシャワーを浴びるなり、朝食をとる自由時間となった。

 俺とゆりはいつもの鍛錬はせず、代わりにいつもの森の奥地で、二人きりで話をすることにした。昨日あったことも整理しなければならない。

「NPCと共に、銃を使って襲われた、ね」

 ゆりが腕を組んで考える。

「あの銃、没収品だったぞ」

「いまだかつて、NPCがあたし達に銃を向けることはなかった。その法則が今、破られている……」

「あいつ、自分を神とか言っていたけど……それに準ずる者か、なにかがあるのかもしれないな。少なくとも、あのNPCを操って、一日だけとはいえ、俺の意思を操ったんだ。立華に代わる、イレギュラーなのかもしれない」

「……」

 ゆりが険しい表情で黙り込む。

「なにか引っ掛かるか?」

「ええ。もう少し情報を集めた方がいいわ」

「まあ、それには同意だな。判断材料が少なすぎる。直井の行動をもうちょっと洗わないとな」

「近くにいて、なにか気づかなかった?」

「悪い、全く。曲者だろうとは思っていたが……」

「らしくないわね」

「……くそ、そう言われると悔しいな」

「昨日といい、あなたは直井 文人が関わると途端にらしくなくなる――それが、ヒントなのかもしれないわ」

「???」

「とにかく、動いてみましょう。あなたも、なにかわかったら、教えて」

「ああ。それと、ゆり」

「なに?」

 俺はゆりを抱きしめた。良い香りがする、細くて柔らかい体。ゆりもそれに答え、腰に腕を回す。

「俺はゆりの味方だ」

「なによ、改まって」

「……昨日、変なこと言っちまったからな」

「別に、いいわよ。あなたはあなたの信じる道を行きなさい。あたしも、好き勝手するだけ。なにも変わらないわ。そうでしょ?」

「そうだな」

 肩を掴んで、少しだけ離す。ゆりの端正な顔立ちと、形の良い唇。瞳は潤み、頬は赤く染まっていた。ゆりの唇に自分の唇を重ねる。ゆりも自分から顔を近づけ、キスを交わした。

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