【ふたなり】両性具有の少年少女の青春を描く実験小説 作:喋家月餅太
「葵、どうだった!?」
佳菜子は自分の番号を見つけると隣にいた葵の方を向いて興奮が抑えられない様子で尋ねた。
「俺も受かったよ!」
「やったぁ! 春からも一緒だね!」
佳菜子は勢いよく葵に抱きつく。
「いやさ、離れてよ。流石に邪魔だろ?」
葵は冷静に佳菜子を両腕で押して引き離す。
周りにいる同級生や他中学の生徒がその様子を「ヒューヒュー」と囃し立てたり呆れた顔で見たりしてそれぞれにリアクションを取る。
二人は恥ずかしくなって掲示板の前から離れた。
今日は高校の合格発表の日だ。葵と佳菜子は同じ高校を志望し前述の通り晴れてどちらも合格した。
葵と佳菜子は家がすぐ近くで物心がついたばかりの公園デビューの頃からの付き合いだ。
小学校の頃に別のクラスになったことはあるが、なんだかんだでいつも一緒にいる。
中学に入ってからはお互いに異性として意識する様になり二年生になる前後には付き合い始めた。
前後という曖昧な言い方なのは告白や付き合おうという約束といったはっきりとした意思表示をして交際を始めたわけではなく、どちらともなく手を繋ぐ様になったり何となくそのくらいの時期にお互いを恋人と認識する様になったからだ。
いつから付き合ってるのかはよく聞かれることなので、二人は二年生の初めと答える様にしてる。その理由は単純でその辺りの時期に先輩から付き合っているのかと初めて尋ねられその時にお互い違和感なく「はい」と答えたからだ。
お互いに感じるべき欲求を相手に持っていたし、軽いスキンシップも多かったから「気がついたら付き合ってた」のに気づいたのがその頃と今になれば認識している。
はっきりとお互いの関係が恋人というものだと認識してから二人には共通の目標が出来た。
それは同じ高校、大学に通うということだ。
お互い得意科目や苦手科目が異なっており、佳菜子の方が成績が良かったため、その目標が出来た時には葵が佳菜子と同じ高校に通うにはかなり努力が必要だった。
この二年弱、二人は、特に葵は同じ高校に通うために勉強をかなり頑張った。
お互いの努力が実り二人は今日、学区で二番目の公立高に合格して晴れて春からは同じ学校で高校生活を過ごせる様になった。
掲示板から離れた二人は喜んだり落胆する他の受験生たちを見ながら時々目配せをしてお互いの感情を伝え合った。
できればさっき抱き合った続きをしたい。
葵は佳菜子を、佳菜子は葵を抱きしめてお互いを褒め合いたかったが、校門から掲示板のある玄関まで人の目を避けられる場所はなかった。
佳菜子は不貞腐れた様に頬を膨らませて葵の手を握った。
「葵、この後はどうするの?」
佳菜子はこのまま徒歩と電車で帰り、その途中に葵とデートをしようと考えた。
嬉しい気持ちが抑えられなくて葵とイチャイチャしたい。彼氏と高校も一緒なのだ。その喜びを分かち合いたかった。
「母さんが迎えに来てて、親戚の家に挨拶回り」
葵は面倒くさそうに言う。
「あらま。それは大変だね」
「めんどい」
「一緒に帰ろうと思ったのに……」
「一回家に戻るから、佳菜子のこと送っていってくれるって」
佳菜子は葵の言葉に少しムッとした。親戚への挨拶回りが面倒なのはわかるが、少し彼女と一緒にいられないとか、帰りにイチャつけないとかをガッカリしてくれてもいいんじゃないかと思った。
どちらの両親も葵と佳菜子が付き合ってることは知っているが、これからイチャイチャしようと気持ちが盛り上がってた時に彼氏の親に送られるのは気まずい。
「せっかく一緒に高校通えるのわかったし、明後日、デートしようよ。受験勉強中ずっとお預けだったろ?」
「えっ、本当!?」
前言撤回。佳菜子は不貞腐れたのを止めることにした。葵はやっぱりこう言う時にきちんと考えてくれる。
「でもどうして明後日?」
「明日、学校に行って高校の先生と俺の受け入れについて話し合うの」
「あ、それって」
「特殊な事情があるからね、俺の場合」
葵には他の男の子と違う特殊な事情がある。それについて何を話し合うかわからないがこれまでも佳菜子は学校側と調整を色々してきたのは知ってるので、高校の入学でもそういうものがあるのだろうと思った。
「でも明後日は二人きりなんだ」
佳菜子は照れた様子で言う。合格発表までもし落ちてたら二次試験などもあるため勉強をしてたし、二人きりになれる時間を作れなかった。でも、明後日はようやく二人きりだ。
「ねぇ、あそこ、多分他の人から見えないよ」
佳菜子は物置の陰を指さした。
「行こっ」
佳菜子は葵の手を引いた。
(葵の手って柔らかいなぁ)
葵は一瞬、佳菜子の意図が見えなかったが物陰を指さした時に全てを察した。
二人はお互いにドキドキしていた。
物置の陰に入ると一度、周囲から見えないかを確認して佳菜子は自分よりほんの少しだけ背の高い葵のに抱きついて唇を寄せた。
葵は久しぶりだったので照れて顔を真っ赤にした後、自分からも佳菜子に唇を近づけた。
(葵の唇、プルプルしてる。かわいい……)
同じ学年の男子よりずっと華奢な葵を抱きしめて佳菜子は満たされた気分になった。
キスも胸の奥に暖かな感触を広げる。そしてそれは葵も同じだった。
短いキスの後、お互いに見つめ合うと恥ずかしくて笑ってしまった。
今度は葵が佳菜子の手を引いて物陰から出た。
二人とも鼓動が速くなっている。
修学旅行の帰りに人気のないバス停でしたファーストキスからまだ数えるほどしか経験はないが、三月になっての今年最初のキスは落ち着かない気分にさせた。
これから葵の母親に合流して車で送られるのはかなり気まずかった。
母親が自分達を見つけるのができるだけ遅くなってほしいと思いながら二人はいろんな感情が行き交う合格発表の会場に立ちすくんでいた。
翌々日、葵は佳菜子を迎えに家まで来た。佳菜子は買ったばかりのアウターを着ていつもより少しだけおしゃれをして出てきた。
葵と佳菜子は恋人同士だが、物心つく前からの幼馴染で恥ずかしいことも色々見てきたし、はっきりとした友達と恋人の区切りがなく気がついたら付き合っていた間柄のため、デートと言っても特別、着飾ったり何かをしたりはあまりない。
お互いを友達だと認識していた頃からの違いはスキンシップの多さくらいだ。
学校にはお互いの家が近くなので一緒に通っているが他の生徒の多い通りに出るまでは手を繋いで歩いている。
今日はずっと手を繋いで歩ける。葵は男の子らしく特にこだわりはないようだが、佳菜子はそれがとても嬉しかった。
二人のデートは彼氏である葵ではなく彼女である佳菜子がリードしている。それはお互いに対する幼馴染と恋人の要素のバランスの違いによる。
佳菜子の方が恋人だと意識している傾向にある。逆に葵はあまり積極的ではない。
そんなギャップはあるが佳菜子は特に不安を持っていない。むしろ控えめな愛情表現に照れがあるのを見抜いていてかわいいと思っているくらいだ。
そんな葵が今日もかわいくて佳菜子は笑顔だった。
「なんか嬉しいこと、あった?」
葵は佳菜子の様子を不思議に思いながら言った。
「葵と一緒の高校に行けるでしょ。それから、今年初めてのデート。クリスマス以来だもんね」
「あれデートだったか?」
「デートって言わせて」
佳菜子はわざとらしく不貞腐れた顔をする。
クリスマスは受験の勝負の期間となる年末を控えた時期とはいえ、お互い初めての受験のプレッシャーで疲弊してたこともありお互いの両親に学校帰りに遅い時間までの寄り道を許してもらって近隣のイルミネーションや商店街を散策した。二時間ほどだったが、佳菜子には素敵な思い出だった。
「でも、あれで俺は勉強頑張れたのはあるな」
「わたしもあれで頑張れたよ。あおいもそう思っててくれたんだ。うれしい」
佳菜子は照れた顔で葵を見た。葵はその表情を見てドキッとした。
幼なじみで同年代のカップルに比べて落ち着いた感覚の二人で少し冷めたようにも見える態度をする葵だが、佳菜子のかわいいところはよくわかっていてそういうところを見ると年相応の思春期の男の子がする反応をする。
もっとも冷めたように見える態度も思春期男子らしい格好つけなのではあるが。
「あれっ?」
額に冷たい感覚を覚えて葵は空を見上げる。
「嘘でしょっ!?」
続いて佳菜子が驚いた様子を見せる。
雨が降ってきたのだ。
あおいがひたいに水滴が落ちてくるのを感じた時は小雨に思えたが、それから間をおかずに土砂降りになった。
さっきまで晴れていた空には二人のいる場所周辺を覆う雲があった。
ゲリラ豪雨というものだろう。
二人は周りを見回したが雨宿り出来る場所は見当たらない。
佳菜子は葵の手を取って走り出した。
「かなっ……!?」
「うちに戻ろう! まだすぐ近くだし!」
「わかった」
二人は急いで佳菜子の家への道を急いだ。
走れば五分もあれば着く距離だ。だが、土砂降りの雨の中での五分間は決して短くない。服はどんどん重たくなり服に染み込んだ雨水の冷たさで体温を奪われて寒くなっていく。
「うわっ!」
それほど離れていない距離で雷が鳴る。二人は全速力で雷雨の中を駆け抜けて佳菜子の家の軒先に辿り着いた。
雨から守ってくれる空間に入れた事に安堵した。
「どうしようか。びしょ濡れになったけど……」
葵は困った様子で言う。
佳菜子は息が上がっているのを整えながら空を見て考えた。
さっきは町内程度だった雲は遠くまで空を覆っていた。雷も鳴り続けてる。
「これは止みそうにないね。服もこんなだし……」
シャツにカーディガンを着た葵を見て佳菜子はため息をついた。
「今日はお家デートにしようよ。この天気じゃしょうがないわ。ちょうど親もいないし」
「そうだな」
葵は残念そうに言う。葵は今日のデートで合格祝いで奮発する予定だった。それがお釈迦になったのが残念に思えたのだ。特に普段あまり彼氏らしくしていない分、デートプランを一生懸命考えてきたから余計に。
「とりあえずうちに入って。びしょ濡れなんだから誰か通ったら『バレちゃう』でしょ。服、貸したげるから」
佳菜子は鍵を開けて葵を押し込むように玄関の中に入れた。
家の中に入ると佳菜子は風呂の脱衣所に走り、髪の毛から水が滴るので葵は玄関マットの上で待機した。
「はい、これでとりあえず髪の毛だけでも拭いて」
佳菜子は葵にバスタオルを渡すと自分も髪の毛を拭きながら二階に上がる。
自分の部屋に着くと佳菜子はルームウェアを二着持って玄関に戻った。
乾燥機でとりあえず葵の服を乾かすつもりだ。ルームウェアはその間に着るため。
本人は背が低いことを気にしているが、周囲のカップルと違って背丈が同じくらいでよかった。こうして服を貸してあげられるからだ。
葵が着る分はシンプルなデザインのユニセックスなものにした。流石に彼氏に女物の服を切ろとは言えない。
「脱衣所に行って着替えよう。寒いから風邪ひいちゃうよ」
「わかった」
佳菜子は持ってきた黒のスウェットを葵に渡した。
葵はそれを受け取った後、戸惑った様子で同意した。
脱衣所に着くと佳菜子はアウターを脱いだ。
葵はその様子を見ないように目を伏せながらカーディガンを脱ぐのを躊躇していた。
「どうしたの?」
「いや、だって佳菜子の服……」
葵は気まずそうに答える。佳菜子は洗面台の鏡に映った自分の姿を見て葵の反応に納得した。
アウターの中に来ていたブラウスが雨に濡れて中のブラジャーが透けていた。
思春期の男の子ならそれを見たらこう言う反応になるのは当然だ。
だが、佳菜子は少し呆れた様子でため息をついた。
「わたしが言いたいのはカーディガンのボタンを掴んだままどうしてモジモジしてるのかってことなんだけど」
佳菜子は葵に自分の下着を見られていることをあまり気にしない様子で言った。
(見当はつくけどさ……)
葵は困った様子で黙り込んだ。
「だって俺……」
「今更恥ずかしがること?」
「恥ずかしいとかじゃなくて」
「もう、観念しなさい!」
佳菜子は葵のカーディガンの裾を掴んで持ち上げた。
「待てよ!」
葵は突然の行動に慌てて大きな声を出す。
「……何すんだよ」
葵は服を脱がされた時になったバンザイの姿勢から腕を下ろすと顔を真っ赤にして固まってしまった。
「あちゃー……。ごめん、勢い余った」
佳菜子が気まずそうに言う。
葵の上半身は小さな乳房を覆うスポーツブラ一丁の姿になった。
佳菜子はその姿を見て普段の葵じゃないような錯覚を覚えた。
上半身裸になった葵の姿は女の子そのものだ。小さな乳房にくびれたウエスト。柔らかい素材でできたスポーツブラからは外の寒さで勃ったであろう乳首が浮かんでいる。
思春期以降に葵がここまで露出度の高い格好になるのは初めてみる。葵の姿は体育の着替えでドアを閉め忘れた教室から見た他の男子と全然違っていた。
葵は幼なじみであり恋人である目の前の女の子に自分が男じゃない証拠を見せつける事になりいたたまれず恐る恐る両腕を組み胸を隠した。男としてこんなあきらかに女の子がする姿勢は取りたくないが膨らんだ胸を見られるのも抵抗があった。
二人の間に気まずい時間が流れる。
葵が服を脱いだ姿がこうである事は佳菜子も知っていたし、葵もいずれは見せるものとは考えていた。それが今だとは思わなかっただけで。
葵は中学には、四月から通う高校にも男子生徒として通っているが男性ではない。
男女両方の機能を持つ両性具有だ。両性具有は下腹部の内部や股間には男女両方の生殖器を持つが骨格や体型などはほぼ女性と同じだ。
葵も例外ではなく股間には男性機をぶら下げているが胸には今佳菜子に見られたように乳房があるし、骨盤も広くウェストもくびれ大腿骨も外に開いた形をしている。シルエットは完全に女性だ。
男物のジーンズを履いているから腰回りは分かりづらいがよく見ると細いウェストからお尻の辺りが広く丸いフォルムなのがわかる。
「ご、ごめんね。これ着て」
佳菜子は葵が怒っていることを不安に思いながら恐る恐る落とした黒のスウェットを手渡す。
「ああ、うん」
葵は顔を赤くしながら佳菜子からスウェットを受け取る。怒ってはいないようだった。
その際に葵は腕組みをやめて姿勢を変えたため、佳菜子からは葵の胸の膨らみがはっきり見えた。
ごくりっ……。
佳菜子は葵の胸部の小さな二つの丘に目が惹きつけられ、何かを抑えられない感覚になりそれを鎮めようと唾を飲み込んだ。
じっと見ていたかったが、それもなんだか良くない気がして佳菜子も自分の着ていたブラウスを脱いだ。
「こ、これでおあいこかな?」
葵と同じようにブラジャー一丁になった佳菜子は笑って誤魔化しながら言った。
そんな姿を見た葵は気まずそうに顔を背けつつも視線だけを佳菜子に送り佳菜子の胸元をチラッと見た。
狭い脱衣所の中で空気はとても気まずい。
二人はそれぞれ上半身にルームウェアを着た。
着替えた後、二人とも顔を赤くしながらお互いを見つめていた。
そんな中で佳菜子は自分が彼氏に向けた視線に戸惑っていた。
佳菜子は葵の乳房に性的な興奮を覚えていたのだ。
もっと見ていたかった、触りたい。そんな事を紛れもなく彼氏の身体だが女性そのものである乳房に思ってしまった。
「それじゃあ、乾燥機かけるね。カーディガンは縮むからわたしの部屋にハンガー持って行ってかけよう」
「わかった」
自分の中から湧き上がる感情を誤魔化すように佳菜子はテキパキと乾燥機に自分と葵の服を入れ乾燥機をかけていく。
葵はそんな佳菜子の様子を見て胸を見られた後で自分を男だと佳菜子は思ってくれるのかを気にしていた。
暖房の効いた佳菜子の部屋でベッドを背もたれにして葵と佳菜子は並んでカーペットの上に座っていた。
ティーポットに紅茶を淹れてマグカップを二つ持って来ていた。冷えた身体をまずは温めようと思ったからだ。
幸い二人ともズボンはほとんど濡れていなかった。なので葵はスウェット、佳菜子はシャツワンピースと上半身だけ着替えて服の乾燥を待っていた。
「なんか、いつも通りになっちゃったね」
「あんな激しい雨が降るなんてわからなかったからしょうがないよ」
「でも、色々考えてくれてたんでしょ?」
「それはまた別の日。近くに住んでんだし高校も一緒だし」
「そうだね」
葵は佳菜子の様子をなんだか変だなと思った。やけに話題を変えて無理に喋ってると言う感じがした。
二人は肩を寄せ合い、お互いの感触を確かめていた。窓の外は雨が弱まらず激しく窓に打ちつけている。
葵は佳菜子の様子がいつもと違うと感じていた。普段ならはつらつと他愛もない事を話すがどこか落ち着かない様子でいる。
「なぁ、佳菜子」
「何?」
「なんかさっきから俺の胸元見てない?」
「えっ?」
葵は持っていた疑問をストレートに投げつけた。佳菜子はそんな葵の問いに焦った様子を見せる。
「どうして!?」
「すごい視線を感じるよ。気のせいじゃないよな? 言っとくけど、俺、多分女子と同じ頻度で男から胸元見られてるからわかるぞ」
冬服の時期は学ランなのでそうでもないが、上がワイシャツだけになる夏服の時期や季節を問わずジャージを着てる時はいくら小さいとはいえ胸の膨らみを隠せない。そのため、両性具有であることを葵は公表している。
これは両性具有全般に言える事だが、女性として生活している両性具有は他の女子との違いは股間だけなので隠すことが出来、実際に誰にも言わなかったり信用できる人にのみ明かして周囲には隠していることが多い。
だが、男性として暮らしている両性具有は二次性徴以降はそれができない。乳房は夏場の服装では目立つし、腰幅が広ければ女性用のズボンを履かざるを得ない人もいる。
葵も男子用スラックスを履くのに困る下半身ではないが乳房は隠せないので周囲の男子からの視線は避けられない。
「あとな、俺も男だから女の胸に目は行くから見る側も見られる側もどっちの気持ちもわかる。だから誤魔化せないぞ」
「ごめん、わたし……」
佳菜子は目を泳がせながら続きの言葉を考えた。葵はその様子に不安を覚えた。
「胸があったら男として見れないか?」
葵は肯定されることに怖さを感じながら佳菜子の態度にもった疑問をぶつけた。
佳菜子はそれを言われると目を見開いて驚いた様子を見せた。
「そんなことないよ」
「なら、さっきのは?」
「引かない?」
「一番彼女に見られたくないものを見られて引くも何もない」
「あのね……」
佳菜子はまた目を泳がせた。それを葵は訝しげに見ている。
「葵のおっぱい、触りたいなぁって」
「はいっ!?」
佳菜子は顔を赤くしながら目を逸らして言い、葵は思わず大きな声を出した。
「どうしてまた……」
予想だにしなかった返答に戸惑いながら葵は佳菜子の目をじっと見て言う。
「さっき、葵の下着姿見た時ね、葵のおっぱいでエッチな気持ちになっちゃって頭から離れないの。なんならそのスウェットを脱がしてブラも脱がして上半身を裸にしたいとか、揉んだら柔らかそうだとかが頭から離れなくて……。葵もそう思ったことない?」
「あるよ。俺、こんな身体だけど女が好きな男だから」
「わたしには?」
「前々から」
「それと同じだと思うの。だって葵のおっぱいすごくかわいかったんだもん」
葵は頭を抱えたい気分だった。ずっと両性具有である事を気にして自分の股間以外は女にしか見えない身体を佳菜子がどう思うか不安に思っていた。それが、さっきブラジャー越しとはいえ胸を見られて「エッチな気分になった」と言うのだ。
「ひとつ聞いていい?」
「何?」
「佳菜子って女が好きってわけじゃないよね?」
「あおいのことずっと男の子として好きだよ。おっぱいを見て興奮したのもさっきが初めて。体育の着替えとか修学旅行のお風呂とかで友達の見てもそんなふうに思わなかった」
佳菜子は葵の服の裾を掴んだ。それは佳菜子が葵に甘えるときに見せる仕草だ。
この会話でそれをやると言う意味を葵はすぐに察した。
(どうすればいいんだ、これ?)
葵は佳菜子の見たことのない刹那げな目にどう反応していいか分からなかった。
「多分、葵の身体だから興奮してるんだと思う」
佳菜子は葵に顔を近づけて言う。
葵は胸を見られて佳菜子が自分を男として見れなくて離れることが怖かったからその言葉には安心を覚えた。
「ねぇ、葵。葵のおっぱい触りたい」
「え……?」
流れからすると当然な事だが、葵は心配で考えていなかった事を言われて驚いた。
だが、嫌かと言われると嫌ではない。
「いいよ。ほら」
葵は佳菜子の手を優しく引いて自分の乳房に近づけた。
だが、佳菜子は葵の手を優しく振り解き、スウェットの裾に手をかけた。
「それ!?」
葵は佳菜子の予想外の大胆な行動に声を上げた。
スウェットは脱がされ、葵は脱衣所の時と同じようにブラジャー一丁の姿になった。
さらに佳菜子はあおいの伸縮性のいいスポーツブラに手をかけて脱がせていく。
戸惑いからされるがままになった葵の上半身は裸になった。
「か、佳菜子?」
葵は驚きのあまりバランスを崩して腕で身体を支えていた。
佳菜子は顔を赤くしながら息を呑んだ。そしてあらわになった葵の乳房をじっくりと見る。
バランスを崩した葵を背中に手を回して起き上がらせると、佳菜子は葵を抱きしめた。
シャツワンピース越しに葵の胸の柔らかさが伝わる。そして葵の胸に手を伸ばして乳房を揉み始めた。
(こんな感触なんだ。葵のおっぱい。結構弾力あるな。そういえば誰かのおっぱい触るの初めてかも)
佳菜子はうっとりしながら葵の胸を優しく揉みほぐしていった。
葵はくすぐったさに耐えて揉まれていると乳房に経験したことのない感覚を覚えた。その部分がソワソワするようなくすぐったさに似てるがそれとは違う感覚だった。どんな顔をしていいのか迷う不思議な感覚だ。
佳菜子はそんな葵の様子に気づくことなく葵の胸を揉み続ける。そして、途中で人差し指の位置を乳房の中央にずらして乳首を指先でいじり始めた。
「んんっ……!?」
葵は乳首に感じた刺激に驚いて身体をくねらせた。
佳菜子は手のポジションを変えて動いた葵の乳房を捕捉し続けた。
「んーっ!」
口を開かないようにしっかりを占めて葵は声帯を震わせて佳菜子の指の刺激で感じるものに耐えようと踏ん張った。
「葵、気持ちいい?」
佳菜子は葵の顔を覗き込んで言う。
「わ、わかんない……」
喋りづらそうに葵は言う。佳菜子の指の刺激に合わせて唇が揺れている。側から見たら凍えているような表情だ。
「こんな、こんなん初めて、だし」
「葵ってひとりエッチしないの?」
「えっ?」
佳菜子の言葉で葵は一つ気がついた。股間に血が集まってきている。勃起だ。
「どうなの?」
佳菜子は手を止めて葵の目をじっと見た。
葵はその真剣な視線に思わず目を逸らす。
「するけど……」
「なら、わかると思ったけど」
「何が?」
「おっぱいの感覚」
「多分、エロい感覚だよな、これ」
「そうよ」
「わかんないよ。ちんこと違うし」
「葵、ひとりエッチの時、おっぱい触らないの?」
「触んないね」
「そうなんだ。男の子ってそうなの?」
「他の男は知らないよ。そこまで詳しく話さないし」
「あれだけ下ネタ話すのに?」
「生々しい話はしない。あと、俺は両性具有だからなのか俺がいる時は気を遣われる。それに普通男にはおっぱいはない」
「そうなんだ」
佳菜子は時折、葵が自分が男じゃない事を気にしているのを聞いている。今の言葉で同姓として扱われているようで一本線を引かれているような感覚があるんだろうなと察した。
例えば、女子の胸の話になった場合、乳房のある葵には話をふりづらいだろう。例え、同じように女子の胸に興奮すると知っていても。
「ねぇ、葵。わたしのおっぱい見たい?」
「え? そりゃあ」
「そっかぁ。いいよ」
佳菜子はシャツワンピースを脱いでブラジャー一丁の姿になった。
「俺が脱がせたかったのに……」
「葵、脱がせてくれるの?」
「引いてると思ったから。じゃあ、ブラ外して」
「いいよ」
葵は佳菜子の背中に腕を回してハグをするような姿勢になった。
手探りでブラのフックの位置を探す。
「葵って普段もスポーツブラなの?」
「こんな感じののも一つだけ持ってるけど、一回試しにつけて以来つけてない。スポーツブラとタンクトップ型のブラトップだけ」
「何で? かわいいのに」
「かわいいからだよ。男がこんなの着けれるかよ。ブラ着けるってだけでも嫌なのに」
「うーん、それもそうだね」
葵は外したブラジャーをベッドの上に置くと佳菜子の乳房に目を向けた。
葵は小さな頃に風呂で見た母親のものを除けば自分以外の乳房を初めて見る。
葵よりも大きめでCカップはあるだろうか。形も綺麗だった。
見ていると股間に膨張するような感覚を覚える。佳菜子に胸を揉まれた時から勃起していたが服を脱ぐかどうかの話をしている時に収まりかけていたのがまた勃ってきたようだ。
緊張しながら鼓動が強くなるのを葵は感じた。
小さな頃にビニールプールで裸で遊んだこともある間柄だが、あの頃は二次性徴よりもずっと前だ。胸が膨らんだ佳菜子の裸は綺麗だったし見ていて葵は照れずにいられなかった。
「葵……」
自分の裸を見て煮え切らない彼氏を佳菜子は名前を呼んで抱きしめた。
「……!」
お互いの胸が重なり合う。抱く際の動作でお互いの乳首がほんの一瞬擦れ合いビクンと身体が震える。
乳房と乳房がお互いにくっつき合う感触はとても気持ちよかった。柔らかさで柔らかさをお互いに受け止める。
肌が直接触れ合って体温も伝わる。
抱きしめているのでお互いの顔は見えなかったが佳菜子はとてもうっとりとした顔をしていた。葵の乳房の柔らかさはそれだけ心地よかったのだ。
(そっかぁ、わたしって葵のおっぱい好きなんだなぁ。それと、この感触ってあれだよね……)
佳菜子は自分の足の付け根にあたる硬い感触に気がついた。
「ねぇ葵、このわたしのあそこに当たってるのって、葵のちんちん?」
「えっ!?」
佳菜子の言葉に驚いて葵は下半身に神経を集中させて自分の男性期がどんな状態か確かめようとした。
ほぼ同じだがほんの少しだけ葵の方が高い背丈、腰の高さは同じくらいだ。まっすぐ身体を重ねる形で抱き合っている。そこに葵のちんちんはとても柔らかい場所に上を向いた状態で当たっている。その柔らかい場所は腰の地位から考えると下腹部から下の部分だ。
「ご、ごめん。多分俺の当たってる」
「いいのよ。そっかぁ、葵のちんちんってこんな感触なんだ」
「離れる?」
「もう少し味わわせて。葵の、おっぱいとちんちん。柔らかいのと硬いのが対照的で好きだなぁ」
葵は顔を赤くして黙ってしまった。
それと同時に佳菜子があまりにエッチな行動や言動に出るので戸惑ってしまった。
何か言いたいが、何も言葉が思いつかなかった。
「ねぇ、葵」
佳菜子は腕を伸ばして葵を自分の身体から離した。
「な、何?」
佳菜子は満面の笑みを浮かべて葵は顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「なんか、普段の葵じゃないみたい」
「だって、胸とか股間とか恥ずかしいし」
「男の子の方が照れ屋って本当なんだね」
「佳菜子がエロいんだよ」
「多分そうだね」
佳菜子はそういうと笑い、それから深呼吸をして葵の目をまっすぐ見た。
その視線に葵は思わずたじろぐ。
「葵、エッチしようか」
「はっ!?」
「その、さ。高校でも一緒にいられるでしょ。そのお祝いっていうかもっと先に進みたいっていうか……だめ?」
佳菜子は意を決した様子で言った。葵は冗談だと思ったもののその後に続いた言葉と照れた様子から本気だと悟った。
「いや、でも……」
「ちょっと触ってみて」
佳菜子は突然、パンツを下ろして股間を露出すると葵の手を引き、その部分を触らせた。
「ちょっと、佳菜子!?」
葵は驚いて佳菜子の顔をじっと見た。戸惑ってはいるが触ってる部分が部分のため自分の股間にあって佳菜子にはないものが充血するのを感じた。
「どんな感じ?」
佳菜子は顔を赤くしながら言う。
「柔らかい」
葵は生まれて初めて女の子の股間を触った。その感触は触れたら崩れるんじゃないかと思うほど柔らかかった。
「それだけ?」
佳菜子は葵をじっと見ながら欲しい答えがある様子で聞いた。
「ぬるぬるしてる?」
葵は答えるかどうか悩んで佳菜子の股間が液体で濡れている事を短い言葉で表現した。
「女の子のあそこって、男の子のが大きくなる代わりにこんなふうに液体で濡れるんだ。わかるかな? わたし、葵のおっぱい見てからこうなってるの」
葵は佳菜子の言葉を聞くまでもなく言いたい言葉を理解した。
そもそも今触っている佳菜子の部分は両性具有である葵にも付いているものだ。葵の場合はちょうど陰嚢の裏に同じものがある。
濡れるのも葵は知ってる。元々、男子達の噂話で「女は興奮すると股間がぬるぬるするらしい」と聞いた。それからオナニーをする際に葵は陰嚢の後ろに付いているのを知っていた女性器に手を伸ばすと確かにぬるぬるしていた。なんなら、佳菜子が同じようにぬるぬるしてることを想像してその日はペニスをしごいたのだ。
自分も今の佳菜子と同じ状態になってる。それを実感して佳菜子の興奮が感覚的に理解できた。
彼氏としては自分の女性器のことを言いづらくてそれは口にはしなかったが。
「ねぇ、エッチしようよ。わたしの大事なところで葵のちんちんを感じたいよ」
佳菜子は切なさそうな顔で葵を見る。葵はそれを見て色っぽいってこんな事を言うんだろうなと思った。これまで胸とか女性器とかを想像してオナニーの時に興奮してきたが佳菜子の表情にエッチな気持ちになっている。
それはかわいいとかこれまで佳菜子に持っていた魅力に対する感情とは違っていた。
「いや、無理だろ」
葵は佳菜子に何かを答えないとと思って言葉を探していたら急に冷静に佳菜子の望むもののマズさに気がついた?
「どうして? わたしの胸とあそこじゃ興奮しない?」
「してるよ。ちんこって興奮すると大きくなるだけじゃなくて硬くなるんだけどもう俺のはパンパンになってる」
「じゃあどうして?」
「俺、コンドーム持ってない。するなんて考えちゃいなかったし。忘れてるかもしれないけどセックスって子供作るためにすることだからな。いくらおっぱいあるからって俺のちんこは佳菜子を妊娠させられるんだぞ」
葵は一息で早口にそう言った。正直、佳菜子の大事なところにちんちんを入れたいという欲望で頭がいっぱいになってる。だが、葵が初潮を迎えたころにソーシャルワーカーから受け始めた性教育で妊娠する側、させる側両方としての責任とリスクを教えられてきた。避妊なしにセックスなんてするつもりはなかった。
「そりゃそうだね」
「だろ? だから今日は……」
葵は佳菜子の興奮も理解しているのでお互いの身体を触り合うならいいかなと思った。両性具有の女性器には女性についてるものが一部ないのでそれを知りたい好奇心もあるし、佳菜子も胸にあれだけ興奮してるならちょうどいいだろう。
「でも、わたし持ってるよ。一個だけだけど」
葵が昔はペッティングと呼んだ身体を触り合う行為を提案しようとした時、佳菜子は葵の言葉を遮って意外なことを言った。
「何で!?」
葵は驚いて言う。
「春休みの間にしたいとか思ってたとか」
「いや、だからさっき葵のおっぱい見るまでそんなこと考えてなかったって」
「じゃあ何で?」
「その、女子の間で金運アップのおまじないとして財布に入れるのが流行ってて。わたしもNから一個もらったの」
「え……?」
佳菜子は恥ずかしそうに言う。年頃の女の子がコンドームを持ってる理由なんて他愛もない理由だったが恥ずかしいものだろう。
葵はそれを聞いて多少呆れた顔で佳菜子を見ていた。
(女子ってホントに訳わかんないもの流行るよな……)
女子と同じように胸もあって毎月生理も来る葵だが、佳菜子の話を聞いて理解に苦しむ自分はやっぱり男だと思った。
「ていうことでね、エッチできるよ。葵はどう?」
佳菜子は多少目を泳がせつつ、そのすぐ後に葵をじっと見て言った。
葵は自分のちんちんがムラムラしていること、頭から佳菜子のあそこのヌルヌルした感触が離れないことからだんだんその気になってきた。
「いいのか?」
「うん。せっかくの誰もいない日のお家デートだし、高校も葵と一緒で嬉しいってのを実感したいから」
「俺も佳菜子の身体に触りたい」
「よかった」
佳菜子は鞄から財布を取り出して小銭入れの中にあるコンドームを取り出した。
「これだよ」
「こんなんなんだ」
「葵、コンドーム見たことないの?」
「うん」
「付け方は?」
「うーん、どうすりゃいいんだ? スマホで調べるか」
葵は佳菜子の机の上に置いておいた自分のスマホに手を伸ばそうとした。
「いいよ、わたし一応知ってる。練習したし」
「は? 練習?」
「Nにこれもらった時ね、一個開けてコート掛けの棒を一本外してちんちんに見立てて付け方を調べて練習したの」
「何してんの」
「だって、わたしもNも彼氏いるからそのうちエッチするかもと思ったし、経験済みの女子もクラスにいるんだからね」
「ホントに!?」
「男子はそういう話しないの?」
「しない。多分。いや、俺には話しづらくて俺のいないところで話してるかもしれないけど」
「あー、それもあるか」
「分かんないけどな。でも俺、女として男ともできるからそういう話を気まずいって思ってる奴いそうだし」
「なるほどね」
佳菜子は納得した様子を見せると視線を下にずらし葵の股間を見た。
「ちょっとごめんね」
「えっ?」
佳菜子は太ももまで下げていた自分のパンツを全て脱ぎしゃがみ込んだ。そして葵のズボンとパンツを下ろしてフルチンにした。
「かわいい!」
パンツを下ろして顔を出した葵のちんちんに佳菜子は思わず声を上げた。
「!?」
「あんまり小さい頃と変わらないね。おっきくはなってるけど。あと、パンツは普通の男子のなんだね」
佳菜子は楽しそうに葵のちんちんをまじまじと見つめて言う。
葵は驚きと恥ずかしさで言葉に詰まっていた。
「そ、そりゃ、男だから」
「生理の時は? 葵も生理あるでしょ? わたしにナプキン借りたことあるし」
「生理用のパンツは持ってるからそれ履いてる」
「ちんちん邪魔にならない?」
「伸縮性あるからそうでもない。少し窮屈だけど」
葵は心底恥ずかしかった。ちんちんを見られるのも胸を見られたり触られたりするのも。
両性具有は体育の着替えなどの場面で他の「同性の生徒」と身体が違うので別室で一人になる。小学校以前は胸もなくて他の男の子と変わらなかったからプールにも入ったし温泉やスーパー銭湯にも入ったりしていた。だが、思春期を過ぎてからは乳房を持つ男子というイレギュラーさから裸を見られることも見ることも経験していない。これから佳菜子とする行為を抜きにしても人に身体を見られるに不安と恥ずかしさの入り混じった感覚を覚えた。
「葵、恥ずかしい?」
「そりゃもう。佳菜子は平気なのかよ?」
「いや、恥ずかしいよ。でも、葵と肌が触れ合うのが嬉しいってのが大きいかな」
葵は佳菜子の言った言葉に驚いた。確かに佳菜子と身体を重ねる日がいつか来ることを考えたし楽しみにしてた。それはもっと先のことだと思っていたが。
そんな時が来て、自分の身体をみられる抵抗感のようなものばかり考えてたのは佳菜子を大切にし足りないのではないかと思った。
今、佳菜子が葵のパンツを脱がせたのは恋人としての大事なステップを超えるためだ。セックスを初めてするというのはそう言うことだと佳菜子の様子に思った。それに佳菜子は葵の胸に興奮して戸惑ったようだが、その感情の正体があおいに言葉で伝えきれない感情を伝えたいと言う欲求に突き動かされてではないのか。
「佳菜子……!」
葵は足首まで下ろされたズボンとパンツを完全に脱ぐと佳菜子を抱きしめた。
そして見つめあってキスをした。
二日前の人生二度目のキス、去年のクリスマスのファーストキスから数えて三回目のキスだ。そして、今日唯一計画通りにできたデートのプランでもある。
唇をしばらくくっつけ合うとゆっくり離し見つめ合った。
「葵……。葵からしてくれるの初めてだね」
「今日、こうするつもりだった」
「うれしい……。でも……」
「でも?」
佳菜子は視線を下に向けた。葵は胸のことだろうと思った。自分から抱きしめてわかったが乳房と乳房が触れ合うのは佳菜子のいう通り気持ちいい。
「葵のちんちん、わたしのあそこに当たってる」
「えっ!?」
佳菜子の言葉に腰のあたりの感触を神経を集中させて確かめると亀頭の先端が柔らかい何かに当たっている。
葵は慌てて一歩下がった。
「ご、ごめん!?」
「割れ目の始まりのあたりだから大丈夫だよ。ここ開いても何もついてないから。大事なものがついてるのはもっと後ろだもん」
「あ、そうなんだ」
「でも、私我慢できなくなっちゃった。しようよ」
「うん」
「わたしが着けてあげるからそこに座って」
佳菜子はベッドを指さし、葵は促されるままベッドに腰掛けた。
葵のちんちんを佳菜子は摘んだ。そして手や目で形を確かめていく。
「結構硬いんだね。さっきあそこに当たった時に考えたよりも硬いし弾力もある。なんだろう、タイヤのゴムみたい」
「触るの初めてだよな」
「うん、見るのも何年ぶりだろうね。こうして見るとお股にこんなのが付いてるのって不思議だな。しかも、興奮したら大きくなるってのも」
葵は佳菜子が言った感覚を不思議に思った。正確には葵は男性ではないが、同じちんちんというものに対する認識はこんなに違う。
自分にないものだから当たり前だが、男にしかないちんちんと女にしかないおっぱいの両方を持つ葵からすると自分に無いものに対する感覚というものがそれこそ無いものだった。
さっき触れた佳菜子のあそこの感触を思い出した。とても柔らかくて触り心地が良かった。
「えっ!? 動いた!?」
佳菜子は葵のちんちんが前後に小さくピクンと動いた事に驚いた。佳菜子のあそこの感触を思い出した葵のちんちんの勃起が硬くなって起こった現象だ。
「知らないか。動くんだよ」
葵は腹部に力をいれて動かしてみせた。
「す、すごい。ちんちんって面白い!」
「いつまで俺のちんこで遊ぶんだよ」
「ごめん、じゃあ、着けるね。本物に着けるの初めてだからうまくできるかな?」
佳菜子はコンドームのパッケージを破いて中身を取り出した。そして表裏を確認すると葵のちんちんの先端に被せて端を掴んで根元の方に伸ばしていった。
葵はその様子を興味深くみていた。
あれよあれよという間に葵のちんちんは薄いゴムで包まれていく。
そしてちんちんの先端の部分はツノのように尖った形をして中に空間ができていた。
葵はそれを見るとすぐに何のためのものかわかった。射精した時に精子を溜めるためのものだ。
「できたよ。上手く出来たと思う」
「なんか、触られてると恥ずかしいな」
「わたしも。葵のちんちん触っててドキドキした」
照れて二人は笑い合ったがすぐに真剣な顔になった。
「葵……」
佳菜子は立ち上がって葵にキスをした。唇を重ねたまま乳房も揉む。
「あっ……」
乳房を揉まれて葵は感じてしまった。さっきとは感覚が違う。これから佳菜子と身体を重ねることを意識したせいだろうか。
葵は佳菜子に揉まれたまま身体を感覚に預けた。
ちんちんにはどんどん血が集まっていく。
「佳菜子っ!」
我慢しきれなくなった葵は佳菜子をベッドに押し倒した。
突然だったので佳菜子は驚いて見ている。
「ねぇ、もっかいわたしの大事なところ触ってみて。さっきより濡れてる」
葵は佳菜子に言われた通りに佳菜子のあそこを触る。ただ今回は割れ目の始まりあたりから摘んだり揉んだりしながら下に下がっていく形で触った。
佳菜子のあそこはとても柔らかかった。ここは大陰唇と言って女性器を守るために脂肪を蓄えた場所だと聞いたことがある。実際、ふんわりとした感触が気持ちよかった。そして、膣のあたりにつくとさっきのヌルヌルからさらに進んで湿潤な状態だった。
「すごい……」
「ね? もう、葵に挿れてもらえると思うの」
「いいのか?」
「うん……」
葵は友達と会って見たエロ動画の様子を思い出して佳菜子の脚を持ち上げて広げた。
脚を持ち上げた時に上を向いた割れ目が開きピンク色の佳菜子の女性器が丸見えになる。
それは初めて見る不思議な形だった。よく貝に例えられるが確かに似ている。そして真ん中には穴がある。これが膣だろう。
膣を見ると葵はとても不思議に思えた。膣は葵の身体にもある。だが、ついているのを知っていて触ったことがあっても見たことはない。自分にあるはずの見たことのないものは不思議に感じたし、それ以上に自分に当たり前についているちんちんがないことはさらに不思議に思えた。これは佳菜子がさっき葵のちんちんに不思議だと言ったことと同じものだろう。
佳菜子の女性器を見ているとちんちんが張っていくのを感じる。それだけじゃないタマタマの裏や下腹部が暖かくなるのも感じる。初めて経験する感覚だがそれが興奮の一種だというのはすぐに分かった。
「佳菜子、行くよ」
「うん、来て」
葵は佳菜子の目をまっすぐ見つめて言った。佳菜子は葵に微笑んで答える。
腰を佳菜子の股間に近づけると葵はちんちんを佳菜子の膣に狙いを定めた。
勃起して硬くなっているのでまっすぐ一直線に狙いやすかった。
膣にたどり着いた葵のちんちんはスルッと佳菜子の膣の方に入っていった。
「痛ぁ!」
スムーズに入っていたのが引っかかる感じがした。佳菜子は小さな悲鳴をあげる。
「佳菜子!?」
「なんか中で引っ掻いたみたいな感じがしたの」
「やめる?」
「いいの続けて」
「本当に?」
「もう入ったんだよね」
「うん、今俺のちんこが中に入ってる」
「そっか。わたし処女じゃなくなったんだ。葵の童貞ももらったんだ」
葵は佳菜子の言葉に今していることの重みを感じた。
佳菜子の処女を貰ったのだ。今痛いと言ったのだって処女膜が破れたせいだろう。幼馴染から彼氏彼女になって、一生に一度しかない初めてのエッチの相手に自分を選んでくれた。嬉しいと同時に責任を感じた。
「葵、気持ちよくなって。わたし、葵にわたしの中でイって欲しい」
「痛いんだろ?」
「いいの。耐えるから」
「うん」
葵は罪悪感を覚えながら佳菜子の気持ちに応える事にした。佳菜子に気持ちよくなって欲しいがこれは多分、通過儀礼なんだろう。
最初の一歩を踏み出して経験を積まないと多分佳菜子も気持ちよくなれない。
意を決して葵はエロ動画の真似をして腰を動かし始めた。
「あっ! あっ!」
しばらく腰を動かしていると唇を噛んで痛みに堪えていた佳菜子が声を出し始めた。
だが、気持ちいいわけではない。身体の内側から刺激されて反射的に声が出てしまうのだ。だが、佳菜子にとってそれは好都合だった。声を出すと痛みが紛れた。
佳菜子は声を上げながら一生懸命腰を動かしながら自分を見つめる葵を見た。
真剣な眼差しだが気持ちいいのかだんだんうっとりしたような柔らかい表情になっていく。
(かわいい……。葵、前からかわいいけどこんなにかわいい顔するんだ)
佳菜子にはとても葵がかわいく思えた。感じている顔はまるで少女のようだった。
そして、ピストン運動で乳房が揺れるのも見える。裸で股間が見えない葵は少々ボーイッシュな女の子に見えた。
(小さいけど、胸、結構揺れるんだ。あれだけ柔らかいもんね。わたしの彼氏、すごいエッチな感じがする)
佳菜子は膣から全身に抜ける感覚の中で彼氏である葵の魅力を一つ一つ確認していた。
少女にしか見えない葵の乳房や細いウェストが佳菜子にはとてもエッチに見えた。男としての葵が好きだが、ちんちん以外が男に見えない女の子そのものである身体にも魅力を感じていた。
これが幼少の頃から好きだった彼氏の身体だからなのか、自分には男女両方の身体に性的魅力を感じる要素があるからなのかは分からない。
友達の裸にそういう感情を持ったことがないから前者だと思うが、今日、葵に愛撫をしても葵から愛撫を受けてないにも関わらず今までで一番大事なところが濡れたのを考えて自分は葵の女性的な部分にも惹かれてるのだと分かった。
「あっ! ……はぁ…はぁ……」
佳菜子の思考を葵が突如発した声が破った。
葵の腰の動きが止まった。葵は肩を力が抜けたようにだらんと降ろし佳菜子の膣からちんちんを抜いた。
「葵、イったの?」
「うん」
佳菜子は下腹部の中の痛みを堪えつつ起き上がり、葵のちんちんをじっと見た。
さっきは空だったコンドームの液溜まりには白濁した液体が満たされていた。佳菜子はそれがすぐに精液だと気がついた。初めて見る彼氏の精液に妙な感動を覚えつつ、さっきは少女にしか見えなかった葵がやっぱり男の子なんだと思った。
「あれ?」
それと同時に佳菜子はコンドームに血がついていることに気がついた。それは内側ではなく外側だ。
「どうした?」
佳菜子は自分の膣の周辺を触った。すると少量ではあるが指に血がついていた。
「痛いのこれだったんだ」
佳菜子の言葉を聞いて葵は佳菜子の指先を見たそこには近づいていた。それと同時に自分のちんちんに纏うコンドームにも血の付着を見た。
「大丈夫か?」
「思ったより痛くなかったよ」
佳菜子は平気な口調でティッシュを取り股間を拭いた。そのティッシュにも血がついている。
「生理じゃなさそうだな。もっと血は黒っぽいもんな」
「処女膜が破れて出た血だよ。葵のちんちんをわたしが受け入れた証拠だよ」
葵はその言葉に挿れた瞬間こそ意識したがその後気持ち良さで忘れていた男が彼女の処女を貰う責任を思い出した。
「そんな顔しないで。痛いけど、葵に愛されてるって感じがして幸せだったんだから」
深刻そうな顔をしている葵に佳菜子は笑顔で言った。
「佳菜子……」
葵は佳菜子の言葉が嬉しいと同時に佳菜子の気持ちの優しさを感じた。愛してくれたのはどちらかというと佳菜子の方だ。
佳菜子は葵の頰を撫でてから立ち上がった。
そして、引き出しからおりものシートを出すとそれをつけてパンツを履いた。
「一応、まだ血が出るかもしれないから一応ね」
佳菜子は恥ずかしそうに笑う。葵もコンドームを外してティッシュでちんちんの先端を拭いた。
「ゴミ箱に普通に捨てていいからね」
「大丈夫?」
「うん、見られないだろうし明日ちょうど燃えるゴミの日だからそのままバレないと思うよ」
そう言って佳菜子もおりものシートの包みをゴミ箱に捨てた。
「ナプキンじゃなくていいのか?」
「ナプキンが必要なくらい出たら大怪我だよ。経験済みの子からもおりものシートで間に合うって。なんならトイレットペーパー重ねて敷くだけでいいみたい」
「そうなのか……」
結構生々しい話を女子はしてるんだなと思った。男子として学校に通っているのもあるが、生理のことなんかもせいぜい佳菜子に言うくらいだ。男友達は話しても分からないだろうしこっちも気まずいしあっちも気まずいだろう。女友達も男として接している以上、こちらの身体のことを知っていても話しずらい。子宮や卵巣があってもちんちんがある相手ならこちらも気まずいはずだ。
葵もパンツを履いて改めてベッドに腰掛けた。服を着ようか迷ったが佳菜子もパンツしか履いていないのでとりあえず様子を見る形だ。
「葵ぃ〜」
佳菜子はおりものシートの位置を直した後、振り返って葵に抱きつき、そのままベッドに押し倒した。
そして、葵の乳房を再び揉み始める。
「佳菜子、俺の胸、そんなに気に入った?」
「うん、なんかおっぱいの魅力に目覚めたね。ちんちんもかわいくて好きだけどね」
そう言ってパンツの上からペニスをなぞる。ちょうど裏筋をなぞられる形だったのでオーガズムの後の性感の余韻がまだ強く横ってるため葵は「くっ……」と何かを噛み潰すような表情を浮かべた。
「でも、こうするのが一番好きかな?」
佳菜子は続けて葵を正面から抱きしめた。お互いの乳房と乳房がくっつき合いその柔らかさが伝わり合う。
「葵のおっぱい、こうするとすごく気持ちいいの」
「それは俺もわかる。実際もちいいよな。佳菜子の胸も柔らかい感触して好きだ」
「葵ってさ裸になるとちんちん見えないと女の子に見えるよね」
「それは両性具有だから……」
「おっぱいもだけど、腰のこの丸みとかも好き」
佳菜子はそう言ってウェストからお尻に至るまでを指でなぞった。葵は思わず感じてしまいビクンとなる。
「このまま葵のおっぱい感じてていい?」
「うん。実は射精すると結構疲れるからこうしてるの楽だし落ち着く」
「このまま、ね」
佳菜子は葵の頰にすりすりすると目覚まし時計に手を伸ばしてセットした。
「どうした?」
「このまま寝ちゃいそうでしょ? 付き合ってるの知られてて裸で抱き合ってるの見られたら誤魔化し聞かないから確実にお母さんもお父さんも帰ってない時間に起きられるように」
「なるほどね」
二人はそのまま無言になってお互いの乳房の柔らかさと体温を感じていた。
時計の針が動く音と微かな住宅街と幹線道路のざわめきだけが聞こえてくる中で葵と佳菜子は触れ合う乳房を通じてお互いの鼓動を感じあった。
葵は両性具有特有の写生後にもフェードアウトしながら続くペニスの性感を、佳菜子は処女を失った事による性交痛を感じながらつい先ほど経験した初エッチの記憶を辿っていた。
佳菜子は女の子にしか見えない葵の乳房や腰の丸みに興奮を覚えた事に改めて戸惑いを覚えながらも肌で感じる葵の女の子な部分が心地よかった。
(葵のあそこにも女の子の部分があるんだよね。どんなふうになってるんだろう……?)
佳菜子は自分が男だったら葵の膣に挿れていたんだと考えると葵の身体の事を知りたいと思った。
今日は一緒に高校に通える事と処女をあげられた事の嬉しさを感じながら体温を感じようと思いつつ、今後この部屋で二人きりになる機会で葵の体を知っていきたいと思った。
「ねぇ、葵」
佳菜子は心地よく流れていた沈黙を甘い声を出して破った。
「何?」
葵はいつものぶっきらぼうな様子が嘘のように柔らかい口調で言う。
「大好き」
「俺もだよ。好き」
佳菜子は葵の目をじっと見つめる。
葵はその眼差しを嬉しく感じてキスをした。
「葵からのキス、気持ちいい」
「はは……」
葵は照れ笑いをする。
佳菜子は葵を強く抱きしめてその柔らかい感触を確かめた。
お互い女性器が濡れるのを感じる。次のエッチを待ち遠しく思いながら興奮して眠れなさそうで目覚まし時計がなるのを肌の暖かさを感じて待つだけだった。