平子真子に好感度100のエッチな彼女ができたら 作:架鍵キー
数日後、現世に出て、件の地へ赴いた。
強者の気配を感じて山の中を逃げ回る虚を見つけるのに手間取りはしたが、強さはとるに足らない。
一撃で下して、神社を観光名所とした町に入った。
その町の一角の、昔は小さな色町でそういう宿だった建物を改装し温泉を引いたというお誂え向きの宿で食事をした。
「……………………」
先に浴場から戻ってきた平子は部屋の隅へ寄せられた座敷机に肘をついて棗を待っていた。
緊張する。
これまでの経験の中で一番緊張する。
久しぶりだし、巧いと自信を持てるほどではないし、小さくはないが誇れるほど大きくもないし、棗は初めてだし、がっかりはさせたくないし……。
平子は自分が愉しむ自信はある。あの体に、肌に直接触れられる。中にも。奥にも。彼を感じた甘い声も聞けるかもしれない。
体の相性は良い。オスの本能でわかる。良い。
血流が下に向かって流れていく。何も始まってないどころか目の前に恋人すらいないのに想像だけで勃ちかけている居た堪れなさといったらない。
棗、いつまで風呂入ってんねん。
温泉が気持ちよくて長湯しているのではないだろう。
平子が不快にならないよう、全身くまなく綺麗にしているのに違いない。棗は普段から清潔にしているからここで時間をかけて洗わなくても良さそうなものだが、女心としては洗わずにいられないのだろう。
平子からすると棗のいい匂いをそう念入りに削ぎ落としてこなくていいのだが。
仕事のことを考えて気を逸らしていると、焦り気味な音を立てて扉が開く。
「遅くなってごめんなさい。髪を乾かすのに手間取ってしまって……」
そうかー、髪乾かしてたんかー。平子は心の中で語りかける。その髪すぐ汚してもうたらごめんなー。
棗は畳に上がり、荷物を机に置いて、平子の髪が湿っているのを見た。
「つ、次は乾かさずに出てきます」
「ま、そういう擦り合わせはおいおいしよ」
『こっち来てくっついてええで』の仕草をすると棗は喜んで平子の横に寄り添う。目を閉じてキスを待つので唇を重ねる。
棗は唇も吐息も、唇を離して開く潤んだ瞳も全部が熱っぽい。
温泉でのぼせたのではないと、艶やかな色香でわかる。
「愛しています」
棗の貴族を感じる部分がこれだ。言葉に力がある。信じ、納得させてしまう説得力がある。この言葉は疑えない。
でも、やはり、しつこいかもしれないが、最後に確かめておきたい。
「ほんまにええんやな? したら後戻りでけへんぞ?」
「後戻りできるようにしていたいんですか?」
「俺はオマエの人生丸ごと引き受けたる気でおるからええけど、オマエみたァな貴族のお嬢さんが処女捨てるて一大事やろ。ほんまに大丈夫なんやな?」
棗は再び質問に質問を返す。
「初めてだろうとそうでなかろうと、私が体を捧げたい男性があなた以外に現れるとお思いですか?」
「俺は一体何の心配をしていたんやろうか」
「そうでしょう」
本人がいないところで長い時を超えて色褪せない想いを大事に抱えて生きてきた女が、本人が傍にいるのにどうして別の想いを他の誰かに向けるだろうか。
棗は両手を平子の両頬に添える。
「そんなに焦らさないで」
「別に焦らしてるつもりやないんやが」
頬に添えた手をゆっくり胸へ滑らす。
「ご自分で気づいていないのでしょうけど、真子さんはとても色っぽいんですよ。私がどれだけあなたに情欲を掻き立てられていることか……」
と、視線を外して頬を染め、
「あなたを想って独りですることもあるくらい……」
「ストップ、ちょっ……、オマエなァもう」
恥ずかしそうに心臓どころか魄睡を滅多刺しにしてくる棗にまともに返せる言葉もなく、平子は彼女を抱き寄せる。
「……しよか」
「はい。慣れるまでは優しくしてくださいね」
=『慣れたら激しくもしてくださいね』。
鎖結も死んだ。
布団の中心に移動しようとしたとき、座卓の端にさりげなくおいていた物を棗が気にする。
「これは何ですか?」
「コンドーム知らんか」
尸魂界は現世ほど避妊具が発達していない。手に入れられるレベルの身分であれば女性が火遊び用の薬を服用するほうが多い。
雰囲気は少し壊れるが、行為の最中にいきなり妙なものを使われたら棗は怖いだろうから説明しておかなければ。
「俺のに被せて、出すモンをオマエん中入らんようにする道具や。薄いからつけててもそないに違和感はないと思う」
せっかくだから0.01mmを用意した。せっかくだから。やはり生に近い感覚でしたいし。アレを破る感覚とか、感じられるかもしれないし。何もかもできる限り全部感じたいし。
「何のために使うんですか?」
「何のためて。妊娠せえへんようにするためやろ」
棗は一度俯く。
「使わないくださいって言ったら叶えてくださいますか?」
「……そうそうデキるもんでもないやろうけど、使うといたほうが安全やで?」
平子も使わなくていいなら使わずにしたいのは山々である。直接触れらればそれに越したことはない。
「真子さんは私との子供を望んでないのかもしれませんが、私は」
「待て待て待て、盛大に事故起こしとる。
俺らの間に子供要らんってのとちゃう、単に籍入れるまではややこしならんようやめとこってことや。やからそのしょんぼりした顔しまっとき」
「私との子供、要りますか?」
「籍入れた後にな」
「でも、今日は使わないで欲しいんです」
彼女が何を求めているのかを察してまた被弾した。
でも言われることは聞きたいので遮らなかった。
「真子さんを全部ください。私の一番奥まで来てください」
平子の精液で子宮まで汚して欲しいと。棗はそう言っている。
それは本音では平子の望むことでもある。遠慮、配慮、思いやりを排除して欲望だけ残したとき惚れた女のまっさらな場所を自分の色に染めたくない男などいない。
棗は懇願の瞳をガクガクと揺らす。
「それで……まだだめなのに、で、出来てしまったら……たゃ、ちゃんと、だ、だ、堕胎、を……し」
「せえへんせえへん」
あまりにもつらい想像に震える背中をとんとんと叩く。
「デキてもうたらもうたでそんとき考えよ。面倒いは面倒いことになるやろうけど、堕ろすって選択肢はない。あるわけないやろ」
「なら、」
「今日だけな。言うとくけど、余計な物つけへんでしたいのは俺もなんやで」
「籍入れましょう。すぐ。親など説得しなくていいです。縁切って真子さんの子供を生みます。すぐ」
「オマエはどんだけ
長い髪が引っ張られないように横に流して押し倒し、首筋に唇をつけ、硬くなったモノを太ももに押し付ける。棗はさっと顔を背けた。
「散々一生懸命誘惑してきてなんやねんその反応」
「だって、まだ服も脱いでいませんし……」
「こんだけ煽られて勃てへん男はおらん」
棗の帯に手をかけ、結び目を解く。合わせを開くとすぐ裸だった。尸魂界の文化では浴衣で下着をつけないのは普通なので驚くことではないが、いきなり現れるとドキッとはする。
どれだけ体にフィットした服でも全ては見えなかった滑らかな曲線、日焼けしていない瑞々しい真珠色の肌、大きな乳房が仰向けになってもたっぷりと膨らみを残し先端にあるピンクの乳首が上向いているのを見せられ、瞳孔の光調節機能が緩んで視界が明るくなる。
「マブいってこういうときに使うんやなー」
「修行中についた小さな傷跡があちこち残ってしまっていて恥ずかしいです。大きな傷は清之介様に診ていただくので消えるのですが、小さいと却って……」
「閨で他の男の名前出すの禁止な、それでなくてもオマエは清之介の話しすぎや」
「重傷のときはよくお世話になっているので」
「そんでも禁止」
「はい」
素直に頷く彼女の苺のように赤い唇にキスをして、首筋に吸い付きながら胸に手をつける。服の上からでもなるべく触るのを自重していた胸の弾力と柔らかさが思考力を低下させていく。
「胸」
「ん?」
「好きな人に触られるとこんなに気持ちいいんですね……んっ」
乳首を摘んで指の腹で捏ねる。
「これからもっと良うなる」
摘んだ方とは反対側を舐める。
吸いついて押すとき唇に感じる柔らかさに只管興奮する。
耳を当てれば心臓が祭りの最高潮で打ち鳴らす鼓のように速い音を立てていて、彼女が生きている感触に愛しさを覚える。
思うように胸を楽しむが、それに応える棗の声は両手を重ねて口を押さえているせいでくぐもってしか聞こえない。太ももを撫でながらあえて独り言のように言う。
「俺棗チャンのエエ声聞きないわァー、口から手ェ離してくれへんかなァー」
「手ッ、手って、どこへやったら」
「枕か俺でも掴んどき」
棗の手が平子の肩口を触る。そしてそこにあった浴衣の襟を恨めしげに引っ張る。
「これはいつ脱いでくれるんですか? 私も真子さんの体に触りたい」
「今脱ぐ」
勿体ぶれるはずもなく平子が体を起こして脱ぐ間に棗は袖から腕を抜く。
お互い裸になって横になる。舌を絡ませてキスをし、棗がぽそっと言った。
「私、キスするとき真子さんのピアス舐めるのが好き」
「気になってたんやけど痛ない?」
「全然。体、触っていいですか?」
「好きなだけどォぞ」
彼女の熱くなった手がぺたっと胸板に当てられ、首のほうを撫でて腹のほうへ滑る。
平子は自分が男としては体が貧相なのを自覚している。
『スタイル』の概念的には上の方にいるが、筋肉が必要最低限にしかなく、痩せていて、薄い。体重もない。何をしても現在より体格を良くできない。
試しに拳西の指導のもと負荷の高い筋トレをしたこともあるが一ヶ月経っても全然変わらず、
「なんでだよ真子……! オマエなんでなんだよ……!」
と闇堕ちした親友にかけるときの言葉と共に憐れまれた。
平子の体を見て男性的な特徴が素敵だと思う女性は少ないだろう。女性的な魅力に溢れる棗に対して若干のコンプレックスがあったが、棗は平子の体を愛おしそうに愛撫する。
腕を背中に回し、首元に額を寄せ、肌に肌を押し付けて深く息を吐いて、
「好き」
彼女が平子の何に愛しさを感じているか、沁み入るように分かるしぐさだった。
直の体温に浸ってる棗の後ろ頭に手をやり他に何か言うか待ってみたが、棗はまたあちこちキスして唇に戻る。
「オマエは『真子さんは私のこと好き?』とか聞けへんねんな」
「真子さんは聞いたら好きって答えてくれますもの」
「もしかしてやけど、俺を好きかって聞かれたら好きやて答える男やと思てへん?」
「思ってます」
「
「同衾している女にそう聞かれたら、真子さんは優しいので嫌いでなければ言うと思います」
「まず好きでもない女と同衾せえへん」
「たとえば大切な人を人質にとられて『こいつを殺されたくなかったら娘に胤を寄越せ』と高位貴族に脅されて、罪のない娘さんが親の命令でやってきたら?」
「人質になってる奴を助けに行く」
「娘さんが震えながら『好き?』って聞いてきたら? 真子さんは嘘ついてあげると思います」
「そないクソみたいな状況で嘘でも言えへんて。オマエ俺のこと好きすぎて逆に誤解してへん?」
「……でも自分からは嘘ついてまでは言わないと思います」
「まだるっこしいこと言いよってこのォ」
『訊いて答えられるのではなくて、あなたが言いたいときに言うのが聞きたい』にやっと気づき、頭を豊かな髪ごとわしゃわしゃと撫でる。
「好きやで、棗」
「どれくらい?」
「最低でもカワエエーって胸キュンして股座の物ガッチガチになるくらいやな」
棗の足の間に膝を入れて付け根まで持ち上げて揺らす。
「ひゃっ」
棗は嬌声というよりは悲鳴をあげて平子の肌に爪を立てた。
「真子ひゃん、待って、やっ、やっ」
「女はズルいのォ、こない濡らしとってもパッと見わからんて」
棗のそこはまだ触ってなかったにも関わらず平子の足へ大幅に愛液をつけて余るほどに濡れていた。ぬるっとした感触に背筋がゾクゾクする。
「だって、真子さんが」
「何や、俺が悪いて言いたいんか? このスケベ」
「そうです! 私がこんなに濡れるのは大好きな真子さんがエッチなのが悪いんです」
「俺がエッチかはともかく、本気でそう思てるんやろうなァって信じさせてくれるんがオマエの好きなとこの一つや」
「ともかくではなく真子さんはエッチです」
「わかったわかった。オマエにはそう見えてんねやな」
念を押しながら尖らせた口を舐め、開かせる。
胸を両手で揉みながら激しいキスをすると、お嬢様はご満悦だった。