「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
ユウカも近々上げたい。
一攫千金は全3話予定。
アビドスの借金は未だ彼女達の首を絞めている。ほんの少しだけ楽になったところで彼女達の借金が消えてなくなったワケではない。
借金返済生活は尚も継続中だ。
お金を稼ぐ方法は主にアルバイト。しかし何より大きい稼ぎになるのが「指名手配犯の確保」だ。
お金を稼ぐ方法に「指名手配犯の確保」なんて、西部劇に出てくる賞金稼ぎみたいだなと思ったが、指名手配犯が多いキヴォトスでは、賞金稼ぎなどと比べて極めて安定した、立派な仕事と言えるのだ。
そして、アビドスのメンバーによる賞金稼ぎは、私と出会う前から行われている。アビドスの面々の強さの「理由」を、垣間見た気がした。
だとしたら、カイザーコーポレーションはとても哀れで、皮肉なもんだ、と思う。カイザーのお陰で借金まみれになって、その借金を返す為に賞金稼ぎという手段を執るようになり、強くなり──やがてカイザーPMCを苦しめるに至ったのだから。
因果は巡る──なんて言葉を聞いた事があるが、アビドスとカイザーの関係は、まさにそれじゃないだろうか……。
◆
「皆さん、新たな指名手配犯が発表されました!」
「来たわね、最大のカモ!」
「ん……ナイス、アヤネ」
「ホント、指名手配犯が次々と公表されるねぇ……。キヴォトスの治安はどうなってるのさ〜……」
「今に始まった事じゃありませんから♤」
「うへ〜、それを言っちゃおしまいだよぅ……」
ある日、キヴォトスにおいて指名手配犯が新たに発表されたという情報が舞い込み、対策委員会は、久しぶりに盛り上がっていた。
少数精鋭の文字を具現化したようなアビドスの子からすれば、指名手配犯はセリカの言う通りカモと言える。彼女達の借金返済の方法の1つとして指名手配犯の確保はかなり大きな収入だからだ。
しかしこの日の「指名手配犯」は、普段と内容が違っていた……。
「皆さん。今回の指名手配犯は、ヴァルキューレや連邦生徒会が発表したものではありません」
「「「?」」」
「へぇ……?どこの組織が発表したの?トリニティ?いや、意外とゲヘナだったりして?ミレニアムなら発表なんかしないで内々で済ませそうだしねぇ……」
「……レッドウィンター連邦学園、です……」
「「「「レッドウィンター!?」」」」
全員が驚くのも無理は無い。情報を読み上げてるアヤネさえ、信じられないといった目だ。
レッドウィンターといえば、ギリギリ三大校には数えられないものの、五大校ならばまず間違いなく名前が入る程度には大きな学校。
しかもトリニティのように色んな学校が集まった結果の「総合学園」ではないのにあの規模だ。昔のアビドスはキヴォトス1だったが今のアビドスから見れば凄まじいと言わざるを得ない。
そんなレッドウィンターが、懸賞金を掛けた指名手配犯を公表したのだった。
「それで、そいつの懸賞金はどんくらい?100万、いや200万は超えてるといいけど」
「せ……1,500万円、です……」
「……へっ!?せ、せん……!?」
「1,500円……の書き間違いでしょうか……?」
「お、珍しい。アヤネちゃんもテンパってるねぇ。そんな1,500円なんて、お小遣いじゃあるまいし」
「懸賞金にしては安すぎるというより、意味が無い金額です。レッドウィンターですし、信じられないですが、1,500万円……で、正しいと思いますよ?」
「ですよね……」
懸賞金とは、その犯人の危険度や重要度に応じて金額が高くなるもの。つまりこの生徒は、それだけ危険であり、重要である──という意味だ。
この5人には、カイザーローンを相手に、借金の利息だけで月に788万円も払っていた過去がある。
大雑把ではあるが、かつての利息の2倍にも近い金額だ。それだけに懸賞金の意味は熟知しており、その指名手配犯を捕まえる事に危機感を覚えた者も少なくない──が。
「アヤネちゃん。その指名手配犯は何をやったの?どうして指名手配されているの?それくらいの額になると、多分、詳しめに事情も公表されてるよね」
「はいっ!その指名手配犯は、レッドウィンターの生徒の1人であり、色んな学園の生徒を巻き込んだテロ組織の幹部であり────レッドウィンターのクーデターを
「
「……ましてや、指名手配までするほど……?」
「連河チェリノ書記長は、数ヶ月前からこの生徒を追っていましたが、事務局の力のみでは彼女の所属している『組織』には到底対抗できないと判断し、そこで彼女に懸賞金を掛けた上で『指名手配犯』と世間に公表する事で、賞金稼ぎや、私達のような……周囲の力を借りようとしたそうで……!」
「レッドウィンターは、毎日?毎週?クーデターが起きるなんて話を聞いた事がありますが、どうも、普段と対応が違うように思えますね……?」
「はい。普段のクーデターは、なんというか、まだお遊びの範疇と言いますか……。遊びでクーデター?とは思うかもしれませんが、一旦そこは置いといてください」
「あはは……」
「ともかく、
「「「……!」」」
明確な実績がある──。その言葉の恐ろしさは、現在進行形で学生をやっている彼女達にはより鋭く深く突き刺さった。
カタカタヘルメット団により学校を奪われかけた過去があるからこそ、その恐ろしさはキヴォトスの中でもトップクラスに理解しているはずだ。
「あ、その件ならおじさんもニュースで見たなぁ。先生が解決したっていう事件だよね?トリニティで深夜に戦争が起きかけた……」
「その件です。ことが露見して以降、事務局はすぐ追っ手を差し向けていたようですけど、立ち回りが巧妙で、まるで蒸発するように消えていくと……」
「ふぅん……頭のいいヤツがその組織に居るのね」
「そうみたい。だけど、それでもその生徒の部下の何人かは事務局に捕まったそうだけど……でも……」
「でも?」
「部下を撒き餌にして自分だけ逃げた──みたいな話もあって……その冷酷さから来た二つ名が『寒空の悪魔』……」
「二つ名は厨二病クサイけど、フツーにサイッテーじゃん!?部下を見捨てるって!幹部だか何だか、詳しい事は知らないけど……でも酷い!」
「ん……そんなヤツを捕まえられるの……?」
「そうよ!その『組織』ってのもよく分からないしレッドウィンターみたいな大きな学校の力でさえも捕まえられないなんて!そんなヤバい指名手配犯を追うより、いつもみたいにその辺のヤツを捕まえて地道に稼ぐ方がいいじゃない!」
「わぁお、詐欺商法に騙されがちなセリカちゃんがまともな事を言ってる……!おじさん、可愛い後輩の成長が嬉しくて堪らないよ〜♪」
「な、何よもう、私だってそれくらい──」
「けど、まだ甘いねぇ」
「!?」
「堅実なアヤネちゃんが、そんな、目の前の大金に目が眩んだような話を私達に持ってくると思う?」
「……っ!」
ゲルマニウムリングやマルチ商法などに騙されるセリカですら、自分達で捕まえるのは無謀と判断しアヤネに反対する。しかしだ。視野も広くて、判断能力に長けたアヤネが、凡ミスと言えるそんな事をするのだろうか?……否だ。
「堅実、かは分からないですけど……!ですが確かに捕まえられる算段はあると思っているんです」
「ほうほう!」
「──実はここ数日、アビドス砂漠の地下で、原因不明の爆発が相次いでいるんです。これはビナーの仕業ではありません」
「「「「!?」」」」
「坑道というか地下道を掘削工事する爆発でした。そして、その工事をしているのが──」
「レッドウィンターの事務局の手から逃げてきた、その『寒空の悪魔』さん御一行ってワケだ?」
「少し違います。その『組織』の末端というか──とにかくその『組織』に属する生徒でした。そして地下道が完成した数日後、その道を通って、遂に、その『寒空の悪魔』さんがアビドスに……!!」
地下での爆発、その犯人が「組織」の者であると結論付けられるだけの情報を、アヤネはどこで入手したのか?
彼女は、それについて「シャーレのカフェで正義実現委員会の生徒さんと情報を交換した」と、軽く内情を話した。
トリニティでの決戦時、正義実現委員会は前線でその「組織」と交戦した。地下道へ逃げるところも目にしているし、それについての調査もしていた。
だからこそ、アビドスも同じ目に遭わないよう、秘密裏に自分達の調査内容をアビドスのアヤネへと共有してくれていたのだった。
「え゙っ!?そいつもうアビドスに来てるの!?」
「う、うん……。ブラックマーケットに向かったきり何も音沙汰は無いんだけどね」
「ブラックマーケット──ヒフミさんと出会った、あそこですね?」
「はい。地下道の1つはブラックマーケット近くに伸びていますし、ブラックマーケットやその近くにその生徒の拠点があると見ていいでしょう」
「……ブラックマーケット内部となると、やっぱり、マーケットガードが邪魔だと思う」
「でも対処法はもう分かってるわっ!少なくとも、シロコ先輩が言うように銀行強盗するよりマシ!」
「ん……」
お得意の「銀行強盗」を言い出す前にセリカから否定されシロコのケモ耳はペタンと倒れてしまう。反対にセリカのケモ耳はピンと立っているが。
「あ、そうだ。その指名手配犯の名前をまだ聞いてませんでした!」
「っ、そうでした!えっと、名前は────」
「寒空の悪魔、
机に広げられた手配書には、そのマフユの写真は無く、その代わりに「No image」の文字があった。写真は無い、それで指名手配しているだなんて、と皆は苦い顔をする。
「学園間の争いは政治的問題になる。だけど今回はレッドウィンター側から『助けて』と言われてるに等しい状態だ。風紀委員会とやり合ったあの時とはワケが違う」
「そ、そっか。今回はレッドウィンター側から出た話だもんね……」
「余計な心配が無いなら────やっぱり……!」
「ん。狙えるよ。1,500万円……一攫千金だね」
「まぁ借金返済で消えるけどね〜。でもま、かなり楽になるのは間違いないと思う。……どうする、皆?おじさんは皆に合わせるからさ」
5人は顔を見合せた。
当然、答えは1つである。
「もちろん、やるわよ!」
「ん。ブラックマーケットの中だろうと、作戦さえしっかりしていればいい」
「私達は少数精鋭ですから♤」
「やりましょうっ!」
「……よし、いっちょ頑張ろ〜う!」
こうして対策委員会は情報を集め、指名手配犯の確保に伴う調査を開始し、武器を磨き、近々起きる大捕物劇に備え始めた────。