「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
────ある日、アビドス砂漠に謎の塔が出現。
アロナやプラナ……主にプラナから情報を得ながら現地で調査を進めていた所、総力戦ボスとは似ても似つかないような謎の新ボス「
どうにかこうにか、命からがらと言えるレベルで追い込まれつつも、
◆
「──てなワケで。アビドス砂漠の某所にある塔……オベリスク?の所に行くと『
「何だそれは……私は知らないぞ……怖……」
「クックック……同感ですね。アビドス砂漠、本当に何なんでしょう……とんだブラックボックスですね」
「だね。謎の砂嵐、ビナー、ウトナピシュティムの本船に続いてセトの憤怒。厄ネタの宝庫か何かか、アビドスという土地は……?一体何があるんだ……」
「同じく『セトの憤怒』というモノは初耳です」
「そういうこった!」
「ん〜、そっか。元は
アビドス砂漠での戦い──シッテムの箱の制約が解除された事に由来し「制約解除決戦」と呼称する事にするが、それについて調べてみようとゲマトリア本部に顔を出す。
しかし黒服以下4名に話を聞きに来るが、全員がそれを知らなかったので、現時点で調査は空振りに終わった。
シッテムの箱の制約、制約解除、セトの憤怒──未だ謎に包まれた存在だ。
「うぅむ……。ゲマトリアに成ってからのノウハウを駆使して調査はしてみよう、しかし……」
「
「私達だけの?……含みを感じるのは気の所為?」
「ええ、気の所為ですとも。ゲマトリアは、先生を含むこの場の我々で全員。カイザーとの協力関係を絶った今、金銭的な意味での協力者も居ませんし、含みなど微塵もありません。ですね、マエストロ?ゴルコンダ?」
「あぁ」
「えぇ、そうですね」
「そういうこった、そういうこった!!」
「ふぅん……?」
奇妙な疎外感、違和感を覚えながら、そんな事はいいかと話を水に流す事にして、話題は次に進む。
「それにしても……『セトの憤怒』、ですか」
「謎に包まれた存在としか言えませんね、現状は」
「アビドス砂漠、というよりかは……
「そういうこったァ!」
結局は、私からの報告だけという結果で終わり、謎が謎を呼ぶ状態のまま解散した。
それからしばらくは、アロナやプラナと一緒に、シッテムの箱そのものについての検証や調査などを進めていき……「制約」の1つを、突き止めた。
それは「限界まで育成した生徒の強化」だった。私はとにかく生徒を迎えたらすぐ限界まで強化するようにしている。
だから今回も、いつものように、ミカ、シロコ、ホシノ、ユウカやノア────などの、ハーレムに属してくれている生徒を優先して強化しようという結論に至った。
「──しっかし、どうも腑に落ちないな」
『どうかしましたか、先生?』
「『セトの憤怒』というヤツを撃退して、どうしてシッテムの箱の制約が解除されるんだ?アイツと、このシッテムの箱には……何か繋がりがあるの?」
『……私には、なんとも……すみません……』
『私も分かりません……ごめんなさい、先生』
「いや……うん。アロナもプラナも、この辺の事柄はよく知らないんだったね。ごめん、気にしないで」
『しかし先生の疑問はご尤もです。セトの憤怒と、シッテムの箱の関係もそうですが──それ以前に、私達自身にとっても、シッテムの箱の性能や限界値などは正直未知数な部分が大きいです。しかしあの戦いでは、普段の2倍近くの性能を発揮できたと、強く自負しています』
『あうぅ、プラナちゃん……容赦無いです……』
『アロナ先輩を責めているのではありません。寧ろ今の発言は、自虐も入っていると思ってください。自分のできる事も、正直、よく分かっていません。私やアロナ先輩には何ができて、何ができないか。どこまで干渉できて、どこから干渉できないか──未だに分からない事だらけです』
「どこまで干渉できて、どこから干渉できないか……成程、確かにそうだね。色々、検証する必要があるだろうね。いざって時に、フル活用する為には──やっぱり、知っておかなくっちゃ」
それからしばらく経ったある日の事。
また一つ「覚悟」を決めた私は、アビドス高校へ赴き……対策委員会との会議もそこそこに、別室へとホシノを呼び出して、話をする事にした。
「────急にごめんね。大事な話があってね」
「うへぇ……なにやらイヤ〜な予感……」
「まず、私の意見を話す。だから、可能であれば、ホシノの意見を聞かせてほしいんだ。無理だったら無言でいい。いや、思い切り殴ってくれてもいい」
「え……え?な、何なのさ、先生……そんな急に……。まるで、わ、別れ話を……切り出すみたいな……」
「そんな話はしない。ホシノから離れる気なんて、私には無い」
「っ!……そ、それはそれで照れるなぁ……おじさん相手にそんな直球な……///」
「話を戻すよ。聞いてくれるかい?」
「!……うん。
「ありがとう」
運命を左右しかねない程に大事な話だ。ネタでも冗談でも嘘でもない、本当に、本当に大事な話だ。机の上に手を置き、真っ直ぐに彼女のオッドアイを見つめて、深い深い深呼吸を数度繰り返し……。
「もし、大切な人を亡くしてしまったら──」
「!!」
「私は、どうにかしてその人を蘇らせたいと願うと思う。その為の手段を、どうにかして探すだろう。そんな事は絶対に無理なんだと、分かっていても。満足いくまで、いや決して満足なんかしないかも。きっと私自身が死ぬまで、その人を蘇らせるという無茶苦茶で荒唐無稽な野望に向けて邁進するハズ」
「……」
「私はそんな考え。『蘇らせたい』と願うタイプ。だけど世の中には、大切な人の死すら乗り越えて、前に進める、強い心の持ち主が居る。そういう人は例え神様が『蘇らせる事ができるぞ』と囁いても、キッパリと断れるんだろう」
「………………」
「でも……きっと今の私には無理なんだと思うんだ。大事な人には、また会いたいから」
「……先生……」
「──とまぁ、ここまでが前置き。長くなったね。ここで、ホシノの意見……聞かせてもらえるかな」
人の死という、極めてデリケートな問題。だから私はホシノだけを呼び出して話を始めた。しかし、それでも彼女の顔色からは生気と呼べる物が抜け、まさに顔面蒼白──といった様子になる。
やがて、長い長い、長すぎる程の沈黙を経て遂にホシノが口を開く。
「………………………………酷いよ」
「?」
「そんな、人が死ぬ、なんて話、聞かされてさ……。わた……私が、何も思い出さないと、思った……?」
「だから……本当は話したくなかったんだ。それでもこの件だけは絶対に、前段階でホシノと話しておく必要があったんだ」
「ワケ分かんないよッ!意味分からない!こんな、やっと気持ちに整理がついてきたのに!そうやってまた、人の気持ちを掻き乱すような事ッ……!!」
「前に少しだけ、話してくれたよね。アビドス高校生徒会長、梔子ユメ──ホシノの先輩について」
「だから!なんでユメ先輩の話を今になってッ!!やめて先生っ、これ以上はもうッ……」
「ホシノとデートしたり、お昼寝しながら、ずっと疑問だった。ホシノは私と居て、本当に今は心から笑えているのかなって。時折、物憂げな顔で窓から外を眺めている時とか──中々寝付けない夜とか。そういう時は、やっぱりユメの事を気にして──」
「やめてってばッッ!!!」
腕をムチのようにしならせた彼女の平手打ちが、鋭い音と痛みを伴って頬に突き刺さる。
勢いが余って椅子から吹っ飛び、ガタンと大きな音を立てて椅子も倒れ、私も床に倒れてしまった。熱した金属を頬に押し当てられたように熱い、口の中が切れたようで血の味が広がる。どうやら、本気で怒らせてしまったようだ。
「────っっ!!ご、ごめんなさい先生っ、わ、わたし、なにしてっ……先生、先生起きてっ……」
「……ごめん。無神経だったね」
「ううん、嫌だったら初めから逃げれば良かった……なのに私が自分の意思で残って、先生の話を……」
「いいんだ。私は、ホシノの本心が知りたかった。過去の事を……引き摺っているのか、そうでないか。引き摺っていないのなら、それでいいと思ってた。だけど────ううん。もう、言う必要は無いね」
「だって……だってぇ……うっ……うぅ……う、うぅ……ユメ先輩、とは……っ、ケンカ別れ、みたいで……。謝ろうと……謝ろうと思ってたのに!会えなくって!お礼だってまだ伝えてないのにっ!ずっと、ずっと探してたのに、なのに、ずっと、見つからなくて!わたしが、みつ、見つけた、時には…………ッッ……」
謝れるなら謝りたい、でももう遅い。その現実が文字通り、ホシノを追い詰めてきた。だからこそ、アビドスや対策委員会を救うという名目で、黒服の実験に身を捧げようと……楽になろうとすらした。
──それさえ聞けたら……もう、いい。十分だ。
なきじゃくる彼女をどうにか落ち着かせ、今後の方針を決めた私はホシノの両肩に手を置き、小さな子供に強く言って聞かせるかのように力強く思いの丈をぶつけた。
「……分かった。待ってて」
「先生……?」
「ちょっと、行ってくるね」
「待って先生ッッ、何処に行……」
「んー…………出張♡」
「は……ぇ……?な、何を……急に……」
「行く前に、ホシノの気持ちを聞きたかったんだ。イヤな事を思い出させて、本当にごめん。だけど、それに見合ったお返しは、きっとするから」
「何を、言って……せんせ、だめ、行かないで」
「大丈夫。私は、先生なんだから」
「待って先生ッ、待って!!」
ホシノを振り切って教室を出たその瞬間────ゴルコンダ達から貰った例の転送装置を利用して、シャーレに帰還。
そして制約が解除されたシッテムの箱と「大人のカード」を利用し……「奇跡」を、起こした。