「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
「──遂に届いたね。まさか、こんなのを使う日が来るなんて……思いもよらなかったな」
無法地帯にも思えるキヴォトスにも、当然ながら法律のようなものは存在する。
今回は連邦生徒会・交通室のモモカから、依頼を受けた。彼女によると、交通に関する新しい法案をちょっとばかり試してみてほしいとの事だった。
それに伴い、仕事や生徒との交流の合間に免許の講習を受け、キヴォトスでの免許証を今更ながらに取得したワケだが……。
「シャーレに車庫を造設か。見慣れないなぁ……」
今後も、色々と協力してもらう事になるからと、交通室の予算で3台も車を用意してもらった。
1台目はワゴン。10人乗りなのでかなりデカイ。大人数の移動向き。ただ、あまり使う機会は無いと思われる。
2台目はバン。同じくかなり大型だが、こちらは荷物の輸送に特化している。恐らく、こちらの方を使う機会が多そうだ。カーセックスの舞台にも使うかもしれない……というかまず確実に使うだろう。
3台目はセダン。何の変哲もない、ただの車だ。キヴォトスでもその辺でよく見る、本当の一般車。充電でもガソリンでも走るというハイブリッド車。
連邦生徒会お抱えの業者が製造したので、自爆やその他、特筆すべき機能は特に無いとされている。ガラスは全て防弾仕様だし、ちょっとした爆発なら誘爆しない……らしい。
全ては「特別な耐性を持たない人間」が運転するという事を前提に設計されたから、とのこと。
「それで、
モモカからの依頼を遂行する為にと、車とは別に届いたある物品をセダンに取り付ける。
そう、それはチャイルドシート。交通事故が多いキヴォトスでは、やはり交通事故に伴う負傷者も、バカにならないくらい多い。子供だと、衝撃で外に身を投げ出される事も多いそうだ。
そこで身長150cmを1つのボーダーラインとし、それ未満の生徒が車に乗る際はチャイルドシートを設置し、それに座らせるようにする──というのが今回モモカが発案した「新法案」らしい。
なので、シャーレの先生というだけでも依頼する相手として相応しいのに、ましてやハーレムなどを作ってるので、デートついでに試してくれ──と、そんな経緯で依頼されてしまったのだ。
シャーレは連邦生徒会の下部組織のようなもの。当然ながら「上」からの依頼を断れるハズもない。
「ぜーんぶ経費で落とせるとはいえ……はぁ」
免許の取得まで辛かった。生徒との交流の時間もかなり削られてしまった。睡眠時間だけじゃない。性行為の時間もだ。そのクセ、仕事だけいつも通り沢山あるのだ、疲れてしまう。
しばらくデートはお預けさせてたし、誰か生徒を誘い、早速デートついでに依頼をこなしていこう。というか、発案者らしいモモカも身長150cm未満のような気がしたが……。
モモカ、チャイルドシートに自身が座る事を考慮していないのだろうか。……まぁ、何でもいいが。
◆
「やぁ。忙しいのにごめんね」
「ううん、先生こそ。最近は、その、あまりデートできてなかったから……。忙しかったんでしょ?」
「『そうでもない』って言いたかったんだけどね。今回ばかりは、そうも言ってられないくらいには、かなり大変だった。……癒してくれる? ヒナ?」
「勿論。──まさか、先生が車を運転するだなんて思わなかったけれど。でも、これも『連邦生徒会の依頼』……なのよね……?よく分からないけれど」
「うん。でも、そっちは気にしなくていいよ。ただ
私と……ドライブデートを楽しむ、みたいな感じで、気軽についてきてくれたらそれでいいからね」
「うんっ……♪」
D.U.からゲヘナまで、あまりにも遠すぎる。
高速道路を使っているのにかなりの負担だった。しかしこうしてヒナを迎える事ができて、ちょっと目標を達成したような感じがして、安心感はある。
「ふふっ……先生の運転、楽しみね」
「あっ……楽しみにしてる所ごめんね。今日の所は、後部座席の方に座ってくれるかな……?」
「え。後部座席……って……えッ?」
そこに並ぶは、高校3年生のヒナを嘲笑うような車専用の装備品──チャイルドシート。
ヒナの身長は142cmであり、モモカの例の法案にバッチリ当てはまっている。チャイルドシート体験第1号は、ヒナに決定だ。
「さ……乗って」
「あ、あの……せん、せい……?」
「ささ、乗ってくれないと出発できないから……」
「いや、あの、じゅ、17歳にもなって……チャイルドシートは、流石に……」
「それがね、新法案では『身長150cm未満』って、身長で指定されてるんだ……」
「新法案?そんなの聞いた事も……」
「試験的に実施する事になっていてね。シャーレの先生としては、連邦生徒会からの依頼は断れない。だから……車デートするにはそれしかないかな……」
「連邦生徒会から依頼がある、とは聞いてたけど。こういう事なら最初からそうと早く言ってくれればいいのに……」
「いやぁ〜、ヒナなら大丈夫かなと思っちゃって」
「先生から見れば私はまだ子供かもしれないけど、チャイルドシートに素直に乗るほど、子供じゃないから……流石にこれは恥ずかしい……///」
「ヒナなら最初から素直に言っても良かったかも。ごめんね」
「ん……。じゃあ……乗る?チャイルドシート……」
「いいの!?」
「デートとは考えにくいけど……先生の仕事ついでのお出掛け、くらいには考えられるから……」
翼を小さく畳むと思っていたよりずっとすんなり車に乗り込んでくれた。チャイルドシートは流石に気が引けるらしく、座ろうか座るまいか迷ったが、今日は最初からドライブしようという話にしていたお陰で、チャイルドシートに腰を落ち着けた。
まさか「新法案の試験的運用」を盾にしてヒナのこんな姿を見れるだなんて……。役得だ。
「あ、そうだ。せっかくだから写真も撮──」
「それはやめて」
「ハイ……」
この後めちゃくちゃドライブした。
最初こそかなり渋々といった様子ではあったが、最後の方はかなりノリノリというか──座席越しに手を出してきたりなど、普段とは違うイチャつきを堪能できた。
しかもチャイルドシートの効果なのか、その後はしばらく、やたらと私に対して甘えん坊になった。
子供扱いがしたくてチャイルドシートに座らせたワケではないものの、結果的にそうなったことで、少しは甘えるという事を自然にできるようになったようだ。
素直に甘えてくるヒナは、まるで麻薬のように、忘れられない刺激と中毒性があった。
◆
「やっ。お疲れ様、コハル」
「あ、先生。──『車の免許を取ったからドライブしよう』って……先生の車、どこ……?」
「あぁ、目の前の
「ッッ!?エッチなのはダメ!死刑ッ!!」
「君は何を言っているんだ」
「そそそそそうやって、学校終わったばかりの私をハイエースするんでしょッ!?そ、そんなのダメに決まってるでしょ!?今日なんて体育あったしっ!エッチすぎるからだめぇっ!」
ハイエースって動詞だったのか。知らなかった。
ってのは冗談としても、コハルもそういう概念は知ってたんだね。さっすが……。
体育あったからダメ──という理由なら、じゃあ別日ならイイの?って事になりかねないんだけれどコハルはそれに気付いているのだろうか。
気付いてないんだろうなぁ。自力で補習授業部に入っちゃう子だし。そんな所も可愛くて堪らないんだけど、コハルはそこにも気付いてないんだよね。
何なんだろう。自分の魅力を分かってない子ってシンプルにエッチだ。異性を徴発するフェロモンを振り撒いてるのに気付いていないんだもの。しかもコハルも凄く良い匂いするし。翼の付け根とか。
「成程、
「え……?」
「ただ、学校帰りのコハルと、ブラブラとドライブなんかしてみたいな……って思ってね」
「そ、そうなんだ……?」
「でも、コハルが嫌がるならしょうがないからね。この話は無かった事に……。それじゃまた今度、当番よろしくね」
「っ、待って!!」
わざとらしくションボリして見せてから運転席に戻ろうとする。すると焦ったらしい彼女は小走りで距離を詰め、裾を引っ張って足止めをする。
「その……。えっと……イイ、よ……?」
「何に対しての『イイよ』なのかな?」
「だからそのっ、ど、ドライブデートよ!それなら健全だし、イイって言ってるのっ!」
「そっか。良かった、ありがとうね。それじゃあ、後ろに乗ってくれる?」
「分かっ……後ろ?……
ウルウルした目で上目遣いするのはやめてくれ。校門前だろうと思い切り抱き締めたくなる。
「実は、連邦生徒会の交通室からの依頼でね。まぁ説明しなくとも、見れば分かると思うから、後ろに乗ってくれると助かるよ」
「ふーん…………えっ?」
「さ、乗って乗って。出発するよ〜」
「…………は?えっ?私……後ろに乗るの?」
「うん」
「座れるとこ無いんだけど……」
「あるでしょう?」
「チャイルドシートじゃないのよっ!どうして私がチャイルドシートに座らなきゃいけないワケ!?」
当然、そうなるか。コハル程になるとすんなりと座ってくれるとは思ってなかったし。予定調和だ。
ただ、校門そばなのであんまり大きな声で騒ぐと恥ずかしい思いをするのはコハルになるが。やはりその辺はまだ分かっていないらしい。可愛い。
「連邦生徒会の依頼で、新法案を試験的に運用する事になったんだ」
「私もう高校生なんだけど!?15歳っ!!」
「それが、新法案によると『150cm未満』って定義されてるようでね……」
「ッ!?そ、そんなっ……」
「法案に逆らうって、コハルの目指す『正義』とは違うんじゃないかな?」
「〜〜〜〜〜〜っっ、で、でも!そんな法案なんて聞いた事も無いし!」
「言ったでしょう。『試験的に運用』段階なんだ。ほら、シャーレは連邦生徒会の下部組織だから」
「!!……本当に、これ、座らなきゃ……ダメ?」
「ウルウルした目で可愛く見上げてもダ〜メ」
「そ、そんなつもり無いし!というか、本当なら、証明してよ!先生がそんな依頼を受けてる証明!!どうせ先生の趣味で置いてるだけなんでしょッ!」
「──仕方ない、か」
「ほら見なさい!どーせ、私のことを子供扱いして座らせたかっただけなn……」
「もしもしモモカ?少し……1分くらい大丈夫?」
『はいはーい、それくらいなら。で、どしたの?』
「例の依頼をこなそうとしてるんだけれど、生徒に反発されちゃってね。どうか、モモカから一言だけお願いできないかな?」
『えー、めんどくさ……』
「依頼を受けてる証明をしたいんだ。お願い!」
『んじゃ、いつものポテチ3、いや5袋でどう?』
「契約成立。電話、代わるね。……はい、コハル」
通話状態のスマホを渡そうとすると、見るからに警戒した様子でギロリと睨みをきかせてくる。低い身長も相まって、小動物のようで本当に可愛い。
頬が力無く緩んでいき、自然と彼女の頭上に手を伸ばしそうになるが、それを理性でグッと抑える。
「だ、誰よこれ!?先生の彼女!?」
「連邦生徒会・交通室の室長さん」
「……え?」
「簡単に言うと、キヴォトスの全ての交通網を管理している、超超超お偉いさん──かな。記者会見に出た事もあるよ」
「!?!?」
「あ、もちろん、連邦生徒会の室長だから、普通の学校の生徒会よりも
「わ……わわ、分かったわっ……!!」
それから数十秒、モモカは気怠げに何かを説明。その間、コハルは背筋を伸ばして、かなり畏まった様子で「はい」と、呟くように言葉を返していた。
震える手でスマホを返されると、既にモモカとの通話は切られていた。相変わらずモモカは、通話を切るのが早い。
「……どうだった?」
「あぅ……えと……その……せ、説明、された……!」
「……うん」
「身長の小さい子が、交通事故に遭うと、って……。だから……わ、私も、ちゃんと座るっ……!」
「そっか、良かった。私も、コハルには安全に車に乗ってもらいたいからね」
「『法案』ならちゃんと守るわ!正義実現委員会のエリートなんだから!!」
「それでこそコハルだよ。じゃ、このまま買い物に付き合ってね。……行きたい所があれば言ってね」
「分かったわ♪」
買い物を無事に済ませた後、後ろの席を倒して、めちゃくちゃハイエースした。
コハルもノリにノッてくれたので寮に戻ったのが夜遅くになってしまい、かなり怒られてしまう事になったものの──いつも通りに「シャーレの仕事を手伝ってもらっていた」という事で、お咎め無しにしてもらった。
相変わらず便利なものである。
なお、暑い車内での情事だったので互いに互いの汗で濡れ、大変な事になった。コハルが寮に戻って色々言い訳しようと、ハナコにはバレそうである。
全員分書こうと思った自分を殴りたい。
普通に無理。ブルアカ、150cm未満が多すぎる。
夏コミで燃え尽きた感ある。
燃え尽き症候群、良くない。