※この作品はR-18です。

「ハーレムルートを目指しましょう、先生」   作:アキラゼミ

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賭けは私の負け。
書けば来るよね。いつか。そう思って待ってるよ。
それはそれとして、ハナコの目付きがエロ過ぎる。巨乳の谷間はI字、いいね。相変わらずえっちだ。てか質感がエグイ。えっちっち。

普段は更新しませんが、セイア来なくてショックが強いので、明日も更新します。木曜も更新します。ヤケクソ補填ならぬヤケクソ更新を喰らいやがれ。
良ければ感想お願いします。



Welcome Teacher ─心の無痛症─

 

「……ゲヘナ学園は相変わらずだねぇ」

 

「これでもいつもよりずっと静かな方よ。不気味に思えるくらいにね」

 

「不気味なくらい静かでこれ(・・)とは……?」

 

 拝啓、キヴォトスの皆さん。シャーレの先生こと私は現在、ゲヘナ学園の中でも特に荒れている事で有名な、学生広場に来ています。

 私1人では命が幾つあっても足りないような気がしたので、風紀委員長であるヒナにボディガードに来てもらいました。イェイ。

 因みに「来てもらいました」とか独白したけど、私から頼んだワケではないからね。ヒナの方から、買って出てくれたんだ。ありがたい……。

 すぐ隣にヒナが居るこの安心感、ガチでヤバイ。死ぬ気しないし戦闘になっても勝つ気しかしない。実家のような安心感ってヤツか。いや、シャーレのような安心感……になるかな?

 

「それにしても────学生広場(こんなところ)、先生がたったの1人で来ていいエリアではない気がするのだけど。死にたいワケではないでしょ?」

 

「それはそう。まだまだやる事があるからね!」

 

「やる事が終わったら死んでいいみたいな言い方はやめて。先生のそういう所、嫌い」

 

「……っと。ごめんごめん」

 

「先生は少し後先考えなさ過ぎる。普通に考えれば分かると思うけれど、先生は、ゲヘナ学園の中でもこんな中枢に入り込むべきじゃない。風紀委員会の本部だとか、そちらにしか入らないようにするべきだというのに……」

 

「ごめん……でも仕事は足で稼ぐものだからさ」

 

「それは新聞や雑誌の記者が言うべき言葉よ」

 

「あはは……」

 

「先生の今日の仕事だってそう。本当なら、先生が動くべき案件じゃないのに。そんなの、情報部や、それこそ私達、風紀委員会を頼ってくれれば……」

 

「……風紀委員は、ゲヘナ学園の組織でも飛び抜けて忙しいからね。情報部にも、元情報部のヒナ以外のツテは無いし、どちらにせよだと思うよ」

 

「全く……」

 

 今日はなんと、ヒナとデートする為にゲヘナまで来ましたー!……って言えたら良かったんだけど。

 そう、今日はなんと「シャーレの先生」としての出張でゲヘナ学園に来ている。というのも、ゲヘナ学園から送られてくる予定の今年の生徒のデータがちょっぴり不足しているからだ。

 生徒の在籍数と、データ量が全くの不釣り合い。足りていないから、その分を照会し、不足分を今日シャーレに持って帰り、整理する。それが、今日の私の仕事だ。データを受け取る用のUSBも幾つか持ってきている。

 あまりに治安が悪すぎて学校機関としての役割を果たせていないから、シャーレに送られるデータも自然と不足するのだろうか……?

 

「ヒナは風紀委員の仕事、大丈夫?」

 

「問題ない。私が処理すべき案件は終わらせたし、残りはイオリ達に預けてきた」

 

「でしょうね……」

 

 ヒナに「暇なとき」なんて無いと言ってもいい。だからこうして私の相手をしてくれてるという事は刻一刻と仕事が積み重なっていっている事の現れ。決して大袈裟な表現ではなく実際にそれが有り得るから、ヒナはワーカーホリックになるんだよね。

 

「どうして視察場所に学生広場を選んだの?」

 

「ここって、生徒が多く集まるでしょ。見た事ない生徒が居たら声を掛けてみようかなと思って。私が見た事ないって事は、今回のデータに無いって事のはず……だからさ。自信はないけどね」

 

「へぇ、本当に地道────って、待って。先生、まさか『見た事ある生徒』と『見た事ない生徒』の見分けがつくの?」

 

「……?まあ、ある程度はだけどね。ボンヤリとは、まぁまぁまぁ……いや待って自信無くなってきた」

 

「!?」

 

「先生だもの。ちゃんとデータが送られてきている生徒の事なら、必要最低限の情報は把握してるよ。ある程度はね。だからここみたいに、多くの生徒が集まる場所に来る方がいいと思ってさ。見た事ない生徒が居たら、何となくでも分かると思ったから」

 

「……だからデータが足りないって気付けるのね」

 

「うん。数十人単位で足りてないからさ」

 

「!てっきり数百人単位かと思ってた。データ化はある程度は真面目にされてるのね」

 

「私をゲヘナ学園の派閥に組み込もうと思っている勢力も居そうだしね。どこの誰とは言わないけど。だからデータは把握してる限り送ってきてくれてるみたい。それでも足りていないのは、もはや治安の問題と割り切るしかないのかもね」

 

万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)のタヌキか……?)

 

 しかしどうも、思ったようにはいかないようだ。どの生徒も、データベース内で、見た覚えがある。数十人ものデータが足りていないなら、そろそろ、1人くらいは見た事のない生徒が居ても……。

 

「……おっ?」

 

「どうしたの?」

 

「あの……向かいのベンチに座ってる子……なんか、凄いヘイローしてるなって……」

 

 広めの道を挟み、私とヒナの向かい側のベンチに座る、ギャル風の、ピンク髪の女の子。ヒナよりもガッシリした、強そうな翼を背中に備えている。

 一応、制服らしいモノは着用しているが、胸元は大きく広げて谷間を露出、足を組んで頬杖をつき、ギャーギャー激しく争う生徒達のことをベンチからニコニコと眺めているようだ。

 綺麗な紅色の瞳に、ヒナのような黒い縦長瞳孔。

 三重ものピンクのハートに、空色の翼と黄金(こがね)色の尻尾が生えたような────ヒナのやたら立体的でゴツいヘイローとも全く違う、平面ではあるもののパッと見で妙だと分かるくらい特異で、カラフルなヘイロー……。

 ツルギと似たタイプのショットガンを、ツルギと同じく二丁所持しているようで、それを背でクロスさせるように背負っている。ピンクと黒の、2色の銃だが、二丁とも同じ配色ではなくて、色の配分がそれぞれ7:3くらいで逆に見える。

 ていうか、あんな子、さっきまで居たか?まるで少し目を離した隙にその場にパッと現れたような、そんな違和感がある。

 その少女の存在をヒナに教えるとヒナもちらりと一瞥し、軽く解説してくれた。

 

「ッ!……あぁ……ゲヘナ学園でもそれなりに有名な留年生ね」

 

「留年生なの?」

 

「ええそう、少なくとも私がゲヘナ学園に入学した時には既に3年生だったはず」

 

「え」

 

 ヒナは3年生だろう。そのヒナが入学した時には既に3年生だったなら────凄い留年してるな。何故そんなに留年しているんだろう。というか普通それだけ何度も留年する事になるくらいなら普通は退学するか、強制退校になるはずだ。

 ────いや、そんなご尤もらしい常識なんかは通じないのか。なんたってキヴォトスだし、ここはゲヘナ学園だし……。

 

「──先生でも知らないって事は、まさに彼女が、その『データが無い子』なんじゃない?マコトならわざと彼女のデータを送っていないか、手を回して破棄させてそうだけど」

 

「なんで?」

 

「マコト、彼女のことを不気味に思ってるのよ」

 

「不気味に……?」

 

「ええ。彼女は、盛宮(もりみや)モルモ。通称『ゲヘナ学園の魔女』────どこからともなく彼女の噂は流れ、誰からも不気味に思われているの」

 

「……魔女……」

 

「『ゲヘナ学園の魔術師』とも言われてたはずよ。大差無いけど」

 

 今の私にとってこれは、あまり聞きたくない単語だったな。いや、ヒナに言ってもしょうがないのは分かるから、言ったりしないけどさ。言っても無駄だからじゃなく、ヒナに関係ない事柄だから尚更、言い難いな……。

 

「彼女に関する噂は絶えないわ。『犬肉が好き』、あと『空を飛んでる所を見た』とか、『神出鬼没』だとか、まぁ、大方は根も葉もない噂なのだけど」

 

「飛べるの?」

 

「だから噂だってば。そもそも、私達みたいに翼が生えてたとしても、飛べる子なんか見た事もないし聞いた事もない。それは彼女だって例外じゃない」

 

「……だよね」

 

 ミカやナギサ、アズサとかも、飛べはしないって前に言ってたな。ハスミの大きな翼でも飛べないし彼女──モルモのあの翼でも、飛行となると流石に無理なんだろう。

 

「因みにだけど、在校生の誰も、彼女の声を聞いたことが無いとされているわ」

 

「えっ?」

 

「──マコト、過去に彼女のことを万魔殿の仲間に引き入れようとしたらしいんだけど、勧誘しても、ただニヤつくばっかりで返事も何もしなくて。ふと目を離した瞬間に目の前から消えてた────と、私が風紀委員長に就任した後に、語ってくれたわ」

 

「………………??」

 

「他にも、生徒に絡まれてもいつの間にか消えてるなんて話もよく聞くわ。お陰で『幽霊説』まであるくらいだし。────何だったっけ。5年前の生徒同士の抗争で死んだ生徒の幽霊じゃないかって噂。多分、大抵の生徒は聞いた事くらいはあるはずよ」

 

「ヒェッ……。ていうか、なんで……消えるの……」

 

「さぁ、私も詳しくは知らないわ。私も、彼女とは何も話せなかったしね」

 

「話そうとした事はあるんだ?」

 

「ええ。実は彼女の名前は、5年前の風紀委員会の記録に偶に登場するの。罰せられる側じゃなくて、風紀委員会側の者として、なんだけれど」

 

「風紀委員会に所属してたんじゃないの?」

 

「いや、所属してた記録は無い。あくまでも『風紀委員会()』でしかないの」

 

「???」

 

「詳細は分からないのだけど、風紀委員会には所属せず、手だけ貸してくれてた、みたいな感じ。でもそれも、今から5年前だけの話。4年前頃になると風紀委員会の記録上からもその名を消しているの」

 

「……ふぅん……」

 

 繰り返す留年、奇妙な噂、過去の風紀委員会との繋がり、足りない生徒のデータ────なんだか、少しばかり匂うな。

 そんな事を思いながら、生徒達の争いをニコニコ眺める彼女を見ていると、ヒナのスマホが鳴った。

 

「……ごめん、アコから。ちょっと電話してくる」

 

「いってらっしゃい」

 

 少し離れて電話に出るヒナを見送り、再び彼女に視線を戻すと────既にそこには、モルモの姿は無かった。まさに神出鬼没。つい数秒前まで確かに目の前のベンチに座っていたはずなのに。

 少なくとも、私の視界の中には居ない。ピンクのロングヘアーも、三色のカラフルな謎のヘイローも全く見当たらな────。

 

「お兄さん、さっきから私のこと見てたでしょ」

 

「……ッ!?」

 

 トン、と背後から肩を揉むように両肩に置かれる女の子の手。初めて聞く声だ。私が見ていたのは、そう、モルモ。つまりこの手は────。

 

「……モルモ?」

 

「おっ、せーかい。私のこと知ってる?」

 

「いや。ヒナから少し概要を聞いただけ」

 

「ヒナ?あーっ、空崎ヒナね?あのちっちゃい子、よく頑張ってるよねぇ。あんなに気ィ張っててさ、心まで疲れちゃいそう。私には無理だわ」

 

「……ヒナは立派な子だからね。私も見習うべき点が多々あるような気がするよ」

 

「……かもね」

 

 ふわりと離れるモルモの手。また見失うものかと彼女の手が視界から消え去る前に振り向くと、私の目の前には、ワイシャツの中で窮屈そうにしてる、丸くたわわに実った乳房が2つ、その谷間を大胆に晒していた。

 

「────っ!?」

 

 思わずベンチから転げ落ちてしまった。当然だ、振り向いたら目の前に谷間があるだなんてそんなのビビらない方がおかしい。覚悟してたワケじゃないならば尚更、目の前に谷間が現れたらビビる。

 

「うわ、痛そ……大丈夫?」

 

「だ……大丈夫……」

 

「んじゃ、改めて自己紹介しとく?」

 

「あ……お願いできるかな。私は────」

 

「『シャーレの先生』、でしょう?知ってるよん。私は盛宮モルモ。モルちゃん、モルモーちゃんって気軽に呼んでね♡」

【挿絵表示】

 

 

「……モルモ。今日は、君のデータを貰いに来た」

 

「わお、真っ昼間の野外でダイタン発言!いーよ、何でも答えてあげる〜。あ、スリーサイズなんかも聞いちゃう?♡」

 

「プロフィール的な事だけでいいよ。誕生日とか、あと、所属とか趣味とか?」

 

「所属ゥ?ゲヘナ学園、部活とか委員会なら無所属だから、帰宅部扱いかな。あ、一応3年ね。年齢(トシ)は20歳でーす」

 

20歳(ハタチ)!?」

 

「そーだよ?多分『生徒』の中だと、キヴォトスで一番先生と年齢が近いんじゃないかな?」

 

「は〜……そうは見えないけど……」

 

「誕生日は4月2日でー、身長は〜、確か、155cmくらい?だったような気がする!おっぱいは、温泉開発部のメグちゃんって子くらいかな♡」

 

「そっちはいいです……」

 

「え〜っ?真っ先におっぱい見たから、おっぱいが好きなのかな〜って思ってたのに♡」

 

「高さのせいね!?高さ的にそっちに真っ先に目が行くの!私、座ってたから!!」

 

「あははっ、慌てちゃってカワイー♡」

 

 なんだ、普通に喋るじゃないか。ヒナもマコトも一体どうしてあんな事を────。

 ヒナが嘘をつくとは思えないが、こんな普通に、いや普通以上に喋っている様子を見ていると……。

 

「てかさー、先生って前にテレビに出てたじゃん?なんだっけ?アビドス廃校対策委員会の顧問ってのやってるらしいじゃん?」

 

「あー」

 

 確かに少し前にテレビに出たっけ。対策委員会やアビドスの宣伝も兼ねて、特集を組んでもらって。因みにこれは、黒服の提案を少しだけアレンジして企画を組んだんだったな。

 

「アビドス、廃校になってなかったの!?マジ!?みたいにさー、ガチビビりしちゃったよ。とっくに潰れたもんだと思ってたからさー」

 

「……あの子達も頑張ってるんだ、そういう言い方はあまりしてほしくないかな」

 

「あ、ごめん。けど、アビドスって私の故郷だし?だから地元イジリってことで許してちょーだい♡」

 

「え」

 

「あれ、ヒナちゃんから聞いてない?私、アビドス自治区に生家があるんだよー?だからアビドス出身なんだよね。高校も、本当ならアビドスに通う予定だった。────まっ、家はとっくの昔に砂の下にイッちゃったけどね☆」

 

「……どうして、ゲヘナに通っているの?」

 

「生徒が多いからだよ。言おうとしてたんだけど、私の趣味、人間観察と戦闘でさ?他にもあるけど、戦闘も観察もさ、母数が多い方が楽しめるじゃん?だから、マンモス校で有名だったゲヘナに来たの。私が来た頃は、抗争の真っ只中だったんだけどね」

 

 抗争────さっき、ヒナが言っていたアレか。生徒間で抗争があるなんて、少し前のゲヘナ学園、怖すぎだ。今より荒れてるとかそれもう学校として機能してないどころの話じゃないだろう。今でさえ美食研究会や温泉開発部などなどがあちこちを破壊しているというのに……。

 

「ていうか私、悪魔は悪魔でも、吸血鬼だしねぇ。生まれからしてゲヘナ向きだったんだよ、きっと」

 

「────吸血鬼?」

 

「そーそー。流石に知ってるでしょ?」

 

「弱点が沢山あるっていう……?」

 

「大半は迷信だかんね?」

 

「日光で蒸発して死ぬっていう……?」

 

「私、日光を克服した吸血鬼(デイウォーカー)なんで死にませーん。ていうか今ガッツリ日光浴びてるっての」

 

「あ」

 

「ま、デイウォーカーなんて知ってる人少ないからゲヘナ生の誰も信じてくれなかったんだけどねー。文献も全く無いし、1年の自己紹介の後からずっと嘘つき呼ばわりで、割とすぐにぼっち化よ。ほんとクズ共だわ」

 

「……苦労したね」

 

「苦労のうちに入んないわよ、こんなもん」

 

 嘘つき呼ばわりからのぼっち化は、キツイなぁ。吸血鬼って、誇り高いとか聞いた事がある。だからモルモも、ただの悪魔ではなく吸血鬼だと自己紹介したんだろうな。

 でも、「吸血鬼=日光に弱い」というイメージが強く、オマケに、デイウォーカーという存在自体が希少なせいで資料も少なく、信じてもらえる材料も無いというのは、なんというか、やるせないな。

 少なくとも私には、彼女が嘘をついてるようには見えない。めちゃくちゃ可愛い事を抜きにしても、信じてあげたいと思いたくなる。先生としてね。

 

「──ところで、さっきヒナは『在校生でモルモの声を聞いた事がある子は居ない』って言ってたよ。それは本当なの?」

 

「うん、本当だよ。だって、どいつもこいつも話す価値なんて無さそうなんだもん。つか興味無いし。話していて面白い人とか、面白そうな人と話したいでしょ?それだけの事だよ。『必要な事』だったらそうでもない人とも喋るけどね」

 

「だからって返事もしないのはどうかと……」

 

「時間も体力も勿体なーい。何も言わずにニコニコしてるだけで勝手に不気味がってくれるから、もう私としては楽で仕方ないんだよね、人払いがさ」

 

「…………早く消えるのは、どうやってるの?」

 

「ん〜……ま・ほ・う♡」

 

「いや、魔法じゃなくて……。素早さがとんでもなく高いってこと?」

 

「え〜?その解釈も、私に都合がいいから構わないけどさ。でもねー、キヴォトスって広いし?魔法もあるかもしんないよ〜?」

 

「え?」

 

「世の中には隕石を落とすような女も居るんだよ?あからさまに宇宙に干渉してるじゃん。そんなら、魔法くらい、あってもいいかもしれないよね☆」

 

 隕石────ミカか。何故、ゲヘナ生のこの子がそんな事まで知っている?総力戦の時などに近くに居たのか?そうでもなければ知る機会なんか無いと思うのだが……。

 魔法でも超スピードでも何でもいい、とりあえずこの辺を追求してみるのも────。

 

「お待たせ、先生」

 

「っ!ヒナ!」

 

「……?どうしたの?」

 

「モルモと話してて、色々彼女の事が分かったよ」

 

「え?」

 

「ね、モルモ!」

 

 今の今まで話していたモルモの方を振り向くと、既にそこに、彼女の姿は無かった。

 ヒナによると、彼女が私の方に向き直った時にはとっくに私1人だったらしく──幽霊とでも話したような、狐につままれたような気分になった。

 

 ◆

 

 その後、モルモ以外に「データに無い生徒」など見掛けることが無く、データ管理の是非について、提出元であるゲヘナ学園の校長に直談判する事に。

 ヒナの言う通り、本来これは私の仕事ではない。データを集める、ゲヘナ学園側の仕事なのだから、こうして無為に時間を消費するのは、無駄であると言わざるを得ない。

 因みに、この治安世紀末なゲヘナ学園にも校長はフツーに居るんだよね。ムツキに見せてもらった、アルちゃんの学生証に「校長」の文字があったし。居るなら仕事しろと一喝してもいいかもしれない。万魔殿から妙な圧力があったのなら、それはそれで問題だし、どちらにせよ確認は必要なんだよね。

 

「はぁ、データに無い生徒、ですか──いやしかし我々としてもですね、在籍している生徒の数自体は把握しておりますし、それを纏め連邦生徒会に提出しておりますので……データに無いというのは何とも理解に苦しみますねェ……」

 

「しかし校長先生。何度こちらで確認しても、数が合っていません。在籍している生徒数は多いのに、我々に送られてきているデータには数十人単位もの抜けがあった。数が不足しているんです。1、2人ならばまだしも、数十人単位にもなると、誤差では済まされないと思うのですが、どうお思いですか」

 

「うぅむ、確かに。先生の仰る通りですな。しかし生徒のデータ取り纏めにつきましては、教頭に一任しております故──教頭!教頭は居ますかな?」

 

 ずんぐりむっくりした校長ロボはウィンウィンと駆動音を奏でて職員室へ。やがて、教頭らしき頭がラグビーボールみたいな形のいつものロボを伴って戻ってきたので、掻い摘んで事情を説明する事に。

 

「────こんなにもデータに抜けがあるなんて、仕事が、管理が杜撰なのかと疑わざるを得ません。どうしてこんなにも数字に大きな差異があるのか、お忙しい中恐縮ですが、ご説明、願えますか?」

 

「──それについては、我が校で起きた事件から、お話する必要があります」

 

「事件……?」

 

「先生がキヴォトスにやってくる5、6年ほど前の事だったかと思います。ゲヘナ学園内では、苛烈な派閥争いが起きていまして。しかし、ある時から、それがパタリと止んだのです」

 

 派閥争い──ヒナとモルモが言っていた「抗争」だろうか。時系列的にも、5年前なので、殆ど一致していると見て良さそうだ。

 

「終結が、今から凡そ4年前の事でしたかね……」

 

「そうですね、校長の仰る通りです……。年単位での争いが、ある日を境に、パタリと終わりを告げた。まるで、スイッチをオフにしたかのように、です。先生──この理由、お分かりになりますか?」

 

「……争っていた者達が和解した、とか?」

 

「ふふっ。先生は大変、おおらかでいらっしゃる。今のゲヘナ学園より荒れていた頃です。血みどろの争いをしていた者が和解するなど、仮にこの天地がひっくり返っても起こり得ませんよ」

 

「……」

 

「この問題の答えは、実にシンプル。片方の派閥を担う生徒達が一気に消え失せたから────です」

 

「!?」

 

「退学や停学ではありません。我々教員すら預かり知らぬ所で、姿を消した。──そうですね、端的に言うなら『行方不明になったから』なのです。敵が消えれば、争いなど起こりませんでしょう?」

 

「……ええ、言わんとする事は分かりますが」

 

「連邦生徒会、先生にお送りしたデータの差異は、そのまま『行方不明者の数』を示しております」

 

「!!」

 

「恐らくはもう────と半ば諦めてはいますが、それでも彼女達が今もどこかで元気に生きている。そう、信じたいのです。ですので──勝手ながら、データ上は『今も在籍している』として、我が校の生徒数に、行方不明者もカウントしているのです。ですから表向きには、停学扱いとしております」

 

「…………ッッ」

 

「そんなですので生徒達の『今年のデータ』が不足してしまい、差異が出てしまったのです。データを更新しようにも、その生徒達がもう、ゲヘナ学園に居ませんから……」

 

「そう……でしたか……」

 

 ──そうか。データが更新されないデータ不足の生徒は、更新されないんじゃなく、更新できない。データを「提供できない」から、不足してるのか。

 治安が半端なく悪いゲヘナ学園だからと思って、酷い事を言ってしまったな……。

 

「しかし妙ですね……」

 

「え?」

 

「いえ、先生がキヴォトスに来られる前からも同じような処置を執っておりましたが、連邦生徒会からコレについてツッコまれた事が無くてですね……」

 

「……連邦生徒会も忙しいんじゃないですかね……」

 

「ですかねぇ……」

 

 連邦生徒会長は、ゲヘナ学園側のこういう事情も分かってたのかもな。隠蔽するみたいなやり方は、ちょっとどうかと思うけれど。それでも行方不明の生徒達が生きてると信じたいからこその処置だし。

 連邦生徒会側がツッコんで来なかったから今年はシャーレにも同じように対応したよ、ってワケね。そうしたら私がこの仕事に手をつけてしまったからコトが露見したと。成程ね。

 

「……申し訳ありません。学園の事情も鑑みず……」

 

「いえ。元はと言えば行方不明者の届出を出さず、隠蔽していた我々に非がありますから」

 

 まぁそれを言ったらそうね。学校は隠蔽体質とはよく聞くが、キヴォトスでもそうなのか。うーん。燃やしてやるぞ……。

 

「────今後は、連邦生徒会は通さずともせめて我々『シャーレ』は通して頂きたい。どうですか」

 

「わかりました。そのように致しましょう。宜しいですね、校長」

 

「ええ。今後は、先生の仰るように致しましょう」

 

「ありがとうございます」

 

 数十人分ものデータ不足の件については、これで一件落着か。という事は、改めてデータ整理をする必要も無いから、私の仕事も減った、のかな。なら少しくらいヒナとデートする時間も……?

 ────いや、待て。

 

「お2人にお聞きしたいのですが、『盛宮モルモ』という生徒をご存知ですか?」

 

「あぁ……『ゲヘナ学園の魔女』……」

 

「こら、教頭。噂に流されるのはおやめなさい」

 

「し、失礼しました。では先生、校長、私はこれで仕事に戻らせて頂きます。先生、どうかごゆっくりお過ごしください。それでは失礼致します」

 

「あ、はい……お疲れ様です」

 

 教頭は顔色(?)を変えて仕事に戻ってしまう。よく分からないが、ヒナの言う「噂」は教員すらも把握しているようなものらしい。

 

「それで先生、モルモさんがどうかしましたか?」

 

「先程の話に戻るかもしれませんが、実は、頂いたデータに彼女についてのものが無かったのですが。彼女は行方不明ではありませんよね?」

 

「ム……それはこちらの不手際です。申し訳ない」

 

「本当に?」

 

「!」

 

「ピンポイントでモルモさんのデータだけが無い。これは何かを隠していると疑われてもおかしくないハズですよ」

 

「…………」

 

「連邦生徒会にもヴァルキューレにも、どこにも、何も言わないとお約束します。話して頂けますか?校長?」

 

「本当ですか?本当に、どこにも、言いませんか?誰にも言いませんか?」

 

「ええ。私は、シャーレの先生ですので」

 

 長い沈黙。重苦しそうな顔を表示して、校長は、遠い目をしつつ、ボソリボソリとゆっくり、そして静かに語り出す。

 

「────先程の話に戻りますが……」

 

「!」

 

「確証も証拠も無いのですが、あの『派閥争い』を終結させたのが彼女であると、教員の間でのみ噂になっていた時期がありまして……」

 

「え」

 

たった1人で敵対(・・・・・・・・)する勢力を(・・・・・)皆殺し(・・・)にした(・・・)一部の教員は本気でそれを信じ学園を去りました。今ここに残っている教員は、噂を信じぬ者か、私や教頭のように、話半分で聞いている者だけです」

 

「そんな……」

 

「だからモルモさんに関してのみ、あまり、存在を公にしたくはないから、と。そういう理由で敢えてデータをお送りしていなかったのです」

 

 さっき「データに無いのは理解に苦しむ」なんて言ってたけど、教頭に説明を任せただけでアンタも事情知ってるじゃないか……ってツッコンでいい?

 シレッと私相手にも誤魔化してたよな。それは、まぁ、今はどうでもいいか……。

 

「彼女がずっと留年しているのも……そのせい?」

 

「い、いえとんでもない!それは違います絶対に!これは、モルモさんからの『お願い』でしてっ!!本当なんです!そんな噂を理由に留年になど決してしません!!」

 

「では、その『お願い』とは?」

 

「『失った青春を取り戻したい。だから、3年生は少なくとも3回はやりたい』────と、4年前、彼女自ら、校長である私に、申し出てきたのです」

 

「4年前……」

 

 モルモが風紀委員会の活動に参加しなくなった頃だろうか。年数だけで聞けば、それに該当するか。それにしても……「失った青春」とは────?

 

「モルモさんの提案としては『留年させるのにも、理由が必要だろうから』とか、『出席日数の不足を理由に私を留年させろ』と──そういう話でした。彼女としては『ゲヘナ学園に籍を置いたまま、学生生活を謳歌したい』──そんな想いなのでしょう」

 

「実際、彼女の留年の理由は何ですか?」

 

「彼女の提案通り『出席日数不足』そのままです。ですが彼女は、普段は教室に来ないのに、テストのときには必ず、教室に顔を出してくれるんですよ」

 

「えっ?」

 

「『馬鹿だから留年してると思われたくない』、と言っていました。実際、彼女の成績としては上から数えた方が早いです。どの教科においても、彼女はトップ10の常連ですよ。戦闘に関しては風紀委員と肩を並べます」

 

「凄いですね。ですが、『失った青春』を取り戻すなら、出席しないというのは矛盾してるのでは?」

 

「そこは、私にも分かりかねます。ただ、彼女は、人が多い所を好むようで。『授業を受けたいのに、出席日数を不足させる為にわざと来てない』という事実は無いようです。好きで教室に来ていないのは彼女から聞いた事がありますから」

 

「……ふむ」

 

 人が多い場所を好む、か。それなら、学生広場で後輩達を観察しているのも分かる気がする。なら、本当は教室で授業を受けたいのに来ていないという私の予想はハナからズレていたワケか。

 まぁそれならそれで良かった。あの子が、自分の思うように過ごせているのなら、それに越した事はないだろう。

 

「──何にせよ、教員である我々としては、生徒が楽しく過ごせていればそれが一番と思っています。ましてモルモさんは、どこかの部活と違って、特に表立って問題行動を起こしたりしていませんから」

 

 温泉開発部、美食研究会か……。

 

「問題を起こさないだけでも有難いんですよ。出席日数なんか不足していなくたって、特例措置として籍を置いてもらう事も打診しましたが『学生として特別扱いはしないで。留年したいから、不良生徒になるだけだ』と一喝されてしまい……」

 

「ありゃ……」

 

「なので、彼女の提案通りにしているのです。唯一問題行動があるとすれば、生徒の争いを止めずに、楽しそうに観察している事くらいですよ。ですが、余計な諍いを生むくらいなら首を突っ込まないのが正解ですし──これすら問題行動とは言えません」

 

 成程。校長をはじめ、教員は生徒の為にあれこれ苦心して、より良くしようと頑張ってはいるんだ。まぁそれでこんなに荒れてちゃ世話ないけど……。

 結構楽しそうに過ごしてるんだな。まぁそれならそれでいいかもしれないけど……どうなんだろう。

 私はこれ以上、介入するべきじゃないのかもね。

 

 ◆

 

 数日後。

 私は再びゲヘナ学園に訪れていた。今回も仕事。しかし今回は、仕事は仕事でも「生徒を知る事」。アロナに防御を任せながら、この前のように、学生広場で生徒達を観察していると────。

 

「あっれぇ?先生じゃん、また来てどーしたの?」

 

「やぁ。背後から現れるのはやめてくれるかな?」

 

「やめませーん。んで?どったの、先生?」

 

「モルモに会いに来たよ」

 

「なになに、真っ昼間から求愛行動〜?うわぁ〜、イケナイ大人だぁ♡」

 

「そうじゃなくて。カウンセリングじゃないけど、モルモの話を色々……聞かせてくれないかな?」

 

「──ふぅん。じゃ、ついてきなよ。私の部屋で、話、聞かせてあげる」

 

「え。個室は嫌だよ?」

 

「エロい妄想してそ〜。安心しなよ、校舎だから」

 

「?」

 

 そう言って彼女に案内されて向かった先は、私がたまに「スケジュール」で訪れる「ゲヘナ廃校舎」だった。ここも割と生徒が多くて、うるさい所だ。

 しかしモルモの姿が見えると、生徒達は静まり、大名行列を遠くで見る町人のように黙ってしまう。

 奥の教室に行くと、ガラガラピシャンと扉を閉め鍵を掛ける。既に嫌な予感がする。あの夜、ミカと部屋に2人きりになった光景がフラッシュバックしピンク色の妄想が頭の中を駆け巡る────。

 

「くら〜い部屋、年頃の男女が2人きり──ふふ、何が起きてもおかしくないね。何か起きても、誰も助けには来ないけどね?」

 

「……」

 

「……んもぅ、襲ってこないかぁ。おっぱい見せたらケダモノになるかな?」

 

「話が終わったら相手するよ。だから、まずは話をしようか」

 

「……へっ?せ、先生って生徒を抱いちゃう人!?」

 

「もう何人も抱いた」

 

「み……見くびってたわ……あは、あはは……」

 

 それから、ちょっとワイシャツのボタンを閉めたモルモと話をした。過去に起きた派閥争いの事や、当時のゲヘナ学園について聞いたり。

 モルモの口からは、ヒナからも、カヨコからすら聞けなかった情報を聞く事ができた。昔は今よりも荒れていた、これは紛れもない事実らしい。

 

「ゲヘナ学園って、割と昔から荒れてたからさー。マコトってヤツが曲がりなりにもまとめてるから、今はまだ何とかなってるけど。あと、ヒナちゃんの頑張りが大きいかもね〜」

 

 ──それでも何とかなってなくない??

 

「派閥争いって、別にお嬢様学校トリニティだけの問題じゃなくてさ。ゲヘナ学園にも、当然のようにあったワケ。そんでさ、それに巻き込まれて、私の友達……死んじゃったんだよねぇ……」

 

「!!」

 

「蛇尻尾のラミィに夢魔のプーサン。生きてたら、私も卒業して、フツーに過ごしてたんだろうなぁ」

 

「──私と違って、君達がそう簡単に死なない事は分かってるつもり。一体その派閥争いっていうのはどれだけ激しいモノだったの……?」

 

「今こうして起きてるドンパチより激しかったのは覚えてる。私も、つい5年前の事なのに、ハッキリ覚えてないや。てか友達死んでショックだったし、軽く2年くらい記憶吹っ飛んでるかもなー」

 

「……」

 

「ね。先生はさ、派閥争いって、どうして起きると思う?」

 

「……難しい問題だね」

 

「いやいや、メチャ簡単だよ?すんごいシンプルに考えてみ?あっ、でも『人が2人以上居るから』は無しだよ?これに似てるかもしんないけど」

 

 派閥争いが起きる理由って、簡単なのだろうか?モルモの考えている事があまり分からない。しかしそうだな、もしこの問題をシンプルに考えてみるとするなら────何故争いが起きるか、か。

 人が2人以上居るから、に近い理由なら、まぁ、1つは思い付くかな。

 

「『派閥が2つ以上あるから』とかかな?」

 

「せーかい。なんだ、せんせ、フツーに分かってんじゃん。つまんないのー。ドヤ顔解説させてよ〜」

 

「あはは……」

 

「──まぁ、そんな感じでさ。2つ以上あるから、争いが起きるワケよ。だから私、友達を殺した方の派閥、皆殺しにしちゃった。お陰であの時、ほんの数週間はこのゲヘナ学園も平和になったんだよね。まぁすぐ今みたいになったんだけど」

 

「……え」

 

 棒付き飴を取り出して咥えると、舌でコロコロと回して遠い目をする。校長が語った「噂」、まさかこれは紛れもなく本当の事……だったのだろうか。

 

「どーする、せんせ?私のコト矯正局にでも送る?まだ丸4年も経ってないしィ、時効じゃないよ?」

 

「……じょ、冗談キツイなぁ……あはは……」

 

「冗談で人殺ししたとか言うなんてイタイっつの。私がそんなにイタイヤツに見えるって言いたいん?せっかく先生になら罪を告白してもいーかなーって思ったのに」

 

「いや、だって君達、殺そうにも普通には殺せないじゃない。特別な爆弾か、過剰なまでの攻撃で漸く殺せるって話だったはず」

 

「え、そんな爆弾ある?知らなかったわ。つーか、そんなんあんなら使いたかったわ〜。──実は私のこの銃さぁ、どっちも、三代目なんだよね」

 

「そうなの?」

 

「そーそー。初代と2代目はさ、私の銃のメンテが追い付かなくって、壊れたんだ。でもさでもさぁ、しゃーないじゃん?アジトが分かったってなったら攻め込むじゃん、フツー。こっちから仕掛けてさ、ガチで撃ちまくってたら、フツーに被弾しなくても壊れたよね。あの瞬間はねー、マジでビビったね。危うくリンチされかけたけど、どうにか逃げたし」

 

「…………」

 

「んで、次こそはと思って2回目の襲撃で皆殺しにしてやった。暗殺してやろーと思ったけど、やっぱロボと違ってそう簡単には殺せないからさ。銃声でワラワラ集まってきちゃうから暗殺になんなくて。暗殺者の才能、無いんだなぁ私、って思ったよね。興奮のあまりサイレンサー忘れたのマジ運の尽き」

 

「……無くていいよ、そんな才能……」

 

「その後のメンテ中に欠陥が見付かっちゃったからオシャカにしたんだよ。で、この『ヴリちゃん』、

『ドロちゃん』が三代目ってワケ。もしもこの子ら壊れたら流石に泣くわ〜。一番長く使ってるから、愛着もあるしね。メンテは毎日の日課よ、日課」

 

「ヴリちゃん?ドロちゃん?……??」

 

「ネーミングセンス皆無だなーって思ったっしょ。それ正解ね。後で、古代語の辞典でも引いてみ〜?ガチで単語そのまんまだから。こっちのピンクのがヴリコラカス、黒いのがドロフォノスね」

 

「……後で調べてみるよ」

 

「うんうん。勉強する先生もカッコよさそうだ〜」

 

「……。さっきの話が本当だとして。モルモは、派閥争いを終結させたいから皆殺しにしたの?」

 

「え、違うけど。派閥争いとかクソどうでもいい。友達が巻き込まれて殺されたから殺し返しただけ。理由なんてそれ以外に要らないよ」

 

「……復讐……ってワケだね」

 

「はいはいそーですよ復讐でーす。自分の名声よか恨みを晴らす方が大事だと思えてさー?戦うのも、嫌いじゃないどころか寧ろ好きだし。5年くらい前だったっけ。風紀委員会に手ェ貸した事あるけど、アレだって合法的に暴れられるからだしね」

 

 そういう事か。戦いが好きなら、ゲヘナの環境は最適だろうに。好きに暴れるんじゃなくて、敢えて合法的に暴れられるように風紀委員会に────。

 

「けど、復讐を終えて、なんか虚しくなってさー。復讐の為だけに前より力を磨いて、強くなってさ。それはいーんだけど、復讐を終えた瞬間、私の学生生活が消えて無くなったんだよ。砂に飲み込まれたアビドス自治区みたいに、虚しさに埋もれてさ〜。こういうさ、ガチで虚しいのなんて言うんだっけ?古代語で『Vanitas vanitatum, et omnia vanitas.』だったかな?」

 

 ここでもそれを聞くか。まぁアズサやハナコから聞くにアリウスの用語でも無いらしいし、そうか。古代語を知っているのならヴァニタスを知っててもおかしくは無い……のかな?

 

「……だから、何回も『3年生』をやってるの?」

 

「そーゆーこと。察しイイじゃん、先生。お喋りの手間が省けて助かるわ。本来は『未来』に羽ばたくこの『3年生』って立場で──本来なら失われてるはずの『過去』に、『現在』もしがみついてるの。よく考えたら、ダッセー話だよねぇ」

 

「…………」

 

「私ら3人組、派閥争いなんか興味無かったんだ。たまたま通り掛かったところでドンパチ始まって、逃げ出そうとしたら、敵だと思われて────って流れだったんだよね。つーか、ダチに背中押されて逃げたのなんて後にも先にもあの時だけだっつの。マジで笑えね……」

 

 私は、ハッキリ言うが、復讐肯定派だ。だから、私にはモルモを責められない。

 私の婚約者──ミカがトリニティの生徒に恨まれ批判され、石を投げられる立場にあるのも分かる。正当な批判だな、とすら思う。「それはそれとして(・・・・・・・・)私はミカのことが大好きだから、お前らトリカスは許さないよ」という、ただそれだけの話なんだ。

 

「──モルモ。1つだけ聞かせて」

 

「ん?なにさ?」

 

「復讐を終えて『虚しいと感じた』と言ってたね。じゃあ『後悔』はした?『皆殺し』した事について悔やんだりした?」

 

「ンなワケないじゃん。清々してるよ。達成感すらあったくらいだね。アジトに集まってるとこを襲撃したから、余計な目撃者も居ないし、余計な事では手を汚してない。誰が後悔なんかするか……!!」

 

「……そっか」

 

 生徒達から「先生」と呼ばれる立場にある大人にあるまじき思想だろうね。自分でも、そう思うよ。

 でも────やっぱり無理だな。友達を理不尽に殺されたモルモの気持ちを想えば、私なら、復讐を応援したくなるまである。

 既に完遂しているなら「おめでとう」「お疲れ」などと労いたくなるくらいだ。

 

「なに?先生、まさか私のこと矯正局に送るつもりしてる?別に構わないよ、反省なんかしないしさ」

 

「──ううん。ヴァルキューレにも矯正局にも他の誰にも言わない。今の話は私とモルモの秘密だよ」

 

「へ?」

 

「私、復讐肯定派なんだよ。私だって、大事な人が理不尽に殺されたなら、きっと殺人に手を染める。分からないけど────そんな気がするんだよね」

 

 恐らく「きっと」じゃなく「絶対」だろうな、と苦笑いする。もしもミカが、シロコが、ホシノが、セイアが、ユウカが、ノアが────とか考えたらそれだけで吐き気がする。

 そりゃ、犯人が分かってたらどんな手を使っても自分の手で「復讐」したくなるだろ。

 

「……先生って、真面目キャラなのか不真面目キャラなのか分かんないね……」

 

「私の言った事は、クラスの皆には内緒だよ?」

 

「ハハッ。もう、私には友達なんか居ないっての」

 

「なら、風紀委員会に入ればいいよ」

 

「……は?」

 

「今のゲヘナ学園でも、合法的に暴れればいいよ。そうすれば、余計なことを考える暇も無くなるよ?苦労を共有する友達とかも、できると思うしさ」

 

「……考えとこっかな。ま、私ってオールラウンダーだからさ。どのポジでも使えると思うよ〜?」

 

「そうなの?」

 

「どの技能も鍛えていなきゃ、ぼっちで昔のゲヘナ学園でなんて過ごせなかったから。今よかダンチで危険だったし。どこに地雷あるかもわかんねーし、爆弾も設置されてるかわかんねーし。ガチ危険すぎワロリンだわ」

 

「ひぇっ」

 

「言っとくけどさー、先生が平然とゲヘナ学園内を歩けてんのは、地雷撤去したヤツ、喰らいまくったヤツらが居るからだかんね?そいつらの犠牲の上に今のゲヘナ学園の平和は成り立ってんのよ〜」

 

「……戦争は良くない……って事だね」

 

「それに尽きるわ〜」

 

 その後──色々と吐露してスッキリしたモルモに襲われて、古びた教室の中で「致した」。その際、彼女の「愛用品」を、使わせてもらったりもした。

 そして事後にヒナを廃校舎に呼び、モルモと対面させた上で、風紀委員会に入らせてもらえないかとモルモから話させ、ヒナは2つ返事で快諾。

 こうして、復讐を終えた永遠の留年生・モルモはゲヘナ学園の風紀委員会に加入することになった。




挿絵は相互の方に依頼して描いて頂きました!
喋る青い椅子(@Oekaki_Kosshiii)さん

皆さんは「復讐」はともかく、「既に完了している復讐」については、どう思われますか?

ギリシャ語、ブルアカ世界だとどういう位置付けになるんだろう。普通にギリシャ語とか出てくるしなブルアカ……。ラテン語は古代語扱いだし、また別な古代語みたいな扱いなのかしら。

──と作者は思ってるので、本作でもギリシャ語はそのような位置付けにしています。プレナパテスもキヴォトスもギリシャ語だしな!ガハハ!!←東方Project関連の創作の為だけにギリシャ語を勉強した人間の末路



モルモに関しては、2017年から投稿を続けている、私の別作品のヒロインを、「ブルーアーカイブ風にリメイクして設定を付与した」オリキャラです。
モルモに関しては色々とネタを練っていますので、考察して頂けると、イチ創作者として嬉しいです。
詳細は後日。

アビドス自治区出身という設定も元ネタあります。
ただし、同じピンク髪でもホシノは無関係です。
「流用元でもピンク髪だから」と、「キヴォトスのピンク髪はヤバい奴が多いから」という理由です。
モルモの声は中村豆千代さん(カレ・カノ・カノンという歌を歌ってる方)を想定しています。
是非聴いてみてね。



欲望渦巻く素敵なお題箱はこちら。
https://odaibako.net/u/Akirazemi
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