「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
「ハーレム……?」
「『先生』と『生徒』で……?」
「理解できぬ」
「理解できぬ」
「理解できぬ」
「理解できぬ────だが改めて認知しなければ、理解する必要も無し」
「何言ってんだ、この白いの」
「クックックッ。彼らは、『無名の司祭』ですよ。我々もよく知る彼こと『
「ほほー、じゃあコイツらが黒幕ってワケなんだ?そっか。じゃあ、プレ先の代わりに私がコイツらをブッ飛ばしても────黒服ッ!?」
「どうも先生」
白いヤツらに囲まれて目を覚ました私は、どこか謎の安心感がある黒服が背後に居たと知り、急いで彼の元に。知らない場所、知らないヤツら────これだけで黒服に頼りたくなるのもわかるだろう。
「やぁやぁ。いやぁ、知らないヤツばっかりの中に見知った奴が居ると、それだけで安心感が凄いね」
「ククッ、光栄です」
「私も忘れてもらっては困るぞ」
「全くその通りです。ここに居るのは黒服と司祭達だけではありませんよ」
「そういうこったぁ!!」
「うおぉ、ゲマトリア揃い踏みじゃない。なんか、いいねぇ。こういうのも」
「それと──ついでと言ってはなんですが、彼も、この場に居るようです」
「え?」
黒服の視線の先に────白いヤツらの向こうによく見知った、ドデカイ、角張ったシルエットが。少し前に出会い、そして今生の別れを告げたはずの彼の姿が、そこにはあった。
「……プレナパテス!?」
気付けば私は彼に向かって駆け出していた。白い変なヤツらを掻き分け、突き飛ばしてでも。
私にシロコとプラナ、最後に1回だけ使えそうな全体が焦げ付いた「大人のカード」を託し、本当の意味で死んだはずのプレナパテスが────!!
「おーい!」
「……」
「相変わらず静かだけど本物?本物だよねっ?」
「……本物。私はあなた。あなたは私だ」
「なら試してみようか?イチオシの狼耳の生徒は?せーのっ!」
「「砂狼シロコ」」
「お前は私だ……!」
爆速本人確認完了。
「……久しぶり、と言うべきかな。『私』?」
「そうだね……ちょっと久しぶり、だね」
「……元気?」
「もちろん私は元気だし、プラナも元気だよ!私のシッテムの箱でアロナと仲良くやってる!」
「……プラナ?」
「あっ。『プラナ』っていうのはプレナパテスから託されたアロナの、新しい名前っていうか……」
「……そう。元気にやっているのなら、良かった」
「シロコは……ごめん。実は、あの日から、あの子に会えていなくて……」
「……いい。シロコにとってキヴォトスは既に滅んだはずの世界。そんな所に自分が居てもいいのか、と悩んでしまうはず。……あまり下手に手出しはせず、そっとしておいてあげていいと思う。こればかりはあの子に『答え』は出してあげられない。あの子が見つけるべき『答え』だと、私は思うから」
「そう……かもしれないね」
「……でも、会うくらいならしてあげてほしい。話を聞いてあげて」
「うん。私も、そう思ってたところだよ」
「驕るな──!!」
「「ん?」」
私とプレナパテスがシロコについて話していると白いヤツら──無名の司祭の怒声が聞こえてくる。私とプレナパテスの視線はついそちらに向けられ、ゲマトリアと司祭が言い合っているのが目に入る。
「驕っているのはどちらですか、司祭?あなた方がプレナパテスを傀儡としたからこそ、先生の世界は元の姿を保とうとせず、新たな枝葉を広げることになったのですよ?言わば自分で首を絞めているのに等しい行為ですが……」
「然り。貴様ら司祭、そして『色彩』からの無闇な干渉さえ無ければ、世界は、変わらず回っていた。あの世界もまた、貴様らの思い通りになったのかもしれないのだ。実に滑稽で、愚かしい事だな」
「尤も、お陰で先生がゲマトリアの『名誉顧問』に就いて下さいましたし、これに関してのみ我らから司祭に礼を言えるかもしれませんがね」
「まぁ、そういうこったっ♪」
「理解できぬ」
「『名誉顧問』だと?理解できぬ」
「人のまま『ゲマトリア』に?理解できぬ」
「馴れ合いも
「お前達は全員、この選択を……未来永劫、後悔するだろう──!!」
「……ですって。クックック、下らない妄言です」
「取るに足らぬ存在に堕ちたな。我らは得た技術、持ち得る技術に胡坐をかく事なく、常に自己を高め日々邁進しているのだ。最早、我らが無名の司祭の技術に頼る事など無いのだろう」
「ガッカリですよ、司祭。まさかとは思いましたが司祭もまた黒服の言う『純愛派厄介オタク』とは。しかしこれで脆弱性が明らかになったというもの。先生のキヴォトスも安全が約束されたものと見て、間違いはなさそうですね」
「そういうこったぁッ!!」
何だか今にも喧嘩が始まりそうな雰囲気の中で、私はゲマトリア側に、プレナパテスは司祭側に移動する。すると司祭はプレナパテスに指を突きつけて怒鳴り散らす。
「『
「名も無き神々に楯突く愚か者は──死すべし!」
────名も無き神々?どこかで……。
「ねぇ黒服……まさか?アリスって確か……」
「お察しの通りです」
「ッ!!」
侵略兵器であるはずのAL-1Sを美少女に造形するくらいだ。コイツらもオタクなんだよな。
見ればプレナパテスは本のようなものを開いて、その上に、何か得体の知れない球体のようなものを作り出している。漫画とかでよく見るような魔法やエネルギー弾とかなのだろうか。
「先生!マズイです、退避しましょう!」
「おバカだね、ここで
「なっ?」
「しっかりしろプレナパテス!お前はもうあの白いヤツらの傀儡なんかじゃあないッ!!お前は私だし私はお前!だけどね、私自身があんな白いヤツらの言いなりになっている様を見るのは御免だよ!!」
「『私』……『ゲマトリア』だけでも────」
「シロコを、プラナを私に託したから満足したか?ええ?プレナパテス?生徒を託したから、その後はどうでもいいと?──この前、ヒナに言われたよ。かなりショック受けたから共有しとくよ。『先生のそういう後先考えない所が嫌い』……だってさ」
「!?」
「完全に成仏するまで『私』は私で在り続けるッ!生徒を託すまで!いいや、託してからもだ!だからプレナパテス!そんな白いヤツの言いなりになんかなってるんじゃあないよ!見てらんないから!!」
「……っ」
私の説得が効いたのか、プレナパテスが生成したエネルギー弾のようなものは、ポシュンッと小さい爆発と煙だけを残して消え失せた。
「驕るな──!!」
「純愛こそ、破壊すべき世界の美点!」
「美しきものは破壊され初めて真価を発揮する!」
「破滅エンドを迎える純愛こそが至高なのだ!!」
「それを貴様は──二度と手に入らぬ『
「うるさい白いの!お前らのオナニーにこの私らの世界を利用しやがって!あの黒いシロコが、どんな想いでこっちの世界に来たと思ってるんだッッ!?想像の1つもしてみろっ!!」
「捗る」
「捗る」
「捗る」
「捗る」
「非常に捗る」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」
「無駄ですよ、先生。彼らに、会話は通じません。破滅エンドに脳を焼かれているのですよ」
「みたいだね。よし……潰すとしますかァ!!」
「「「「理解できぬ!理解できぬ!!」」」」
「では────我らが『顧問』よ。指揮を……!」
「無名の司祭をボコボコにしてやるッ!!あっちのシロコとプレ先、それと、黒服が居たキヴォトスの仇討ちだッッ!!」
「先生……!」
「いくぞ、ゲマトリアッ!!プレナパテスもだ!!アイツらをもう二度と平行世界を利用したオナニーなんかできない身体にしてやるッ!!」
「ククッ、では……デカグラマトンを召喚……!」
「顕現せよ、人工天使シリーズの
「我々のテクストを、今、ここに────」
「そういうこったぁああああーーーーっっ!!!」
「────純愛は世界を救う。
「ハーレムもまた世界を救うッ!二度と私達の邪魔なんかさせるものか……ッ!!」
「「「「理解できぬぅぅぅうううううあああああああああああああああああっっっ!!?!?」」」」
ドカーーーーーンッ!!!
◆
「────ッ!?」
目を覚ました。チュンチュンと、窓の外では雀が囀っている。目覚めた私は、妙に汗びっしょりで、精神も肉体も疲弊しているような気がした。
目映い日光を浴びてやっと、さっきまでの、妙に騒いだり怒鳴ったりしていたのが夢だったんだなと気付く事ができた。
「……なんッて夢を見てるんだ……私は……」
夢の中の私はマエストロの「名誉顧問に」という誘いに頷いたのか。──実際、まだ悩んでる。多分そろそろ答えを彼に言わなくちゃいけないだろう。
ヒエロニムスの進捗報告してくれる時に会うし、何よりも、そろそろマエストロの前口上から始まる総力戦が始まりそうな気がして……。
いや、どうだろう。案外、そうでもないのかな。マエストロは拘りが強い方だからまだ手を掛けたりするのかもしれない。
「無名の司祭、だったっけ。ホントに居んのかな、あんな能面のコピペみたいなヤツら……」
それにしても疲れたな。変な夢も見たし、朝から汗かいたし、シャワー浴びないと。
全く、生徒ではなくゲマトリアとプレナパテスに私が指示を出して無名の司祭とやらにEXスキルをぶつけまくるとか……マジでどんな夢だよ。
黒服は総力戦でお馴染みのビナー達を召喚する、マエストロはヒエロニムスだのグレゴリオだのと、彼の人工天使シリーズを召喚するし、プレナパテスなんかは一撃必殺っぽい爆発攻撃みたいなのするし全く何だったんだアレは……。
「────シロコ……」
そうだよね。私が、私に「託された」んだった。いつまでも、こんなノホホンと過ごしてるワケにもいかない……よね。
プレナパテス。あんたも私だから、分かるよね。まだ成仏できないんでしょ。自分自身とはいえ私とプレナパテスは少しずつ違う。同一人物でも別人に等しい、別人だけど同一人物という、複雑な関係。
それでも大体は共通してるから、プレナパテスの考えそうな事も分からなくはない。もしも私なら、この状況を見て、どう考えるかな。
プレナパテス────私に託してくれたあの子の結末を、一緒に見届けようじゃないか。あんたが、安心して成仏できるように。私が彼女を支えるまであの子のそばで見守っていてくれると助かるよ。
「……シロコのこと、今度、探してみよっか……」
次回────「舐めるならせめて足にしろ!!」
プレナパテスの大人のカードを工作してみました。
とろけちまった。平面に保つことすらままならぬ。
ススをつけるだけならともかく、焦がすのは難しいという事が分かりました。
理解できぬ。理解できぬ。理解できぬ。
クロコの現在が知りたくて堪らないマン。