※この作品はR-18です。

「ハーレムルートを目指しましょう、先生」   作:アキラゼミ

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RE Aoharu ─with 対策委員会─

 

「あれ?黒服じゃん。おはよーさーん」

 

「おや。おはようございます。お早い到着ですね」

 

「まだ日の出前だよ?そっちこそ早すぎでしょ」

 

「──少し、アビドス高校を……この目に焼き付けておきたくて……」

 

「ふぅん。なんか意味深だ。まぁ何でもいいけど、このまま校門前(ここ)に居たら、もう少しで来るであろうホシノと鉢合わせるよ?」

 

「えっ?もうすぐ、ですか?早すぎでは……?」

 

「校内で早朝デートさ」

 

「……どんなデートですか……」

 

「気になる?覗き見はダメだよ?」

 

「見ませんよ。NTRは脳が破壊されますから」

 

「だから寝てないだろっての。というか黒服って、その……脳、あるの?……ペニスとかさ」

 

「ありませんね、どちらも」

 

「無いのかーい」

 

「では一旦出直しましょうか。連絡頂けますか?」

 

「OK、モモトークの通知オンにしときなよ?」

 

「元から通知オンですよ」

 

 ◆

 

 数時間後──ホシノとのダラダラ二度寝を経て、対策委員会の皆が揃った頃を見計らって黒服に連絡する。その後、黒服の到着を待たずいつもの教室へホシノと2人で向かう。

 

「やぁやぁ、みんなおっはよ〜」

 

「おはよう。みんな揃ってるね」

 

「おはようございます、ホシノ先輩、先生♪」

 

「重要な話ってなんなの?」

 

「まさか借金がまた増えたとかじゃ……」

 

「…………」

 

「暗い話じゃないから大丈夫だよ!」

 

 ノノミはともかく、セリカとアヤネは、暗い方に捉えてしまっているらしい。まぁ仕方ないか。このアビドスに入学して早々、割と酷い目に遭ってきた2人だしね……。

 まだ1年生なのに、彼女らのくぐった修羅場は、その辺の子よりも遥かに重く────。

 

「……?シロコ、どうかしたの?何かあった?」

 

「……先生、ホシノ先輩と来た」

 

「?そうだね……?」

 

「じゃあこの後は私とエッチするべき」

 

「「「「!?」」」」

 

「なんで!?」

 

「私が最後に到着したんだからホシノ先輩は私より先に学校に着いてた。でも教室に先輩は居なくて、先輩以外の3人が居た。他の部屋で朝エッチしてた証拠」

 

 そうくるか。この桃狼モモコめ、頭がピンク色に染まりすぎでしょ。可愛すぎるだろ。好き。

 いやまぁ、彼女がそれだけエッチにハマる要因を作ったのは紛れもなく私だしね。しかも、こうしてシロコに誘ってもらえて純粋に喜ぶ私も居るんだ。

 でもねシロコ。気付いてないかもしれないけど。

 カヤを除けば、エッチする頻度は、シロコが一番なんだよ。初めてエッチしてから、何回シャーレに遊びに来てくれたっけ。ノアなら数えてるのかな。今は毎週月曜日の朝も追加されてるくらいだしね。

 しかも、一度のエッチの平均時間なんかカヤすら超えてる。セイアと並ぶくらいだからトップクラスなんだよね。

 

「うへ〜……発想がピンク色に飛躍しすぎだよぉ」

 

「うん、それは『他の部屋にホシノと2人で居た』証拠だね!エッチしていた証拠ではないね!」

 

「先生……さりげなく騙されていますよ……」

 

「え?」

 

「ホシノ先輩が不在だったという事実は、そのままホシノ先輩が教室には不在だった、という意味しか持ちません。何故ならそこに『先生』の存在は関係ありませんから」

 

「……あっ!?」

 

「やるねぇシロコちゃん……///」

 

「もしかして、カマかけられた……ってコト!?」

 

「付き合っている男女が、早朝の校舎で2人きり。何も起きないはずがなく────」

 

「ノノミちゃん、変なモノローグつけないでぇ!?朝からエッチする体力なんて無いよぉ〜、それこそシロコちゃんじゃあるまいしさぁ……?」

 

「ん、でも首筋にキスマーク何個も見えてるよ」

 

「うへっ!?せ、先生!これから皆に会うんだから見えないところにつけてって言ったじゃん!!?」

 

 片手で首筋を押さえ、もう片手でポカポカ叩いてくる仕草がとても愛らしい。今すぐ抱き締めてキスしちゃいたい……そう思ってしまうくらい、ニマニマしてしまうが……。

 

「キスマーク?なんて見えないけど……?」

 

「何処にあるんですか?」

 

「え?」

 

「うん、私にも見えない。というか見えるとこにはつけてないはずだよ」

 

「……えっ?」

 

 また騙されたぁ!と頭を抱えるホシノ。ノノミはシロコの意外な強かさにちょっと驚き、ほんの少し引き気味な顔だ。なんというか、執念がスゴイ。

 

「……ホシノ先輩?まさか本当に朝から……」

 

「ち、違うよセリカちゃん!あの、これは……!」

 

「ん、私の勝ち。放課後は私が先生を襲う」

 

「きょ、今日の放課後は私とデートだからダメぇ!シロコちゃん、そろそろ私、怒るよっ!めっ!」

 

 ────その時。ガタガタガタンッと教室の外で大きな物を落としたような物音がした。何事かと、生徒達は銃を掴んで教室を飛び出した。

 

「キャッ!?何なのコイツ!?」

 

「どこかのロボットさん……でしょうか?」

 

「ん、怪しいから発砲していい?」

 

「待って撃たないで!怪しい者じゃないです!先生助けて!私、撃たれます!!」

 

「へ?この声……」

 

「まさか?」

 

「?」

 

 声に聞き覚えのある私とホシノも、遅れて教室を飛び出す。アヤネは念の為に教室の入口から、顔をひょっこりと出して現場を確認。

 

「……うへ〜……何してんの?黒服さん……?」

 

「ど、どうもお世話になっておりますホシノさん……先生……」

 

「黒服……あんた……ピクニックでも行く気……?」

 

 教室の外では、クーラーボックスを両手に持って蹲った黒服が、生徒達に銃を向けられていたのだ。私もホシノも思わず口元を引き攣らせてしまった。しかも「クーラーボックスを両手に持つ黒服」ってだけでも違和感しかないのに、ダメ押しに、大きなリュックまで背負っているではないか。

 

「え、先生とホシノ先輩の知り合い?」

 

「それにしたって、勝手に校舎に入るのは〜……」

 

「不審者扱いされても仕方ないと思う。警戒は継続するべき」

 

「ごめんごめん、私が呼んだの!」

 

「あとおじさんもね〜」

 

「「「え?」」」

 

「……まぁとりあえず入りなよ、黒服」

 

「ええ、ではお邪魔致します……」

 

「対策委員会の教室に入れるのっ?」

 

「今日集まってもらった理由が、コイツだからね」

 

「えぇ……?どういう事よ、意味わかんない……」

 

「まぁまぁ、話を聞きましょう!」

 

 とりあえず銃を下ろさせて、黒服を対策委員会の部屋に招く。生徒と私はいつもの席に、黒服は私の隣に椅子を置いて座らせる。違和感がすっごいや。

 対策委員会の部屋で、視界の端に黒い人型の塊がチラチラしてるのが本当に違和感しかない。こりゃ慣れるまで時間掛かるぞ……。

 

「えぇと、どこから話そう?」

 

「考えてなかったんですか?」

 

"全てはノリと勢いだよ!"

 

"ノリと勢いでどうにでもなるから!"

 

(本当に私と同一人物なのでしょうか?いやしかし全ての世界において『先生』は同一人物……ふむ)

 

「この前の『色彩』の襲来については、皆、記憶に新しいと思う。あの時、アトラ・ハシースの箱舟とウトナピシュティムの本船について教えてくれたのこの人なんだよね」

 

「「「「ッッ!!!」」」」

 

「ま、言うなれば、命の恩人的なワケだ」

 

「命どころかキヴォトスの恩人じゃんッ!?」

 

「そうだね。シロコを連れ戻せたのも、まぁ黒服のお陰なのさ。というワケで黒服、自己紹介ヨロ」

 

「適当に丸投げしないでくださいよ!?」

 

「いいじゃない、受け入れられる下地作りだよ」

 

「全くこの人は────えぇと、黒服と申します。先生の友人です」

 

「え。それが名前??」

 

「ええ、元から私に名前はありませんので。結構、気に入っているのですよ。クックックッ。それと、過去にホシノさんをヘッドハンティングしたのも、この私です」

 

 全員が硬直した。私も、ホシノも、他の4人も。ホシノをヘッドハンティング────詳細なんかを言われなくとも、そして「ヘッドハンティング」と何重ものオブラートに包んだとしても対策委員会の皆には分かってしまう。

 ホシノを捕らえた黒幕なのだと。

 

「え……えっ?」

 

「黒服さんが、ホシノ先輩失踪の黒幕……?」

 

「ん、やっぱり警戒すべき」

 

「…………」

 

「ちょっと黒服さぁ!!なんで言わなくていいこと言っちゃうのかなぁ!?」

 

「先生が悪いのです。私を、まるで『キヴォトスを救った英雄』的な扱いをするからですよ」

 

「それはさぁお前……社交辞令的なアレじゃん!?」

 

「おや?先生、お世辞や社交辞令などは言わないのではなかったですか?」

 

「ッ!」

 

「クックックッ……」

 

 食えないヤツどころじゃないな!?せっかく準備しておいたのに全く!もうこれどうしよう?今日の全ての予定が、ガラガラと音を立てて崩壊したよ!ビナーの口に放り込むぞコイツ……!

 

「やっぱりコイツ……ッ」

 

「わー!わー!セリカ、落ち着いて!シロコも!!ノノミ、セリカ押さえて!」

 

「どうしてあの事件の黒幕と『友人』なのですか?しかもどうしてそんな人をここに……」

 

「あの件はおじさんも赦してるから、皆もちょっと落ち着いて〜。黒服さんさぁ、流石に空気読もう?今のはKYが過ぎたよ?」

 

「ホシノ先輩も何でそんなヤツを赦してんの!?」

 

「えっとねぇ、なんていうかなぁ。この黒服さん、白衣こそ着てないけれど、研究者なんだよねぇ」

 

「……研究者?」

 

「そーそー。で、研究に私の力が必要だったから、この学校の借金の大半の肩代わりと引き換えにしておじさんが協力してやろうって契約したワケなの。まぁ結果としては皆も知っての通り。先生がそれを許さなかったから、今があるんだ〜」

 

 研究というよりは「実験」だが、まぁ、大きくは間違っていないだろう。

 

「研究の為にわざわざカイザーと手を組んで?」

 

「ヘッドハンティングというか、ホシノ先輩を拉致したというか……そんな感じのことをしたと?」

 

「……とても正気の沙汰とは思えませんが……」

 

「狂ってる」

 

「まあ、そういう事だね。黒服さん、少し前まではマッドサイエンティストだったんだよね。だけど、だからこそ、ウトナピシュティムの本船についての知識もあった……みたいな?感じかな?」

 

「……」

 

 皆からすれば「何だそりゃ」としか言えない話に聞こえるだろう。しかし、追い詰められていたとは言ってもホシノ本人の同意もあったとなれば……。

 

「それでさ?キヴォトスを救った裏の英雄みたいな黒服さんだけど、私のあの事件を気に病んでてさ?私の方ももう赦してるけど、罪滅ぼししたいみたいだから、先生と相談して、アビドスの復興の協力を頼んだってワケ!」

 

「え……」

 

「アビドスの復興を……!?」

 

「黒服さんの研究とやらの内容は分かりませんが、ウトナピシュティムの本船のような、ああいう物に関する知識もお持ちならば或いは……と?」

 

「まぁそういう事だね〜。あの事件については彼も反省してるんだよ。幾ら研究の為とはいえ、あんなやり方は良くなかったって。でしょ?黒服さん?」

 

「──はい。ですので、対策委員会の皆さん。私を赦してくれなどとは言いません。どうか、アビドス復興に私を、私の持ち得る技術をお使いください。それが少しでもあなた方、そしてアビドスにとって助けになると、強く、強く信じております。重ねてお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」

 

 その場に起立するなり、ピシッと「礼」をする。私から見ても綺麗な姿勢というか、完璧に見えた。流石のセリカやシロコも思わず銃を下ろしてしまうような、それ程の……。

 

「……私は、ホシノ先輩に任せます」

 

「ノノミちゃん……!」

 

「あの件は、先輩の独断だったとはいえ、きちんと

『契約』を結んでいたのですよね?単なる拉致よりずっと誠意を感じるという点は、否めません」

 

「そーだよねぇ。おじさんもそう思ったんだ〜」

 

「そう簡単に黒服さんを『赦す』とは言えません。けれど、他でもない当事者のホシノ先輩と、先生がそう言うのなら────対策委員の仲間とはいえ、私達のような第三者が口を挟むべき案件ではない。私は、そう思います。あくまで『契約』に関してはホシノ先輩と黒服さん、そして対策委員会の顧問の先生の三者間に交わされた約束事、ですから……」

 

 やはりノノミは────セイント・ネフティスのご令嬢だし、そういった視点も持っているんだな。契約とは当人間のものであって、基本的に第三者が立ち入るべき問題ではない、と。

 私が黒服を言いくるめるときに言った「ホシノの退部届に顧問の私がサインしてない」なんてのも、屁理屈もいいところだけど。

 それもまた「契約」を重んじる黒服の律儀さが、前面に出ていたからこそ使えた屁理屈なんだよな。私だって、あんなん無理矢理すぎるだろって思う。

 

「……アヤネちゃん、この話を聞いてどう思う?」

 

「私ですかっ!?そ、そう、ですね──私も大体はノノミ先輩と同じ意見です。そう簡単に割り切りはできませんけど、飲み込むしかない事って、あると思います。私はホシノ先輩ではありませんし、一応契約という(てい)を取っていたというだけでも、誠実な対応をしようとしていたのは明らかですし……」

 

「……うん。黒服さんは真面目だからねぇ」

 

「アヤネちゃんまで……。シロコ先輩はっ?」

 

「ん、アヤネに従う。アヤネの判断は大体正しいと思うし、私も同じ事を思ってる。それにアビドスの復興は……魅力的。学校を守る事にも繋がる」

 

「────でも私は、そう簡単には赦せない……」

 

「赦す必要などありません。憎んで頂いたままで、恨みを持ったままで構いません。ただ、今の私は、アビドスの為に。そしてホシノさんと先生の、恋の応援の為に動いています」

 

「「ちょっ……!?」」

 

「恋のっ?……あぁ、確かホシノ先輩と先生ってもう付き合ってるんだっけ」

 

「ええ、いつかは仲人を、式では神父を務めたいと思っておりましてね」

 

「「「「「「ッッ!?!?」」」」」」

 

「クックックッ、私は所謂『フダツキ』にも近い。そんな私を赦し罪滅ぼしの機会を与えて下さった。私が2人の応援をしたいと思うのも自然でしょう?そうは思いませんか?」

 

「……ま、まぁ……恋を応援、ね……。まぁ……まぁね?分からなくもないけどさっ……?」

 

 色恋沙汰に脆い女子高生相手に、恋バナ方面から攻めるか。やっぱり「先生」やっていただけあってちょっとは攻める方向性というか、なんというか、切り口が少し独特だ。

 けど、私が黒服の立場ならそんな事言うのかな。うーん。やっぱり、私が黒服と同一人物ってのは、どうもまだ違和感が残るんだよな。

 

「それともセリカさんはホシノさんの応援よりも、自分が先生の隣に立つ事を夢見ておられるので?」

 

「は、はぁ!?そんなワケないでしょっ!私だってホシノ先輩と先生のことは……応援してるしっ!」

 

「クックックッ……ではアビドス復興以外にも私達は志を共にしているという事で、宜しいですね?」

 

「っ!……そ、それだけで言えばそうだけど!」

 

 難攻不落のセリカが軽く赤面する程に軟化した。私はあんなに苦労したのに────やばい、黒服に嫉妬してしまいそうだ。アホらしい。バカか私は。

 黒服だって、過去に「先生」をやっていたんだ。しかもホシノと繋がりが強かったという事は、殆どイコールで対策委員会の皆との繋がりも今の私より強めだったという事なんだろうし。

 それならセリカを宥めるのが上手いのだって当然だろう。……全く、何を考えているんだ、私は。

 

「それで、ですね。お近付きの印にこちらをお持ちしました。どうぞ皆さん、お受け取りください」

 

「っ!そーだ黒服、何を持ってきたの?」

 

「かき氷のシロップ各種、かき氷機、氷、スポーツドリンクです。暑い夏にはピッタリでしょう?」

 

 クーラーボックスからはかき氷に使う大きな氷とシロップとスポドリ、スポドリの素となる粉。更に黒服が背負っていたリュックの中からはかき氷機が出てきた。なんて用意周到な……。

 

「さぁ、皆でかき氷でも食べましょう」

 

「……普通に市販されている商品、ですね?」

 

「あ、このスポーツドリンク、シロコ先輩がいつも飲んでるものでは?この粉もライド時のドリンクに使ってる……」

 

「ん……」

 

「しかも新品未開封レシート付きという徹底ぶり。まさか、私達があなたを警戒する事を見越して?」

 

「ええ、まぁ、こんな顔にヒビが入った謎の人物を警戒しない方がおかしいですからね。幾ら、先生やホシノさんが口添えをして下さったところで警戒は完全には解けないと思いまして」

 

「いやまぁ、ホシノ先輩の話を出されなきゃ普通に速攻で警戒解いてたんだけど……」

 

「ククッ、流石にそれを話さなければ後ろめたさで壊れそうな気がしてしまって。──完全に自己満足でした。申し訳ありません」

 

「もういいよ、空気悪くなるしこの話はやめやめ。ホシノ先輩本人がいいって言ってるんだし。さっきノノミ先輩とアヤネちゃんが言ってたことそのままだけど。──これ以上、外野がやんややんや騒いだところで、無駄だしね。何より、過去の事だし」

 

「……ありがとうございます、セリカさん」

 

 こうして、黒服の自爆発言もあったものの、一応対策委員会の皆は黒服を受け入れてくれたようだ。

 やはりホシノ本人が赦した事と、書類上の事でも実際にやり合った私が赦した事や、そもそもホシノ本人との「契約」といった形式で合法的にホシノの身柄を確保したという、ある種の「誠意」を過去に既に示していた事──更には、予め用意されていた黒服の事を「受け入れられる雰囲気」を自分の手でブチ壊してでも懺悔した事が何より大きいだろう。

 こんなかき氷での親睦会なんて、対策委員会から黒服への評価には、殆どプラスにはなっていない。そこに至るまでの過程が……。

 

 ◆

 

「さぁさぁどうぞ皆さん、できたてのフワッフワのかき氷ですよ。溶けない内にどうぞ。はい、先生。ブルーハワイです」

 

「ありがと」

 

「ホシノさんはストロベリーで良かったですか?」

 

「うへ〜、丁度ストロベリーな気分だったんだぁ」

 

「クックックッ、それは良かった」

 

────ヤバい、キレそう。

 

「っ!?」

 

 いや待て。何だ、一瞬湧いたこの気持ち。何だ?一瞬、ブチッと──折角手渡されたかき氷を黒服の顔面にブチ込んで、何やら醜く、大人気なく生徒の目の前なのに感情を剥き出しにして、黒服のことを怒鳴りつける自分の姿を幻視したような……。

 私は今、何にイラついたんだ?ホシノと黒服が、何気なく会話したこと?いや違うだろ。そんな場面シャーレでも見たハズだろう。

 

「セリカさんはどうしますか?グレープ?それともブルーベリー?」

 

「んー、ブルーベリーにするわ!」

 

 ……まただ。

 

「ノノミさんは……レモンあたりどうでしょう?」

 

「わぁ!私、丁度、レモンをお願いしようかなーと思ってたんです!」

 

 ……っ。

 

「アヤネさんはメロンなんてどうです?」

 

「あ……いいですね……っ!」

 

 ……何考えてる。こんな所で1人で騒いでも……。

 

「……シロコさんは────」

 

「スポドリの素と練乳ぶっかけ」

 

「「えっ?」」

 

 黒服と声が重なる。かき氷にスポドリの素の粉をぶっかけ?ちょ〜っと何を言ってるか分からない。スポドリ狂だったっけ?いやそれは無いか。

 未知の味にチャレンジしてみたくなったのかな。いやでもスポドリ味のアイスなんてのもあったな。てことは別に、未知でもないのかな。

 

「練乳、無いの?」

 

「あ、一応、小さいのを1つだけ……」

 

「それもらうね」

 

「どうぞどうぞ」

 

「──ん。やっぱり、スポドリの粉は、最初は味が濃いね。でも段々と薄くなる。汗をかいたら塩分を補給するべき。味は濃くても、何も問題は無い」

 

「……ククッ。あははっ……」

 

「?先生……?」

 

「いや……あははっ。なんかありがとうね、シロコ。癒されたよ」

 

「よく分からないけど、癒されたなら、良かった」

 

「うへ〜、先生ったら、おじさんのことを放置してシロコちゃんに癒しを見出したの〜?」

 

 ホシノと黒服を皮切りに、原因不明のイラつきを起こしてたからだよ、なんて口が裂けても言えん。幾らなんでも最低すぎだろ、私……。

 本当に何なんだろう。ホシノが私以外の男と会話してるのが──いやそうじゃないっての。ホシノと黒服の会話くらい、もう何回も見てるってのに。

 じゃあ何にイラついたんだよ私。──分からん。分からないのがこれまたイラつくな。私ってこんな短気だったっけ。……分からん、何にも分からん。

 

「──ガフッ、ゲホゲホッゴホッ!?」

 

「せ、先生っ!?」

 

「なに急にかき氷をかき込んでるのよ!?」

 

「暑さでおかしくなってしまったのでしょうか?」

 

 挙句の果てにはかき氷をかき込んで食べたせいで余計に咳き込んでしまう。咳き込んだせいで余計に疲れたし、本当に何なんだろう、今日は……。

 

「う……頭が痛い……」

 

「そりゃそうなるわよ」

 

「思いっきりかき込んでましたもんね……」

 

「先生、大丈夫……?」

 

「うん……ありがとホシノ……」

 

「ご存知でしたか?かき氷などの冷たい食物が喉を通る際に頭痛が起きるのは、三叉神経という神経が刺激され、その伝達信号を脳が痛みであると誤った判断を下すのが原因なのですよ」

 

「あ、聞いた事あります!『アイスクリーム頭痛』という名称のこの頭痛ですが、医学的にも、これが正式な名称なんですよね?」

 

「ええ、その通り。流石はアヤネさんです」

 

「えっそうなの!?そんなふざけた名前が?普通、なんとかかんとか頭痛とか、面倒で、漢字だらけの難しい名前とかつくんじゃないの!?」

 

「初めて知りました〜……」

 

「うわー物知りだねぇ〜。おじさんこれっぽっちも知らなかったよ。アヤネちゃんは元から色んな事に詳しいけど、黒服さんそっち方面も詳しいんだ?」

 

「いえいえ、人並みですよ」

 

ちッ!なッ!みッ!にッ!!黒服が言ったその説も、現時点では正しいとする説の1つでしかなくて!有力な説としてはもう1つ────

『冷たい物を食べた際の口内の温度低下に伴って、身体は反射的に体温を上げようと血管を拡張させるから、それが脳の血管に刺激を与えたり、もしくは一時的に炎症を起こす事で頭痛が起こる』って説もあるから!!」

 

「──その通りです。現時点ではこの2つが有力な説だとされていますね。どちらが正解かは、未だに不明です」

 

「へ、へぇ……そんな説もあるんだ?」

 

「あっ、本当ですね。アイスクリーム頭痛について少し調べてみましたが、先生の説も黒服さんの説も現状はどちらも正解とは断言できず──現時点では有力視されている、という説だそうです」

 

「今後また別の説が浮上するかもしれないし、この2つのどちらかが正解かもしれない。詳しい所は、未だに不明って事だね」

 

「先生もよくそんなの知ってたねぇ。何というか、少し……見直しちゃった……かも?♡」

 

「!!」

 

 うへへっ、とちょっぴり頬を赤らめて笑う彼女を見て、よく理性を保てたな……と思う。

 生徒達と黒服も見ている前とはいっても、よく、キスだけで済ませられたなキスしながら(・・・・・・)想う。

 

「んむっ!?……んっ……せんせ、皆見てる……んぅ、れろ……むちゅっ♡……はむ……んん……せんせ……♡」

 

「ゴブフゥッ!?ゲホゲホゴホッゲゴッ、オ゙ゲェエッ!!ゲボッ、ゴフッ!?」

 

「ギャー!今度は黒服さんが吹いた!!」

 

「というか吐きました!?」

 

「目からも吐いてたように見えましたけど〜……」

 

「ん、拭くもの……雑巾でいいか」

 

 黒服が吹いた方の処理をしている中、ちゅくっ、ちゅるっと舌を絡め続けていた私達は、やっと舌を離しつつも、至近距離で見つめ合う。

 

「うへ……舌が紫色になっちゃったよ……♡」

 

(ブルーハワイ)(ストロベリー)が混ざったからかな……」

 

「だね。……先生ったら、ホント容赦ないなぁ」

 

 しゃくしゃくと、苦笑しながらかき氷を食べる。他の皆も片付けを終えたのかゾロゾロ戻ってきて、変わらずかき氷を食べる。

 でも私には、そんな景色も目に入らず、ただただ無言でホシノの頭を撫でていた。

 

「……先生?どしたの?」

 

「私しか見ないで」

 

「へ……?」

 

「私以外の男、黒服を褒めるような事言わないで。ホシノには私だけ見ててほしい────だなんて、そんな事を考えちゃってたんだ。ごめん、私は他の子にも平気な顔で手を出すようなヤツなのに……」

 

「よしよし。大丈夫だよ先生。私は最初から先生のことしか眼中に無いからさ。どんな知識人も先生の魅力の前にはジャガイモだよ。月とスッポンだよ。だから、安心してよ、先生……♡」

 

「本当に?」

 

「本当だよぉ。何ならもう1回チューしよっか」

 

「……ん……する」

 

「ふふ、おっけぃ♡」

 

 残りのかき氷を私のようにかき込んだホシノは、舌なめずりしながら私の足にノシッと座る。そして私の首に手を回すと、対面座位の格好で、そのまま唇を押し付けてきた。

 ふんわりと漂うストロベリーの香り、氷のせいで冷たいながらも確かに感じる彼女の仄かな体温と、シロップの甘みとホシノの唾液の味────。

 

「ぷは……っ」

 

「今度は赤紫色みたい♡ ストロベリーの方が少し優勢かも?」

 

「追加で食べたからか……」

 

「うへへ、そぉかも。でもここからは、段々と紫に戻るだけだよ……♡」

 

 どこか蕩けた目で囁くホシノ。構わずまたキスをしながら、ちゅ、ちゅるっ、ずるるっ、と舌を絡め互いの甘くなった唾液を貪る。

 ネクタイを緩め、服を緩めて、肩を露出させる。すると可愛らしい鎖骨の周辺に、今朝の逢瀬の際につけたキスマークが幾つも現れる。強くつけたからまだ残っていたようだ。

 

「今度こそ見えるところにつけるよ」

 

「うん♡ 好きなとこにつけて、いーよ……♡」

 

「じゃあ、やっぱり定番の首────」

 

「ストーーーーップ!!」

 

「……っ!!?」

 

「うひゃあっ!?の、ノノミちゃん!?」

 

「セリカちゃんも黒服さんも気絶してますから!!それ以上はお2人のデートの時にシテくださいっ!今は我慢して!!」

 

「「あ……」」

 

 対策委員会の皆と黒服が居たの、すっかり頭から飛んでた……。

 

 ◆

 

「では気を取り直して。アビドス復興の為に、色々案を出してみましょうっ!」

 

「やっぱり何と言っても活動拠点の強化じゃない?防衛力強化っていうかさ。カイザーはとっくに手を引いてたとしてもやっぱ自然のチンピラとかはまだ居るし、懸念すべき問題点じゃない?」

 

「その点はご心配なく。今朝、アビドス高等学校をグルリと囲むように警備システムを設置しました。もし、関係者以外が校舎を囲む塀より内側に入れば皆様のスマホに通知が来ます」

 

「「「へっ?」」」

 

「もしかして今朝学校に居たのってそういう事?」

 

「ええ、そんな所です。──当然、偵察のドローンなんかにも侵入されかねないと思いますから、高度100mまでセンサーの範囲となっております。またロボも警備システムに引っ掛かる設定にしていますから、一応は安心かと」

 

「なるほど……」

 

「自動迎撃システムは……設置したらやりすぎか」

 

「そうですね。シャーレのように、明確に『関係者以外立入禁止』と区分している区域が無い以上は、敵かお客様かの区別がつきにくいですから、今回は自動迎撃システムは付与しておりません」

 

「じゃあ学校はそれなりに安泰ですね」

 

「そうみたいですね〜♪ それじゃ、次なる拠点と言えば、セリカちゃんのバイト先でしょうか♪」

 

「ん、確かに活動拠点と言えるかもしれないね」

 

「そうですね。特に柴関ラーメンはセリカちゃんのバイト先として高頻度でお世話になっていますし、なにより、私達もよくお店に通っていますし」

 

「きょ、拠点だなんて大袈裟よ!」

 

「でしたら、手始めに、柴関ラーメンの店舗を軽くシェルターに改装しましょうか」

 

「「「「え?」」」」

 

「なんで改装するのよ!?しかもシェルター!?」

 

「爆破にもビナーの出現にも耐えうるラーメン屋、素晴らしいとは思いませんか?」

 

「いやまぁそれだけ聞くと凄いと思うけどさ!でもそれは『軽く』の規模じゃないのよ!!」

 

「『軽く』ですよ。そう、私の技術ならば……!」

 

「ええ……?どういう事よ……?」

 

「それに──堅牢な建物なら、それは、有事の際に柴大将の保護が可能となる砦ともなるのですよ」

 

「砦……」

 

「セリカさん。あなたは、アビドスにて何かしらの事件が起きる度に大将が心配になっていませんか?大将は無事か?怪我は無いか?ラーメン屋は無事?全くの推測ではありますが、戦闘中も、このような不安は、頭のどこかにはあるのではないですか?」

 

「────ッ!」

 

「不安とは(銃弾)を、判断を鈍らせてしまうものです。除ける不安ならば、全て、除いてしまいましょう。セリカさん──あなたの『不安の種』は何ですか?もし、有るのならば──吐露してしまいましょう。解決できるものであれば、我々が『大人の力』で、全て解決してしまいますから。……ね、先生?」

 

 そこで私に話を振るか。

 

「そうだね。黒服の言う通りだ。だから、セリカ。もし不安なら、素直に言ってね」

 

「──そりゃ、確かに、不安に思う事もあるわよ。でもシェルターは流石に……」

 

「なに、改装と言っても5分もあれば終わります。では私と先生は柴関ラーメンに行ってきますので、皆さんは、いい子でお留守番をお願いします」

 

「ええっ!?」

 

「今の今ですか!?」

 

「大人の行動力ってスゴイです〜……」

 

 ◆

 

「──と、いうわけで。お店の強度を核シェルタークラスに引き上げたいのですが、宜しいですか?」

 

「そりゃお前さん、強化してくれるってんならそら店主としては有難いとしか言いようが無いが……」

 

「安心してください、無償ですしすぐ終わります。何も気にする必要はありません」

 

「シャーレの先生である私のお墨付きです」

 

「すぐだとっ?先生の口添えもあるってのが余計に気になるな。核シェルターとやらを既にこの近辺に用意済みだとでも言うのかい?」

 

「いえいえ。この店そのものを作り替えるのです。店の強度を、ね」

 

「???」

 

「では大将、これを装備してください」

 

「なんでぇこれは。目隠しと……ヘッドホンか?」

 

「ええ、どちらも市販のものですが。5分もあれば終わりますから、こちらの音楽内蔵ヘッドホンで、音楽でもお聞きになってお待ちください」

 

「は、はぁ……」

 

 柴大将は瓶ケースを裏返してそこに座るとお店と私達に背を向ける。話し掛けてみても柴大将は音に合わせて身体を揺らしているだけ。既に外部の音は届かないらしい。

 

「さて。5分でどう改装するのさ?黒服さんよ?」

 

「ククッ。私はデカルコマニーとゴルコンダから、少しばかり力を借りていましてね。つまりそういう

『テクスト』で、柴関ラーメンを上書きします」

 

「いちいち『ヘイローを破壊する爆弾』みたいに、長ったらしい名前で呼ばなくちゃいけないワケじゃないんだよね?」

 

「あー…………はい、大丈夫ですよ」

 

「何、今の間は!?」

 

「クックックッ、ご心配なく。さて、お店にどんな

『テクスト』を付与しましょうね?」

 

「じゃあ────」

 

 こうしてセリカのバイト先である柴関ラーメンの店舗は、見た目はそのままに、核シェルター程度の頑強さになった。

 これについて対策委員会の皆に報告。この日は、黒服も交えて7人で特盛にされたラーメンを食べ、解散する事にした。

 黒服はゲマトリアの本拠地へ。セリカはそのままバイトに。シロコはノノミとアヤネに引き摺られてショッピングへ。

 そして私とホシノは、そのままデートに。今日の出来事を思い出し、出先で滅茶苦茶セックスした。




次回────黒服とお出掛け?

近々、アリウスのあの子をお出しできそうです。
やっとだよ。お待たせ!!
消化が再開した素敵なお題箱はこちら。
https://odaibako.net/u/Akirazemi

シュン(幼女)、ギリ20連で迎えられた……。
シュン(幼女)以外は、とっくに今回のPUキャラすり抜けているというのに。遅いんだよぉアロナのおバカァ!!来てくれてありがとう!!

☆5、シュン(幼女)で記念すべき31人目でした。キリ悪い数字ですね。ピースピース。
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