※この作品はR-18です。

「ハーレムルートを目指しましょう、先生」   作:アキラゼミ

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REturn Aoharu⑥─前日譚─

 

「────さて、こうして先生に能力を授けたワケだが……お加減はどうかね?」

 

「何も」

 

「だろうな。では早速、レッスンといこう。先生は何を複製(ミメシス)したい?」

 

「…………」

 

 何を複製したい、か。そりゃ、エッチの時に使う消耗品のローション、コンドーム、できることならローター類も複製したいところだね。高いもん。

 ローターとかコンドームとか、全くジェネレートできないんだよな。連邦生徒会長は、私が生徒達とエッチするなんて想定外だったんだろうなぁ。

 まぁ、そういうのが欲しいのは本心だけど、私が一番複製したい、いや、するべきなのは────。

 

「やはり先生の事だ、ローショ……」

 

「やっぱり『私自身』かなぁ……」

 

「……ほう?」

 

「ほら、私って神秘も無いし肉体的に弱いじゃん。マエストロが私の足を生やしてくれたみたいにさ、細胞分裂というか、細胞の複製をしたいよね」

 

「すまない、下世話な想像をした私を殴ってくれ」

 

「折るね☆」

 

「それは……すまない、勘弁してくれ」

 

「まぁそれは冗談として」

 

(冗談?……目が本気だったように見えたが……)

 

「私が怪我をすると、生徒に心配させちゃうから。生徒の心配事とか少しでも減らしてやりたいのに、私自身が彼女達の心配のタネになる──こんなの、許せるワケない。まっ、私の見ている範囲でなら、自分で生徒の怪我を治癒させられるかも?ってのが大きいよね!」

 

「それは辞めておいた方がいい。自分はともかく、生徒の事をも治癒させるのはダメだ」

 

「……は?」

 

「生徒は神秘の器だ、それは先生も知っていることだろうが……我々の『複製』は生徒にとって異物だ。薬として使おうとしても、毒になるかもしれん」

 

「!」

 

「私が先生に能力を使えたのは、先生が我々と同じキヴォトスの外の住人だからだ」

 

「あ……」

 

「生徒の怪我は、生徒に任せようではないか。救護騎士団や救急医学部があるだろう」

 

「……私じゃ生徒の力になれない、と?」

 

「そうではない。生徒の銃弾など、生徒にとってはろくに致命傷にもならん。先生で言うと、擦り傷と同義だろう。怪我を早く治してやりたいというのは分かる。だが、それで生徒にとって毒となるものを使用するのは愚かだと言わざるを得ないな」

 

「ッ……」

 

「案ずるな。先生は、存在そのものが生徒にとって光なのだ。先生の安寧こそが、生徒の心配事を除く鍵となろう。だからその能力は、生徒の傷を治す事以外に使用すると、約束してくれ」

 

「……分かったよ。毒になるんなら使わないさ。でも私には使えるんだな……不思議な話だ」

 

「それだけ、キヴォトスの民と我々は乖離しているという話だ」

 

「『我々』……と言われてもね。私とゲマトリアも、それくらい乖離してると思うけど」

 

「ククッ、そうかもしれないな」

 

 その後、マエストロに指導され能力を使用する。

 指のササクレをプツッと毟ると、ほんの僅かだが傷ができ、血が出る。蓋をするようなイメージで、その部分に能力を使用し周辺の細胞を複製、形成、定着させる。カサブタのイメージが邪魔したのか、赤黒い点のようになってしまったが、止血くらいは即興でもできるようだ。

 

「ふむ。驚く程に才能があるな」

 

「ほんと?お世辞は要らないよ?」

 

「先生の肉体に関わる事だ、世辞など言わないぞ。未熟な状態で能力を行使されても新たなトラブルを産むだけだからな」

 

「ご尤もです」

 

「想いの残滓、過去が顕現する、させるのが複製(ミメシス)。要は、概念的なもの(・・・・・・)だな。それをこうして、物理的存在として現実に反映させるというのは並大抵の事ではないのだ。だというのに先生はそれを一度目でやってのけた。それを『才能ある』と言わずして、なんて呼ぼうか?」

 

「成程、細胞どころか物の複製自体が能力の中だと難易度高いんだ?」

 

「そうだ。ベアトリーチェも出来なかったはずだ、物体そのものの複製は……」

 

「!?」

 

「──しかし、そうやって複製を繰り返した結果、全てが複製により生み出された細胞にて成り立った先生は、果たして先生と言えるのだろうか……?」

 

「テセウスの船だね。でも、大丈夫さ。人間誰しも細胞分裂を繰り返して生き続けるもの。この全身の細胞が入れ替わるのなんて、複製の能力が無くとも行われる生理現象に過ぎない。それに、細胞が全てミメシスされた物に入れ替わったとしても────懸念することなんか、何も無い。私は私だからね。その場に立ち、思考し、生徒達を導き、好きな子と遊び、交わり、未来を想像し創造する、この私だ」

 

「想いこそ、か」

 

「『Cogito(我思う), ergo(故に) sum(我あり)』……偉大なニーチェの言葉さ」

 

「デカルトだな」

 

「おっと」

 

「それにしても……古語への造詣もあるとはな。今、そなたが口にしたワードは古語のそれだろう」

 

「ゲヘナの生徒(ギャル)に1人、他より古語に通じてる子が居るものだから」

 

「……盛宮モルモか」

 

「やっぱ知ってんのね。生徒と話を合わせるにゃ、勉強が必須だからね。なーにが『教えるのは先生の役目』だ、んなワケあるかよ。先生こそ勉強が必要不可欠だっての。生徒にも教わり、自分なりに更に教えへと昇華し還元するのが『先生』の務めさ」

 

「……」

 

「さぁ、休憩は終わりだ。細胞複製しますかぁ!」

 

「ああ、今日は指を複製するまでは帰さないぞ」

 

「え?まさかこの後、指を切り落とされる?」

 

「何を今更。足より楽だろう?」

 

「うぐっ……!?」

 

「私は先生の安全を保証したいのだよ。本当ならば臓器単位での複製も可能になってもらいたい所だ。だがそれをすると練習段階で死にかねないのでね。有事の際には、ぶっつけ本番で自力で行うか、私に任せてもらおう」

 

「……」

 

 やっぱり、素直にアロナのバリアに頼ろっと……。

 

 ◆

 

「はっ────」

 

「え……せっ、先生っ!?」

 

「ん……イオリ?」

 

 イオリに膝枕されたまま目を覚ました。腕時計が半壊している──止まってしまっているから時間は分からないけれど、体感では、そんなに時間経過はしてないような気がする。

 何はともあれ助かったようだ。外を見るに電車は相変わらず爆走中らしいけれど。

 ──とその時、ぽたぽたぽたと温かい液体が顔に落ちてくる。

 

「よっ……よかったぁ……せんせぇ……死んじゃうかと思った……っっ」

 

「泣かないでイオリ、私そんなに弱くないからっ!人に踏まれたアリみたいなもんでさ、スニーカーの溝に入ってギリ助かったとか、そんな感じだから!ほんと、余裕のある生還だから!気にしないで!」

 

「どっちにしろギリギリだろぉ〜……ううぅっ……」

 

「泣かないでよイオリ〜……」

 

「先生は弱いんだからっ!撃たれても死なない私を庇うことなんか、ないんだよ!しかも、そのせいで先生が死んじゃったら……私……っ、私はぁっ……!!これからどうすればいいんだよぉっ!!ばか!!」

 

「……ごめん。これからはもう少し考えて動くようにするから。だから許して」

 

「……ほんとに?もう無茶しない……?」

 

「うん。何なら誓いの証として土下座してイオリの足でもぺろぺろと……」

 

「それはしなくていいんだよ!!」

 

「ぎゃふっ」

 

 ポカッと頭を殴られ、イオリの足の上に倒れる。ムッチムチの触り心地で、良い匂いで、けれど少し私の血の匂いがして。……心配させちゃったなぁ。

 

「止血はしたけど動くなよ、先生。また、腹に穴が空いてるんだから……。というか痛くないのか?いや痛みすら麻痺してるって事なのか……救急医学部には連絡はしたけど、電車がこんな暴走中じゃあ……」

 

「大丈夫だよ。怪我なんてしてないよ(・・・・・・・・・・)

 

「はぁ?何言ってるんだ?銃創は確認したし止血の包帯も巻いてる。じゃないと先生、そんな、腹出し包帯の特攻隊長みたいな格好にならないだろ」

 

「ありゃほんと。……ふふっ、今度はイオリに包帯を巻かれちゃったね」

 

「……!そうだな。また機会があればとは言ったが、まさか今度は私が先生に巻く事になるなんて……」

 

「運命ってのは分からないもんだね。でも大丈夫、私、被弾してないから(・・・・・・・・)。イオリが見たのは、多分、古傷が開いて血が出た……とかじゃないのかな?」

 

「バカ言うな、真新しい傷だったんだぞ」

 

「包帯の下を見てご覧。多分、もう塞がってるよ。古傷だからすぐ塞がるんだ〜」

 

「え……?」

 

 半信半疑、いや9割以上は疑っているだろうか。疑惑の眼差しで私の腹に巻いた包帯を解いていく。するとそこには、私の言った通りに、古傷のように既に塞がっている古い銃創があった。

 

「え……あれ……?血はついてるけど……確かに、穴は空いてない……?あれ……いやでも……あれぇ……?」

 

「ねっ?撃たれてないでしょ?」

 

「……どういう事だ?先生、回復力が上がったの?」

 

「まさか!キヴォトスの子だって、ツルギを除けばこんな早くには回復しないでしょ。私がこんなにも早く回復するはずないよ。これは古傷だから簡単に塞がったってだけ!」

 

「古傷ってそういうモンだっけ……??」

 

「そういうモンなの!」

 

 首を傾げながらも一応は納得してくれたようだ。そんなもんなの?と考えるイオリ可愛いよイオリ。口の中で血の味しなきゃ今すぐキスしたいくらい。

 

「……??……まぁ……先生が死ななくてよかった……。よく分かんないけど、結果オーライ、だよな……」

 

「ハハハッ、何言ってんの。私は死なないよ。まだイオリと結婚できてないじゃない」

 

「バッ……何言ってんだこのッ……バカ!本当にっ、本気で心配したんだからな!?」

 

「うん……心配させてごめんね。でも大丈夫。さっ、イチカ!トリニティに帰る方法を考えるよ!」

 

 イチカが居た方を見ると、何と頭から血を流して倒れている彼女の姿が目に入った。目元を見れば、涙を流した跡が。頭からの流血は止まってはいる。しかしそれなりの量を出血しているようだ。

 

「えっ、イチカ!?イオリ、何があったの!?」

 

「……先生が目を閉じて、死んだと思ったあの瞬間、リロードして自分の頭を撃ちそうになったからさ。大丈夫だろとは思ったけど、念の為に、私が銃床で殴って気絶させといたんだ」

 

「そっか……ありがとね」

 

「先生こそ──戻ってきてくれてありがとう」

 

「!」

 

「でも本当にそれ、古傷が開いただけなのか?血も吐いてただろ」

 

「じゃあ……病院に行かなきゃね。内臓のダメージもぶり返したのかもしれない」

 

 なんてね。フツーにイチカの弾は貫通してたよ。血ぃ吐いたのも当然、内臓にダメージあったから。でもまぁサオリの時といい、腹で良かったよ。

 もし撃たれたのが胸部だったら複製も間に合わず死んでたでしょ、ここで。たとえイオリの太ももの上だろうと、死ぬのはなぁ……。

 どうせ気持ちよく死ぬならユウカの太ももの上、ミカやセイアの胸の中、ホシノから膝枕されて──みたいな理想じみたものはある。

 

「風紀委員会本部に救急医学部を待機させてある。だから本部に一度来てくれ、先生」

 

「────ごめん。それはできない」

 

「どうしてだよっ!?」

 

「トリニティに急いで帰らなくちゃいけないんだ。今日の事件については、ちゃんと調査してもらって構わないし、私も何でも証言する。イチカにも証言してもらおう。でも今日はダメだ。せめて、一度は帰らせてね」

 

「でもトリニティの件と私の仕事は関係ないだろ、どうしてそこまで……それに私は、先生の身体が心配なんだよっ!どうして先生は、こうも素直に治療を受けてくれない!?」

 

「所詮は古傷、緊急性は低いからね。それに遺物をトリニティに持ってくってのも──『彼女』からの依頼なんだよ」

 

「────っ!!」

 

「『彼女』からのお願いは、全力で遂行するのが、彼氏である私の役目だ。だから────ごめんね、イオリ。今は、今だけは──最速で、トリニティに帰らせてくれる?」

 

「その『彼女』がッ……『私』がッ、さっさと治療を受けてくれとお願いしても、ダメなのかっ……?」

 

「……ごめん。ダメだ。イオリのお願いを聞くのは、ナギサのお願いを叶えた後。トリニティに帰った、その後だよ」

 

「っ……バカッ!先生はやっぱり、バカだ……!!」

 

「……ごめん」

 

 スンスンと鼻を鳴らし涙を流しつつ目を逸らす。イオリのことを泣かせるのは本意ではない。けれど今日という1日をナギサの用事の為に捧げたのだ、まさかここでゲヘナ学園に行って調査を受けるなどそんな事をしている暇は無い。普通に無理だ。

 どうやってイオリを慰めよう、と考えていると、ズズッと鼻をすすった彼女が、ゴシゴシと、目元を袖で拭いながら提案する。

 

「────なら、トリニティまで送り届けてやる」

 

「え?」

 

「救急医学部の救急車で、トリニティまで送るよ。だからその道中で、治療を受けてくれ。アイツらの腕の良さは、先生も知ってるだろ……?」

 

「!」

 

「先生。……私はこれから、次の停車駅でこの列車を止めるよう運転士を脅しに行く。先生は、イチカを起こして、列車を降りられるように準備してくれ。救急医学部には私から、次の停車駅に来るよう再度連絡を入れる。列車を停めたら、イチカと救急車に乗って、最速も最速でトリニティに向かえ。でも、トリニティでのその大事な用事が終わったら、次はゲヘナ学園にまで戻ってきてもらうぞ!2人共だ!救急医学部の救急車をタクシーとして使ってもらうからな!2人を、確実に移送する為だ!」

 

「…………」

 

 下手に特急を使うより救急車を使う方が速いか。成程それは確かに名案だ。乗務員も殆ど片付いた、運転室まではイオリ1人でも余裕で行けるハズ。

 そうとなれば、次の停車駅で私とイチカは降りて救急車に拾ってもらい、そこで治療(という名目で腹の傷の確認だけ)してもらい──トリニティまで送ってもらう、と。

 恐らく、現実的な案の中では最速、且つ確実だ。惜しむらくは救急医学部の救急車をタクシーとして使ってる事くらいだろうか。だが、今は……。

 

「──ありがとう、イオリ。そうさせてもらうよ」

 

「ッ!へへ……そっか!ちゃんと治療、受けろよな!じゃないと殴るからっ!」

 

「はは、それは怖い」

 

「じゃ、私は救急医学部に連絡入れながら運転室に向かうから────」

 

 笑顔を取り戻し、運転室へ向かおうと立ち上がるイオリ。しかしその瞬間、彼女のスマホが着信音を奏でる。救急医学部に連絡するついでか、移動より電話に出るのを優先した。

 

「……モルモ?もしもし?任務中なんだけど」

 

『あ、イオリちゃん?列車は無事止められた?』

 

「今から止めさせに行くんだよ!」

 

『え、今から?ちょっとヤバくない?大丈夫かな、間に合うかなこれ……うーん……間に合わないかも。みんなー!撤収用意!最速で本部に帰って!!』

 

『『『『了解ッッ!!』』』』

 

「え、何だよ?そっち何かあったのか?てかどこに居るんだよっ?」

 

『次の停車駅の手前にさぁ、橋、1つあんじゃん?なんかそこにさ、超大量の爆薬があんだけど……』

 

「……爆薬だって!?」

 

『温泉開発部が待機しててさ。とりま全員捕らえて1年に頼んでトラックで本部に移送してもらってんだけどさ。どうもコレ設置型の爆弾っぽくてね〜。しかも、量が量だけに、今から私達で解体とか移動してたら確実に間に合わないんだわ、コレ……』

 

「チッ、橋なんかをフッ飛ばして何を企ん────カスミを助ける為か!!」

 

『え?何の話ィ?』

 

「この特急、鬼怒川カスミが護送されてたんだよ!温泉開発部部長のカスミだ!恐らく、温泉開発部が仕掛けていたその爆薬ってのは、カスミを救出する為のモノだ!!」

 

『あー、指名手配犯の?へー、そんな奴 そっちの特急に乗って んだ?スゴ 巡り合 せ ねぇ』

 

「……?もしもし?風の音が凄いけど何かあったか?ていうか、そんな悠長な事を言ってる場合かよっ!ともかくっ、さっさと列車を止め……」

 

『────イオリちゃん、今、何両目に居んの?』

 

「え?……3両目……だな」

 

『3両目…………あっそォ、りょーかい』

 

「えっ?おいモルモ!?モルモ!?」

 

 唐突に通話が切られてしまったらしく、イオリは明らかに狼狽した様子でスマホに向かって怒鳴る。しかし当然、通話が切れたスマホからの返答なんかあるはずがない。

 舌打ちしつつ再度先頭へ向かおうとするイオリ、すると次の瞬間、メコッと天井が凹み、照明などのケーブルをブチ切りながら、隕石のような勢いで、ガシャアアァッッ!!と何かが突っ込んできた。

 

「うわっ!?なっ、何だ!?」

 

「やほ〜、イオリちゃん♡」

 

「──モルモ!?おっ、おおおっ、おま、お前っ……て、天井を突き破ったのかっっ!?」

 

「そーでもしないと無理っしょ、脱出すんの。んで鬼怒川カスミっつーのはどこに……あっれぇ?」

 

 モルモと目が合った。私が乗ってるとは全く予想していなかったのだろう、意外なものを見るような目でパチクリとしている。

 

「……あっれぇ、先生?イオリちゃん、これどういう状況なん?」

 

「私にも分からないけど、先生と……」

 

「あ!イチカちゃんじゃーん!?なんか血ぃ流して倒れてんだけど!?大丈夫なの!?」

 

「最後まで聞けっ!──諸事情により、2人を救急医学部の救急車に乗せてトリニティに運びながら、車内で治療を受けさせる!」

 

「……ふぅん?じゃあ救急医学部を呼ばないとだ」

 

「その連絡をしようとしたら、モルモからの連絡が来たんだよ」

 

「ありゃ、タイミング悪かったね。いやでもお陰で爆弾にブチ当たらずに済んだんだからラッキーか。そーだよね、イオリちゃん♡」

 

「うぐ……」

 

「んー、私の計算だと爆弾のある橋まであと2分かそこら。列車は現在、およそ時速255km────。脱出するには私が手で運ぶしかないしぃ……」

 

「できるのか?暴走するこの列車から、脱出が!」

 

「まぁ、モルモ〜ちゃんは特別頑丈だしィ?私ならできるけど、せいぜい4人が限界だよ、時間的に。モブちゃんズとチンピラとヘルメット団と、あと、乗務員ちゃんには悪いけどねー」

 

「よしっ、じゃあ先生が最優先だ!」

 

「……ってことで、先生、荷物はOK?」

 

 カスミが持っていた白いカバンを取り返し、次にモルモの手を取る。すると翼を広げた彼女は、その誰より優れた両脚に力を込め、自分で空けた天井の大穴から脱出した。

 その後は列車を追う形で滑空しつつ、私を地面に降りさせてくれる──と同時に残像が見えるような速度で走り出し、再度、列車に飛び乗り……。

 そうやって、およそ30秒につき1人、車内の人を脱出させる事に成功。結果、私、イチカ、カスミ、イオリの4人だけがモルモの手により脱出できた。残りの子は……。

 

ドガアアアァァァンッ!!

 

 車内で気絶している事を良いことに、そのまま、橋の上での爆発に巻き込まれてしまった。

 そしてイオリの連絡で救急医学部の救急車が2台橋の手前までやってきて、私と、未だ気絶しているイチカを連れて出発────そのままトリニティへ直行する事になった。

 

 ◆

 

「────まさか割れていても良かったとは……」

 

「ね……驚いたよね……」

 

「そして何よりも、先生に弾丸が当たってなかったなんて……本当に良かったっす……本当に……」

 

「ふふっ、イオリを庇って転んだ時の打ちどころが少し悪かったみたいでね。だから意識が飛んだだけみたい。だから、イチカは何にも気にしないでね」

 

「……そうは、いかないっす。結果オーライとはいえ先生を撃ちそうになったのは事実っすから。本当に申し訳ありません……先生」

 

「いいっていいって。当たってないし、生きてる!それだけで儲けもんさ。だから、気にしないでよ。イチカが気にしてる方が、私は気になるからさ」

 

「……もし先生に被弾させてたら、正義実現委員会を辞めた上で死んでたっすよ。それくらいじゃないと釣り合い取れないし。というかそれでも足りない位じゃないっすか?」

 

「そういう事言わないの。そもそも、釣り合いとか誰の命でも取れないよ。決して釣り合わないんだ、命ってのはさ。誰のでもそうさ」

 

「……っすかね……」

 

「そうだよ」

 

 イチカと並んで校内を歩く。やがて、また校門が見えてきた。そこには救急医学部の救急車が1台。今度は、1台でゲヘナまで運んでくれるようだ。

 

「さーて、最後の一仕事といこうか、イチカ?」

 

「そうっすね。カスミさんのやろうとしていた事、言っていた事!ぜーんぶ、暴露してやるっすよ!」

 

 こうして、私達が解放されたのは次の日の昼過ぎくらいの事であった。そしてその頃、当のカスミは特別牢にて、ヒナと交代したモルモからHな尋問を受けていたらしく、カスミの中でモルモは、ヒナの次に恐ろしい人物として記憶される事になった。




次回────REturn Aoharu、最終話。
最終話の舞台となるのは物語の始発点、アビドス。
若返り先生、遂にやらかす────。



カスミ狙ってたら4枚抜きしました。(X参照)
シロコ、ぼく様、応援団ウタハ、カリンでしたが。ウタハ以外被りなのが痛すぎた。晄輪大祭キャラをコンプできたから目を瞑ります。
ぼく様、私服と合わせたら何回目の登場だ。☆3で一番被ってるよ。分かってるのかいサヤ。犯すぞ。先生が。

ビナーくん、329位が最高でした。
今回はどれくらい順位落ちるかな。
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