「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
「────こうして、手前と先生はぁ、未来永劫、仲睦まじく永遠に♡ 共に生きていく事になったのでした……♡ おしまい♡」
「何が『おしまい』だー!」
「そんなのたとえ作り話でも許せない、先生を独占するなんて……!」
「もしこれがゲームならクソゲーオブザイヤー獲得間違いなしですっ!数々のクソゲーをプレイした、アリスが認めます!」
「あ、アリスちゃ……そのクソゲーって……」
ある日のシャーレ併設カフェ1号店では、小さく可愛らしい幼女達が5人、ワイワイキャアキャアと楽しげに過ごしていた。
怪談家の
ただこの話については、シュロがそう言っているだけなので、話半分で聞いている。確かにこれまで百鬼夜行で「花鳥風月部」なんて聞いた事も無いしそれっぽい部活名を目にした事も無いので、まあ、話半分で聞いておいてもいいとは思う。
そしてシュロは「手前だけの百物語が作りたい」などと言っており、ここ数日間、ずっとシャーレのカフェに籠っている。可愛いから許してあげる。
更に彼女は、百物語が作りたいと言うだけあって物語を話して聞かせるのが中々に上手で────、今は、ゲーム開発部4人にオリジナルの怪談話?を話して聞かせていた。
シュロの話にその都度一喜一憂して、コロコロと表情変化させるモモイ……本当に可愛らしい。
「んもう、手前にとっては最高のハッピーエンドのお話ですのにぃ……」
「そりゃあなたにとっては最高だろうけどさぁ!」
「もっと聞き手を意識してネタを考えてください、お疲れ様でした」
「アリスはシュロのお話、嫌いではありませんっ!好きでもないです!!」
「……」
モモイやミドリが散々なブーイングを飛ばすが、それらをものともしない様子。中々ふてぶてしい。
そんなモモイ達の様子を遠目から見ながら優雅に紅茶を嗜んでいると、私の様子に気が付いたらしいシュロが、ニンマリと目を細めてやってくる。
「ねぇ、手前様?」
「どうしたの、シュロ?」
因みに私の二人称は「先生」から「手前様」へとランクアップした。よく分からないが、彼女の中で私への好感度が上がったから……らしい。
まぁ何回もエッチしてるんだから、少しくらいは好感度に変化があってもいいよね、とは思いつつ。ランクアップなのか……?と疑問に思う所もある。
ワカモの「あなた様」と似たような感じなのかもしれないと思うと、手前ちゃん改めシュロに対して胸がきゅんとしてしまう。やはり、少し、距離感は考えなくては。何より今はユズの前だし。
「あの子供達が、手前の怪談を『下らぬ妄想だ』と吐き捨てるんですぅ。折角の創作に対しあのような物言い、あんまりだと思いませんか?手前様からも何か、彼女らにキツイお仕置きを……♡」
「だって!自分は先生と添い遂げるクセにッ、他の生徒が潔く身を引いてるんだもん!ご都合主義にも程があるでしょ!確かに、ある意味『怖い話』ではあるけどさぁ!!」
「そ、そう!お姉ちゃんはともかく私がそう簡単に先生を諦めると思わないでよね……!」
「ハァ〜ッ!?何言ってんの!?先生を諦めるとかそんなの私達じゃないでしょ!狙った獲物は確実に仕留めるの!先生も!ミレニアムプライスも!!」
「……!そうだったね……!!」
「ふふふ、手前らの攻撃は手前には効きませんが、それでも、一発、
「ムキーッ!もう怒ったっ!解釈違いを押し付けるなんて許せない!やるよミドリ!」
「うん!」
今にもカフェの中でドンパチ始めそうだったので3人の間に割って入る。多分キヴォトスの幼稚園の先生もこんな感じの苦労をしてるんだろうなぁ、と春原姉妹に対して同情のようなものが湧いてくる。
「一旦落ち着いて2人共。実際のモモイやミドリ、ユズ、アリスにユウカにノアにハレ────皆は、そう簡単に諦めない、それでいいでしょ。シュロのお話と現実は別物なんだから、『それはそれ』って区別はつけないとね」
「で、でもー……そんな扱いされるのヤダよ……」
「まぁね……割り切れない想いもあるだろうけれど。それならそれで、聞かないようにするとか、避ける手段はあるものだよ。シュロの妄想を貶す理由にはならないと、私は思うんだ。何よりモモイ達だって自分達のゲームがクソゲーだって言われたら悲しくなるだろうし。多分それと同じだと思うよ?ねぇ、シュロ?」
「ええ、ええ、本当に。途中まで興味津々な様子で手前のお話を聞いて下さっていたというのに最後の凄まじい手のひら返しで、手前、悲しくて悲しくて泣きそうです……うわぁぁああん!!」
「あらら……泣いちゃった」
「え!?泣い……ええっ!?あわわわ……」
「え、えっと……言い過ぎてごめんなさい……?」
「わ、私も言い過ぎたよ、ごめんなさいっ!」
「……謝って済むと思ってんですかねぇ、
「「ッ!?」」
謝られたシュロは才羽姉妹をはいそうですかとは許さずに、取り出した本を振り上げ、モモイの頭を殴ろうとしたので……。
「こら、シュロ」
「はぅっ!?……え……て、手前様……??」
軽いデコピンで、彼女を止めた。すると「><」みたいな顔になり、そして、すぐに泣き出した。
「うわああぁあぁぁんっ、ごめん゙な゙ざい〜っ!!嫌いにならないで手前様ぁ〜!!ハーレム作ってて独占できないなら、せめて、手前のお話の中では、手前様を独占したくってぇ……!!」
「うんうん。私は、シュロのその想いは嬉しいよ。ありがとうね」
「ひぐっ、ぐすっ……ふえぇん……」
「確かに、皆の意識を変えちゃう怪異?は意味怖になるかもだけど、広く知られてる『意味が分かると怖い話』とは少し違うから、そのカテゴリーで話をするべきじゃなかったね」
「しかし手前、あまり『意味がわかると怖い話』はよくわかんなくて。そもそもこれを話し始めたのもそこのピンクが『怪談家なら意味怖もイケるよね』などと言い出したからですしぃ?」
「せ、責任転嫁!?」
「これに関してはお姉ちゃんが悪い」
「ミドリまでぇ!!」
「よしっ。なら、お手本に次は私が話してあげる!ユズ、アリスもおいで!私の話す『意味がわかると怖い話』は、本当に怖いよ〜?」
「「「「「……ゴクリ……!」」」」」
◆
ある日の仕事帰り、シャーレに戻ると────。
「ん……?」
執務室に、言い知れぬ違和感があったんだ。特に何か異物があるワケでもないし、例えば、怖い話でありがちな家具が勝手に動かされてたみたいな事があったワケでもない。
けれど、ほんの少し、確かな違和感があった。
「……あれっ、私のクッション……」
違和感の正体には、割とすぐに気が付いた。
ソファで横になる時、お気に入りのクッションを抱く事があるんだけれど────そのクッションが消えていたんだ。
常にソファに置いているから、どこかに持ち出すなんて事は無いハズなんだけどね。
でも私は「まぁいいか」と適当に放置して仕事に戻る事にしたんだ。盗聴器が仕掛けられてた事も、これまでに何回もあった程だし、物が無くなるのもクッションくらいなら──って、放置してたんだ。
「……今度は歯ブラシかぁ」
だけど、最初に放置したのが良くなかったのか、以降、私物がドンドン消えていくようになった。
タオル、ハンカチ、上着、スーツ、ワイシャツ、歯ブラシ、私が使ってるイス、靴下、下着────順繰りに、けれど確実にエスカレートしていった。
下手に聞くと「君が私の私物を盗んだのかな?」みたいに疑ってるように思われてしまうでしょう?だからそれとなく、怪しい子に「悩みを相談する」みたいな形で聞いてみたけど、様子がおかしくなる事も顔色が変わる事も特に無かったから、暫くの間そのまま放置してたんだけど。
「────うっ………………ふぅ。……あれっ!?」
ある日、ゴミ箱が消えていたんだ。ティッシュ、じゃないや、ゴミを捨てる為の、あのゴミ箱がね。
流石にこれは困るから、これ以上続くなら──と思ってね、犯人を叱る為にも、監視カメラの録画の映像を見たんだ。誰が犯人かは彼女の名誉の為にも言わないけど、よく見覚えのある生徒が、執務室に侵入してきていたんだ。
そして、その子の次にもう1人、執務室の入口を通った人が居た。…………それは、私だったんだ。
「これって────まさかまだ居r」
「ん、襲うね」
◆
「……」
「そっか、そうだよね。その犯人の次に先生が中に来たって事は
「先生は無事だったんですかっ!?怪我とか……」
「うん、何とか無事だったよ」
「よかったです……」
「手前様の私物を盗むだなんて、許せませんねぇ。もし次にそんな事をされようものなら──手前様?その時はすぐ、手前にご相談くださいね?」
「いいけど……どうして?」
「その時には手前が、手前様を盗みますのでぇ♡♡ ねぇ、その方が平和でしょ?せ・ん・せっ♡」
「「それはダメでしょーがっ!!」」
「うわーん!シュロの先生独占欲とイチャイチャの顕示欲が強すぎます!!アリスの目の前でキスとかしないでください、回路が焼き切れます!!回路が焼き、回路が回路、回回回かかかカカカカカカカカ────回路がショートしました、一時機能を停止します。再起動まで少々お待ちください。回路が────」
「唐突の『
「わ……わァ……。アリスが復活するまで少し休憩を挟もうか……」
その後、復活したアリスを交え、今度も私が似たような話を続けていく。意外と盛り上がった、私の怪談話は──シュロも目を輝かせて聞いてくれた。
◆
「最後に話すのも、私が実際に経験した話だよ」
「ワクワク……!」
「「ドキドキ……」」
「「ゴクリ……ッ」」
「ある日の深夜、仕事が溜まりに溜まっていた私は徹夜で仕事をしていたんだ。まぁこれはいつもの事なんだけど──そして仕事を終えた私は、その場で寝落ちしちゃったんだ。これもいつも通り。でも、朝になって起きると────!!」
「「「「「…………!?」」」」」
「なんと……
「ヒィッ!?」
「「「「…………?」」」」
ユズ以外の全員が、首を傾げてしまった。ユズは意味が分かったらしいが、他の4人は、意味がよく分からなかったようだ。
「え……どういう事……?」
「今のがオチ、ですか?」
「アリス、少し理解できません!カヤさんが毛布を掛けたのではないのですか?」
「────ここは、そのカヤさんとやらが手前様に毛布を掛けるという行為、行動そのものが怖いと、そのようにも受け取れますねぇ?」
「あっ確かに!ナイス考察!」
「あっ……。ごめん、この話はカヤがシャーレに来る前の話なんだ」
「「「「………………えっ?」」」」
「私1人で、シャーレに籠っていた時の話なんだ。当然、私は仕事場に毛布なんか持ち込まないから、私が自分で掛けたワケでもなくて」
「えっ……じゃあ誰かが忍び込んだ……とか?」
「いや、でも、シャーレだし警備システムとかあるはずだよ?」
「夜間であれば、警備システムが作動していると、以前に先生がお話していたのを覚えています!」
「──とすると、手前様に毛布を掛けられる者などどこにも存在しない──という事になりますねぇ。警備システムが作動しない、なんてのもおかしな話ですし。手前様は誰より非力で脆弱──そのようなポンコツなシステムなど導入しないでしょうから」
「当然、最初に話した時と同じように、後から監視カメラは確認したよ。でも、最初の子と違い、何も写る事はなかった。…………どう?怖いでしょう?」
「「「「ゾッとしました」」」」
◆
その頃、トリニティ総合学園、某保健室にて。
「へくしゅっ…………あうぅ……」
「あれっ、セリナさん風邪ですか?」
「そうかもしれないですね。先日救護した方から、もらっちゃったのかも?マスク、付けときますね。ハナエさんや皆さんに
「寒くなってきましたからねー。これからもお互い気を付けましょうっ!」
「救護を求める方がコチラに居ると聞いてッッッ!!!!」
「「あっ」」
保健室は消し飛んだ。
次回────先生、救援を求める手紙を受け取る。
次回とその次は、第3部への導入みたいな話です。既に6話は書き終えていますが定期的な投稿にする為にも一気に放出はしないように気を付けます。
シュロ、表情がコロコロと変わるから可愛すぎる。3話も連続でシュロ書いてごめんなさい。
後悔はしていない。