※この作品はR-18です。

「ハーレムルートを目指しましょう、先生」   作:アキラゼミ

75 / 135
中途半端、その意味────

 

「────では改めまして、簡単ではありますが、自己紹介をさせて頂きますわね」

 

 黄色髪の少女が他の少女達に招集をかけ、全員が集合して以降、リエに促され適当な椅子に腰掛け、校長室ならではの、少し高級そうな分厚い木の机を全員で取り囲むようにして座る。

 

「ハドマ学園生徒会長、改め、失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)議長、我猛(がもう)リエと申します。此度(こたび)の手紙の差出人は、(わたくし)で間違いありませんわ」

【挿絵表示】

 

 なんて巨乳だ。ハスミより少し小さいか、いや、身長はハスミより結構低いのだから、それも含めて身体の比率で考えるとリエの方が巨乳……なのか。

 たわわに実って──どころじゃないな。待て私、何を考えてる。少し、落ち着こう。

 

「あたしは鐘蟲(かねむし)スズ。役職は統治委員会の委員長。あと、あたしは2年生ね。コイツは3年」

【挿絵表示】

 

「まぁ。先輩をコイツ呼ばわりとは酷いですわ?」

 

 最初に出会ったあの少女は、スズというらしい。明朗快活な感じで、話していて少し気が楽になったくらいには、話しやすい方の部類に入ると思う。

 特殊な翼だ、透き通る翼なんかは見た事も無い。キヴォトスに来て初めて見た気がする。彼女の翼は悪魔や天使というよりは、御伽噺に出てくる妖精のような──そんな翼に見えた。

 

零得(ぜろえ)ルビー、です。えっと……まだスズ先輩の部下やってます、いつか倒したいです……。不束者ですがよろしくお願いします……///」

 

「いやマトモに自己紹介しろし」

 

「え、えっと……統治委員会の副委員長、です。まだ1年生です。殴るのと、蹴るのも割と好きなので、よろしくお願いします……?」

 

「なんか不穏に聞こえるけどボクシングとかキックボクシングとかが好きっていうだけの1年だから、言葉足らずだけどそんな気にしないで、先生」

 

「う、うん。私は特に気にしないから……」

 

「大丈夫ですよ先輩、誤解なんてさせませんから。だって……ねぇ?……ふふっ……♪」

【挿絵表示】

 

 言葉足らずというより、誤解させに来てないか?

 そう思ってしまうくらい、彼女は言いたい内容を端折り過ぎな気がする。確かにボクシングは殴るしキックボクシングは蹴るだろうが、それを殴るのと蹴るのが好きと表現するだなんて。個性的というか何というか。もしボクシングやキックボクシングが好きな生徒が居たら敵に回してしまいそうで……。

 

「ハロハロ〜。針村(はりむら)ルーシィ、2年生。一応、私が生徒会の副議長をやらせてもらってる。よろしく」

【挿絵表示】

 

 ここまでで、3年生はリエだけ。層が薄いのか、それとも単純に上からの呼び掛けに応じそうだから招集されたのがこの子達だけなのか……。

 普通なら生徒会長の呼び掛けには応じそうなものだけども。マコトみたいに色々やらかしてるのなら話は別だが……まさか、リエもそういうタイプか?

 少なくとも、現時点ではそう見えないからこそ、逆に怪しく思えてしまう……。

 

天河(あまがわ)アンナと言います。生徒会で、書記を務めています。2年生です。よろしくお願いします」

【挿絵表示】

 

 書記の子は清楚系女子って法則でもあるのかな。ノアもそうだし、このアンナって子も凄い清楚系に思えてならない。でもノアと違うのは、余裕そうな表情ではないという所だろうか。

 

三重(みえ)アスカ、です。自分で立ち上げた美食研究会対策委員会の委員長をやっています。お菓子作りが趣味です。美食研究会は私の敵ですので、いつかは潰す予定です。その時は指揮をお願いします。あと2年生です」

【挿絵表示】

 

 私が気になっていた「美食研究会対策委員会」の委員長が目の前に居たとは。美食の生徒達とも既にハーレムという関係を築いてしまっている以上は、はいそうですかとアスカのお願いは聞けない。

 できる事なら、平和的な解決に至りたいものだ。キヴォトスに住まう悪魔の子達は、何だかんだで、温厚で優しい子ばかりだから。

 

弖使魔(てしま)シエル!連邦生徒会対策委員会の委員長をやってるよ〜。実質的にはリエが委員長だけどね、生徒会長だからさ。表向きには私が委員長なんだ。そんなワケでよろしくね?」

【挿絵表示】

 

「デカイ顔してるけどコイツは1年のガキよ」

 

3年(・・)、ね?スズよりも先輩だよ?ん?」

 

「ケッ」

 

 スズと大差無いように見えるというか、確かに、スズの方がまだ先輩に見えなくもないというか。

 どちらも童顔というか、中学生と言われても納得できてしまうような幼い姿だ。シエルの方は3年生らしいが──いやでもヒナと変わらないか。ヒナは実質的に小学5年生と変わらないんだし……。

 

「──以上となります。七天魔(しちてんま)、揃い踏みですわ」

 

「しち……てんま?」

 

「学園内で強い7人を纏めてそう呼ぶんだ。7人の天使と悪魔、略して『七天魔』ね」

 

「成程。纏まりとしては分かりやすくていいね」

 

 上のヤツら──と彼女は言っていた。その「上」というのは、立場(・・)が上というだけでなく強さ(・・)という意味の方が強いのだろう。

 

「因みにその頂点がこのあたし!鐘蟲スズ様よ!」

 

「「「「「「…………………………」」」」」」

 

「……スズ?皆、スズのこと睨んでるけど……」

 

「あー?あぁ、事実だから言い返せないんじゃん?ハーッハッハッハッ!」

 

「調子によって雑魚にもなるクセに」

 

「七天魔で最弱であり最強でもある自己矛盾女」

 

「強い時は強いから腹立つんですよね、先輩……」

 

「気分屋」

 

「虫の羽根」

 

「クソバエ」

 

「最後の方、完全に悪口でしょうがァ!?あんたら叩きのめされたいの!?クソバエ言ったヤツ誰!?ブッ殺すわよ!?」

 

「今日は強い先輩ですか?雑魚の先輩ですか?」

 

「ルビィィィィィィ!!!」

 

 カヤの言葉の意味が、やっと分かった気がした。ハドマは、ゲヘナに例えるとしたら、ヒナのように飛び抜けて強い1人が居ないから荒れてるのだと、そんなに強くないからこそ荒れているんだろうと、私はそう解釈していた。

 しかしこの解釈は、当たっているようで、完全に満点の正解とは言えないものだった。

 予想とは違っていた。皆が弱いどころじゃない、組織の頂点やそれに準じる者が等しく強い(・・・・・)からこそ逆に纏まりが無く、そう見えてしまうらしい。

 成程、なんて中途半端なんだ。

 こんな事なら、いっそ全体的に弱くて、1人だけ強い方がまだ統治もしやすいというものだろうに。ゲヘナ学園やゲヘナの自治区がまさにそうだろう。全体的なレベルはともかくヒナが頭一つ抜けて強いお陰で纏まっているような所があるじゃないか。

 ────まさか、こんな所でヒナの凄さを再確認する事になるなんて……。

 

「──双方、収めなさい。スズさんイジりもせめてお客人の居ないときにしましょうね。スズさんも、あまり自己顕示はしないよう」

 

「リエも言われてみれば?言われた方の気持ちも、少しは分かるっつーもんよ」

 

「私は……まぁ、かつては言われる側でしたからね、理解は示しますが……」

 

「……ケッ!」

 

 あまり仲は良くないようだ。こういうのもまた、学校内が荒れる原因の一つなのだろう。トップ層がこんなにもいがみ合っていては……。

 ゲヘナ学園もそうだった。風紀委員会と万魔殿の確執については、今更、言うまでもないだろう。

 

「そんなこんなで主なメンバーは揃いましたので、そろそろ会議を始めたいと思います」

 

 リエは資料を配布していく。頬杖をついたり欠伸しながらでも、それぞれきちんと目を通している。ただ1人を除いて……。

 

「あ、あの……アスカさん?」

 

「……?何ですか?」

 

「会議を始めますので、スマホはしまって頂けると嬉しいのですが……」

 

「あー……ちょっと待ってください、さっき作ってたお菓子がそろそろ冷める頃なので……遅いなぁ……

 

「はい?仰っている意味がよく────」

 

「お待たせしましたぁっ!」

 

 額に青筋を浮かべたリエはアスカに追求しようとするも、そんな彼女の言葉をブツ切りにするように校長室の扉が勢いよく開かれる。

 そこには、小さな袋を幾つも載せたお盆を持った天使の少女が居た。

 

「……あれれ?何ですか、この雰囲気……?」

 

「あなた。今は会議中ですよ」

 

「はぇっ!?すすすすみませんっ!わっ私はただ、アスカ先輩に呼ばれて来ただけなんですけど……」

 

「遅いわよ、サエ。会議が始まる所だったでしょ」

 

「はわわっ、ごめんなさいっ!こちらさっき先輩が作ってたクッキーですっ!」

 

「……うん、よく冷めてるわ。ありがと、サエ。後でジュース買ってあげる」

 

「わぁ!ありがとうございますっ!失礼します!」

【挿絵表示】

 

 元気な子だなぁ、と遠い目をしてその子の背中を見送る。天使の翼も、嬉しそうにフリフリと動いてその喜びを表現していた。

 

「あの子は、樫田(かしだ)サエ。美食研究会対策委員会の、副委員長──私の補佐役です」

 

「アスカと同じ2年生なの?」

 

「いえ、あの子は1年生です。妹と同じクラスで、妹につられる形で入ってくれたんですけど……。私が思ってたよりもお菓子作りにハマってくれたみたいなので、副委員長にしたんです」

 

「そうなんだ。妹さん居るんだね。美食研究会対策委員会って、お菓子作りもしてるんだ?」

 

「『も』というより、そちらがメインですね。ただアイツらは私達の敵なので……」

 

「……あはは……」

 

 何とも言えない。確かに美食研究会はテロ行為を普通にしているから、恨まれる筋合いはあるんだ。だからこそ庇いたくても庇うのが難しいのはある。

 サオリ達アリウススクワッドはベアトリーチェに操られて。カヤは治安を良くしようとして。ミカはアリウスと仲良くした上で……ゲヘナを潰す為に。

 アリスクやカヤ、ミカはまだ庇える要素がある。ミカはゲヘナを潰そうとした所だけは擁護不可だがアリウスと再び手を取り合おうとしていた事実には目を向けたい。

 しかし美食研究会は、確固たる信念こそあるが、値段に合わぬ料理店や食品偽造をした店舗なんかを爆破する。確かに料理店のした事は愚かだが爆破は流石にアレである。ヤバイ。

 

「……ちなみに、美食研究会とはどういう理由で敵対しているの?」

 

「黒舘ハルナが……っ……!!私のお菓子を食べて、文句を言ったんです!『砂糖が多すぎ』、『砂糖のベタつきが執拗い』だの!良いじゃないですかっ、甘さは疲れを癒すんだからっ!!晄輪大祭で出店を出して、前夜祭、本祭と皆でワイワイしてたのに!あれは後夜祭の出来事でした、美食研究会を名乗る4人が私達の出店に来て……!!」

 

「……それで爆破されたんだ?」

 

「そうです!鰐渕アカリは『砂糖でお腹いっぱいになりそうです☆』とか言うし、獅子堂イズミなんか歯磨き粉みたいなのをお菓子に掛けて『こうするともっと美味しくなるよ〜!』とか言う!そっちのがお菓子への冒涜だわ!!」

 

「……ジュンコは、何か言ってた?」

 

「赤司ジュンコは……『甘いけど美味しい』とだけ。だから……あの子だけは敵視してないです」

 

「そっか……」

 

 そんなに甘いのか、彼女のお菓子は。

 先程サエに配られたクッキーを見ると、表面には大量のツブツブが乗っている。ザラメだろうか。

 

「……頂きます」

 

 手にして「粒多すぎでは?」と感じ、口に含んで砂糖の味しか感じず、咀嚼して砂糖を噛んだようなシャリシャリ感が口内に広がる。

 クッキーの形をした砂糖の塊を食べたかのような錯覚に陥りそうになった。

 

「ど……どうですか、先生……?」

 

「美味しいんじゃ、ない……カナ……?」

 

「わぁ!良かったです!えへへ、先生にそう言って頂けて、少し、自信が持てましたっ!」

 

 ごめん。流石に美食研究会と敵対しようとしてるくらいには腕に自信のある生徒に対し、真っ向から地雷を踏む気にはなれない。

 流石にあそこまで甘いとは。ただ、抹茶には凄く合いそうだ。クッキーの見た目をしたお茶菓子と、あまり変わらない感じだ。

 

「で、では、お茶請けも届いた事ですし、そろそろ会議をですね……ええ、始めましょうか……」

 

 甘さにゲンナリした様子のリエが、場を仕切る。アスカも今度は資料に目を通し、ようやく、ゲヘナ学園との併合を避ける為の会議が始まった。

 しかしどうやら、私が思っていたよりもずっと、問題は根深いようだ…………。




次回は神絵師様による挿絵あるよぉ!!
AIなんぞと違って魂が籠ってますわぁ。うふふ。
t2i(プロンプトのみから出力すること)で出力したイラストと人力のイラストを見比べ、改めて人力の美しさでニヤける。これもまた1つの楽しみ方。

ハドマと先生、ゲヘナ(トリニティ)の関わり等は
第3部「先生!もっとあたし達に構って!」にて。
https://syosetu.org/novel/330714/

エデン条約編みたいな、ちょっぴり胃が痛く、重くなるようなお話を書いてみたい。レッツトライ。
週2以上の投稿、20話以内での完結が目標ですが、目標なんて狂いまくるのが私なので、あまり期待はできないと思われます。
多分、更新頻度は不定期になるし、話数は増える。

翼フェチのせいで、翼キャラばかりになってしまうという。角の造形は特に多種多様過ぎてその殆どがしっくり来ないし、難しい所です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。