「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「ひっ!?」
「っ!シャーレの緊急防犯システムが作動中です!何者かが、シャーレに不法に侵入しました……!」
「なんだって……?」
────その日、シャーレは襲撃を受けた。
◆
「おはようございます、先生♪」
「おはようハナコ。じゃ、いつも通りよろしくね。あと、アズサから聞いてると思うけど……」
「はい♪……わぁ、本当に元代行がシャーレに♡」
「……?」
「カヤ。こちらはハナコ。今日の仕事が終わったらハナコお姉ちゃんに面倒を見てもらってね」
「はーいっ!よろしくぅ、ハナコおねーちゃん!」
「はぁい、よろしくお願いします、カヤちゃん♡」
今日のシャーレの当番は、補習授業部のハナコ。カヤの人格は、第2の人格である幼カヤ。平和だ。ハナコからのエッチな絡みが楽しみゲフンゲフン、普通に困るんだけれどね。カヤの前だし。
程なくして幼カヤはPCの業務を終え、いつもと同じように絵本を読んだり絵を描いたり、なんなら動画サイトで動画を見たりして過ごし始める。
私はそんなカヤを横目で見守りながらも、淡々と自分の仕事をする。
「ねーね、せんせ?」
「んー?どしたの?」
「ハナコお姉ちゃん、服パタパタ〜ってして、お腹見せてくるよ?エッチしたいのかな?先生、エッチしてきなよー、エッチエッチ〜」
「……ハナコ。子供の前でそれはやめなさい……」
「はぁ〜い♪」
全く、あの巨乳を揉まれていいのかな。というか私はもう揉みたくて堪らない。でもハナコは、いざ迫られると怖気付くタイプに見えるんだよなー。
制服の上からでもわかるあの凄い巨乳、今日中に揉みたい所だけど、カヤをどう寝かせるか、だね。そうすれば後はハナコとの2人きりだから、意外とどうにでも────コラ執務室でスク水になるな。ナチュラルに脱ぐんじゃないよ。
「こちら、カヤちゃん用のスク水です♪」
「わぁ!ありがとぉ!着てみていーい!?」
「はい、モチロン♪……ね、先生♪」
「……そう、だね」
カヤに渡したスク水は白だ。しかしまぁ──白のスク水、意外とカヤに似合うんだね。連邦生徒会の制服が白いから、白い格好が似合うように見えるのかもしれないけれど。
「えへへへ、先生、どーかなっ?V字っ♡」
「ゴフッ」
「まあ♡」
グイッと付け根辺りからスク水を持ち上げ、股にグッと食い込ませる。どこかのシスターの「覚悟」みたいなすごい角度を見せてくれるものだから私もうっかり鼻血出してしまった。
「ハナコ、変なことカヤに吹き込まないでね……」
「それはもちろん♪」
ルンルンな様子のハナコだが、本当に、私の話を分かってくれているのだろうか。これでカヤが私をスク水で誘惑なんかし始めた日には、当番の生徒の目の前だろうとカヤを襲ってしまいそうで……。
「って、ハナコ!サラッとスク水にならないの!!早く制服着なさい!」
「うふふ、いいではありませんか♪ せっかく私が当番なんです、先生もイキ抜きでも─────」
ハナコが顔を赤らめてそんな事を言った、まさに直後。執務室──否、この階全て、いやシャーレの建物の全域に警報が鳴り響いた。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「ひっ!?」
「っ!シャーレの緊急防犯システムが作動中です!何者かが、シャーレに不法に侵入しました……!」
「なんだって……?」
ハナコは、いつの間にか制服を着て、パソコンを立ち上げてシステムにアクセス。ハナコによると、シャーレのシステムに登録されてない者によって、共用スペースより奥に侵入された──とのこと。
有り得ない。絶対に有り得ない事だ。FOX小隊であろうと、生徒である以上は顔認証システムへと登録してあるのに。他の誰が居る?
ロボットなんて顔は量産型なんだ、あのラグビーボールみたいな頭のロボも登録してあるんだから。登録していない顔と言ったらそれこそ、カイザーのロボとか、そういう……。
「……参ったな」
なんにせよ、このシステムが起動するって事は、生徒と一緒に来たとか、そういう事では無いはず。
私や生徒など、登録してある者が連れ込む場合、セキュリティシステムは起動しないからだ。つまりこのセキュリティが鳴ったという事は、侵入者は、完全に侵入者
そして、コンビニなどがある共用スペースよりも上に、つまり「関係者以外立ち入り禁止」ゾーンに既に侵入済みという事だ。私や生徒達、業者のみが入れる場所に。……つまり。
「カヤ!寝室に避難しなさい!」
「でっ、でも!先生!」
「いいから行きなさい!」
「やだ!カヤここで先生を守る!超人だもん!!」
「超人なら私の言う通りにできるでしょ!」
「超人だもん!先生守るもん!カヤの超人パンチで敵をぶっ飛ばすもん!!」
「ッ……ハナコッ!」
「……はい。行きますよ、カヤちゃん」
「っ!?やだ!離して!ハナコお姉ちゃん!やだ!やだよ!先生っ!せんせぇっ!やだ、やだ!先生も来て!先生も避難するの!先生!先生ぇぇっ!!」
ハナコの方が力は強いから、泣き喚くカヤの事をズリズリと引き摺って寝室へ連れていく。寝室は、内側から鍵をかけるタイプだ。だが外開きなので、扉の前に重い物を置いておけばそれでいい。
「ッ……一体、誰が来たって言うんだ……?」
監視カメラにアクセスするも、普段通りの画面を写すばかり。ハッキングされてるのかもしれない。
カヤが泣き叫び、扉を叩き壊さん勢いで叩いてる音が執務室まで聞こえてくる。ハナコも、どうにか執務室まで戻ってこられたが酷く汗をかいている。
「はぁ……ッ、怒鳴るなんて大人気ないな……」
「それだけカヤさんを守るのに必死って事ですよ」
「あぁ、ハナコ……ありがとう」
「それより先生、どうしますか?」
「とりあえずモモトークで一斉送信してシャーレに来ている、もしくは近くにいる生徒を招集中だよ。侵入者が来たとは言ってないけど。ワカモあたりが来てくれると、サイコーに助かるんだけどね。あとミカも最高だね」
アキラと連絡先を交換していないのが痛すぎる。アキラだったなら、私やカヤ、ハナコの3人くらい避難させるのなんて楽だろうに……。
あーあ、キスする前に連絡先くらい聞いとけば。次に会ったらそうするかな。
「……って、先生!?なんですかこのモモトーク!?あまりにお気楽すぎでは!?」
「え、ダメ?」
「なんでこの非常事態に『近くに居たら来てね〜』なんてメッセージを送るんです!?」
「いざとなったら執務室ごと敵を処理するからさ。生徒を巻き込むワケにはいかないからね、無闇には呼ばないよ」
「先生っ……」
それに加えて、今の時間は授業中のはずなんだ。だから、もしシャーレが危機的状況だと思ったら、割とそこかしこで授業が崩壊する可能性もある。
だから、ミカが来てくれたら有難いけれど、絶対頼れないんだ。ミカは、授業中だからね。これ以上トリニティで問題なんか起こさせないから。
「安心してよ、この執務室は特別頑丈なんだから。ハナコも、避難の用意はしておきなね。避難袋なら寝室にあるから、窓に取り付けてカヤと逃げてね」
「……嫌です。サポートの為、最後まで残りますよ。たとえこんなふざけているメッセージでも、先生の人望なら生徒の1人や2人は来ますから」
「ハナコ……」
ホームレス状態のRABBIT小隊辺りは来てくれたりしないかなぁ、と思っていると、なんとそれなりに一斉に返信が来た。
ミレニアム生徒──大半が授業中、部活中
トリニティ生徒──〃
ミカ───────授業中
セイア&ナギサ──ティーパーティーの会議中
百鬼夜行─────大半が授業中、部活中
ワカモ──────急行中
アビドス生徒───遠いので見送り
便利屋68─────向かっている途中
レイサ──────行っていいのか不安
赤冬───────そもそも遠いので無理
赤冬工務部────
SRT(兎)───向かっている途中
「……!」
その他、返信の無い面々などは、授業中だったり仕事中だったり。または返信があっても、遠いからという理由である。
ワカモは何処にいるんだ。ワカモの事だ、遠くに居たとしてもこっちに向かってきてくれそうだし、それだけが不安だ。
便利屋の4人、RABBIT小隊の4人、これはいい。最高だ。敵の規模によるが、8人も居れば、恐らく無事撃退できる可能性は高いだろう。
ダダダダダッ!ドカーンッ!ドゴォォォッ!!
「……先生っ!」
「分かってる。多分これは自動迎撃システムの音。敵の攻撃ではなさそうだ。とはいえ、このままだといずれ敵は来る。────戦うしかなさそうだね」
「せ……先生ッ!?これは……」
私の机の裏にあるスイッチを押すと、天井から、ショットガン、マシンガンなどの武器が掛けられた簡易武器庫が降りてくる。緊急避難用のハッチを、軽く改造したものだ。
これらの武器は、この前アオイに申請した、私の訓練の為の武器ではない。元からあったシャーレの在庫だ。廃棄予定とされていたものなので、勝手に盗んだとかそういうワケではない。
貰ってく事自体はリンちゃんに報告してるしね。整備の仕方も、トキやアズサ、時にはサキからも教えて貰いながら、時間のある時に整備するようにしている。
「ハナコ、
「は、はい!?先生が前線に出られるんですか!?危険です、やめて下さい!生徒の到着を待ちます!いえ、私が戦います!」
「敵はまだ何階か下の方に居る。今のうちに、罠を仕掛ける位の事はできるよ。こう見えてもムツキやクルミから爆弾の仕掛け方は教わってるんだよ?」
「……っ、仕方ないですね…………!先生のスマホと、こちらのパソコンを同期しますから!案内に従ってください!私の案内が無くとも、危険と判断したらすぐ避難してください!いいですねッ!?」
「わかったよ」
まぁ「爆弾を仕掛ける」だけで済ませる気は無いけれどね。サオリに実戦指導をしてもらう前にまず私の実力を把握しておく必要がある。これは、良い機会なんだ。ハナコには悪いけどここは私が出る。
身を縮めれば全身が入るサイズの、強化ポリカーボネートのシールド、アサルトライフルを持って、執務室を出発。当然、シッテムの箱は起動済みだ。
「アロナは防御をお願い。プラナは、敵の分析と、敵が無線系の機械類なら──ハッキングしてみて。可能な限り敵機もこっちの手札に加えてやろうか。そんでもって、命令を書き換えて同士討ちさせて、ジ・エンドってところだね」
シッテムの箱って、割となんでもありだもんね。オンラインじゃなくても軽いハッキングくらいならできそうだ。
『分かりました!スーパーアロナにお任せをっ!』
『承知しました。敵勢力の人員を検索開始────現在地より6階下に、4名の人影があります。監視カメラが13秒前に破壊され、使用不可能である為、各階のセンサーから間接的にのみ観測が可能です』
「OK。4名か、ミヤコ達や便利屋じゃないの?」
『否定。成人程度の身長が3名、子供が1名。またその子供にのみヘイローの存在を確認。成人程度、仮の略称として「大人」と呼称しますが、子供は、大人の1人により背負われているようです』
「ッッ……!?」
シャーレのシステムに登録していない子供だと?そんな子が、このキヴォトスに存在しているのか?生まれたての赤子でもあるまいし。ヘルメット団の末端の方は流石に登録など無理に等しいかもだが、それだって可能性は低いだろうに。
「……プラナ、シャーレの警備ドローンを起動して。敵の出方を見よう」
『承知しました。最寄りの格納庫より警備ドローン起動。……敵を発見。映像を転そ──』
プラナの言葉が止まる。立ち止まり、シッテムの箱を取り出して様子を見るが、あわあわと、何故か慌てている様子だ。
「どうしたの?」
『起動後2.6秒以内に、警備ドローン126機のうち、半数の63機が敵によりハッキング。ドローンは同士討ちを開始。カウンターを試行中。──カウンター不可能。アクセス、シャットアウト。こちらからの干渉が強制的に絶たれました。どうしますか』
「なっ……!?」
すると今度は、胸ポケットからハナコの声が。
『先生ッ!屋内のセンサー類を全て掌握しました!また、外のカメラも謎の人影を写しています!!』
「外だって!?……プラナ!」
『検索中。──野外のカメラの無事を確認。しかし逆光により人影の有無のみ把握可能。人影は4名、いずれもヘイローの存在を確認。ロープを使用し、シャーレ外壁を移動中である模様。どうしますか』
「……4名……ヘイロー……窓から侵入するつもりか?プラナ、自動換気システムをハッキングして近くの窓を開けるんだ!RABBIT小隊が来たッ!!」
『──疑問。本当にRABBIT小隊の場合、4名全員が現場に突入するでしょうか……?』
『私もそう思います!彼女達の戦術からしても4人全員が現場に来る事は無いと思います!少なくともモエさんは遠隔からサポートするはずです!恐らくプラナちゃんの想定通り……RABBIT小隊ではないと思います!」
「────ッ!!」
ハナコが私のスマホに外カメラの画面を共有し、ロープでこちらを登ってくる様子を見せてくれた。何階かはよく分からないが、確かにヘイローがあり4人分の人影がある。
『あとその4人は便利屋68の4人でもありません!便利屋68は、たった今、シャーレのエンジェル24の前を通過しました!先程確認しましたが、1階のみカメラが生きています!』
「…………!?」
まさか敵はヘルメット団でも雇ったの?こちらが階下から迫る敵に集中している間に、窓あたりから侵入させたヘルメット団(仮)と挟み撃ちにする、そんなところか?
「……アサルトライフル1丁で足りるのかな……」
このポリカーボネート製の盾にも、ホシノの盾と同じように銃がついている。しかし、銃は1丁で、予備のマガジンもたった1つ。つまり私の武器は、執務室から持ってきたアサルトライフル1丁、盾とセットの拳銃1丁とマガジン、ベレッタのみ。あと手榴弾、爆弾がポケットに数個か。
ワカモが助っ人を雇うのは分かるがたった3人を雇うか?いや、RABBIT小隊の突入組3人とワカモで4人、それならモエが居なくても現場には4人だ。
────ダメだダメだダメだダメだッ!戦闘中の希望的観測は判断を鈍らせて命を削る!落ち着け、これまで生徒達を指揮してきたじゃないか。それを今回は自分が実践する。ただそれだけの事だろう。
『先生!敵がエレベーターに乗り込みました!』
「落ち着いてハナコ!エレベーターは動かないッ!緊急防犯システムの作動中は、私からの命令でしか動かない!!」
『扉が開きました!……動いてます!エレベーターが動いてます!!こちらの階に向かっています!!』
「な……にィ……ッ!?……プラナ!!」
『──ハッキングされました。緊急防犯システムもハッキングされつつあります。既に、1階から順に非常アラートが解除され始まっています。──また先程のドローンの生き残りが階段を使用しこちらに向かってきています。このままでは、エレベーターから出てくる4名とドローン群によって挟み撃ちにされてしまいます』
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
どうする。もしこれからドローンの群れと4人の敵に挟まれたら、逃走も応戦も絶望的だ。アロナの防御だって無敵じゃないのは、エデン条約のときにアリウスからの巡航ミサイルで経験した。ならば、私は────。
「強行突破だ!アロナ、防御を怠らないこと!』
『はいっ!!』
「私はドローンを壊して、階下で便利屋と合流し、野外の敵を撃退、あとはエレベーターから出てくる4人を倒す!ハナコ、カヤを連れて逃げて!!」
こんなとこで「大人のカード」なんか使えない。死にそうになったら使ってやる。そのときは直接、誰を呼ぼうかな……やっぱワカモだな。
『いけません!私は最後まで先生を──』
「私は下に向かい便利屋と合流する!敵は執務室を狙っているかもしれない、だから逃げて!」
『私だって戦えます!爆弾だったら、先生が持っていかなかった分があるんです!先生と同じように、罠を仕掛けるくらいの事は、私にもできます!!』
「…………仕掛け終わったらすぐ逃げなよ!」
『
「ッッッッ」
優しいんだか、強情なんだか……!!
ハナコの言葉に背中を押され、執務室のある階を離れようと階段へ向かう。
ハナコが爆弾を仕掛けるなら、あまり加減なども詳しくは無いだろうし、それなりの量になるはず。まぁそれでも、私よりは詳しいだろうけどね。
「プラナ!エレベーターの速度を遅延させるんだ!ハナコが爆弾を仕掛ける時間を少しでも稼ぐ!!」
『承知しました。──1mmにつき0.05秒ずつ遅延させます』
エレベーターをひとつ取っても、制御システムは1つだけの系統じゃないからね。幾つもの緊急用の制御システムを用意しとく、それが万全な状態ってものだ。
緊急時のシステムは完全に乗っ取られたようだが普段使いするシステムまではノータッチだったか、それとも、敵のハッカーでもそこまでのリソースを割けないのか……。
恐らくはガバではない。緊急時のシステムすらも乗っ取るような敵なんだ、基礎的な制御システムを真っ先に乗っ取るはずだ。それなのに緊急系統しか乗っ取らないという事は、単にリソース不足だな。
「プラナ……いやアロナ!ドローン追加しよう、敵のハッキングのリソースを、余分に割かせる!敢えてハッキングさせてやって、システムのハッキングにガバが出ないかを見張って!」
『分かりました!ドローン180機追加です!同時に、各階のエレベーターホール前に待機!執務室前にも50機を呼びました!』
「ハナコ!今からドローンが行くけど、シャーレのだから気にしないで設置して!終わったら執務室に隠れるんだよ!」
『!?……了解ですっ!』
「……どう?アロナ?ハッキングされた?」
『……いえ……今回は、ハッキング、されません……!どうして!?さっきは起動後、敵の元に向かう前にハッキングされたのに…………!』
「ワケわかんない敵だな……読めない……ッ!!」
『先程ハッキングされたドローンは、未だこちらに向かってきています』
敵は6階下からエレベーターで上昇中とのこと。1階くらい下がったところで外の敵とも合流はまだしないだろう。まずはドローンを、階段を下る私と階段を上る便利屋で挟み撃ちにしてやる。
『警告。先生、階段に踏み入ってはいけません』
『特に窓の付近に近付かないで下さい!』
「っ!?」
『外の4名はすぐ下の階段傍の窓の付近にいます。逆光になるよう狙って移動しているようです。敵か味方かは改めて目視にて判断するしかありません。ドローンは、爆弾を階下に投げ込んで処理するより先生の身を守れる安全策はありません』
「くッ……もう登ってきたのかっ!!逆光逆光って、上手いこと狙ってるな、敵さんも……!!」
────視野を広く持て。音を聞き逃すな。場を客観視しろ。ここはシャーレ、私の家だ。誰よりもこのシャーレの建物をよく知っているはずだろう。イメージしろ。俯瞰しろ。自分を駒だと思え。普段生徒を導くように、私は私を導く────!!
「……聞こえた!ドローンの駆動音だ!」
非常アラートが遂にこんな所までオフになった。しかし好都合だ。お陰でドローンの音が聞こえた。
壁で跳ね返るように勢いと角度をつけて手榴弾を階下へ向かって投げ込むと、爆発音と共に、機械の破片が飛び散る金属音が聞こえてきた。
「ダメ押しにもう1個、くれてやるっ!!」
『────手榴弾にて残存ドローンの反応が消滅。便利屋68の4人は、3階下まで登ってきています。このまま階段にて合流した場合、便利屋68を指揮し野外の敵を先に迎え撃つのが得策です』
「……それしかないのか。ハナコ、そっちは?」
『エレベーターの扉が開くのと同時に起爆するよう設置しました!それぞれ扉の下部、中央部、上部に2個ずつです!』
「扉を爆破するように仕掛けたか……。ブリーチングみたいなもんかな……?FOX EATS以来だよ、それでシャーレが壊れるの!」
爆弾を計6個も仕掛ければ、エレベーターごと、敵も吹っ飛んでくれるだろうか。ヘイロー持ちならその「子供」とやらは大丈夫だろう。問題はその、ヘイローを持たないという「大人」3人だな。
すぐそこの窓の近くに4人の敵が────私も、同じように爆弾を仕掛けて吹っ飛ばすか。
「プラナ。爆弾で吹き飛ばすのはどうかな?」
『────成功確率、約12%程度と推定。穴から、1人でも侵入してくる確率、約88%です』
「その場合は至近距離での撃ち合いになるか……」
『はい。その場合、1人、2人ならばアロナ先輩が守れます。3人以上は厳しいか、長持ちはしないと予想。爆弾を使用し壁の向こうの敵を処理する場合確実に吹き飛ばす必要があります。非常にリスクが高いと思われます。オススメしません』
窓や壁を破って侵入してこないあたり、恐らく、私が階段を通るのを待ち伏せしてるんだ。それなら私が先に迎え撃ってやりたい……んだけど。
「プラナ。私、手榴弾の威力とか詳しくないけど、窓なら余裕で壊せるよね?」
『はい。しかし手持ちの手榴弾で敵を吹き飛ばせる確率は12%程度。更には、位置関係からして、窓を手榴弾にて破壊しても壁に隠れられるかと』
「……だよねぇ……」
『寧ろ、窓を破壊する事によって敵をシャーレ内に招き入れてしまう事になります。何にせよ得策ではありません。このまま便利屋68の集合を──』
エレベーターホールの方から、凄まじい爆発音が聞こえた。床が揺れ、天井から破片のようなものがパラパラと落ちてくる。
『先生、エレベーターの扉が開いて爆発しました!無事ですか!?』
「私は全然大丈夫、階段の所に居るから。ハナコは大丈夫だよね?」
『私は大丈夫です、執務室内に待機しています!』
ハナコが無事ならそれでいい。さて、正々堂々とエレベーターから来た敵さんはどうなったのやら。
「プラナ。エレベーターの敵は?」
『捜索中。────監視カメラ、センサー共に使用不能。目視で確認するよりも────先生、伏せてください!』
「え」
突如、目の前の──階段の窓枠が爆破され、壁の破片ごと吹き飛んだ。元々ポリカーボネートの盾を外の敵が居る方に向けていたから、どうにか破片の直撃を免れる事はできた。だけど────。
『エレベーターホールの爆破に伴い、野外の4名も爆弾を取り付け、爆破したようです。1人目侵入。2人目、侵入。……映像が遮断。爆破の衝撃で野外のカメラも破損しました』
『先生、1人目が来ます!!』
「うっ、うわぁあああっっ!?」
ダダダダダダダッ!!ドォオオオン!バァンッ!
銃を連射。手榴弾を投擲、爆破。とにもかくにも攻撃、攻撃、攻撃、攻撃。手榴弾や爆弾などは直ぐ在庫が切れ、アサルトライフルも弾切れ、銃の形の木偶の坊に成り果てる。
しかも手榴弾の1つは煙幕だったらしく、白煙がもうもうと立ち上る。
「クッ、ゴミエイムか私!」
「閃光弾いくよッ!」
「!?」
閃光弾────その言葉を聞き目を瞑らないとと咄嗟に頭で判断する前に、盾を構えて目を閉じる。バッとまぶたをも貫通する凄まじい光、盾を構える私は手で目を覆うこともできず光に飲み込まれる。何発か撃ち込まれ、その衝撃で構えを崩され、盾と一緒に倒れてしまった。ベレッタを取り出す暇すら無いなんて……。
「対象沈黙!このまま包囲するわよ!」
……対象?……私のこと?いや……待て。聞いた事のある声だ。まさか、ロープで外壁を昇ってきた4人というのは────!!
「って……せ、先生っ!?」
「クルミ……!?」
外から侵入してきた4人とは、FOX小隊だった。ポイントマンのクルミが先陣を切って侵入してきたらしい。返信は無かったはずだが────。
「先生、大丈夫ですか!?」
ニコが武器を投げ捨てて駆け寄り、盾を払い除け私を起こしてくれた。クルミは綺麗な金髪を揺らし慌てた顔で私の肩をガクガク揺する。
「せ、先生っ、大丈夫!?まさか私の弾、どこかに当たったりしてないでしょうね!?」
「落ち着け。……先生に出血は無い。盾に被弾したがその勢いに負けたんだろう。……無事ですか、先生」
「や……やぁ、ユキノ……ちょっと久しぶり……」
「びっくりした……先生が前線に出てたってこと?」
「オトギ……」
4人……やっぱり、FOX小隊だったのか。じゃあ、すぐ侵入してこなかったのは様子見でもしてたのかその辺だろうか。
「先生が前線にとか嘘でしょ!?生徒が負けたとかじゃなくて!?」
「負けどころか生徒とか1人も居ないんじゃない?気配も何もないし。後輩達は何をしてるのよ?」
「きっと、教範通りに、慎重に前準備してるのよ。そもそも緊急事態と気付けたのだって、私達の寮がシャーレのすぐそばにあるからだしね」
「それはそうだけど、いくら何でも行動遅すぎ!」
「全くだ。先生が前線に出るなどあってはならない事だというのに……」
そうか。今のFOX小隊はシャーレ管轄のここからすぐ近くの寮に住まわせているんだった。あんなにうるさくアラートが鳴れば、嫌でも気付くか。
「──先生。ここからは、先生の指揮で動きます。状況の説明をお願いできますか」
「もちろん」
「こっちだよ!爆発音がした!うわ、ドローンの破片だっ」
「……このドローン、シャーレのマークがあるね。敵が通ったのかな」
「先生を傷付ける輩は許さないわ!行くわよ、みんな!」
「はい、アル様!!」
「──誰か来た!私が迎え撃……」
「待てFOX3。敵じゃない」
「!?」
ユキノに制止され、クルミは銃の構えを崩した。声を聞くに、便利屋のお出ましだ。
便利屋はアルちゃんの先導で階段を上がってきて階段をのぼりきらないうちにFOX小隊、私と合流を果たす。軽く事情を説明し、私は7人を指揮しつつ後ろで控える事になった。
唯一、クルミは負傷してしまったとのことで一旦下がり便利屋が前に出ることに。
「ッ……」
「……クルミ?大丈夫?」
「『大丈夫?』って……あのね、先生が乱射した弾がお腹に当たったのよ!?」
「うぇっ!?だっ大丈夫!?ごめん、よく見ないで乱射したからっ……本当にごめんなさい!」
「あーもう、大丈夫よ!煙幕の中の事だったしね!便利屋とやらが先陣を切ってくれるみたいだから、私の役目はおしまいよ!」
「そもそも返信してれば誤射される事もなかったんだけどね……。クルミってば『特殊部隊ならいちいち返信せずただ現場に突入するの!』とか言うから」
「先生に呼ばれて浮かれてたんだよね、分かるよ。なのに現場では戦いが始まってるんだもんね」
「う、うっさいわよFOX2、FOX4!作戦中よ!?分かってんの!?」
「便利屋さんが前に行ってくれてるし、なにより、敵は爆弾で沈黙中なんでしょう?エレベーターごと落ちているかもしれないし……」
「3人とも静まれ」
「「っ!」」
「はーい♪」
エレベーターホール付近に到着。どうやら綺麗に壊れたようで、扉はひしゃげ凹んでしまっている。こりゃどう足掻いても気絶はしてるだろうなぁ、と思っていると、プラナが報告する。
『生体反応1つアリ。例の「子供」です。頭上に、ヘイローの存在を確認』
「!?……待って、みんな!中に1人、気絶してないヤツが居るみたいだ!警戒を!」
「……チッ。なら私が行くわ。素人に任せらんない」
「クルミ……気をつけて!」
「誰に言ってんのよ、全く。こちとらSRTの特殊部隊、FOX小隊よ?……良いわよね、リーダー?」
「……用心しろ」
「了解」
便利屋の4人を下げ、クルミが盾を構えて前進。私はそれを見届け、スマホでハナコに連絡を取る。ハルカやムツキは爆弾の用意をしている。カヨコもアルちゃんも警戒心マックスだ。
「ハナコ。まだ終わってないらしい。避難の用意はしておいて。避難袋は見ればわかる所にあるから、窓枠に繋げて外に出しておいて」
『──分かりました。用意は、しておきます。でも避難する時は、先生とカヤさんと一緒に、ですよ』
「OK。案内はもう大丈夫だから、寝室に、カヤと一緒に居てね」
『了解です、先生。……通信は切りませんよ?』
「うん、それでいいよ」
ドゴォオオオオオオンッ!!
クルミが接近した直後、エレベーターホールが、再度爆発を起こした。ユキノとムツキがフォローに向かい、爆風で吹き飛ばされたクルミを助け出す。
もうもうと立ち込める黒煙の中で、プラナが元々言っていた「4名」の人影が動き出した。
「クックック……中々に高威力ですね。おっと、服に壁の破片が……」
「欠片から得られた情報では、こんなモノしか
「そうですね。私の作品にも反映できそうです……。おっと、これは……」
カツン、コツンと革靴を軽快に鳴らし、もしくはギギギと重い木の関節を動かすような音を鳴らして壊れたエレベーターから3人の男が……。
「手を上げろ!SRTだ!黙って投降しろ!!」
「どういうこったぁ!?」
「……おや、先生。我々の来訪に気付くのが遅かったようですね」
「────黒服!?マエストロに
「フフフ……」
「クックックッ……」
「?先生。この、どう見てもロボットでもない謎の存在は知り合いですか?」
「う……うん…………」
どういう事だ。このゲマトリア連中が、どうしてシャーレに攻め込んできた?──黒服が背負ってるあの女の子──金髪ロング、赤褐色のシスター服のようなモノを着たあの女の子は、一体……?
「……どうしますか先生。『処理』しますか?」
「いや。……すまない、FOX小隊と便利屋68、全員、執務室で待機してて。色々、聞きたいことがある」
「「「「「「「「…………!?」」」」」」」」
ゲマトリアと皆を隔離しようとするも、全員が、警戒心を露わにして「そんなワケにはいかない」、または「せめて3人は護衛を」と口々に言う。
正体不明の敵が急に4人も出現したんだから警戒するのは仕方ない。なので、ハナコも呼び寄せて、全員で一緒に話を聞くことにした。一応、アロナが呼び寄せたドローンでも包囲している。
「──で、急に来てどうしたの?」
「先生、それはこちらのセリフですよ。シャーレに入るなりいきなり緊急防犯システムが作動、我々を撃ってきたではありませんか。執務室へのルートは前回シャーレに訪れた時に覚えましたから、驚いてしまいました」
「そりゃあんたらがシャーレ関係者を1人も連れず共用スペース以外の区画に入り込んだからでしょ。黒服。前にあんたが来たのは、共用スペースだよ。1階のコンビニね。執務室に上がれたのも、そばに私が居たからだよ。勝手に来たらそりゃこうなる。あんたらシャーレ関係者や生徒じゃないでしょ?」
「!!」
「ふむ。生徒や先生と共に移動したならこのような騒ぎにはならなかったのか。……抜かったな、黒服。対象との『契約』を重んじる貴下らしくないぞ」
「ええ、確かに。それならば我々がした事は侵入に他ならない。先生のお怒りも、ご尤もというもの。先生、下調べが足りずお騒がせしてしまい、大変、申し訳ありませんでした。損壊部分は我々が責任を持って修復致しましょう」
「そういうこった……」
「マエストロ。先程のドローンを
「もうやっている。格納庫に収納済みだ」
「結構。では壁などの部分についても修復しつつ、ここに来た経緯をご説明しましょう。黒服、
「……同席したかったのですが、仕方がありません。今回は私のミスでしたしね。……クックック……」
明らかに肩を落として、その場を去る。ユキノとカヨコが銃を構えるが、私は2人を宥めて、黒服をフリーの状態にした。
ゴルコンダに「それ」と呼ばれた少女は、大きな瓦礫の上に座らされ、ピクリとも動かない。生きているのか、死んでいるのか──ヘイローがあるから生きてはいるのだろうが、まるで反応がない。だがプラナ曰く「生体反応はある」ので、生きているんだろう。
「さて──何から説明しましょうか、先生?我々がシステムに抵抗したのは、『先に襲われたから』。これについてのみ正当防衛を主張させて頂きたい」
「あ、あぁ……それについては、うん。だけど、監視カメラ乗っ取ったのもそっちじゃないか。せめて、監視カメラが無事だったら、私の方から手動で防犯システムを停止して、攻撃も止めてたよ……」
「!?……黒服め、監視カメラをジャックしたのか?防犯システムのみジャックして攻撃を止ませる、と言っていたはずだが……?」
「恐らくは、黒服が開発したというあの人工知能の仕業でしょう。細かな制御は効かないようだと先程嘆いていましたね」
────M.A.R.O.Nか。元とはいってもアロナだった人工知能なら、あんな芸当も可能なのかも。プラナですらハッキングし返せないくらいに強力、ただし細かな制御が効かず、ガバがある……成程。
黒服のヤツ、シャーレの施設を相手に、マロンの試運転をしたのか……?なんって大胆なヤツなんだ。もう何も奢ってやらん。
「全く……いつになく浮かれていたと思ったら」
「まぁまぁ。その辺は帰ってから責めましょうか」
「そういうこったぁ!!!」
あ、責めるのは決定事項なのね。お疲れ様です。ご愁傷様です、黒服。同じ「先生」のよしみだし、ゲマトリアを追放されないようにだけ軽く口添えはしておいてあげるね。
「責めるのはいいけれど、追放とかはしないでね。折角、気の合うヤツだと思い始めたから」
「先生がそう言うなら、奴への詰問も加減しよう」
「ええ、仕方ありません。こうしてシャーレに直に赴く事ができたのも、黒服の功ではありますしね」
「よかった」
黒服、今度私にアイス奢ってね。一番高いヤツ。シャーレ所属の生徒の人数分+2個くらいね。
「じゃ、来た用事を話してほしいんだけど……」
「あぁ、そうでした。それが主題でしたね。これは私ではなく、マエストロから話すべきでしょう」
「そうだとも。では、改めて。────先生。少しばかりお時間、頂けるかな?」
次回────「先生のナデナデ好き……♡」
お題箱、設置しました。
https://odaibako.net/u/Akirazemi
ただし
・主にキャラのみ募集
・キャラ&シチュの場合も一応可能ではあります
(書くのが難しければ投稿の優先度は落ちますし、無理と判断すれば、作者がどちらかを選んで採用)
・私なりに、キャラの解像度を高めてから書きます
・既に存在している下書きがある程度
・NTR、獣姦、
・先生×黒服、黒服×先生など、BLは作者に経験が無いので書けないと思います
・生徒同士のGLも、作者に経験が無いので恐らく上手くは書けないと思いますが、過去に書いた事があるのでBLよりは書ける可能性は高いかもですが絶対に期待はしないでください
最後になりますが、優しい言葉でお願い致します。