※この作品はR-18です。

「ハーレムルートを目指しましょう、先生」   作:アキラゼミ

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総力戦③ 〜人工天使の襲来〜

 

「────よく来てくれたな、先生」

 

「モモトークじゃなくて呼び出しって事は……」

 

「そう、お察しの通り────『総力戦』だ」

 

 ギギギギギ、と木の身体を軋ませるマエストロ。どこか楽しそうな声で、ウキウキしているのが声で分かってしまうくらいだ。

 黒服と同じく表情の変化なんて微塵も分からないはずなのに。けど、普段ローテンションだからか、余計に分かりやすいのかもしれない。

 

「……しかも、初めての(・・・・)…………だよね。これまでの、そう、例えばヒエロニムスみたいな、とうに何度か私達シャーレと交戦済みのボスじゃない、よね?」

 

「その通り。呼び出しただけでそこまで見抜くとは流石は私たちゲマトリアの名誉顧問、驚嘆に値する洞察力だな。フフ、今作は先生も感涙を禁じ得ないだろう……」

 

「──それって、グレゴリオより上って意味かな?私、グレゴリオの演奏の時点で既に拍手喝采不可避だったんだけど……?」

 

「その問い、自信を持って、胸を張って答えよう。

『その通りである』と。グレゴリオよりも『上』と私は認識している」

 

「…………」

 

「そう警戒しなくとも良い。今回の『総力戦』は、この一度きりだからな」

 

「へ?」

 

 一度きりだと?マエストロの事だし複製(ミメシス)関連だと思って警戒していたけれど。複製なら多分幾らでも出せるから、撃破してもこれからも続くんだろうと思って諦めていたけど……「一度きり」だと?

 マエストロに限っては、自分の作品を使い捨てるようなマネはしないだろうし。本来は失敗作だったらしいヒエロニムスをあそこまで仕上げたんだし、マエストロは、自分の作品に誇りを持ってる。

 だから使い捨てるような真似はしないだろうな、というある種の信頼があるんだよな。これは別に、ゲマトリアと和解したからではなく、ゲマトリアと和解する前から感じてたことなんだけど……。

 

「何故、今回のみ『一度きり』なのかは──恐らく明日、分かる事だろう。どうか──今一度、喝采とハンカチの用意を────!!」

 

「…………?」

 

「どうした、先生?」

 

「いつもの小難しい話はどうしたのかなって」

 

「……。先生、いつも眠そうに目を擦るから……」

 

「あっ……ごめん……」

 

「こちらこそいつも夜か早朝ばかりですまないな。木のマネキンが往来を歩いていると、実は、かなり不審がられるものでな。深夜や早朝でないと、外を出歩きにくいのだ……」

 

「……」

 

「……」

 

 ────翌朝。マエストロの言う通り始まった。

 トリニティ地下大聖堂にて異常な高エネルギーが観測されたので、調査の為にシャーレの出番だ、と連邦生徒会からのお達しが届いた。

 シャーレとしての雑務はカヤに押し付けて、私はシッテムの箱を起動しつつ自動操縦のヘリで現場へ急行する。トリニティの地下大聖堂という時点で、かなり嫌な予感しかしないんだけど……。

 マエストロの口振りからするにヒエロニムスではなさそうだったけど。

 移動中、今回の「総力戦」の前情報を調べるが、今回は何故だか情報が見当たらない。アロナからの情報も無いし、何なんだろ、一体。しかも、ヤケにスマホの通知が……。

 

「……何だかヤケにモモトークの通知が来るな」

 

『トリニティの地下で高エネルギー反応ということですから周辺地区の住民やトリニティの生徒さんは避難してます!恐らくトリニティの生徒さんからの連絡かと……!』

 

「!」

 

 という事は今回はトリニティの生徒が特効効果を発揮する総力戦だったりしないだろうか。色々と、小難しい理屈をくっつけて、トリニティ生徒を編成しやすいように促してるようにしか思えん。

 それにしてもだ。それにしても未だに全く情報が見付からない……。

 

「ユウナの時でさえ前情報があったんだぞ──何で今回の総力戦は前情報が欠片も無いんだろ……?」

 

『困惑。今回は「総力戦」ではないはずです』

 

「えっ?」

 

『総力戦だったら前情報があるかと!』

 

「それが無いから困惑してた所なんだけど……」

 

『「大決戦」の可能性ありますか?プラナちゃん』

 

『────可能性は低いかと』

 

「え……えぇっ?」

 

『「総力戦」ならば敵が明示されているはずです。今回はあくまで「謎の高エネルギー反応の調査」。あまりそちらは関係無いかと思われますが……』

 

「マエストロが『総力戦』って言ってたんだけど、どうなんだろう……」

 

『恐らくは「総力戦」の定義が違うのかと』

 

「定義……?」

 

『これは決して明言されている事ではありません。ですが、もし共通項を挙げるとするのなら────連邦生徒会は、今後も起こる事が殆ど確定している事件等を「総力戦」と定義している節があります。ビナーは定期的に出現します。各ミメシスも同様、狐坂ワカモも不定期であるものの破壊行為を行い、それに反発する賽鬼ユウナもまた、ワカモと同様に今後もどこかで暴れるという見通しです』

 

「今回はあくまで『高エネルギー反応の調査』で、今後も起こるかどうかはその原因次第だから、今の段階では連邦生徒会の考える『総力戦』の定義だと今はまだ『総力戦』としては定義できない──か」

 

『はい。サンクトゥムタワーの顕現ともまた違う、完全に別パターンの事象です。前情報が無いのも、これらが原因なのかと』

 

『何にせよ、現場に行くしかないです!先生!』

 

「……だね」

 

 信じてるよ、マエストロ。アンタはキヴォトスを壊したり、ましてや混乱の渦に突き落としたいワケじゃない──ただ、作品を私に見せたいだけだと。

 そういうちょっと子供っぽい(・・・・・・・・・)ところが、アンタがアンタである所以だって。

 

 ◆

 

「……アロナ。バリア大丈夫?」

 

『はい!いつでも大丈夫です!』

 

『先生。もう間もなく高エネルギー反応を検知した現場に到着します。時間経過と共に、エネルギーが高まっている事を確認。急ぎましょう』

 

「ああ。──でもやっぱりここってヒエロニムスと戦った事がある場所じゃないか。ヒエロニムス改、みたいな?そんな感じかなぁ」

 

 まさかね──と苦笑しながら地下の大聖堂へ足を運ぶ。いつかヒエロニムスと戦った場所──まさか本当に改良版と戦う事になるのかと身構えているとどこからともなく音楽が聞こえてきた。

 

「あれ……この音楽……」

 

 あの、グレゴリオ戦の音楽?腹に響くような音の重さは無いけれど、この音楽は、忘れようがない。総力戦の音楽の中で一番、耳に、頭に残るリズム。

 長調アレンジでもしたのか、と思ってしまう程に軽快な音だけれど、元となる音楽は確かに、この前初めて戦ったグレゴリオの音楽だ。

 ちょっとした違和感を覚えながらも大聖堂に足を踏み入れる。すると正面の壇上には一筋のライトに照らされたマエストロが立っていた……。

 

「────よく来てくれたな、先生」

 

「……マエストロ!?」

 

「今日はここで私と勝負してもらう。私の人工天使擬人化シリーズを渡すのに貴殿が相応しいかどうか改めて見定めさせてもらおう」

 

「なんだって……?」

 

「──先生より依頼を頂き、擬人化ヒエロニムスをデザインしたのはいいものの。中々満足はいかず、制作は頓挫し、苦心を重ねようやく完成したのだ。先生にも分かるであろう?『ただ渡すだけ』では、もはや、満足がいかぬのだ」

 

「分かるような、分からないような。なんにせよ、今回の総力戦は擬人化ヒエロニムスって事だね?」

 

「少し違う」

 

「!?」

 

「『人工天使擬人化シリーズ』と言ったであろう。擬人化アンブロジウス、更に擬人化グレゴリオをも私は既に完成させている────!!」

 

 パチンと指を鳴らすマエストロ。すると大聖堂の全域が仄暗い明かりで照らされながら、彼の後ろに控える4人の少女が姿を現した。

 その中には、ついこの前、ゲマトリアの本拠地でパイズリやフェラで抜いてくれたヒエロニムスの他妹3人の姿もあるようだった────。

 

「マジか……アンブロジウスにグレゴリオ達か……」

 

 元の性能を考えるとかなり絶望的な布陣だろう。アンブロジウスはともかく、グレゴリオ✕‬2に加えヒエロニムスだ。しかもマエストロのことだ、今の彼が「完成」と断言するくらいならアンブロジウス単体でもそれなりの強さを誇る性能のはず……。

 

「……そういう事です。よろしくお願い致します」

 

「お久しぶりですわ、先生。今日はここで私た……」

 

「私達の力を見せちゃうよ〜!!」

 

「見せちゃうよ〜!!」

 

「私の台詞を取らないでくださいません!?本当に妹というヤツは……!!」

 

「私から見れば、アンブロジウスも同じようなものだけれど……」

 

「!?それはどういう意味ですかっ、お姉様!?」

 

 口元だけの笑みを浮かべ、小さな溜め息をつく。すると真紅の瞳を真っ直ぐにこちらに向け、美しく擬人化されたヒエロニムスが告げる。

 

「……先生。この戦いで貴方が私達を下せば、私達は本日付けでシャーレに籍を置かせて頂きます」

 

「ゲームで言う所の獲得戦みたいなものですわね」

 

「でも、もし私達が勝っちゃったらぁ〜……」

 

「勝っちゃったらぁ〜……」

 

「────キヴォトスを破壊しようと思っている」

 

「何だと……!?」

 

「当然であろう?先生は私の芸術の唯一の理解者。黒服やゴルコンダ、デカルコマニー、フランシスも私の芸術を理解はできないのだぞ。そして、先生が私の作品を超えられないのならば、それはこの先、私の芸術は誰にも理解されない『モノ』になる、と示されているようなものなのだから」

 

「ッ……メンヘラかよ……マエストロッ!?」

 

「──理解して頂けただろうか?時間の経過と共に高まるエネルギー、これは『先生の手持ちの生徒が尽きた瞬間』に発散される。もしくは、リミットを迎えた瞬間に、だ」

 

「!!」

 

「人工天使を倒せば、エネルギーが蓄積する速度も低下する。そして全員を倒したその時、蓄積されたエネルギーは霧散。人工天使は先生の生徒となる。ただし、最後に立っていたのが先生の生徒ではなく人工天使ならば──エネルギーは堰を切ったように瞬間的に発散され、このキヴォトスは爆散、終演を迎えることとなる」

 

「そんな事……私が許すワケないだろうっ!?」

 

「私も、その他ゲマトリアメンバーも、先生ならば私を、私の作品を超えてくれると──信じている。だからこそこうして『最高傑作』で先生と戦える」

 

「ッ!!」

 

「さぁ────始めようか、私達のデュエットを。ゲマトリアの信頼に、先生は全力で答えてくれると信じている」

 

「ッッ……ガチで出来かねないな、ゲマトリアなら!プラナ、その『高エネルギー』とかいうのは本気でキヴォトス破壊できそうなの?」

 

『現在蓄積しているエネルギーでは、トリニティを消し飛ばす程度でしょう。しかし、現時刻より凡そ1時間後、このキヴォトス全域を破壊可能なだけのエネルギーが蓄積する見通しです』

 

「その通り。タイムリミットは1時間後。総力戦と同じだろう?だから敢えて1時間に設定したのだ。ただしチャレンジ回数は3回ではなくこの一度きりなのだがね」

 

「!?……プラナの声が(・・・・・・)聞こえる(・・・・)……のか?」

 

「何を不思議に思う事があるというのだ?この私もかつては人間だった。より正確に言うのなら、私もプレナ……いや、黒服と同じ『元・先生』だ」

 

「────ッ!?」

 

「記憶が戻ったのは、黒服よりも後だがな。そして私の見立てでは、ゴルコンダやデカルコマニーも、果てはベアトリーチェもまた、私や黒服と同様に、元人間……『元・先生』なのだろうな」

 

「なんだと……」

 

 ゲマトリアの全員が「元・先生(わたし)」……?

 いや、黒服がシッテムの箱のようなものを所有しアロナを模倣したAI「マロン」を有している以上ゲマトリアの他のメンバーもそうであると……?

 

「……プレナパテスの時の事を思い出すな」

 

「そうだとも。もう1人の自分(わたし)を乗り越え、今度は人工天使を生徒として迎え入れるがいい……!!」

 

 はてさて、どんなパーティを組んだものだろう。ヒエロニムスだけなら、水着ホシノ、水着ノノミに加えてココナちゃん──いやまぁ兎に角、あまりに情報が無さすぎて、どのように編成したものかと、頭を悩まされてしまうのが痛い。

 

「……」

 

「……遅いですわね……」

 

「ねーねー!先生まーだー?」

 

「まーだー?」

 

「あ、う、うん、ちょっと待っててねっ……!」

 

 駄々を捏ね、急かしてくるグレゴリオ達は本当に人間の子供と変わらない。というか、これから戦う少女に急かされるなんてのも、変な話だ……。

 相変わらず4人の情報は見えない上に、属性すら分かりやしない。果たして、どのようにパーティを編成したものやら。

 アンブロジウス──はともかく、ヒエロニムスとグレゴリオが同時に襲ってくるのがヤバいと思う。それぞれ単体で総力戦ボスをやれる性能(つよさ)だろうに。

 グレゴリオが2人な分、グレゴリオ対策を多めに入れた方がいいのかも、とは思いつつ、そうなるとヒエロニムスとアンブロジウスがノイズになる。

 

「────よし、決めたぞ」

 

 総力戦常連のミカ!水着ホシノ!ネル!ツルギ!シンプルに各校最強格を集めてみた!それに加えて割と常に引っ張りだこなアコ&ヒマリを、初期スキルは水着ホシノとアコ、ミカで固定し、ホシノかアコの次にヒマリが来る事をお祈りすればイケる。

 

「……用意ができたようだな」

 

「ああ。勝負だ、マエストロ!!」

 

 長調アレンジのようなグレゴリオのBGMの中、生徒を召喚、戦闘を開始。シッテムの箱を通じて、生徒達に指揮を飛ばしていく。

 

「──ふむ。偶然にも、擬人化したグレゴリオには例のシステムは導入してはいないものの──やはりデバフなどは考慮した方がいいのではないか?」

 

「ッ!!」

 

 ヒエロニムスの、サブスキルかノーマルスキルの発動の頻度が凄まじい。チクチクチクチクとかなり高頻度で味方全体に地味なダメージを与えてくる。全体回復系の生徒も編成すべきだったか……。

 アコでミカを強化、更にはEXをヒエロニムスにぶつけ、それなりに大きなダメージを与えた。

 

「いけッ、ネル!!」

 

「オラオラオラオラァァッ!!」

 

「キェエエエエッッ!!」

 

「ハンドガンで前線に出てくるなんてちょっとだけ珍しいね!まともな武器を貰えなかったのかな?」

 

「……私は、お姉ちゃんだから。……だから、前で、妹達を守る。…………それだけよ」

 

「やれ、ヒエロニムスッ!!」

 

「了解。『教義の受肉(EXスキル)』────ッ!!」

 

 聖遺物を召喚したヒエロニムス。効果は──やはり補助系だったか。確かアレは聖遺物のHPが0%か100%のときに効果を発揮するタイプ。なら、一定を保っていればいいはずだ。

 

「────お次はこの私の番ですわ、お姉様っ!!

リンガリングディスペア(Nスキル)』ッ!!」

 

「「やっちゃうよ!『フォルテッシモ!!(Nスキル)』!」」

 

「ひゃあっ!?」

 

 アンブロジウスのノーマルスキルが最前線に居たミカを襲う。ノーマルスキルの割に中々の威力だ、結構削られてしまった。どうやらアンブロジウスはアタッカーらしい。更にグレゴリオ達のNスキルが確定会心として全体にダメージを与えてくる。

 

「畳み掛けなさい」

 

「言われなくとも、です!!終演(おわり)刻限(とき)!!」

 

 アンブロジウスのEXが炸裂。扇形範囲内の者に相性、防御無視の攻撃力1000%超えのダメージ。

 ────ネル、撤退。ツルギ、大ダメージ。水着ホシノ、大ダメージ。ミカ、それなりに喰らうも、隕石をアンブロジウスにぶつけ自分と同じくらいのダメージを与えて仕返しをする。

 

「……!?」

 

 やられた。先に倒すべきなのは、アンブロジウスだったのか。ヒエロニムスが最前線に立ってるから最優先で倒そうとしていた。しかしその実、彼女はサポーターであり実質的なタンクだ。倒すべきは、ヒエロニムスの背後に控える────!!

 

「行けッ、ツルギ!!」

 

「ゲェヘヘヘヘヘヘヘェ!!」

 

 ツルギは、EXを使用すれば一定回数攻撃範囲が広くなる。ギリギリだがアンブロジウスも含まれる範囲だ、いけなくもない。それに加えてアコヒマで強化したミカをアンブロジウスに叩き込む……!

 

「きゃうっ……」

 

 なんか、申し訳ないくらいゴリゴリと削れたな。難易度低めのビナーくらいHP削れた。あと1回、いやギリギリ2回だろうか。もう1人ミカにバフができる生徒がいれば、あと1回で仕留められたか。

 

「────さぁ先生。キヴォトス滅亡へのカウントダウンを始めよう。絶望の輪舞曲(ロンド)を奏でようッ!!グレゴリオッ!!」

 

「「は〜いっ!!『ぐれ〜とあっぷる!(EXスキル)』!!」」

 

「……な……にィ……ッ!?」

 

 グレゴリオは2人で1つのスキルらしい。EXの効果により聖歌隊が召喚されて、人工天使チームの攻撃力が100%アップ、更に私の生徒達の防御力が100%下がってしまった。

 しかもその聖歌隊は、こちらの生徒全体に攻撃をしてくる。アンブロジウスの攻撃といい、人工天使チームは範囲系が主らしい。

 

「ギ、ギェェ…………ッ」

 

「くっ……ツルギ……!」

 

 ツルギ、ダウン。それから間もなく水着ホシノもダウンした事で、戦場にはミカだけが残った。

 相性の情報は無かったが、撤退させた生徒からの聞き取り調査で、おおよそだが属性相性が掴めた。恐らく、アルちゃんあたりが最適性だろう。

 グレゴリオのEXが終わる、それと同時にミカを強化、強化……からの、ミカのEX。

 

「あなた達の為に────祈るね☆」

 

「こちらこそ!あなた方のまたのご活躍を、お祈り申し上げますわっ!!『終演ノ刻限(EXスキル)』ッ!!」

 

 度重なるNスキルやEXでボロボロにされていたミカは、同じくらいにEXでボロボロにされていたアンブロジウスと相討ち──にはならなかった。

 

「う、そ……」

 

「……フーッ。一時はどうなる事かと思いましたが、ギリギリで耐えたようですわね……お互いに」

 

「……!?」

 

「『最後の一息(Pスキル)』」

 

 ギリギリまで追い込まれた事でアンブロジウスのパッシブスキルが発動。

 HPが10分の1以下になると、倒されるかHPが10分の1より回復するまで天使の翼が生える上に、全てのステータスが100%アップ!!

 

「もう一度……ッ、だめ……力が足りないっ……!」

 

「それではさようなら、第1部隊の皆さん」

 

「────ッ!!」

 

 最後はアンブロジウスの掃射により、ミカまでも撤退させられてしまった。残念ながら私の負けだ。生徒にも無駄に痛い思いを……。

 第2部隊はアルを中心に────なんかシロコの圧が強い気がしたのでシロコ、集中攻撃させる為にノア、タンクでナツも入れてみるか。更にヒヨリでデバフ、コタマでバフを狙うか。

 あぁもう、どう編成したものか全く分からない。いつも総力戦は低難易度(EXなど)でやり過ごしていたから、そのツケが回ってきた気がしてならない……。

 めちゃお気に入りの生徒とばかり出撃してたから組み合わせとか考えられてない……。

 

「……かなり強い敵だけど……頑張ろう」

 

「私達に任せておけば、完璧よぉ!」

 

「ん。全力を尽くすのみ」

 

「私達が勝とうとも、次に託す事になろうとも──相手の事は、私が全て記録致します」

 

「頑張ったらご褒美お願いね、せんせ……♡」

 

「そうだね。全て終わったら総力戦メンバーで外に遊びに行くのもいいかもしれないね。でもまずは、ここで勝たないとね」

 

 アンブロジウスのHPは、残り10分の1以下に。ヒエロニムスも5分の1くらいにはなっただろう。前衛のヒエロニムスと、中衛のアンブロジウス──この2人はバフを乗せたアルのEXでなら倒せる、それは間違いない。

 

「第2幕の開演といこう、先生」

 

「ああ」

 

 今のアンブロジウスは、HPこそ少なくなれど、ステータスが上がっている。だからデバフをかけてガードを緩めてやらなくては。

 

「ヒヨリ、ノア!!」

 

「は、はいっ!し、支援行きますっ!」

 

「全て記録します!皆さん、あの敵に!」

 

 ヒヨリがアンブロジウスにデバフを掛けてノアで集中攻撃のターゲットを定める。コタマで攻撃力を上げてから、アルのEXで爆破していく────。

 

「っ……無念、ですわ……!」

 

 アンブロジウス、撃破。続けてヒエロニムスへと攻撃を続けていくがミカ程はダメージが通らない。何故こんなにも──やはり火力不足なのかと思ったその時、ヒエロニムスの聖遺物のHPが尽きていることに気が付いた。

 

「あれを壊さなくっちゃ話にならないか……!ノア、今度はアレだ!」

 

「はい!皆さん、先にあちらを!」

 

 ノアのEXで聖遺物を指定。過剰なまでに攻撃を加え聖遺物を破壊した事でヒエロニムスへのバフが解除され、ドンドンダメージが通るようになった。

 遂にはアンブロジウスのように、HPが10分の1以下に到達した事で同じパッシブスキルが発動し、彼女の背に天使の翼が生え、ステータスが向上。

 

「ん……さっきよりダメージ通るようになったよ」

 

「────これで終わりよ♪」

 

 しかしシロコとアルのEXにより、バフを失ったヒエロニムスのHPは、一気に削られてしまった。

 

「……後は……お願いね」

 

 ヒエロニムス、撃破。残るはグレゴリオ姉妹だ。しかしここに来てマエストロはグレゴリオのEXを発動──今度は先程とは反対側に聖歌隊が現れて、またもやこちら全体にダメージを与えてくる。

 

「さぁ……二度目だぞ、先生」

 

「?」

 

「グレゴリオのEXは回数を経る毎に効果が変わる性質を持つ。一度目は、先生から見て左に聖歌隊が出現。二度目はその反対に。そして三度目は正面。最後の四度目を経て、1つの循環と成す……」

 

「……!?」

 

「ならば──四度目はどうなると(・・・・・・・・・)思う?(・・・)

 

 左、右、正面────この流れ、見た事がある。擬人化じゃない人工天使の方のグレゴリオの聖歌隊召喚の攻撃がまさにそれだったハズだ。

 左に召喚、右に召喚、正面に召喚、そして最後はパーティ全体への即死攻撃────。

 

「ノア、青いグレゴリオ!ナツ、シロコの前に!」

 

「お任せ下さい♪」

 

「はいはーい。……ぎうにうの時間……♪」

 

「タンク、感謝」

 

 見た所、青いグレゴリオはスナイパーライフルを武器としているらしい。そして、赤いグレゴリオはマシンガン──赤いグレゴリオの方が攻撃の手数が多いというのは中々だ。

 とりあえずは一番ダメージを受けているシロコをナツに守らせ、これ以上の被弾をカバー。ナツは、自分だけでそれなりに回復してくれるのが有難い。

 

「「『ろりぃたのささやきっ♡(Sスキル)』」」

 

「!?」

 

 味方全体が中々のダメージを受けた。というか、今の、シンプルにEXスキル級の強さじゃないか。何処がサブスキルだふざけるなマエストロのヤツ!サブに設定していい威力じゃない……!!

 

「あうっ……残念、です……」

 

「こッ、こんなハズじゃあ……!!」

 

「ノア……アル……!ッ、もう少し持ちこたえてくれナツ、シロコ!!」

 

「うんー。時間いっぱいまで耐えれると思う〜」

 

「ん、大丈夫。私もまだイケるよ」

 

「「『フォルテッシモ!!(Nスキル)』ッ!!」」

 

「「!!!」」

 

 ノーマルスキルの会心ダメージが、キツすぎる。シロコのHPは今にも尽きそうでナツも半分程度。2人が離脱した事で、コスト回復力も落ちている。シロコ、ナツ、ヒヨリ、コタマは、EXのコストが低めなのが有難い。

 

「三度目だ……!!」

 

「「『ぐれ〜とあっぷる!(EXスキル)』ッッ!!」」

 

「クッソ、ここに来て三度目かよッ!!耐えるんだシロコッ!ナツ!!」

 

「…………ん……まだ……っ」

 

「シロコッッ!!」

 

「……ごめん先生、守りきれなかったみたい……」

 

「耐えるんだナツ、耐えろ!全てのコストをナツに回す!マエストロ(ヤツ)の言う『四度目』まで、どうにか耐えてくれ!!」

 

「オーケー……頑張って耐える、よ……!」

 

 攻撃タイプが「貫通」のアンブロジウスを早々に倒せて良かった、本当に良かった。ナツは重装甲、つまり貫通が弱点。その点、ダメージ表示を見るにグレゴリオは「神秘」らしい。相性で言うのなら、ナツの方が有利だ。

 

「ぎうにうの…………おー、お腹がたぽたぽ……」

 

「!!」

 

 ナツのHPが満タンになった!グレゴリオ2人、スキルで補ってはいるが、素の攻撃力は低いな!?これはいい、良い収穫だ。

 グレゴリオのEXスキル発動中は攻撃力が上がりこちらの防御力が下がってしまう。だからあちらのスキルを使われる前に、こちらのスキルでゴリ押しするんだ。

 それに加え、グレゴリオは2人で1つ。片方さえ落としてしまえばもう片方はスキルも何も使えずに負けゆくばかりだろう。

 となれば単体に大ダメージを与えられる生徒か。やはりミカなのか──助っ人枠(大人のカード)でも使って、ミカをもう一度連れてくるしかない。

 

「終わらせろ!グレゴリオッ!!」

 

「「りょーかいっ!」」

 

「んなッ……早すぎるだろ!?マエストロッ!!」

 

「おやおや、およそ先生らしくもない焦り方だな。グレゴリオの仕様を忘れたか?」

 

「なにっ……!?」

 

「三度目のEXスキルの使用以降、コスト回復力はどこまでも上がり続けるッッ!!!」

 

「ッ────!!」

 

 そうだ、グレゴリオにはそんな仕様(ギミック)があった!!三度目の聖歌隊の召喚以降、コストがぐんぐん回復していく、あの仕様!!擬人化グレゴリオの場合はそれを私達に──敵に付与するのではなく、自軍に付与するようにしているとでも言うのか……!?

 

「「『ぐれ〜とあっぷる!(EXスキル)』ッ!!」」

 

「あうっ…………ごめーん…………」

 

「ッッ……やっぱり、ナツでも耐えられないか……」

 

「当然だとも。四度目は即(ダウン)攻撃だからな」

 

「次こそ勝ってやる、マエストロ……!!」

 

「ふふふ、そう焦るな、先生。まだ3凸が確定しただけの事だぞ」

 

「くッ……そ……!!」




次回────人工天使4姉妹vs先生、決着。

本作の「総力戦における助っ人枠」とは、「大人のカードで召喚する、同じ世界線での別時間の生徒」みたいなものです。
通常、過去の生徒ならレベルやスキルレベルなどは低いです。逆に未来の生徒であればレベルやスキルレベル等も現在と同等か現在より成熟しています。
しかしうちの先生は、迎えると同時に育成して全てレベマにしてしまいます。お陰で別時間の生徒でもいつも全く同じ強さです。
だから今のミカがゴリラなら過去のミカもゴリラ、未来のミカもゴリラ。ゴリラゴリラゴリラですね。

助っ人枠が一度しか使えないのも「大人のカードを乱用してはいけない」という意味の表れだと思って頂ければ。
通常衣装と衣装違いは同じパーティでも併用できる設定ですが、これも同じような理由です。

自分が「( *¯ ꒳¯*)フンス」と話し出すと先生が眠そうに目を擦り始めるからってあの小難しい話を省略するマエストロくん可愛くない??

総力戦ヒエロニムスの前口上に私がマエストロ好きポイント詰まり過ぎてる。マジ詰め込みすぎです。
これもう、ゲマトリアが愛される理由の1つだろ。
年賀状持参する黒服、小さな成功を紹介したくなるマエストロ。先生好き派ってば可愛すぎるな。
判断を保留してたゴルコンダも、そう遠くない内にフランシスとしてこういう可愛いポイントを作中で魅せてくれるはずです。

頭痛いし他にも身体に不調が起きたので、出張から帰ってきて割とすぐ病院に行って検査受けました。
脳に異常はありませんでしたが、首の骨が歪んでることから始まった不調のようです。
MRIうるせぇから、二度と入りたくないですね。
皆さんもお気を付けて……。

モモトークについて、どうしようか迷ってます。

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