「ハーレムルートを目指しましょう、先生」 作:アキラゼミ
カヤに加えて人工天使4姉妹をシャーレに迎え、シャーレはとても賑やかになった。
朝はベランダのスズメが鳴き始めるよりも早く、グレイとリンゴのデュエットが寝室内でモーニングコールとして歌われて、心地よく目覚められる。
「おはようございます先生、カヤさん。朝食、既に完成してますよ」
「おはようローニィ。朝食用意してくれたんだね、ありがとう。まさか、ご飯まで作ってくれるなんて思わなかったな……」
「作るもの自体は、昨日の内にカヤさんの方に確認していましたので……」
「そうなんだ。……アンは?」
「格納庫の掃除に行っています。当番ですから」
「掃除当番?」
「昨日決めました。昨日は私が掃除したので今日はアンです。生徒は自らの武器の手入れを欠かさないものです。それは、私達も同じ事です」
「そっか。シャーレ内の他の施設までは掃除の手が回らないから、ホントに助かるよ……ありがとう」
「それも私達の仕事ですから」
普段着に着替え終わった頃にアンが掃除当番から戻ってくる。ギリギリまで寝ていたカヤと4姉妹と私、合計6人で賑やかな朝食を摂る。
「ローニィの目玉焼きとんでもなく綺麗な円だね。どうやったの?黄身なんて、膜が破れてるのに円を保ってるなんて、何事……?」
「型を2つ使ってみました。位置や性質から考えて黄身は固まりやすいので、ドーナツ状になるように型を置いても、黄身が固まった時点で型を外せば、ドーナツのような穴にはならずに、綺麗な二重丸の目玉焼きが作れるんです……ふふっ……♪」
「型を2つ使ったのね……成程なぁ」
コンパスで書いたようにも見える綺麗な二重丸の目玉焼きには、そんな秘密があったらしい。成程、型を2つ使う、且つ外す時間差で隙間を埋めると。卵の白身は固まりにくいもんね。そりゃそんな事もできるわ。
──というか、そんな労力を使う程に綺麗な円の目玉焼きに拘るのはどうしてなんだろう……?
マエストロが言うには、この子達は食事とか不要らしいから、食への拘り──ってワケじゃなさそうなんだけど……。見栄え的な問題なのかな?
◆
「カヤの寝癖すごいね!」
「寝癖すごいね!」
「ですから、これは寝癖などではありません!私のチャームポイントなんですってば!」
「ウィークポイントの間違いじゃない?」
「弱点なワケないでしょう!?」
「じゃあおっぱいの代わりに髪が膨らんでるんだ。ぺったんぺったんつるぺったん♪」
「あなた達もつるぺったんでしょうがぁ!!」
「……?何言ってるんだろうね、リンゴ?」
「何言ってるんだろうね、グレイお姉ちゃん?」
「「私、幼女だもん!!ぺたんこでトーゼン♪」」
「こ、このガキ共……!!」
「カヤ、イマドキ貧乳コンプは流行らないよ」
「流行る流行らないの問題じゃあないんですよ!!先生で例えるのなら『粗チンだー』って言われてるようなもんですよ!?」
「罵倒も蔑みのセリフもバカにする視線も、それら全てが私の前では等しくオカズになりうるって事、まだ理解できないようだね」
「ダメですねコイツ、早く何とかしないと」
「ダメダメなのはカヤの髪の毛だよ〜」
「寝癖寝癖〜」
「やめなさい!せめてアホ毛と呼びなさい!ここは私が譲りますよ!一億歩譲って、アホ毛と呼ぶ事は許容しましょう!!」
「アホ毛……」
「カヤのアホ毛、ねー……」
「「アホのカヤ毛〜!!」」
「こンのクソガキがぁぁぁああ〜〜〜〜〜っ!!」
「「きゃー♪」」
食後は始業時間までまったり──したい所だが、実際はそうもいかない。カヤと、グレイ&リンゴのやり取りを耳で聞きつつ、朝のティータイム……。
「全く、朝の内から騒々しいですわ、3人共。胸の大きさなどどうでもいいでしょう。私もお姉様より小さい胸ですが、これはこれで可愛らしいと思っておりますのよ?」
「そう思える人間ばかりだと思わないでもらいたいですね!これだから人工物は……人の心というものを理解してないんですよ!」
「まぁロジックで説明できるものでもありませんしそもそも理解する気もありませんけれど」
身も蓋もないアンのその返答にカヤは口を噤んでしまった。
お互いにちょっぴり我が強いから、カヤと4人が打ち解けるのは少し遠い未来なのかもしれないが、いつか姉妹のように仲良くしてもらいたいものだ。
◆
「ねーねー、せんせー?」
「あそぼー、あそぼー?」
「ふふ、お昼休みになったらね。これから私は仕事だから、グレイとリンゴは自由時間だよ」
「お姉ちゃん達は?」
「ローニィとアンはこれから来る当番の子に仕事を教わる予定があって。あの2人にも仕事を手伝って貰えたら、私達も幾分か楽できるから……。2人も、ローニィ達と仕事してみる?」
「「それはやだ!!」」
「まぁ、そうなるか」
「えー、でもぉ……自由時間は暇だしなー……」
「まだ朝エッチもしてないのにー」
「と、とにかく、これから仕事なんだ……。ちょっと待たせてしまうかもしれないけど……」
「でもでも〜……」
「私達、翼、生やせるよ?」
同時にバサァッと翼が生える。双子だからなのか掛け声などが無くとも同時に翼を生やせるらしい。
というか戦闘中でなくとも──しかも満タンからHPを減らさずに翼を生やせるのか。マエストロ、嬉しい機能を搭載してくれたものだ。翼フェチだと知ってるからなのかな。というか、翼のオンオフを切り替え可能なのは何気に大きい気がする。
「もしかしてローニィとアンも翼を生やせるの?」
「ええ」
「もちろんですわ?」
2人も翼を生やして見せてくれた。翼に囲まれ、キャッキャウフフしてみたい……その為にもさっさと仕事を終わらせなくては。
仕事への意気込みを新たにしながら、パソコンを立ち上げ早々に業務を開始しようとしたその瞬間、執務室の扉が開かれて本日の当番生徒──ユウカがやってきた。
「失礼します。おはようござ────」
「や。おはようユウカ」
(──え?翼が生えた見知らぬ少女、幼女が4人?制服──じゃないわよね、アレ?1人はシスター服みたいだけど、シスターフッドのモノではないし。他の3人はドレス系の衣装?いや、アレは俗に言うロリータファッションというヤツかしら?そもそもあの4人は誰なの?2人──色違いの双子みたいな幼女2人が先生に絡んでる、でもあの距離感は殆ど恋人同士や家族にのみ許された距離のはず────白い翼、トリニティっぽいロリータファッション、家族の距離──まさかあの4人の少女達は、先生とミカさんの間に生まれた子供……!?)*1
ユウカが、4人を見つめたまま動かなくなった。知らない子供が4人も居たら、こうもなるだろう。服装が服装だからトリニティなどの生徒だろうとは思いにくいだろうし……いや服装は関係無いか。
「ユウカ?」
「……おめでとうございます」
「え?」
「すみません、私ったら、何も持ってこないで……。まさかお子さんが既に生まれてらしたとは……」
「!?待ってユウカ、誤解!私の子じゃない!」
「ッ!?まさかミカさんを孕ませておいて認知すらしないと!?先生の他に誰があの人を孕ませるって言うんですか!」
「そうじゃなくて!えっと〜……ローニィ、ユウカの誤解を解いて!!」
「はい。──早瀬ユウカさん、ですね?私達は先生専属の、生けるラブドール──そのようなモノだと認識して頂ければと思います……♡」
「!?!?せ、先生……!?まさか生徒をラブドール扱いしていたんですか!?」
「違う!!えっと、アン!解説したげて!!」
「はいはい、仕方ないお姉様です。──私達4人は生ける兵器。シャーレの先生直轄の私兵ですわ!!その任務は非常に多岐にわたりますわ。シャーレに常駐している兵器や設備等の管理に始まり、果ては先生の射精管理にまで及び……」
「先生!?」
「違うんだって!!グレイ、リンゴ!お願いだからユウカの誤解を解消して!!」
「私達はねー、先生とエッチしたりぃ、先生の為に戦う為に生まれてきたんだよ〜♪」
「生まれてきたんだよ〜♪」
「せ〜ん〜せ〜い〜ッ!?」
「違うんだよユウカぁぁ……!!」
(フン、いい気味ですね)
カヤがニヤニヤしながら仕事をしている中、私はユウカに正座させられ、詳細な説明を求められた。正確に説明するとなると、非常にややこしくて長い話になるので、要点のみを上手く伝えて、どうにか誤解を解消した……。
「──つまりこの子達は先生のご友人から贈られたクリスマスプレゼントで、先生のアレコレの管理や戦闘に特化したアンドロイドのようなもの、と?」
「う、うん、それに近いかな……」
「でも、この質感……」
「わぷっ……えへへっ♪」
「えへへ、ナデナデ〜♪」
「この質感、何度味わっても生身そのものですよ?下手したら私より髪サラサラなんじゃ……?」
「ユウカもサラサラだから気にしないで」
「気にしますよ……アンドロイドの技術がこんなにも向上してるだなんて……。これって一体どこの技術を使ったのかしら、少なくともミレニアム以上の──下手したらリオ会長の要塞都市エリドゥより遥かに高度な技術が使われていそうな気配が────」
「「……♪」」
「
「んっ……♡」
グレイとリンゴの頭を撫で、アンの頬を引っ張りローニィのおっぱいをタプタプと下から持ち上げ、人工天使擬人化シリーズ4姉妹の感触を味わう。
一通り4姉妹の感触を楽しんだユウカは、ハッと我に返り、ちょっぴり気恥ずかしさで頬を染めつつ居住まいを正した。
「そっ、それで!モモトークで言っていた『仕事を教えてあげてほしい子が居る』というのは、まさかこの子達に、という事ですか?」
「うん。4人の内、この2人──ローニィとアンの2人に、仕事を教えてあげてほしいんだ。グレイとリンゴはまだ幼いし、まぁ、自由に過ごしてもらうつもりで居るんだけどね」
「でもでも、自由って暇だよね!」
「やる事、欲しいなって思ってるんだけど……」
「──だそうですよ、先生?」
「う、うーん……花壇に水やり、とか……?」
「いーね!やろ!」
「いーねいーね!」
それくらいの事で良かったのか。仕事をやりたいみたいな雰囲気だったからパソコン仕事や書類仕事みたいな、ガッツリ「仕事」という感じの事だけと思ってしまっていたが……。
そういった事ならまだ幼くても任せて大丈夫か。
「じゃ、ジョウロの位置や、その他必要な事とか、簡単にだけど教えるわね。えっと、ローニィさんとアンちゃんもついてきて」
「私だけ『ちゃん』付けなのは何故ですの!?」
「アンちゃんだけじゃないわよ?グレイちゃんに、リンゴちゃんも、ちゃんとちゃん付けよ」
「どこが『ちゃんと』ですの?というかお姉様だけ
『さん』呼ばわりなのもズルいですわ!」
「だって落ち着いてて歳上っぽい雰囲気だし……」
「雰囲気!?雰囲気で決めるんですの!?私は幼い雰囲気だとでも言うのかしら!?」
「そういう所とか、特に幼いと思うけれど……」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
ギリギリと歯を食いしばりながら地団駄を踏む。床にピシピシとヒビが入るが、あれは、見なかったことにしよう。修繕費が……。
◆
「ねーねーユウカー!」
「どうしたの?」
「先生って優しいでしょ?でもケチんぼなの!」
「けちんぽなの!ちんぽだよ、けちんぽ!ピアノもグランドピアノもオルガンも買ってくれないの!」
「先生もあまり余裕があるワケではないからね……。でもね、先生も、2人の事が嫌いでそう言っているワケではないのは理解してあげてね」
「私達の事が好きなのはわかるけどさ〜?」
「いーっぱいビュービューしたもんね〜♡」
「ッ!?……そ、そうなの……?」
「それが私達姉妹の仕事でもありますし、この辺はあまり突っ込まないで頂けると……」
「そ……そうね、うん、気にしないでおくわ」
ローニィやアンはともかく、どう見ても1桁台、良くて10歳頃に見えるグレイとリンゴにまで自分と同じようにセックスし、射精しているのか──と、ユウカは嫉妬のような、または懐疑心、不信感にも似た、奇妙な感情が渦巻いていた。
それを察した姉妹は、案内されながらもユウカと会話を重ね、懐柔に取り掛かる。
積極的に話し掛け、話を聞き出し、深堀りして、苦労を労い、褒め────はじめの警戒心や誤解が嘘のように、ユウカの心は氷解しつつあった。
そこに至り、グレイとリンゴはユウカにトドメを刺そうとすかさず畳み掛けた。
「ねーユウカー、先生にオネダリ♡するには、何て言うのが正解だと思う?」
「そうねぇ……オネダリ、かぁ。そういうの、あまり私はやった事がないから、よく分からないのよね」
「そーなの!?なら私達が正解を教えてあげる!」
「え?」
「ねぇねぇ、先生?私達ぃ、新品のピアノ……」
「キレイでおっきくて、良い音が出るピアノ……」
「「買ってほしいなぁ……♡♡」」
(うっっ……!?なんて上目遣いなの!?こんなの、先生に見せたら借金してでも買うわ!ゲーム開発部みたいな、幼い外見の子も大好きな先生ならッ!!まず間違いなく、財布が空になるまで散財する!!先生の散財っぷりを間近で見てきた私が断言する、この子達に負けた先生は破産してしまう──!)
執務室を出て案内を開始してからしばらくして、何やら疲労した様子のユウカが執務室に帰還した。グレイとリンゴがニコニコした顔でユウカの両手を引いているのが強く目を引く。
「な、何かあったの……?」
「いえ、特には何も。……先生」
「うん?」
「シャーレの備品に幾つか欠品があったので、少々買い物に行きたいのですが……」
「何が欠品してたの?発注かけとくよ」
「いえ、この目で見て直接選びたいので。ちょっと出掛けてきますね」
「……?分かった、気を付けてね。領収書は忘れずにお願いね」
「誰に言ってるんです?というか、領収書は今日も私が処理しますし、それは心配しないでください」
「あはは……今日もよろしくね……」
「任せてください。──それから、ローニィさんとアンちゃんにはパソコン業務含めて一通りの業務を教えましたので。今は、各設備の整理整頓と清掃をしています。その後の指示は先生がお願いします」
「おお……もうそこまで……」
「それじゃ、グレイちゃんとリンゴちゃんは借りて行きますね。少々人手が欲しいので。それに2人も暇らしいので……」
「そっか、分かった。いってらっしゃい」
「「いってきまーすっ!!」」
◆
「──それで?2人はどんなピアノが欲しいの?」
「んーとねー。できればパイプオルガンがいいの」
「でもね、パイプオルガンとかフツー売ってないし教会でもないと見掛けもしないの」
「売ってても高くて買えないわよ……」
ユウカはその場でパイプオルガンの値段を検索。しかしどのネット記事でも「定価がつくようなものではない」という意味合いの記載がされている。
某学校の中に併設されている教会内のモノだと、値段も1億と数千万と出てきた。それに加え、予め値段を設定されて請求されるのではなく「ホールや教会などの建物の形に合わせて作っていくので精算されて初めてその値段が算出される」のだ。
それを見たユウカは、ぐにゃりと目の前が歪む。代わりにとグランドピアノを調べていると、2人は画面を覗き込み……。
「家庭用のは響きが悪いからダメ〜。講堂とか広い場所でも聞こえるようなスゴイのが良いのっ!」
「そうなると数百万、数千万単位になるわね……」
「高いもんねー。これはしょうがないよねー」
「むぅ〜……イイヤツ弾きたいぃ……」
「……ったく、しょうがないわね……グランドピアノだったら、まぁ……」
「「え!?」」
「私、こう見えて株をやってるのよ。ミレニアムの資産から出すのは横領になっちゃうけど、私個人のポケットマネーから出せば……特に問題は無いわ」
「ホントにッ!?」
「今回だけだからねっ!シャーレに来た記念?とかそんな感じの意味で……だからね!特別よ!?」
「「ありがとっ、ユウカおねーちゃんっ♡」」
「……モモイ達もこれくらい素直ならな……もっと可愛いのに……はぁ……」
「……?ユウカおねーちゃん?」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないの。さ、ピアノショップに行きましょ。……この近くだと、何処にあるかしら。やっぱりトリニティかミレニアムか……イメージから言うならやっぱりトリニティよね」
そしてトリニティ自治区に移動した3人、そこで数時間ピアノを取り扱う店を複数ハシゴしたのち、休憩がてらカフェに立ち寄り……。
「──今のでトリニティのお店は大体巡ったわよ。それで、どのお店のが一番良かったの?」
「んー……やっぱり最後のお店のだよね?」
「うん、高級店だけあって鍵盤の感触が違かった。調律も平均以上にしっかりされてたし、弦の張りも良かった。何よりハンマーに使われてるフェルトの質が良かった……♡」
「最後のお店のは中々に高かったわよね……」
「……やっぱりダメだよねー……」
「そもそも初対面だし……」
「大丈夫よ、買ってあげるわ」
「「ホントッ!?」」
「有言実行。というか、一度でも『グランドピアノだったら』って言ったなら買わなきゃ嘘になるわ。これ飲んだら、さっきのお店に戻りましょうか」
「「わーい!ありがと、ユウカおねーちゃん!」」
(……先生のこと注意できないわね、私も……)
こうして目当ての店に戻った3人。しかし、その値段を改めて確認してユウカは目を剥いた。流石はトリニティ自治区とでも言うべきか──その中でも最高級と言える程の高級店。品質は折り紙付きだがそれだけ値段もとんでもないものであった。
「さ……3000万円……!?ピアノでしょうッ!?」
「ま、こんなもんだよね〜……ユウカおねーちゃんもビックリ、トリニティの最高級ピアノ店」
「
「うんにゃ、プライスレスだね。マエっちの事だしこっちには無い材料や技術も使ってるハズだしね。それでも無理やり値をつけるなら億超え確定だよ。というか、私が使ってる指揮棒も、ケース無しでもギリギリ100万にはいかないくらいのハズだし」
「そっか。キヴォトス最高級品もここで買えるなら市販品でしかないって事だもんね」
「そーそー。市販品だもんね、お手頃価格だよね。というかトリニティ生なら普通に買えちゃいそう」
(3000万円がお手頃価格ですって!?一体どういう教育を受けたらそんな発想になるのよ……!?)
2人の育った、ゲマトリアの本部といった環境を知らないユウカからすれば、2人の会話はまさに、大富豪の会話のそれであった。
しかしグレイの最後の「トリニティ生なら普通に買えちゃいそう」という言葉が、ユウカの魂に火をつけることになった。
「うーん。やっぱりマエっちに送ってもらう?」
「えー、でもそれ先生がマエっちに借りを作る事になるし、出る時に『ピアノは要らない!』って啖呵切ったのにって笑われるよ」
「そっかー……リンゴってば軽率だなー」
「あうぅ……」
「────安心しなさい、リンゴちゃん。ピアノは私が用意するわ……!!」
「えっ……?」
ツカツカと、自信に満ちた足取りで店員の元へと向かう。そして店員はユウカの存在に気付くなり、にこやかな営業スマイルを表示する。
「いらっしゃいませ!どのような商品をお探……」
「すみません!あのピアノを購入したいのですが!カード払い、一括で!!」
「かしこま……一括ですか!?」
「ええそう、すぐ口座から引き落としできるから、一括で構わないわ」
「か、かしこまりました……。配送先はどちらに指定致しますか?」
「そっか、ピアノだし、持ち帰りじゃなくて配送になるわよね。……えっと……シャーレの居住区……」
「「共用スペース!共用スペースに置いて!!」」
「え。……いいの?あなた達のピアノなのよ?」
「皆に届けたいから……!」
「皆に聴かせたいから……!」
「「居住区じゃあ、折角の良いピアノも、置いてる意味が無くなっちゃう……っ!!」」
目を潤ませてそんな事を訴える2人。ユウカは、聖母のような優しい眼差しを向けながら2人の頭をくしゃりと撫で、店員に向き直る。
「……って事だから、シャーレの共用スペースに配送お願いね。即日での配送が難しいのなら、次の私の当番の時にお願いしたいから改めて日を指定させてもらうけれど、どうかしら?」
「即日配送ですね、可能でございますよ」
「決まりね。じゃあそれでお願い」
「かしこまりました。それではこちらに、お客様のサインと────」
こうしてピアノを購入した3人は、配送の時間を念の為にシャーレに着く予定時刻の数時間後に指定して、のんびりと帰路についた。
その道中……。
「今日はありがとーね、ユウカおねーちゃん♪」
「真っ先に、ユウカおねーちゃんと先生に聴かせてあげるからね♪」
「ふふっ、嬉しい。ありがとうね」
「あーあ、どうせならパイプオルガンとかもいつか弾いてみたいなー」
「こーら。そんなコト言われても買ってあげないんだからね?」
「えへへっ、バレた?」
「リンゴの演奏スキルはキヴォトスイチだからね!ユウカおねーちゃんも拍手喝采間違いなしだよ?」
「それはまぁ、多分、そうなんでしょうけれど……。パイプオルガンは流石に無理よ……さっき調べた所によると校内の教会のモノでさえ数億円が当たり前な世界じゃないの」
「でもさでもさ?ユウカおねーちゃんにしてみれば割と頻繁に目にしてる数字じゃないかな?」
「C&Cの暴れっぷりによる損害*2とかー……」
「リオ会長の横領*3とかー……」
「エンジニア部の暴走や実験の結果による被害も、多分、数知れず……だよね?」
「最先端技術を扱うミレニアム、そのセミナーさえ破産しかねない程の損害って言ったら、やっぱり、数億単位……」
「下手したら数兆単位でブッ飛んでたり……」
姉妹の言葉に、段々とユウカは項垂れてしまい、歩みも遅くなる。遂には足を止め、底無し沼の底へ届けるかのような、深すぎる溜め息をついた。
「……ぶっちゃけ、そうなのよね……ホント、こんな仕事してたら金銭感覚が狂っちゃうわよ……」
「「……なんかお疲れ様、ユウカおねーちゃん」」
「あなた達が癒しになってくれているわよ……はぁ。後はあのピアノであなた達の演奏を聞きたいわ……」
「癒しかぁ〜。パイプオルガンの方が、良い癒しになると思うけどな〜♡」
「間違いなくサイコーに良い癒しになるよ〜♡」
死んだ魚のような目のユウカに、ほんのりと淡い光が舞い戻る。
正午を過ぎ午後を迎えた現在、太陽は西へ西へと向かいつつある中、ユウカは段々と太陽とは反対に気分が盛り上がりつつあった。
「癒し……そーね……癒しが欲しいわね……心が休まる癒しの場……ね。────ちょっと、シャーレ近くの不動産屋さんに寄ってから帰りましょうか……」*4
「「え?」」
「ふふ……期待してるといいわ、2人共……」
「え……ユウカおねーちゃん……?」
「ちょっと待って、おねーちゃん……?」
「そーだ……確かシャーレの近くには廃ビルが幾つかあったはず……1つは風紀委員会の支部か……なら……幾つか候補を見付けてパイプオルガン設置に適した土地と施設と業者を見繕って、と。あと施工業者についてはシスターフッドに問い合わせてみて……」
「あ、あのー……おねーちゃん?」
「パイプオルガンは冗談だからね……?」
「ふふ、私が勝手に買うだけだから……ふふふ……」
((なんかヤバい事になった……かも!?))
シャーレ近くの廃ビルが小ぢんまりとした教会に改装されて、そこにパイプオルガンが設置されたのを知るのはそう遠くない未来の話である────。
私の家にあるピアノは、40年モノでした。私の母が小学生の頃、曾祖母が買い与えた物だそうで……。
そりゃ
皆さんのピアノは何年モノですか?
今年の更新はこれでおしまいです。
皆さん、良いお年を。
また来年も感想に高評価、よろしくお願いします。
それではまた明日(か明後日)。
モモトークについて、どうしようか迷ってます。
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これまで通り文字で
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トーク系のアプリを使用