※この作品はR-18です。

「ハーレムルートを目指しましょう、先生」   作:アキラゼミ

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姫始め争奪戦

 

 新年。新しい年と書いて、新年である。

 新年を迎えた後は、きっと何をするにも「初」が頭につくだろう。初夢、初笑い、初泣き、初キス、初エッチ、初バトルなどなど……。

 新年の「初」にかこつけて何かを始めてみるのも悪くは無い。新年を迎えたからこそ、新しいコトに踏み出そうと考える者も居る。

 

「────何がどう転んでも、今年は早々に大きく荒れそうだね」

 

「フフッ、気が早いですよ、セイアちゃん。これはまだ『来年』の話ですよ」

 

「そうだったね。なにぶん、寝ている時間が長いと日付や曜日の感覚も薄れてしまってね。今が元日の深夜なのか、日を跨いでいないのかも分からない。だが今の君の言葉から察するに、どうやら今はまだ大晦日らしい」

 

「ええ。そして深夜ではなく、太陽も沈んだばかりです。そろそろ『獣』が目を覚ます時間ですね♪」

 

「やれやれ、まるで他人事のように言うね。君も、その1人だろうに」

 

「あら、バレちゃいました?──セイアちゃんは、どうするんです?『先生の初エッチレース』♡」

 

「無論、降りるよ。誰かと競ってまで彼の初モノを奪いたいとは思わない。何より、やはり、こう──誰かに見せつけるというより、楽しみたいからね。彼との……その……性行為は、さ……」

 

「……流石ですね。私はまだ、そういった気持ちにはなれません」

 

「強く聡い君の事だ。もう分かってるんだろう?」

 

「買い被りです、そんなの……」

 

「どうだかね」

 

 大晦日の夕方、セイアの私室にて──。睡眠から目覚めたばかりの彼女は、友人のハナコを呼んで、他愛のない世間話に花を咲かせていた。

 しかしその内容は「先生の初エッチ」について。セイアから見れば婚約者、そしてハナコから見れば彼氏の「シャーレの先生」は、大晦日である今夜、シャーレの中で篭城すると、公式モモッター内にて告知していた。

 というのも、皆がシャーレに押し寄せてくると、予め察知していたからであった。

 とはいえそれで「はいそうですか」と引き下がるハーレムメンバーではない。誰もが、シャーレ内へ侵入し先生の「初エッチ」の相手になろうと躍起になっていた。

 

「私もセイアちゃんやミカさんのように──先生と

『そうなりたい』などと思ってしまうのは、きっと褒められた事じゃないんでしょうね」

 

「良いんじゃないかい?彼ならきっと言われずともそうするだろうし。それに、願うだけなら自由さ」

 

「願うだけなら、でしょう?でも私はもう、我慢ができなくなってきています……」

 

「……気を付けるといい。ミカは恐ろしい子だよ」

 

「ふふっ……ええ、よーく知っていますよ」

 

「頑張ってくれ、ハナコ。私の分まで」

 

「っ!……ええ、もちろん。セイアちゃんの分まで、先生の初ザーメン、搾り取ってきてあげますね♡」

 

 ◆

 

「────えっ??シャーレに乗り込まないのか、ですって?」

 

「そ!だってー、わざわざこんな告知するんだよ?寧ろ『皆が来るの待ってるよ』って言ってるようなものじゃん!」

 

「そ、そうなのかしら……?」

 

「そ・れ・にっ!告知を無視して侵入する方が〜、アウトローって感じしない?♡」

 

「!!」

 

 小悪魔のようなニヤけた笑顔で、ムツキはアルを唆す。そんな様子をハルカはアワアワと慌てながら見ていて、カヨコは溜め息を零す……。

 

「それもそうね、一理あるかもしれないわ!なら、便利屋68、シャーレに突撃よっ!」

 

「最後まで勝ち残ったら、先生と初エッチだね♡」

 

「え???」

 

「その為の突撃でしょ?ほら、モモッターでスゴく話題になってるよ?」

 

「なっ、何よコレ!?」

【挿絵表示】

 

「くふふっ、コレにリプ送っといたよ?『便利屋の社長も参戦します』って♡ ハーレムメンバーは、現状、アルちゃんだけだしぃ……頑張って♡」

 

「ななななっ、何ですってーーーーっっ!?!?」

 

 ◆

 

「────さっきから、しきりにモモッター見てるけど……モルモはアレ、参戦するのか?」

 

「ん〜?……あぁ、『先生の初ザーメン狩り』?別にいいかなぁ、寒いし眠いし、こんな近所なら先生のザーメンとかいつでも狩れるしね」

 

「ザーメン狩りって……酷い呼び方だな……」

 

「イオリちゃんこそ、参戦しなくていいの?先生、イオリちゃんのこと待ってると思うよー?」

 

「はぁ……?何言ってんだ?」

 

「だってほら、モモトーク見てみなよ、グルの方。警護にかこつけて私達と一緒に年越ししないかって風紀委員会グルにお誘い来てんじゃん」

 

「!?」

 

「ヒナちゃんはもう現場(シャーレ)に向かってるっぽいけど。イオリちゃんはどうすんのカナ?♡」

 

「っ……ちょっとこの書類、手伝ってくれるか?」

 

「はいはーい。お仕事なんてさっさと終わらせて、気持ち良く新年を迎えないとね。二つの意味で♡」

 

「べ、別に先生の初ザーメン狩りってのに参戦するワケじゃないんだからな!ただその、シャーレの、というか先生の警護に行くだけだ!」

 

「ふふっ、はいはい、そーゆーことにしたげるわ♡ 今日は楽しい大晦日になりそうねぇ♡」

 

 ◆

 

「これは良い機会です。シャーレに行きましょう」

 

「「どんな機会??」」

 

「シャーレの──如何に最高級の技術だろうとも、民間の警備など無意味なのだと先生に、そして世に知らしめる良い機会と言えます。シャーレの先生に取り入るのにも良い機会であると言えるでしょう」

 

「そっか!今の警備を破棄させてデカグラマトン(わたしたち)の技術を利用してもらえば……!」

 

「結果的に先生から信用を得る事にもなりますし、その警備の穴を突く事ができるのは私達だけ……」

 

「あと、先生に褒めてもらえる……///」

 

「それもありましたね。ふふ、私達が先生の警備に貢献できるとなれば、褒めてくれること間違いなしでしょうね♡」

 

「でも、ここからどうやって……?」

 

「……電車に乗るのもアレですから、アビドス経由で向かいましょうか?」

 

「アビドス────まさか?」

 

「ビナーでドライブと行きましょうか♡」

 

「総力戦・ビナー(市街地戦)、スタート、だね。ビナーちゃんの準備してこよっと」

 

「下準備は任せましたよ、アイン」

 

「うん。改造ビナーは、速いよ。ソフとオウルは、お出掛けの準備しておいてね」

 

 部屋を出たアインはビナーの準備に取り掛かる。残されたソフとオウルはそれぞれ、外出及び、その外出先で行うであろう行為の準備を始める。

 

「ゴムって要るっけ?」

 

「要らないのでは?どうせ孕みませんし」

 

「え?でも先生の生体データを持ち帰るにはゴムを使った方が効率的じゃない?」

 

「!新年初ザーメンには特別なデータが……!?」

 

「いやそうじゃなくて」

 

 ◆

 

「サオリ姉さん、今頃、何してますかねぇ……」

 

「リーダーは……まだ自分探しの旅の途中でしょ」

 

「そう簡単には終わらないよ、きっとね」

 

「ヘルメット団とかよりもモデルさんとか似合ってそうですよね、姉さんって絵に描いたような細身でモデル体型ですし……フフ……」

 

「……ヒヨリ、最近やけにモデル雑誌読んでるね?」

 

「ええ、まぁ……キャラ造形のネタ集めに、と……。でも、最近はそれ抜きに読んでもいるんですよぉ、実は推してる子が居て……。ゲヘナ自治区の近くの子なんですけど、このルビーちゃんて子が特に──」

 

 ◆

 

「シロコちゃーん、準備はイイ〜?」

 

「ん、準備万端だよ」

 

「よぉーし、それじゃあ作戦通りに行こ〜うっ!!巫女さんのバイトで不在のセリカちゃんの分まで、私達アビドス組で先生を独占だぁ〜っ!!先生の事連れ出してセリカちゃんのバイト先の神社で新年のお参りまで済ませちゃお〜!!」

 

「「おーっ!!」」

 

「だ、大丈夫でしょうか……?さっきから、まるで、ビナーでも出てきたような地響きが……」

 

「大丈夫大丈夫!ただの地震だよ!」

 

 ◆◆◆

 

 世間がそんな事態になっているとは露知らず──私はいつも通り仕事に追われていた。

 と言っても今年は当番のノア、ユウカに加えて、カヤもシャーレに居る上に、人工天使4姉妹のうちローニィとアンも仕事に参戦している事もあって、仕事なんて、午前の内に終わらせてしまっていた。

 だから私は、お昼以降は清掃と見回り、それから年越しそばの買い出しなどをしていた。

 私と同じくらい仕事に追われていた風紀委員会も誘ったものの、返信があったのはヒナとアコのみ、しかもヒナしか来れないという内容だった。まあ、一番の苦労人はヒナだし、妥当ではあるかも……。

 

「……カヤ、今回は余計な事しないでね」

 

「余計な事とは?」

 

「この前の私の誕生日の時みたいなアレ。ネットに余計な事を書いて〜ってヤツ」

 

「あ、あー…………そう、ですね……ハイ……」

 

「まさか、もう何か書いたの!?」

 

「い、いえいえ!何も書いてませんよ、私は!私は無実です!ホントに!!」

 

「……『私は』?」

 

「うっ」

 

 つまりカヤではない何者かが、ネットにまた何か面倒が起きそうな事を書き込んだ。大体そういった意味で解釈した私は、モモッターを開きトレンドを確認。そこには「初ザーメン狩り」「姫始め」などなどの言葉が並んでいた。

 皆の呟きを見る所によると、私の新年初エッチの相手をしようと、ハーレムメンバーをはじめとする一部の生徒がシャーレに向かっている……らしい。

 しかも、それを煽るような投稿もバズっている。アカウント名から察するに、シュロの仕業か──。

 

「う、嘘でしょうッ!?姫納めはユウカ、姫始めはノアとエッチするつもりだったのに!」

 

「安心してください。その投稿を見た時点で即座にシャーレの警備を強化しましたから♪」

 

「今日は大晦日。しかも夕方、というより夜です。今年はもう業者の出入りの予定もありませんから、とうに一階以外の施設そのものを閉鎖済みですよ。システムにもアクセスして外部からのハッキングを妨害するシステムも構築しました」

 

「そんな事できるの!?」

 

「私達もミレニアムサイエンススクールの生徒──その程度の事はお手の物ですからね」

 

「ユウカぁ……ノアぁ……」

 

 なんって頼りになるんだ。流石セミナーの2人。選択肢が合っているかが不安になりがちだけれど、今回ばかりはまず間違いなく、頼りにする生徒達は間違えていなかったね。

 

「それにしても、ミカさんやセイアさんではなく、私達で良かったんですか?」

 

「私は──嬉しいですけどね♡ 大好きな先生と、大好きなユウカちゃんと新年を迎えられてっ♡」

 

「ノア……♡」

 

 セイアが言うにはナギサはミカと過ごしたそうにしていたそうだから、私からはミカを誘ってない。あんまり特別扱いし過ぎても、ハーレム内で今より格差が広がるのは良くないだろうし、ある意味で、渡りに船な提案だったっていうのもある。

 それもあって今年の大晦日にはノアが当番になるように調整し、その上でユウカを呼んだ。

 

「……うん。今年は2人と……あといつも頑張ってる風紀委員会の子と過ごそうと思ってたんだ」

 

「ゲヘナ学園の風紀委員会の皆さんですか。確かにどの学園の組織よりも忙しそうにしてそうですね。特にヒナさん……」

 

「ヒナさんに比べたら、セミナーの会計も……ねぇ。大変ではあるけれど、何徹もする程でも無いし」

 

「書記も、その場での記録が多いですから、徹夜の機会なんて殆ど……」

 

 どちらも大変である事に変わりはない。しかし、その「大変」のベクトルが違う。どちらも忙しく、どちらも大変だ。こんな私が癒しになれるのなら、癒してあげたい。

 

「……?って、これ……先生、見てくださいっ!!」

 

「うん?」

 

 ユウカがスマホの画面を見せてくる。そこには、デカデカと「ビナーの目撃情報」と書かれている。黒服からの連絡は何も無い、しかしビナーは街中に現れている。何が起きているのか、一瞬思考が停止したような気がした。

 

「って、この背景……」

 

「アビドスじゃない……ですよね?合成画像か、とも思ったんですが……」

 

「──合成などではなさそうですね。そして、このビナー……サイズ感がほんの少し妙ですが、模型ではなさそうです。既存のデータと合わせて考えると、サイズダウンしたように見えます」

 

「待って、目撃情報って!?それ、どこ!?」

 

「アビドスとD.U.の間の……。このビナーの出現に伴って、今、D.U.に避難勧告が出ていますね」

 

「なんっ……なんで、ビナーが……!?」

 

 その時、ゴゴゴゴ……と地響きが聞こえてきた。

 外を見てみると、彼方に土煙が上がっているのが見え、更には破壊音と共に建物が倒壊していくのが見える。土煙の中心に居るのはビナー。ほんの少し小さいような気がするが、移動するだけでも建物を破壊できるだけの破壊力は健在らしかった。

 

「──ヤバい!ビナーがコッチに向かってる!!」

 

「えぇッ!?」

 

「何ですって……?」

 

 その時、モモトークの通知が鳴った。ビナーから避難している生徒からの連絡だと思い、とりあえず確認だけでもとスマホを開くが────。

 

 

───────────────────────

 

 

 

急な連絡ごめんね……?

 

ちょっと久しぶりだね♡

 

年越しをシャーレで過ごす為に

ビナーでそちらに向かっていますよ

 

なにやってるの!?

 

 

 

───────────────────────

 

 

アイン、ソフ、オウル(あの子たち)、なにやってんの!?」

 

「「え?」」

 

「シャーレをお願い!私はビナー止めてくる!!」

 

「なっ……先生!危険です、やめてください!!先に避難してください!」

 

「ビナー討伐には私達も向かいますっ!」

 

「ッ……止める手立てはある、だけどまずはビナーの近くに行かないと……!」

 

 ゴルコンダ&デカルコマニー開発の転送装置改良バージョン。屋根裏の簡易武器庫からそれを幾つか引っ張り出して1つを起動させ、移動先をビナーの頭部に指定してやり……。

 

「──寒ッ!!」

 

「あれ……おにーちゃん……?」

 

「ウソ、いつの間に!?……って何持ってるの?」

 

 ワープ先であるビナーの頭部にはアイン、ソフ、オウルが居た。ちょっと小型化したらしいビナーに乗って、街をドンガラガッシャンと破壊しながら、シャーレ方面へ向かっている。

 

「ワープしてきたのですか?相変わらず、あなたは私達の予想を軽々と飛び越えてきますねぇ。まあ、どうでも良いのですが」

 

「何をやってるの、3人共っ!」

 

「何って……そのー……」

 

「ご覧の通り、ビナーに乗ってシャーレに向かっているだけですよ?こうしてビナーに乗っていれば、同じくシャーレに向かう邪魔者も排除できますし。まさに一石二鳥ですよね」

 

「それと、先生の新年初エッチは私達のモノだよ♡ 覚悟してね、せんせ♡……あ、お兄ちゃん♡♡」

 

「気持ちは嬉しいけど、ビナーに乗ってくるなんてダメだからね!来るのなら、いつもみたいに普通に来なさいっ!」

 

「「「え」」」

 

 転送装置を発動させる。移動先は、氷海地域だ。そこにビナーと3人と私を移動させ、次の瞬間にはもう1つを起動させ私だけシャーレへと舞い戻る。

 アイン、ソフ、オウルには申し訳ないとは思う、だけどダメだ。これは3人への罰。ビナーに乗って街中までやってきてしまった、あの3人への罰だ。

 

「先生!?消えたと思ったら急に……!!」

 

「友達の作ってくれた移動装置でね。とりあえず、これでビナーの問題は解決したよ」

 

「どんなお友達ですか!」

 

「まぁまぁ、ユウカちゃん。きっと『大人の事情』というものですよ。現に、現場からビナーは消えたみたいですし……気にしなくてもいいのでは?」

 

「そんな、漫画やアニメみたいな……」

 

 その時、ビーッビーッと警報が鳴り響く。ノアとユウカは即座に武器を手にしつつ、警備システムにアクセス。それによると「3つの人影」がシャーレ内部に侵入してきたそうだ。

 

「執務室に近付いてます!」

 

「先生、危な──」

 

「FOX EATSでーっす!!」

 

 聞き覚えのある声、セリフが聞こえてくると共に執務室の扉が爆弾で吹き飛ばされた。何で同時だとツッコミたくなるが私や皆が無事なら何でもいい。ただし修繕費は身体で払ってもらうとしよう。

 

「年越しいなりのお届けに来ましたー♡」

 

「あのねぇ、ニコ……。爆弾魔じゃないんだからさ、爆破して入ってくるのはやめようね……」

 

「何よ、私達の年越しいなり食べたくないワケ?」

 

「そういう問題じゃないと思うけどなー。オトギもこういう時はちゃんと2人を止めるんだよ?」

 

「う、ん……どうしても押されちゃうんだよね……」

 

 ユキノはやっぱり来ないらしい。まぁ、あの子はそういうキャラじゃないか。

 その後はニコ、クルミ、オトギを順に抱く。夜はどこで過ごすのかと聞くと、やはり年越しは小隊の4人全員で過ごしたいとのことなので、シャワーを終えると3人は帰って行った。シャーレ近所の寮に住まわせてるから、行き来も楽そうだ。

 

 ◆

 

「戻ったよー」

 

「お疲れ様です、先生」

 

「先生にお客様ですよ」

 

「え?」

 

「き……来ちゃった……おにーちゃん……♡」

 

「やっほー、さっきぶりィ♡」

 

「レースは私達が一番乗り、という結果で終わったようですね。どうでもいいのですが」

 

 シャワーから戻ると執務室のソファにはアイン、ソフ、オウルの3人が並んで座っていた。ユウカとノアと談笑していたらしい。

 

「な……何でここに……!?」

 

あの程度(・・・・)の転送装置、私達に解析できないとでも思ったのですか?」

 

「あ」

 

 そういえば黒服、言ってたな。確か「私達以上の技術でもなければ解析すらできない」って。そうかアイン達はゲマトリア以上の技術を持ってるんだ、なんでそれを忘れていたんだろう。

 ゲマトリア製インスタント転送装置、私のせいでデカグラマトン側に解析されちゃったよ。ヤバイ、やっちまったね。どうしよ。

 流石にこれは「てへっ☆」じゃ済まされないぞ。

 

「先程の先生みたいに、執務室内に急に現れたので驚きましたが……」

 

「先生のご友人だと仰るので、あぁそれでか、と」

 

「!」

 

 流石にこの子達も、自分達がデカグラマトン側のエンジニアだ、とか言わないのか。そりゃそうか、デカグラマトンの預言者がミレニアムのAIとかを乗っ取ったりしてるもんね。ミレニアム(ユウカとノア)からすれば明確な敵だもんな……。

 

「そんな事はいーから、年越しエッチしよ、年越しエッチ♡」

 

「ベッドの上で年越しを迎えて、そのまま姫始めを行うのもアリですね♪」

 

「また、おにーちゃんとエッチ、シたいな……♡」

 

 3人の幼女に囲まれてドギマギとしている私を、2人は冷めた目で見ている。助けてくれても──と思ってはいけない。

 今年の姫納めはユウカが、姫始めはノアが相手をしてくれると決めたのだから、その通りにするよう私も私で努力しなくては。

 

「わかった、今からエッチしよっか。でも姫納めと姫始めの相手は決まってるから、それはごめんね」

 

「えー!?そんなの無いよ、酷くない!?」

 

「酷くありませんっ!予定っていうのは、前々から決まってるものなのっ!」

 

「確かに、唐突に押し掛けた私達にも非はあるとは思いますけれど……このまま引き下がるのは、やはり悔しいでは済みませんねぇ」

 

「……おにーちゃぁん……」

 

「そ……そんなウルウル目で見上げてもダメなものはダメなの、約束があるんだから……ね?」

 

「うぅ〜……」

 

 アイン、確実に私の弱点が分かってるな。幼女の上目遣い程、心にグサリと刺さりグリグリと強烈に抉るものは中々無い。アイン、ソフ、オウルの中で一番の強敵なのはひょっとしたらアインなのかも。

 そう分かっていてもつい──いやダメだダメだ、ユウカとノアが優先!!

 

「こうなったら……勝負だ、そこの2人!」

 

「え……私?」

 

「私とユウカちゃんと……勝負、ですか?」

 

「私達の最新作『ミニマムビナー』と勝負しろ!!それでこっちが勝ったら、姫納めと姫始めの権利はこっちが貰い受ける!!それでどう!?」

 

「ミニマムビナー……とは??」

 

「ふふん、説明するより見せた方が早いかもねっ!アイン、ビナー出して!」

 

「う、うんっ……!」

 

 ソフに促されたアインは、ポケットからボールを取り出してビナーを召喚する。そのサイズは普通のヘビのような、全長1m前後の可愛らしいサイズのビナー。まさかのミニマムサイズのビナーだった。

 

「あら……」

 

「……模型?」

 

「シャーッ!」

 

「小さいからって舐めないでね!レーザーの威力は従来の数十分の一でも、ガラスを切るくらいの事はできちゃうんだから!」

 

「「!?」」

 

「さぁミレニアムのお2人。勝負といきましょう。先生の今年最後、そして来年最初のエッチを賭けた一世一代の大勝負────」

 

「えいっ」

 

「ピキーッ」

 

「「「えっ」」」

 

 ユウカに踏まれたビナーは、情けない声を上げて尻尾をジタバタと振り回して暴れる。ユウカに足を離されると即座に逃走し、アインの足へ絡みつく。

 

「……で?……勝負、続ける?」

 

「ひぃ……」

 

「こ、この生徒、凄まじく大人気ない……!」

 

「ビナーを踏み付け1つで撃退するなんて、なんて凄まじい圧……!極太の太ももなだけありますね」

 

「あなたスゴく失礼なこと言ってるからね??」

 

「……どうしよ、ビナーちゃん負けちゃった……」

 

「……こうなったら仕方ないね……」

 

「街中に召喚するのは────また先生に怒られてしまいますしね。仕方がありません。今年はこれで諦めてあげます、しかし次はこうはいきませんよ。それでは皆様、良いお年を♪」

 

「「良いお年を〜!!」」

 

 手を振り、3人は消えてしまった。転送装置でも起動させたのだろうが、彼女達が居た周辺に、装置らしきものは無い。3人による改良版については、また今度、3人に掘り下げてみようと思う。

 

「……何だったんでしょう、あの3人……」

 

「他にも来そうな気がしますね。新たな刺客が」

 

「刺客だなんて大袈裟な……」

 

「大袈裟じゃありませんっ!」

 

「ローニィさん達も呼んで、本格的に先生の警備を固めた方が良さそうですね?」

 

「そうね。あの子達の事は知らないけれど、投稿を真に受けた生徒が来るかもしれないし」

 

 そして始まった、姫納め・姫始め防衛戦。早々にシャーレに攻め込んできたのは────。

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