カルデアに居ると当然ではあるが義務が発生する、色々長ったらしい説明は受けても最終的に言うならモルモットと言う言葉に集約された。特に私はレイシフト適性100パーと言う個人としては意味がわからないがとにかく凄い才能を有しているという事なのだからさぞ研究対象としては興味深いだろう、よくわからんチューブをべたべた体にくっつけられるのは少々くすぐったくはあるのだがそれだけだ、貴重な被検体であるがゆえに私の命の危険はほとんどない……あぁ、研究されつくされた後、もしかしたらサンプルとしてバラされる可能性はあるのだろうか?カドックとは最近夜な夜なセックスをする中になったのだが、彼は自称結構甘いらしくペラペラ色々な情報を喋ってくれる。特にマジモンの魔術師は自分中心に世界が回っていて、コトによっては人を殺すことに何のためらいもないのだという。それどころか崇高な研究の材料になる誉を得たのだから感謝してほしいと考えている節もあるという。いやー、怖いっすね、魔術師。糞かな?私もだいぶ人のことを弄ぶビッチ系ではあるが生命倫理は……あ、ゴメン人並みにもないや、出産で快楽を、などと考える人間はどう考えてもまともじゃないことくらいは自分でもわかる。そう言う意味で言えば私と魔術師は同じ穴の狢なのかもしれない。精液でべちゃべちゃになったまんこにパンツをはいて、カドックを興奮させながらそんなことを思った。
その機会はたまたま訪れたと言っていい、彼女が孤高のようにただ一人たたずんでいるところを私が見つけた、カップからは湯気が立ち、アンニュイな表情をして何か考えこんでいる、できの良い顔に憂いを帯びさせている様は芸術品のようにも思えた。同じ女であっても、顔つきと言うのはこんなにも良しあしが出るのだな、と思う。もう少し私にもその美貌を分けてくれてもいいと思うのだが、なかなかどうして世界と言うのは残酷なようである。
私はそんな彼女の領域に踏み込んだ、ここが彼女の私室であればプライベートを考えて多少の迷いを得てから入ったのかもしれないが、ここは彼女の部屋ではない、カルデアのとある一室、私に踏み込まないという選択肢はない、何よりここで仲を深めておけば中を味見できるかもしれないではないか、むほほ♡
とぼけた顔をして彼女の前に私は姿を見せる。
「っ……」
「あっ……所長?」
さも何も知らぬかのように私は声をかけた、緊張しているようだった、魔術師とはそう言ったところでもピリピリした小動物のようだ。
「何よ……」
「あー、ちょっと迷っちゃって!カルデアって広いですから……たくさん部屋ありますもんね!」
「……そうね」
「一人でお茶ですか?」
「悪い?」
「いえいえ、そんなこと言いませんって……それより少しだけご一緒してもいいですか?」
「ダメって言ったら?」
「次はお茶菓子でも持参してこようかな」
「あんた、結構強引なのね……」
「いやぁ……それほどでも?」
「褒めてないわ……ま、いいわ、好きにしなさい」
「ありがとうございます、それでは失礼して」
私は部屋の隅にあった椅子を持ってくる。安物で多分何かの呼びに使うはずだったもの、しかし作りはしっかりしてるから思っている以上に座り心地は悪くない。所長が私にカップを差し出してくる、カップを持ち上げて飲んだ、味が良い、熱さもちょうどよい、作り慣れているのだろうか、馴染む味だ。
「これは茶菓子がない方が正解かな」
「あら、味がわかるのね」
「味にうるさい日本人ですから」
趣味が紅茶の男性の精子と一緒に味わったことがあるだけではあるのだが、利き紅茶ができるようになったのは特技が一つ増えた気がして得をした気がする。静かな時間が流れる。女性の平均として安心しているときは会話が弾むと言われている、しかし、今この瞬間は互いに安心してると思う。言葉はなくとも、と言った感じだろうか、ただ人の存在感があるだけとでも言うべき中でただ静かな時間が流れる、こう言った贅沢な時間はあまり過ごしたことがなかったな、と思う。同年代でワイワイするのも悪くないがこの瞬間も好ましい。
口を開いたのはオルガマリー所長からだった。
「ねぇ……リッカ……だったっけ?」
「あ、名前覚えてくれてるんですか?」
「まぁ……所長だから」
「いやー、だとしてもヒラのペーペーがトップの顔を覚えてるのとは意味が違うと思いますけどね」
「だったら覚えてない方がよかったかしら?」
「そんなことないですって!最近こっち来た魔術師でもないの名前覚えてくれるのは嬉しいなー」
「ふふっ……いい性格してるわ」
小さく微笑む彼女の顔は愛らしい、気を張って険しい顔をしてるよりこちらのほうが彼女の素に見えた。しかし一面を見て彼女の全てをわかったと思うのは違う事なのはわかる。だからもっと知りたいと思う。もっと彼女の全てをっ!
「所長って……綺麗に笑うんですね」
「えっ、あっ……わすれなさいっ!」
「いいじゃないですか!可愛いです」
「ジャパニーズカワイイは……威厳にならないわ……私は所長です、勤めている職員たちの上に立つ人間として規範を示さなければ」
「そっか……」
やはり追い詰めているらしい。だから 一人で静かにこうやっているのかもしれない。
「それなら……所長、たまーに私が話、聞くよ?」
「あなたが?」
「愚痴ぐらいなら、ね……確かに私は魔術師じゃないしさっぱりだけど嫌なこととか人間関係の話くらいは受け止められると思うな」
「お節介ね、まったく……そんな風に思われてたの?」
「毎日ピリピリした顔して、ここでアンニュイしてたら流石に」
「はぁ……私も修業が足りないわ」
「人生全てが修業ですよ、きっと」
「悟ったようなことを言うじゃないの、年下でしょう?」
「わ……まさか日本人みたいなことを言うとは!」
「ふっ……世界って広いのよ、日本以上に年齢とか、上下とか気にすることなんてよくあるわ」
「不勉強でごめんなさーい」
そんな会話をしているうちに、少しだけほぐれてきたのかもしれない、小さな笑顔は増えてくる。
「こんなに笑ったのは久しぶりかもね」
「いやー、お役に立てて何より」
「ほんと、いい性格でもいいわ、そうね……またたまに来なさい、お茶くらいなら出してあげても……い、いいけど」
頬を染めて言う、可愛い。ぜひとも可愛がりたいものだ。
「なら、お言葉に甘えて話相手になりに来ますね……っと、そろそろ寝ないと明日に響いちゃうかも」
「そっか、訓練あるから」
「普通に生きてきた女の子にはきっつーいっす」
「ま、いき残りたいなら頑張りなさい」
そう言って所長は手を振った。
「じゃ、お休み……良い夢を」
「うん、お休み所長……所長も体壊さないでね」
それがきっかけになったのか、私と彼女は夜に秘密の逢瀬をするようになった。と、言っても他愛のないお話だった。魔術だとか仕事の話は意図的に避けていたと思う。それでもだんだんと仲は深まっていく。歩み寄りだ、彼女にとって私の存在が大きくなっていくのがわかる。特に魔術師と言うのは排他的なあり方が普通だったからだろうか、誰かに寄りかかると言うのは……甘美だったのだと思う。甘えたい心を押し殺す、信頼できる人が少ないと言うのはどれだけの孤独なのだろうか、私にその感覚はわからない。私には友達もセフレも多くいて、なんだかんだ何かを吐き出すところには困らなかった。
だから彼女は私に吐き出す。吐き出す。最初はちょっとした不満だった。彼女自身に実力があるからそれについていけない人たちへの愚痴。次は彼女の焦り、焦りの次は本当に心の底に溜まっている黒く粘度のある悪意。
それがライン、魔術師としての話も仕事の話も避けていたはずの所長からぽつぽつとこぼれるコンプレックス。レイシフト適性の話……彼女には適性が一切ないのだという。だからか、魔術師としてはあまり……なカドックにすらコンプレックスをたぎらせている。その矛先は私にすら向かってくる。
止まらなくなったのだろう。最初は自分に向いていた言葉だんだんと外に向いてくる。何故、自分にないのだ、と。何故ナゼなぜ、私のその力がない?と、低い言葉は大きくなり、そして荒い言葉になる。
「なんで……あんたのレイシフト適性が100%なのよっ……」
搾りだしたような声は悲痛だった。
「所長」
「憐れむ気?憐れむでしょうね!!いつもは上でふんぞりかえって指示してる私に何よりも適性がないんだなんてっ!」
「……」
「みんなっ、みんな見下してるんだわっ!!口だけの女ってっ!!いざとなれば何もできない役立たずって!!」
「……」
「あんたもそうなんでしょう?本当は心の底でっ笑ってるの!!ええ、どんなことを言っても魔術が使えたって肝心な時に置物にしかなれないってっ!!」
「……」
「何とかっ……何とか言いなさいよっ!!」
私の服をつかむ。強い力で持ち上げるように。
だから私はその腕をつかみ、そして、そのまま胸に所長の顔を押し付けるように、力を込めて。
「大変だったね」
「……っ……」
「いっぱい頑張ったんだもんね、所長、ね……」
「ちっ、ちがっ……」
「ううん、いいんだよ……頑張ったからここまでため込んじゃったんだもん」
「あっ、ぅっ……」
「褒めてくれる人だっていないし、頑張ってるのに誰も喜んでくれないなんて寂しいもんね……よしよし……甘えていいよ、所長は頑張った!これからも頑張ってるっ!」
「ぅっ……ぁ、ぁっ……」
省庁の押し殺していたものが噴出すように、涙が出る。私はただ落ち着くまでそれを見守った。
少し時間が立ち、嗚咽が止まる。それでもまだ、余韻のようにひくひくとしゃっくりが続いている。
「落ち着きました?」
「はずかすっ、すぎでっ、お、おちつ、つ、つけ、ないわよっ!」
「ふふっ……よしよし」
「こ、どもぉっ……あつかいしてぇっ……」
「いいから、今だけは……」
ぐずる所長を落ち着かせる様は親子のよう、まぁ、性的なことをするから親子じゃないんだけどね。
「ふふっ……落ち着いた?」
「恥ずかしすぎて顔が真っ赤になるわ……」
「可愛かったですよ、所長」
「馬鹿……」
さて、心が浮ついてる今だからこそ、私は切り出す。
「そう言えば所長……」
「何よ」
「そう言えば魔術師ってパスを繋げるみたいな云々」
「魔力供給のことね……それが何か?」
「物理的な才能じゃないんだから、それができたらもしかしたらちょっとはできるようになるかも?」
大嘘である、カドックからここら辺は聞いたことがあるからそんなのありえないことをわかるのだ、あ、当然セックスのための方便だ。
「ちょっ、そんなのありえるわけないでしょっ!?」
「所長っ……ううん、マリー、私は少しでもあなたの力になりたいの」
「え?え、ええ」
「なら考えうる限りのことはしてみるべきじゃない?」
「え、あ、そうなのか……な?」
「きっとそうだよっ!やらないうちから言うなんてダメだよっ!」
「そ、そう?きっとそうなのね……?」
「そうだよっ……!」
だから、と、私は服を脱ぐ、
「いいよ……私の体、使って?」
小さく舌なめずりをした。
申し訳ない、エッチは次です。