※この作品はR-18です。

龍闘士ユラン ~悦ヘト堕チル凌辱冒険譚~   作:キバガミ

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ラベンダーの花畑の中でハナさんを救出し、廃都近くの小屋まで避難してきたユラン達。
そこで話し合い、まずは探索を終えるべきだと改めて廃城に向かう為、城下町の門を潜った――。


九十五話 霧影①

「んヒョォォオォォッ!! ユランちゃん脚速えェなァァ~~~~!!!」

 

「それほどでもない」

 

「謙虚なナイト様だねェェエェェ~~~~!!!」

 

 オレ達は改めて廃都へと潜り込み、

廃城目指して寂れた道中を疾走していた。

 

 ラベンダーの花畑へ行く前には無かった声が混じっており、

それは腰に身に着けているホルスターバッグから発せられていた。

 

 そこにはティエルが命名した草原狼獣人(アシモベルク)のハナさんが土ごと詰め込まれており、

凄まじい速度で駆け抜けているせいか、花びらと葉で風を受けながら

ハイになった様子で叫んでいる。

 

「ハナさん。この街はどういったものなのか分かるか?」

 

「分かるワケねェェだろォォ!? 一生あそこで綺麗な綺麗な

 おハナさんしてたんだからよォッ!!」

 

「だよな……」

 

 想像はしていたが、やはり彼もこの廃都の事は何も分からないらしい。

 だが、この世界にやってきた時から花になっていると考えれば当然だ。

 なにせ、自分達と違って自ら移動する事が出来ないからだ。

 

「んでも……なーんか見覚えあるんだよなァ……

 どこだったッケなァ……ん~~~~……」

 

「また思い出したら教えてくれ、

 今はどんな些細な情報でも欲しい」

 

「勿論だぜェェェェ~~~~!!!」

 

「随分と元気な花っすね……」

 

 ティエルがぼそりとオレの胸の中で呟く。

 

 正直、少し――いや、かなりうるさいが、

この状況に悲観し、絶望し続けるよりかはよっぽどいい。

 

「いやぁ、あの気持ち悪い馬さえ襲われなければ、

 快適に移動出来ますねぇ」

 

「だな」

 

「気持ち悪い馬ってなんだァ?」

 

「ハナさんがいる花畑に向かう途中、

 皮膚の無い馬のような気持ち悪いヤツに襲われたんすよ。

 あの時はもう、本当に死んだかと思ったっす……」

 

「エ……? そんな化け物いンの……?

 ヤダ……! ヤダァァァッッ!!

 早くお家に帰しテ!!!」

 

「そのお家に帰れるように手を尽くしているんじゃないか。

 それとも、またラベンダー畑に戻るか?」

 

「ヤダァァアァァァ~~~~!!! どっちも嫌なのォォオォォ~~~~!!!」

 

「バカッ!! そんなに泣くな! 涙でびしょ濡れになるだろう!!」

 

 ハナさんは号泣し、あらゆる器官からハナ汁を垂れ流して

オレの衣類や道に撒き散らしている。

 

 今すぐにでも投げ捨てたいが、今の状況ではどうしようもない。

 

 ヴェラクトーレ達の元に戻ったら、誰かに

代わりに預かって貰いたいものだ。

 

「うわぁ……ばっちぃっす。探索が終わったら

 洗わないとっすね……ん? あれ……なんすか……? 鳥……?」

 

「…………?」

 

 ティエルが指差した方角を見ると、

朽ちた時計塔に群がっている無数の影があった。

 

 その様子は誘蛾灯に群がる蛾や、船の帆に群がる鳥達のようで、

うねり、翻り、時計塔を中心に錆色の空を縦横無尽に翔んでいる。

 

 この廃都で生物を見かけた事は殆どなく、

強いて言うなら肉天馬や白影、ハナさんと言った

生物と言って良いのか怪しい者ばかりだったが――。

 

「ンン……あれもどっかで見たようナ……

 見た事ナイようナ……」

 

「どっちなんだ」

 

「あッ……!? ヤベッ……!

 逃げろォォォォ!!!」

 

「…………ッ!?」

 

 ハナさんの叫び声に急かされるように走る速度を上げる。

 

 時計塔の周囲を旋回していた蝙蝠の集団のようななにかは、

規律正しい師団のように収束していくと、

それは一本の線となり、こちらへと矢のように飛来してくる。

 

 その速度は肉天馬の物と比べ物にならず、

文字通り放たれた矢の如き速度だ。

 

「ぐぅぅぅッ……!」

 

 オレは石畳の上を激しく滑りながら、直角的な動きで横に移動し回避行動を取った直後、

黒い塊はオレが先程まで居た石畳の上に激突し、凄まじい轟音を響かせる。

 

 その謎の集団は地面に直撃した衝撃で飛び散り、

残骸となって影のように溶けて跡形も無くなっていく。

 

「なんなんだ……あれは……!!」

 

「間違いねェ。あれは霧笛の濃獣(むてきののうじゅう)ダ!!」

 

「なんだと? 霧笛の濃獣は想像もつかない程の

 巨大な生物だと聞いていた……あれは一匹一匹自体は

 燕程度の大きさしか無かったぞ!?」

 

「なんツッたらイイノカナー……アイツは普通の生き物じゃ

 ねェっつーかなんツーカ……いぃぃッ!?

 ま、またキタぞォォォッッ!!」

 

「んもぉぉぉ~~~~!!! どーしてここに来てからというもの、

 変な化け物に追われてばっかなんすかぁぁ~~~~!!!」

 

 第一波は躱したものの、離れた時計塔からは続けざまに

第二波がうねる獄炎のように迫り、オレ達を狙い撃ってくる。

 

 肉天馬の時とは違い、化け物に追われているという感覚ではなく、

遠くから凄腕の弓兵に狙われているというような、

また別の切羽詰まった、心臓を握り潰されるような感覚だ。

 

「ぐっ……!?」

 

 先程のようにこちらへ一直線に迫るかと思われた影の群れは、

こちらに届く前に枝分かれすると、散弾のように降り注いだ。

 

 オレは咄嗟に横っ飛びして廃屋の中に突っ込むと、

その直後、耳鳴りしそうな程の轟音が巻き起こって、

凄まじい風圧に飛び込んだ廃屋の屋根ごと吹き飛ばされていく。

 

 まるで、黙示録――ティタノブルスの落日のようであり、

ティエルとハナさんを抱え、風や瓦礫等の破片から

二人を護るだけで精一杯だった。

 

「は、は……全く……この廃都はふざけた出来事ばかりだな……」

 

 乾いた笑いしか出てこない。

 つくづく、他の者を連れて来なくて良かったと思う。

 オレとヴェラクトーレだけでは二人を護るのにも限界がある。

 

「…………」

 

 ふと、視線を動かしてみると、石畳に突撃して爆散した中の一匹なのか、

得体の知れない生物が満身創痍と言った状態で廃屋内で痙攣していた。

 

 その姿は、黒ずんだ錆色で上手く輪郭を捉えることが出来ないが、

蝙蝠にも見え、新種の鳥のようにも見える。

 

だが、どちらかと言えば空を飛ぶ生物ではなく、

水の中を泳ぐエイに似たようなシルエットで、

その胴体に対して大きい比率の翼がついており、尻尾は数倍程長いように見える。

 

 一体、これはどういう生物なのだろうかと思案する前に、

その輪郭は解けていき、影と一つになるように溶けて消えていった。

 

「し、死ぬかと思ったっす……」

 

「本日、二度目だな……」

 

「もうヤダァァアァァァァ~~~~~~!!!」

 

 ハナさんは駄々っ子のように泣きじゃくり、

鼻水と涙でオレの衣類と床を汚していく。

 

 これ以上、行くのは無理なのだろうか。

 いくら情報が欲しいとはいえ、命を落としてしまっては意味が無い。

 オレ一人ならまだしも、ティエルとハナさんの命も預かっているのだ。

 

 無茶をして全てを失うのは本末転倒だ。

 かと言って、このまま手ぶらで帰るのも悔やまれる。

 ただでさえ、東区の探索は失敗しているのだ。

 

 一体、どうすれば――。




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