その中で、ティエルはおもちゃ箱の中にあるはずのない注射器を発見し――。
「何故、そんな物がおもちゃ箱に……?」
オレ達は互いに目を見合わせる。
絶対に交わる事の無い物。圧倒的な異物感。
子供が触る可能性のある、おもちゃ箱の中にあるのは危険なのは勿論の事、決してあってはならない物だ。
ましてや、ままごとで使うような安全性を約束された玩具ではなく、正真正銘、本物の注射器だ。
皮膚を貫き、肉を抉る鋭利な針がランプに照らされて、ただ鈍く輝いている。
「え……え……?」
ティエルはおもちゃ箱を横に倒し、中の物を散乱させる。
すると、知育玩具に混じって吸引器、錠剤の入った薬箱、むき出しのカプセルといった、
医療に使う物が所々混じっており、その光景にオレ達は息を呑んだ。
ボードゲームや酒の類といった物とは比べ物にならないほどの違和感。
脳が理解しようとするのを止め、目の前の光景を拒絶する。
「あれ……? まだまだ出てくるっす!!」
「…………!?」
ティエルはおもちゃ箱に上半身を突っ込み、更に中身を漁った。
次第におもちゃの数は少なくなり、医療器具ばかりになっていく。
――――おかしい。
おもちゃ箱からこのような類の物が出てくるのがおかしいのは当たり前だが、
その箱自体は決して大きい物ではない。今のティエルでさえも少し頑張れば、
両手で抱えられるほどの大した事のない大きさだ。
それにも関わらず、まるで別次元へ通じているかのように無尽蔵に物が溢れてくる。
ティエルの周りはそのような物で溢れかえっており、山となっていた。
「おい、もう止めろ! こっちに来いッ!!」
「止めてるっすよ! でも、止まらないっす!!」
ティエルがこちらに翔んでくる。それでも、おもちゃ箱から溢れ出る異物は止まらない。
気がつけば部屋の一角は埋め尽くされ、こちらの足元にまでおもちゃや医療器具が転がってくる。
「なんなんだこれは……! とにかく、急いで出るぞ……!」
「ホントなんなんだヨォォオォォ!!」
ハナさんは滝のような涙を流しながら半狂乱になって叫んでいる。
オレはとにかく、一刻も早くこの場から離れようと入り口の扉まで駆け寄ろうとする。
「ッッ!?」
すると、おもちゃと医療器具の山が崩れ、けたたましい音と共に雪崩込んでくる。
幸い、巻き込まれる事は無かったが完全に扉は塞がれてしまい、
色々な物が割れる音が残響として部屋に響く。
今でも尚、おもちゃ箱は異物を吐き出し続けており、
足の踏み場は無いどころか、オレの太腿の辺りまで埋もれてしまうほどになっていた。
このままでは、オレ達はおもちゃと医療器具の山に押し潰され、
確実に圧死、もしくは窒息してしまうだろう。
「いぃぃっ!? ど、どうするっすか……!? にーさん!?」
「じにだぐねぇよォォォオォォ~~~~~~!!!」
(クソ……! どうする……!?)