※この作品はR-18です。

龍闘士ユラン ~悦ヘト堕チル凌辱冒険譚~   作:キバガミ

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廃城のとある怪しげな部屋を調べていたユラン一行。
すると突然、おもちゃ箱から玩具と医療器具が溢れ出し、部屋が埋め尽くされていく。
このままでは生き埋めになってしまうと焦るユラン達は――。


百一話 月影に溺れて

 オレ達が入ってきた扉は玩具と医療器具に埋もれてしまい、

完全に退路を断たれてしまっている。

 

 反対側を確認すると、別の扉があるようだが、それも同じように物に埋もれ、

正に万事休すと言った様子だ。数分後にはオレ達は間違いなく、この部屋の中で

医療器具と玩具の山に埋もれ、生き埋めになってしまうだろう。

 

 ――こんな所で終わる訳にはいかない。

 

 オレに命を預けてくれた二人はどうなる。

 頭が千切れるまで考えろ。

 思考を止めるな。

 

(――――!)

 

 既に壁は玩具と医療器具に埋め尽くされており、隙間さえ無い状態だったが、

何故か一部が正方形の形に窪んでいた。

 

(そうか、窓か……!!)

 

 恐らく王族やそういったやんごとなき者達が住む城。

 ペトログリフが刻み込まれたガラス製の窓であっても不思議はない。

 もし、そうであれば武器も何もない、オレ一人の力で壊せる物ではないだろう。

 

 ――だが、やるしかない。

 

「オレにしっかりと掴まれッッ!!

 手を離せば命は無いと思えッッ!!」

 

「手なんかネェヨォォォッ!!!」

 

「な、何をする気なんすか!?」

 

「喋っている暇は無い!! 行くぞッ!!」

 

 ティエルがオレの腰にしがみつく。それと同時に、

オレはその正方形の窪みに向かって

怒り狂った獅子のように突撃していく。

 

 後の事など考えない。

 全体重をかけ、速度を乗せ、渾身の力で自身の肩を窪みにぶつける。

 

 鈍い痛みと共に窪みがより深くなったかと思うと、甲高い耳障りな破裂音が響き、

粉々に砕け散っていく。やはり、見立て通り窪みは窓のある位置だったらしく、

氷をぶち撒けた跡のように点在した硝子は紅き月を反射し、朱色に煌めいていた。

 

「上手く……いったみたいだな……」

 

 身体は派手に転がっていき、草や土が付着しており、

多少、肩は痛むが他に負傷した場所は無く、身体的に問題は無い。

 

 ティエル達も未だに腰にしがみついたまま、目を瞑ったまま身体を震わせているが、

特に怪我は無さそうだ。オレはその様子を見て、心の底から安堵した。

 

「た、助かったんす、ね……命がいくつあっても足りないっすよ……」

 

「…………」

 

 ティエルは深くため息をつきながら言葉を漏らす。

 

 ハナさんは未だに心が付いて来ないのか、目を白黒させながら

沈黙を貫いていた。無理もない。元々、この城の雰囲気と白影に

強い恐怖を感じてしまうほど、こういった類のものは苦手なのだ。

 

 そこで、実際に命を落としかけたとくれば、

その心労は計り知れないだろう。

 

「ここは……中庭か?」

 

 改めて周りを見てみれば、そこには旅人から語り聞いた

幽世のような光景が広がっていた。

 

 一面のラベンダーはあの紺碧の海を彷彿とさせ、背筋が冷たくなるが、

それを以てしても妖しく、そして美しく、神秘的な光景であり、

園芸用に敷かれた小型の水路のようなものまで完備されている。

 

 そして、所々にはラベンダーとは別に月下美人が咲き誇っており、

中庭一杯の花畑に彩りを加えていた。

 

 最初に見た花園のように水晶に覆われている訳でもなく、

月を見上げるように咲く夜の女王は見事なコントラストで、

互いを蔑む訳でも霞ませる訳でもなく、それぞれが

それぞれの色彩を強調させ、高め合っている。

 

「ひぃぃぃ! ラベンダー怖エェよォォッ!!」

 

「落ち着け。今のお前もラベンダーだ」

 

 ハナさんが先程まで一言も発しなかった理由はこれなのか。

 

 しかし、オレは感覚的にあの紺碧の海にあるラベンダーとは

違う物だと認識していた。

 

 不自然に咲き誇っている訳ではなく、誰かが慈しみ、愛しているのを

感じさせるような、温かい人の手が加えられてある。

 

 この水路もその一つだ。

 

「うひゃぁ、もうラベンダーは勘弁して欲しいっすけど、

 不思議と怖い感じはしないっすね」

 

「そうだな」

 

 どうやら、ティエルもオレと同じような印象を抱いたらしい。

 

 あまり、感覚に囚われすぎるのも危険だが、紺碧の海の時のように、

すぐにその場を離れなければ危ないという訳でも無さそうだ。

 

「あれ、何してるんすかね?」

 

「…………?」

 

 どうやら、中庭にもいくつかの白影が存在しているようで、

水をあげたり、剪定(せんてい)をしており、

見た感じでは花の世話をしているようだった。

 

 しかし、徐々にその光景は移り変わり、

白が消え、蒼の割合が増えていく。

 

 見れば、白影達は純白の花――月下美人を摘み取っていた。

 手に触れた瞬間、それは白き花びらとなって錆色の空を風と共に流れていく。

 オレ達が呆気に取られている間に、月下美人は全て摘み取られ、中庭は完全なる紺碧となった。

 

「ナンナンダヨ……」

 

「あらら……綺麗だったのに無くなっちゃったっすね」

 

「…………」

 

 暫くすると、摘み取られた場所から再び芽が出て、特徴的な茎が伸び、

瞬く間に蕾から花弁が咲き、美しい月下美人が花開く。

 

 そして、それをまた白影達が摘み取っていき、

永遠に繰り返されていく。

 

 なんとも理園(りえん)離れした、現実味のない光景だった。

 

「ワケが分かんネェヨ……」

 

「……先へ進もう。見ていても何も始まらない」

 

「そうっすね……」

 

 無意識的に花を避けながら、踏まないように中庭の出口まで歩いていく。

 

 オレが壊した窓辺からは既に医療器具と玩具の山が崩れ、中庭にまで流れ込んでいたが、

そこで止まっていた。中でつっかえているのか、箱からの供給が止まったのかは分からない。

 

 部屋の主は、絵画のような白と蒼の花畑を眺めて何を想っていたのだろうか。

 それは誰にも分からなかった――。

 

 

――――

 

 

「ふむ、この部屋も特に目立った物は無いな……」

 

 中庭を出たオレ達は通路に従って歩き続けており、

扉を見つけては注意深く中の様子を伺い、それを繰り返していた。

 

 あの子供部屋のような異質な部屋はこれといって無く、

来客用と言った、居心地の良さそうな部屋が続くだけだ。

 

 内部は探索すればするほど、外部のイメージとはかけ離れており、

やはり、城というには異様に住心地が良さそうな場所のように見えた。

 

「さっきみたいな子供部屋がたくさんあっても

 困りますけどね……」

 

「全くだゼ……なぁ、もういいンじゃネェか?」

 

「何を言う、まだ全て調べた訳では無い。

 それに、二階の方の探索も残っているだろう」

 

 そう、オレ達は全体の何割か探索を終えたのかは分からないが、

まだ、手つかずの二階も残っているのだ。

 

 ハナさんは今すぐにでもこの場を離れたくて仕方がないようだが、

そういう訳にはいかない。

 

「……あれ? ここって……あーし達が入ってきた場所っすか?」

 

「そのようだな」

 

 通路が終わりを迎え、広い空間へと躍り出る。

 

 見れば、左には見覚えのある三叉の階段とエントランスがあり、

オレがいる反対側には開きっぱなしの巨大な扉があった。

 

 間違いなく、あれはオレが開けたものだろう。

 

「となれば、オレ達はぐるりと城内を一周した事になるのか……」

 

「ミテェだナ」

 

 例の子供部屋のように異質な空間はあったが、それ以外は何の変哲もないように思えた。

 城なのに客間ばかりというのも気にかかるが、あそこと比べれば大した問題ではないだろう。

 やはり、二階まで足を運ぶ必要がありそうだ。

 

「よし、では二階を調べてみよう。二人はそれで大丈夫か?」

 

「問題ないっす」

 

「イヤって言っテモ行くンダロ!?」

 

「無論だ」

 

 高貴なる絨毯を踏みしめ、オレ達は階段を上っていく。

 恐ろしいくらいに足音が全くしない。相当に上質な絨毯なのだろう。

 裸足で踏みしめて、その心地よさを体感してみたいくらいだ。

 

(まずは先程と同じように右側から回ってみるか……)

 

 三又に分かれている階段の右を選択し、エントランスへと上っていく。

 白影達は上から見ると火の玉のように揺らめいており、その姿は幽霊そのものだ。

 しかし、口に出そうものならハナさんをただ怖がらせてしまうだけだと思い、口を噤んだ。

 

「…………」

 

 そして、二階の通路らしき場所に足を踏み入れたオレ達は、

この城の本当の姿を垣間見る事になった――。




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