※この作品はR-18です。

龍闘士ユラン ~悦ヘト堕チル凌辱冒険譚~   作:キバガミ

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霧笛の濃獣さえ居なくなれば、
全てが丸く収まるものだと思っていた。
だが、ヒトを欺き、目を曇らせていた"霧"は
全く別のモノだった。友よ。どうか、教えて欲しい。
私は間違えていたのだろうか。
私は一体、何を成せばいい。
                  ――ヴェラクトーレ・フォン・キヴェルニーティス


百十七話 混沌の領域③

「あれ、また篝火が……?」

 

 白銀の領域を進み続けると、

先程と同じように遠くで煙が揺れていた。

 

 しかし、その周囲には野営地のような物はなく、

何者かがただ一人、岩に腰掛けて暖を取っていた。

 

 それはよく見慣れた、憎たらしい隻眼の草原狼獣人《アシモベルク》だった。

 

「ヴェラクトーレ……!」

 

「ご無事で良かったです!

 みんな、どうなっちゃったかと……」

 

「おお、新しき風と付き添い猫ではないか!

 あれからどうなってしまったかと思ったが、

 無事で何より。これも開祖アシモフの導きか」

 

「つ、付き添い猫……」

 

 彼は感極まったように両腕を広げ、

熱い抱擁をしてこようとしたが、当然のように躱した。

 

「相変わらず、しぶといようで何よりだ。

 ところで、ティエルとフロストヘルムは一緒ではないのか?」

 

「途中までは一緒だったんだがね。

 突然、天変地異が起きて世界が揺らぎ、

 はぐれてしまったのだ」

 

「天変地異……」

 

 もしかすると、霧氷の乙女が新しい領域を

想造した事によるものかもしれない。

 

 虚構のサヴァトの影響もあり、何が原因でどうなっているのか、

自分自身よく把握していないが、

この世界が不安定になっているのは確かだ。

 

「すると、オレ達とはぐれてしまった後は、

 しばらく三人で行動していたのか?」

 

「そうだよ。私は新しき風の導きに従い、

 彼らと手を取り合い、迷子の兎になる事は避けられた。

 ただ、一番守らなければならないユラン殿と

 はぐれてしまったのは不徳の致すところだったがね」

 

「構わん。こうして再開出来た訳だからな。

 それより、今のオレ達の状況を話す必要がある」

 

「今の状況、とは……?」

 

「ゆっくりと暖を取りながら話してやりたいが、時間が惜しい。

 歩きながら話すぞ」

 

 

――――

 

 

「新しき風の英雄譚を創る……ね。

 丁度良いではないか。誰も創らなければ、

 私が綴ろうと思っていた所だからね」

 

 オレ達はここまでの状況をヴェラクトーレに伝えた。

 

 その反応はおおよそ想定通りであり、

荒唐無稽な話にも関わらず、乗り気のようだった。

 

 しかし、その顔には陰りが見えた。

 

「……しかし、本当に我々は虚構のサヴァトに勝てるのだろうか。

 ただただ、目の前の事象に翻弄されるだけの、矮小な私達に」

 

「何を言っている。お前らしくもない。

 オレ達がやらなければ、リュメイヌは元の霧の大陸へと戻り、

 ヒトの住めない土地となってしまうんだぞ」

 

「そうだったね。いや、今の言葉は忘れてくれたまえ」

 

「……私たちがやらないと」

 

 ふと漏れた、ヴェラクトーレの呟きに、

ソレイユの表情は曇る。

 

 心の隙間に生じた、ほんの些細な綻び。

 それは病のように伝染する。

 

 霧氷の乙女が危惧していたのは、

こういう事なのかもしれない。

 

(……少し、休息を取ったほうがいいかもしれないな)

 

 様々な事に振り回され、自身も疲れを感じている。

 

 理園(りえん)でも身体が疲弊していれば

精神はネガティブな方向へ流れるのと同じように、

ここでは心が疲れれば、肉体的な疲労を感じるのだ。

 

「ヴェラクトーレと再開した場所から随分歩いてきた。

 この辺りで暫く身体を休めよう」

 

「でも、虚構のサヴァトがいつ動き出すか……」

 

「こういう時にこそ休むべきだ。

 先走った者から戦場で消えていく。

 オレはそう学んだ」

 

 そう、口では言っているが、

半分、自分に言い聞かせているようなものだ。

 

 オレ自身、重圧に押し潰されそうになる。

 だが、弱音を吐くわけにはいかない。

 

 そんな事では、虚構のサヴァトに

届きうる想像力を得るなど、夢のまた夢だ。

 

「見ろ、森がある。

 あそこなら火種にも困らんだろう」

 

 オレ達は鬱屈とした想いを抱えながら、

雪の稜線を超えた先の森へと到達した――。




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