しかし、人探しの依頼を受けて失踪現場へと向かうが、
そこで想定外の事態へと陥ってしまう。
――――あれからオレは二週間程、街に滞在しながら斡旋所の依頼をこなしていた。
酒場の店主マリュオウの助力もあり、次第にランクの高い依頼も
受ける事が出来る程に知名度は上がってきており、
早くも街では"漆黒の龍闘士"と小さいながら噂になってきていた。
「――――ここが例の場所か」
今回受けた依頼は、行商人のよく利用するルートから少し離れた森。
その近辺で男性ばかりが行方不明になっており、その原因の究明、
可能であれば問題の対処といったものだった。
夫婦で被害にあった者もおり、逃げてきた女性が言うには
"金色の怪物"とやらに襲われたらしい。
「特に大きい魔物がいる様子はないな、草が高い所まで生えている。
もしそういった魔物がいるならば無視は出来ない、
多少よれるか踏み潰されている形跡があるはずだ」
オレは邪魔な草木を短剣で斬り裂きながら歩き、慎重に周囲を探索していく。
「だが……なんだ?このかすかに香るものは……果物……?
しかし、どこか人工的な……まるで手入れの行き届いた花壇の花を嗅いでいるような――」
オレはその匂いにどこか違和感を覚えながらも、進んではマッピングを繰り返していた。
すでに予定していた7割程度は完了していたが、
一切、事件の元凶を見つけることは出来なかった。
「…………?」
オレはふと振り返り、通ってきた草道へと視線を落とす。
よく見れば、そこには数本の毛が落ちていた。
「黄金の毛……?」
指先で毛を拾い上げれば艷やかなブロンドの色をしており、
明らかにこの辺りの動物や魔物のものではなかった。
「この長さ……体毛ではない……? 髪……?
いや、これほど長い体毛であれば……まさか、巨大な魔獣……?」
オレはその毛を観察し、思考しながら小型のビンの蓋を開けて採取しようとする。
「――――グッ!?」
その刹那、斜め上に伸びた木々の方角から、不気味に煌めく何かがこちらに飛んできた。
オレは咄嗟に横に飛び、転がって回避行動を取るが完全に避けきる事は出来ず、
左の二の腕辺りに鋭い痛みが走る。
それは暗器のような針であり、竜皮を貫いて三分の一程深々と突き刺さっていた。
「ガ、あぁぁぁッッ!!」
すぐさま針を引き抜こうとするが、抜けるどころか痛みが増すばかりで
思わず苦痛の声を漏らしてしまう。
「返しだよ返し。肉に刺さって簡単には抜けねぇぜ……?
抜いてもいいけど、激痛でのたうち回って、意識がトブぜ?」
睨みつけるように見上げると、木の幹には虎の獣人らしき者が、
透き通った蒼い目でこちらを見下ろしていた。
どこかの部族のなのだろうか、機動性を重視した露出が高い装束をしており、
金色の体毛より僅かに薄い、腰まで届くようなブロンドの髪を束ねていた。
その鋭い瞳はどこまでも加虐的で、オレの事を獲物としか思っていない狩人のようだ。
「――――同様の手口で、別の獣人も狩ったのか?」
短剣を鞘に収め、身の丈の1,5倍程もある斬竜刀を背中から抜く。
左腕は尚も痛むが問題無く動く、決して戦えない程ではない。
「いいねぇ、そのタフさは流石竜人だ。そうさ、針が足に刺さっただけで泣き叫んだ後、
すぐに気絶したくだらねぇオスだったけどよ……? アンタは嬲りがいがありそうだ」
そういって、虎獣人は腰の鞘から特殊な形状をした短刀を取り出すと、刀身を艶めかしく舌でぬぐった。
「何故獣人を襲う。金銭目的であれば、お前程の腕があれば仕事に困らないはずだ」
「金はオマケだよ。アタシ達は艶虎族さ、だったら後は――――知ってるだろ?」
「知らん」
虎獣人はこちらを見下ろしながら髪をかき上げ、言葉を投げかける。
「いいさ教えてやる。艶虎族ってのはオスが生まれない、だから他種族からオスを補充する必要があんだよ」
「それなら別に襲う必要はない、正当な手順を踏んで番にでもなんでもなればいい」
「だから、それじゃ足りねぇんだよ」
「何がだ?」
「ザーメンッ! 精液だよ精液! 何人いると思ってやがる?
その程度で集落が維持出来るとでも思ってやがるのか?」
恐らく、一般的かつ最も数の多い虎獣人――グヴァールの派生だろう。
オレの国にもカンタレスという、雪山に住んでいるグヴァールの派生種がいた。
「だからアタシ達は他種族のオスを囚えて、一族の"種馬"とする。ようするにザーメンタンクってことだな」
「悪いが、そんな物になる気はない」
「"気がない"んじゃねぇ。"なる"んだよッッ!」
艶虎族の女が太腿に巻き付けているホルスターから針を取り出すと、
先程のようにこちらに向かって投擲してくる。
「ぬ、うぅぅぉッ!」
まるで鉄の塊のような斬竜刀を横薙ぎに振るえば、凄まじい風圧と共に
火花を散らしながら針は弾き返され、乾いた金属音だけが響く。
「アッハァ! いいねぇ。強い男とヤリあうのはゾクゾクするよ。
竜人のザーメン――どんな味がするんだろうな?」
女は勢いよく木の幹をバネのように蹴ると弾丸のようにこちらへと迫ってくる。
目にも留まらぬ速さで振り下ろされた短刀を斬竜刀で受けきるが、
そのまま流水のような流れる動きで縦横無尽に短刀が振るわれていき、
フェイントや体術も織り交ぜられ、とても攻勢に転じる余裕も無い。
オレはやむおえず短剣を抜いて猛攻を捌き、その度に火花が飛び散っていく。
しかし、防戦一方のままで状況は悪化していき、ジリ貧になるのは目に見えていた。
「どうしたぁ!? ウケ専かぁ!? まぁ、アタシにとっては好都合だけどな!」
「ぬ、ぅ…………!!」
この艶虎族の女の攻撃には切れ目がない、一見無駄な動きも次への行動の布石になっており、
少しでも防御行動に隙があれば的確に突いてくる。
その攻撃を無理に短剣で受け止めれば、後手に回ってしまう
悪循環に陥ってしまっており、状況は好転しそうになさそうだ。
この状況を打破するには――――。
「血迷ったか!? 肩がガラ空きなんだよッッ!!」
オレは斬竜刀を斜めに構え、その腹で短刀を受け止めようとする。
当然、艶虎族の女は動きを変え、振り上げる動作さえ見えない速さで、
短刀の強烈な一閃が隙だらけの肩へと迫る。
「ガッッ!? か、は……?」
しかし、苦痛の声を上げたのは艶虎族の女の方だった。
巨大な斬竜刀の影、その死角から太い尻尾を鞭のように振るい、
艶虎族の女の脇腹へと直撃させめり込ませる。
恐らく内蔵が潰されるような激痛だろう。
そのまま衝撃で数メートルは吹き飛ばされ、大木の幹へと激突する。
「どうだ、鍛えた尻尾の味は。丸太でも当たったような衝撃だろう」
「ぷっ……! あはぁ……! そうこなきゃな……!」
口の中が切れたのか、艶虎族の女は倒れ込んだまま血を吐き出す。
「依頼なんでね、悪いがお前の身柄を拘束させてもらう」
「――――それはアタシのセリフだよ」
「なに……? う、く……なんだ……右足が動か……ぐ……!」
彼女を取り押さえようと一歩踏み出そうとするが、右足が全く動かない。
気がつけば左足も鉛の様に重くなり、そのままもつれるようにその場へと倒れ込んでしまう。
「なんだ……これ、は……」
「焦ったねぇ、竜人には痺れ毒が効かないのかってな。おかげで随分と時間稼ぎが長くなっちまった」
「お前……!最初からそのつもり、で……!」
「そりゃそうだろ、種馬に傷がついちゃいけねぇ。
これからたっぷりと働いて貰うんだから、丁重に扱わないとな?」
ようやく痛みが引いてきたのか、艶虎族の女は鍛え上げられながらも、
肉付きのいい豊満な尻についた砂埃を払いながらこちらへ歩み寄ってくる。
「ぐ、ぁ……!が、ああああっっ!!」
彼女が仰向けに倒れ込んだオレの横隔膜を、ブーツの靴底でぐりぐりと踏みにじる。
その力加減は遠慮がなく、激痛に声が漏らしてしまう。
「いい声で鳴くねぇ。それだけで濡れちまいそうだ……
でもこれだけじゃ全然足りネェ……尻尾の分もお返ししねェとな……?」
オレの声が加虐心を高めてしまったのか、彼女は舌なめずりしながら更に力を強めていく。
体が石にでもなったかのように動かず、体を捩って踏む力を逃したりも出来ない分、
ダイレクトにその苦痛が押し寄せる。
だが、誰がこの女を喜ばせてやるものかと、歯を食いしばって必死に耐える。
「さ、て……どうすっかな。アンタみたいなデカい奴、アタシ一人で運べる訳が無いし……
自分で歩いてもらうしかねぇな」
女はオレを踏みつけるのに満足したのか、オレの腹筋の上へと腰を下ろして座った。
薄着なせいか、お腹の竜皮と彼女の尻肉が直に触れ、張りがありながらも、確かな柔らかい感触が伝わってくる。
戦闘の後のせいかしっとりと汗ばんでおり、まるでぴったりと吸い付くような感覚だった。
(オレは何を考えているんだ……!)
目を閉じ、軽く首を左右に振って邪念を払う。
しかし、却って逆効果で感覚が研ぎ澄まされて余計に意識が集中し、
彼女が髪飾りにしているクチナシの花の香りと汗の臭いが混ざり合い、
絡み合った濃密なメスの燻りが鼻孔を突き刺し、頭がクラクラする感覚にとらわれる。
「…………オレがお前の言う事を聞くとでも思ってるのか?」
「いいねぇ、その反抗的な態度! 徹底的に叩き潰したくなってきちまうよ。
心配はいらねぇ、嫌でも聞くさ」
艶虎族の女はオレの鼻孔部を持ち上げながら、強気な瞳でこちらの瞳を射抜く。
すべてを見透かされてしまいそうな深い蒼色の瞳を、ただただ睨み返す事しか出来ない。
「お、おい……!何をする気だ……!?」
彼女は短刀を取り出せば、オレの前掛けをめくって股間部の皮装備を器用に切り裂いていく。
「"味見"だよ。どうせ、毒が弱まるまで何もすることがねぇんだしさ、
それならよ―――緒に楽しもうぜ?」