※この作品はR-18です。

龍闘士ユラン ~悦ヘト堕チル凌辱冒険譚~   作:キバガミ

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リュメイヌの旅の途中、コヨーテの面影が強く残る
獣人アシモベルクのレギオンに立ち寄ったユラン。
珍しい竜人の来訪に子供達は歓迎していたが――。


三十三話 灰の孤高狼

「あ、リバーシュ兄ちゃん!」

 

「決闘だ! 決闘が始まるぞぉーー!!」

 

「うるせぇ、クソガキ共はさっさと帰れ。

 おい、そんなバカでけェ鉄の塊持って

 ここに何をしに来た? 答えろ」

 

 リバーシュと呼ばれたアシモベルクの獣人は

こちらに敵意を剥き出しにしながら鋭い眼光を向ける。

 

 その手には抜刀された剣が握られているせいか、

子供達はこれからオレとリバーシュが戦うのではないかと

目を輝かせながら声を荒げていく。

 

 物騒だが無理もない。

 

 突然、見慣れない竜人が自らの住処に土足で上がり込み、

無骨な斬竜刀を背中にぶら下げながら子供達と話しているのだ。

 

 逆の立場であっても、オレはこの草原狼獣人(アシモベルク)と

遠からずといった態度を取るだろう。

 

「さっさと答えろ……! クソトカゲェ!」

 

「ぐッ…………!?」

 

 その刹那――オレの目の前で火花が飛び散り、

凄まじい剣圧がのしかかる。

 斬像、残響がどこまでも金切り声のように響き渡る。

 

 オレは間一髪、ミネヴァの短剣で

彼の斬撃を防いでおり、拮抗した鍔迫り合いが続く。

 

「ハッ……! その背中の鉄の塊は飾りかァ!?

 おらおらァ!!」

 

「よせ……! 戦うつもりはない……!」

 

 リバーシュの一撃は恐るべき速度で放たれており、

斬竜刀を引き抜く暇すら与えられなかった。

 

 それに加え、これ見よがしにチラつかせていた

短剣はどうやらハッタリらしく、

 本命は左腕による片手剣の不意打ちだったらしい。

 

 しかし、その搦手だけで終わる事は無く、

続けて流れるように数多もの斬撃が迫りくる。

 

 相当戦い慣れているようで、短剣と片手剣。

 その二つを流麗かつ狡猾に振るい、

息をする間すらも与えられない。

 

 しかし――その攻撃には

決定的に欠けているものがあった。

 

「もう、このくらいでいいだろう……!」

 

「あ?」

 

「お前の剣から殺意が無いのは分かった。

 オレも同じなのは伝わったはずだ」

 

「…………」

 

 リバーシュは警戒を解くことはなかったが、

かと言ってオレの言葉を否定する事なく、

だらりと腕と剣を降ろす。

 

「挨拶が遅れてすまない

 オレは北方のリンドヴルムという竜人の国から

 旅してきたユランと言う。

 ここの長と話がしたいのだが良いだろうか?」

 

「…………」

 

 リバーシュはその眼光の鋭さを緩める事はなく、

オレを値踏みするかのように観察する。

 

「…………来い。

 妙な真似しやがったら魚みたいに

 ハラワタかっさばいてやる」

 

「分かった」

 

 ようやく警戒が解かれたのか、

リバーシュは腰の鞘に剣を収めると、

付いてこいと視線を合わせて歩き始める。

 

「か……かっけー!! これが本物の決闘かぁ……!」

 

「帰れっつったろクソガキ共……

 言う事聞かなかったらもう面白ェ事

 教えてやらねェからな」

 

「ちえー……」

 

 リバーシュの一声で子供達は蜘蛛の子を散らしたように

各々の作業に戻っていく。

 

 オレは名残惜しそうにする子供達に

軽く手を振ると、そのままリバーシュの後に付いていった――。

 

 

――――

 

 

「なんだ? リバーシュ……そんな不機嫌そうな顔をして……

 まぁ、いつもの事だが……」

 

「うるせェ。族長サマに客だ」

 

 野営地の一番奥、藁で出来た一際大きい簡素な家屋に

オレは案内された。

 

 中は風情のある調度品や敷物で彩られており、

移動式の住居な為、簡素ではあるものの決して居心地は悪く無さそうだ。

 

「お初にお目にかかる。オレは北方から旅をしてきたユランと言う。

 族長殿と話がしたくて案内して貰った」

 

「おぉ! 竜人か……珍しいな!

 なんだなんだ? このセルバルに面白い

 旅の話でもしてくれるのか?」

 

 自身をセルバルと言ったこの草原狼獣人(アシモベルク)は

楽に座りながら書物を呼んでおり、こちらを一瞥した後、

柔和そうに笑いながら興味津々と言った様子で言葉を投げかけてきた。

 

「お望みなら後で積もる旅の話をさせて貰おう。

 実はお願いがあって来たのだがいいだろうか?」

 

「ふむ、なんだ? 痛い事じゃなければなんでもいいぞ」

 

 楽に寝転がっていセルバルはどっしりと胡座をかき、

こちらを確かめるように見つめてくる。

 

「この土地に来たばかりなのだが、

 中々、野営出来そうな場所が無くて困っている。

 迷惑でなければ、一晩共に夜を過ごさせて貰えないだろうか?」

 

「何っ!? だが、セルバルには男との経験がない……

 出来れば優しくしてくれないか……?」

 

「いや、そういう意味ではないのだが……

 いきなり尻を掘りに来た竜人とか

 恐ろしすぎるだろう」

 

「…………」

 

 ふと、リバーシュの方を見てみれば呆れたような、

なんとも言えない複雑な表情をしていた。

 

「あっはっは、なにちょっとした冗談だ。

 一晩と言わず何日でも滞在していくといい。

 リバーシュが良くしてくれるだろう」

 

「は? なんでオレなんだよ。

 そういうのはアイツの役目――」

 

 リバーシュはセルバルに反論続けようとするが、

突然言葉に詰まり、バツが悪くなったような表情を浮かべた。

 

「チッ……クソ……気分悪くなってきたぜ……」

 

 そのまま、足元に積まれた本を乱暴に蹴り上げ、

リバーシュは家屋から苛立たしげに出ていった。

 

「ふーむ……気分を悪くさせてすまないな。ぽろん」

 

「…………ユランだ。いや、そんな事はない。

 野営を共にさせてくれるだけでこちらとしてはありがたい」

 

「ほっほっほ、大したもてなしは出来ないが、

 豊穣の国リュメイヌ……心行くまで楽しむといい

 この国のメシは美味いぞ。特にこのレギオンのはな。

 今宵はセルバルも腕を振るおう」

 

「それは楽しみだ」

 

 オレは蒼穹の道(フィルフィロード)で心身共に凍り付くような思いをしたが、

セルバルの言葉に豊穣の国の温かさを身に沁みて感じたのだった――。

 

 

――――

 

 

 外へ出ると、相変わらず草原狼獣人(アシモベルク)達は

忙しなく動き回っていた。

 

 しかし、オレの姿を見つけると興味津々と言った様子で

見つめてくる者や話かけてくれる者が居た。

 

 そのどれもが純粋な好奇心や好意からくるものであり、

悪意は一切混じっていない。

 

 住む場所が豊かであるのなら、住む人々の心も豊かなのだろうか。

 オレはそんな事を考えながらレギオンの中を歩いていた。

 

(オレの住む国とは大違いだな……)

 

 常に神経を張り巡らせ、他者を蹴落とし、

そうして得る事の出来る僅かな金と権力。

 オレに心の休まる時など殆ど無かった。

 

 そう――あの人と過ごす時以外は。

 

「…………?」

 

 レギオンの片隅のちょっとした広場のような場所で

子供達が遊んでいるのが見えた。

 

 シャボン玉という石鹸を用いた

泡を飛ばす遊びをしているようで、

 

一面には小さいものや大きいシャボン玉で埋め尽くされ、

豊穣の空を軽やかに舞っていた。

 

「リバーシュ兄ちゃんもやってよぉ!

 前みたいにバカでかいの作ってよ!」

 

「めんどくせぇ……んなもん自分で作れ。

 オレはこっちの方がいい」

 

 そう言ってリバーシュは手に持ったキセルを吸うと、

ぷかぷかと煙を燻らせながら深い吐息を零す。

 

 そして、戯れに口を円のような形にすると、

ほっと一息吐き出す。

 

 そこからは輪っかになった煙が大きくなりながら

空中へと浮かび上がり、虹色玉の群れに混じって溶けていった。

 

「うぉぉ~~~~! 今のどうやったの?」

 

「私も輪っか作ってみたい!」

 

 子供達はリバーシュの吐いた輪状の煙に

目を輝かせながら足元に詰め寄っていく。

 

 先程もそうだったが、人を寄せ付けない

鋭い雰囲気を纏っているにも関わらず、

子供達には案外好かれているらしい。

 

「鬱陶しいんだよクソガキ共!

 さっさとオレの前から消えやがれ!」

 

「えー! やだやだ!

 お願いだから教えてよぉー!」

 

「リバーシュのけちんぼ!」

 

「オンドリッド兄ちゃんが街に行ってから……

 なんか冷てぇよなー……リバーシュ兄ちゃん」

 

 子供達は不満そうにしながらその場を立ち去っていく。

 残されたリバーシュは頭をかき毟りながら

晴天を睨みつけ、煙草を吸い続ける。

 

「…………んだよ。見世物じゃねぇぞ」

 

「すまない。ここに置いてもらえる礼に

 何か手伝いが出来ればと思うのだがどうだろうか?

 肉体労働や見張りといった身体を使う事なら

 遠慮なく言ってくれ」

 

「ねぇよ、んなもん……

 ヨソ者なんかに任せる事なんて

 これっぽっちもねぇ」

 

 そう言ってリバーシュは煙草の燃えカスを煙管から落とし、

荒々しく踏みにじって不機嫌そうにその場から立ち去った。

 

 後には煙草の鼻につく残り香だけが残され、

虹色玉と共に黄金海を流れていく。

 

「むぅ……参ったな……相当嫌われてしまったようだ」

 

 しかし、リバーシュがオレに嫌悪感を示すのは

なんらおかしい事ではない。

 むしろ、レギオンの他の人々が迎合的すぎるのだ。

 

 オレは淡い溜め息を漏らしながら、

何かこのレギオンの為に出来る事をしたいと思い、

近くのアシモベルクの獣人に声をかけた――。




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