羊を見つけてきたユラン。
彼らの反応は――。
「テメェはマジでバカ! 空前絶後のバカ!」
「か、返す言葉も無い……」
「それ言っときゃ全て丸く収まるとでも
思ってやがンのか!?」
リバーシュは激怒していた。
当然だ、突然オンドリッドとリバーシュをほっぽりだし、
半日以上音沙汰無しにしていたのだ。
これが反対の立場であったなら、
オレもリバーシュと同じくらい怒るだろう。
彼らはオレと別れた所で、野営までして
帰りを待ってくれていた。
オレが帰った頃にはすっかり深夜であり、
こってりとリバーシュにシゴかれていたが
それでも彼の怒りは収まらず、
こうして帰路についている間も叱咤されていた。
リバーシュの眉間に寄った皺はとても険しく、
しばらく滑らかになる事は無さそうだ。
「ふにゃぁ……♪ ユランさん……
ホント……ホント……なんてお礼言ったら良いか……
兄さんも怒らないでぇ……♪ 怒るならユランさんじゃなくてボクをぉ……♪」
連れ帰ったモコリゲスに幸せそうに頬ずりしながら、
オンドリッドはオレ達の後をについてきていた。
一日経って体調が良くなったのもあるのだろうが、
愛羊が帰ってきた事による精神的な高揚もあるのだろう。
足取りも軽く、この上ない上機嫌な様子で
彼は歩き続けていた。
「だから、テメェは帰ったら……
ゆっくりみっちりとシバいてやるからな?」
「うん……たくさんシバいてぇ……♪」
「ブメ」
普段なら恐れおののくリバーシュの言葉も全く効果が無く、
蕩けた表情と声で返していた。
「でも、びっくりしたなぁ……」
「あ?」
「一昨日の事だよぉ」
「…………?」
「兄さんの夜って……
あんなに激しいんだぁ……♥」
「「!?!?!?」」
「バッ……! あれはタダの応急処置だろうが!!」
「イヤじゃ……ねぇよ……
アンタの身体に汚ェ所なんて……ねェよ……」
「コイツッッ!?」
そのふくよかな身体から発せられたオンドリッドの言葉は、
思いの
「今からアンタの事……メチャクチャにしてやるよ……
もう……オレの物になるしかねェんだよ……」
「ぐぼアァァッッッ!!??」
リバーシュは吐血した。
「こーんな事言われちゃったら……
頭がほわほわしてメロメロになっちゃいそうだよねぇ~……
ボクが女の子なら……恋しちゃうかもぉ……♥」
その内容は少し――いや、かなり盛られていた気はするが、
赤裸々な台詞を弟に聞かれていたという事実に、
リバーシュは耐えきれずに絶命したようだった。
かくいうオレも、脳を直接ぶん殴られているかのような
激しい精神的なダメージを受けてしまっており、
目は激しく宙を泳いでしまう。
「お、オンドリッド……まさか……
ずっと起きて……」
「起きたら邪魔しちゃうかなって思ったから
寝た振りしてたけど……こっちの方が胸がドキドキして
キュンキュンしちゃったよぉ~~」
「よし、ユラン。
このクソデブは助からなかった事にして
その辺の箱にでも詰めとけ」
「えっ!? えぇ~~~~っ!!」
「分かった」
「ひぃぃ!? ユランさんは……
そんな事しないよね……?」
オレは無言でオンドリッドを抱えて、
道端にあったボロ木箱の残骸に放り込んだ。
その姿は捨てられた猫や子犬のようであり、
そこはかとない哀愁を漂わせていた。
「さらばだ」
「あーあ、弟が見つからなくて
涙がちょちょ切れるぜ」
最後の言葉を残し、リバーシュとオレは
涙目になっているオンドリッドを置いて、
静かにその場を後にした。
「ちょっとぉ゛ぉ゛~~~~……
ま゛っ゛でよ゛ぉ゛ぉ゛~~~~~~!!!」
オンドリッドは涙と鼻水を垂らしながら走ってくるが、
もう既に袂を分かった後だ。
オレ達は口惜しくも目的を果たせず、道半ばにして
帰る事になってしまったのだった――。