※この作品はR-18です。

龍闘士ユラン ~悦ヘト堕チル凌辱冒険譚~   作:キバガミ

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野営地でリバーシュと剣を交えたユラン。
その翌日、サヴァト領へ向かう為、改めて旅路に立った――。


六十話 開祖の狼爪は誰が為①

「にーさんもあーし達の乗り方、

 大分慣れてきましたねぇ」

 

「あぁ、最初は疾くてびっくりしたが……

 今はもう大丈夫だ」

 

 あれからオレ達は夜を明かした後、

野営地を出発して黄金海を駆けていた。

 

 既にリニアオグタは影も形も無く、

随分と離れてしまったのが見て取れる。

 

「ハッ……! まぁ、アンタは乗るより

 乗られる方が好みなンだろうけどな?」

 

「なっ……! どういう意味だ……

 それは……!」

 

 オレと並走していたリバーシュが

冗談交じりにこちらに語りかける。

 

「そのまんまの意味だけどな?」

 

「オレが被虐嗜好とでも言いたいのか!?

 断じてそんな事は無い……!! 無いはずだ……無いよな……?

 いや……ちょっとは覚悟しておけ……」

 

「自信無さすぎだろ! 大体そこまで言ってねェし……

 何に覚悟すンだよ!!」

 

「へぇ~~……にーさん……

 そういうシュミがあったんすねぇ……」

 

「ほらみろリバーシュ……! お前のせいで

 ティエルに勘違いされてしまっただろう!」

 

 オレは少しむすっとしながらリバーシュを睨みつけるが、

当の本人はさも愉快そうに笑い、上機嫌に手綱を握っていた。

 

 全く――たまったものではない。

 

「そういえば……今更だが、なんで二人は

 オレに付いてきているんだ?

 てっきり首都で別れるものかと……」

 

「それはねえ、ユランさんがリュメイヌに居る間は

 お前達が世話してやれってカルバルおじさんが

 言ってたからだよお」

 

 オレは気恥ずかしさから別の話題へと変えようとすると、

リバーシュとは反対側で並走しているオンドリッドが返事をしながら、

ガルガリオンの背中の上でたわわな腹の肉を大きく上下させていた。

 

「オレはあのジジイが何を言おうが

 そのつもりだったがな。

 アンタに野垂れ死なれちゃ後味わりィんだよ」

 

「……本当に世話になりっぱなしですまない」

 

「いやいやあ、だってボクの命の恩人だし……

 これくらいしないとバチが当たっちゃうよお」

 

 彼らの献身に感謝と申し訳無さで胸の中は一杯になる。

 

 しかし、これ以上この胸の裡を言葉にしようものなら

リバーシュから鉄拳が飛んでくるだろう。

 

「へぇ、命の恩人って……

 何があったんですか?」

 

「えっとね……ユランさんは霧の中で

 迷子だったボクを助け出してくれたんだあ」

 

「オレ達、こう見えても全員

 霧からの生還者なんだぜ?

 ビビったか?」

 

「えぇ!? マジですか!?」

 

「は、はは……冗談でしょう? 冗談……ですよね?」

 

 リバーシュが得意げに言葉を漏らすと、

ティエル達――ガルガリオンは

信じられないと言った声色で叫んだ。

 

 これだけ足の疾ければ霧に入っても

どうにかなりそうなものだが、

どうやら、彼らでも霧の中を往くのは禁忌らしい。

 

「そういえば……この先にも不動の霧(ネージュネーベル)っていう

 変わった霧で覆われてる地域があるっすよ」

 

「変わった霧…………?」

 

「基本的に霧は霧笛の濃獣(むてきののうじゅう)の周辺だけを覆う

 流動的なもんなんすけど、北のとある一帯は

 界獣の位置とは関係無く、ずっと霧がかってる所があるっす」

 

「あ、ボクも聞いた事あるよお~~。

 実際に見た事はないけど……」

 

「はなから霧がかかってる場所が分かりゃ、

 誰も好き好んで近づきませんからねぇ。

 霧笛の濃獣(むてきののうじゅう)も動き回らなければ

 あーし達ももっと楽出来るんすけどねぇ」

 

 ティエルとオンドリッドはそう語るが、

まだ、地平線の先にもそのような霧は見えてこない。

 

 まだまだ先に位置しているのだろうか。

 

「ま、あーし達が目指してる所と方角は反対の北東にある霧ですし、

 近づかなければ怖い事はなーんもないです。

 にーさんが心配するような事は何も無いっすよ」

 

「それなら安心だな。オレはもう

 霧に入るのはこりごりだ……」

 

 また、あんな化け物と対峙していては身が持たない。

 

 それに、リバーシュやオンドリッドが言うには

まだまだオレ達の知らないような

恐ろしい魔物が跋扈(ばっこ)しているらしい。

 

 今後、この大陸以外でも霧を見かけたら

反射的に逃げてしまいそうだ。

 

「はは、そんな事言えるのはにーさん達くらいかも……

 死人に口無しっす」

 

 話をしている間にかなりの距離を移動していたのか、

視線の先には穏やかな丘陵が見え始める。

 

 あそこなら休息するのにもってこいだろう。

太陽は遥か南へと位置しており、

昼もかなり近いようだ。

 

 ティエル達には随分走らせてしまった。

 まだ先も長く、無理をさせてはいけない。

 しっかりと英気を養ってもらわなければ――。

 

 

――――――

 

 

「美味いですねぇこれ……」

 

「でしょお、ボクの大好きなラムサンドだよお~♪」

 

 丘陵で一休みしていたオレ達は

ついでに昼食も済ませる事になり、

オンドリッドの作ったサンドに舌鼓を打っていた。

 

 少し甘味と酸味のある塩辛いソースが

淡白であっさりとした羊肉と良く馴染み、

噛むと滲み出る肉汁が実に香ばしい。

 

 そして、それらひとまとめにされた旨味汁を

パン生地が吸い上げ、決して外へ逃さない。

 

 旅先では肉類は直接狩りをするか、

保存用に塩漬けした物か

干し肉くらいしか口に出来ない。

 

 

 リニアオグタを旅立って食材も新鮮なのもあるが、

オンドリッドの作ってくれた

ラムサンドはとても味わい深く、

 

見渡す限りの黄金海の光景も相まって

極上の味へと仕上がっていた。

 

「うんめェ、酒が進みそうな味だな!」

 

「もう……兄さんは呑兵衛だなあ……

 飲酒運転になっちゃうよお」

 

「あーし達乗り物が呑む分には問題無いですよね?

 飲酒運転じゃないですし……むしろ

 汽車の火室に入れる石炭みたいなもんッす!」

 

「止めて下さいって姐さん……

 どうしてお酒弱いのに呑みたがるんですか……」

 酔ってまた混沌どん踊りしだしたら

 今度は他人のフリしますからね!」

 

「なんだよそれ……」

 

「俺、もう姐さんのゲロ処理すんの……嫌……」

 

 ガルガリオン達とはまだ数日しか時間を共にしていないが、

ずっと騎乗して側で過ごしてきた為か

距離感は最初よりずっと近くなった感覚がある。

 

 今まで殆ど一人で旅をしてきたが、

こういう賑やかなのも悪くない。

 

「む、そういえば姐さんと言ってたが……

 どうしてそう呼ばれているんだ?」

 

「へ…………?」

 

 首を傾げ、きょとんとした様子で

ティエルはこちらを見つめてきた。

 

「オレの中の認識では、女性を呼ぶ時に

 使うものだと思っていたが……

 草原狼獣人(アシモベルク)の中では男性をそう呼ぶのか?

 それとも、称号か肩書きか何かなのか?」

 

「え? 何言ってるの? ユランさん。

 ティエルは女の子でしょお?」

 

「…………無神経クソトカゲ」

 

「え、え?」

 

 オンドリッドはさも当然と言った様子で言うと

次のラムサンドを口一杯に頬張り、

 

リバーシュの方はマジかコイツとでも

言わんばかりの表情をしており、

侮辱と共にこちらにジト目を向けた。

 

 この筋肉質で大柄な体躯と口調、

てっきり男性だとばかり思っていたが、

もしそうならとんでもない失言だ。

 

「…………酷すぎません?

 あーしは一応、れっきとしたオンナなんすけど!

 ほら……ちゃんとおっぱいだってありますから!」

 

「よ、止せ!! こんな所で出すな!」

 

「ぶぼぉ゛ぉ゛ッ!?」

 

 ティエラはもこもことした胸の辺りの毛に腕を突っ込み、

なだらかな女性の象徴のような物を取り出そうとしていた。

 

 オレはそれに気がつくと急いで静止させようとし、

リバーシュの方は鼻血とラムサンドを

穴という穴から同時に噴出させていた。

 

「あーあ……あんなに可愛いガルガリオンの娘(こ)なのに……

 男の子と間違っちゃうなんて……ユランさん酷いなあ」

 

「まぁ……他種族のヒトにはそう見えるかもしれませんね……

 姐さん……ぶっちゃけ喋り方とか

 仕草とかおっさんそのものですし……」

 

「ソレ、イイスギ」

 

 オレは暴走するティエルを宥めるのに精一杯で、

休息する筈が余計に疲弊してしまうのだった――。




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