スカイリムで賞金稼ぎ 作:オークポーク
ブロークン・タワー要塞で一夜を明かした俺はゴミどもを残らず燃やして出発した。要塞自体は石造りだから燃え広がることはないはず。これで他のバカどもがのこのこやってくればまた楽しめるって寸法よ。
マルカルスに到着したのは昼頃になってからだった。鉄壁の石造りの大壁に設けられたドワーフ金属製の金色の門を抜けて入ると、山の斜面を上るように石造と金属でできた建物が並んでいて、入ってすぐの市場ではマルカルスの主要な財源である銀を使った宝飾品の露天がずらりと並んでいる。フォースウォーンが住んでいたずっと前にドワーフが建築し、街そのものが重要な文化財といえる。それがマルカルスだ。
「すう〜〜〜ん、臭ェ! 便所みてーな臭いのする街だなオイ!」
両手を上げて肺全体を空気で満たすように鼻から思い切り息を吸って言う。近くの衛兵の兜がこっちを向いたんで「ゴキゲンヨ!」と挨拶してから歩き始めた。
マルカルスは一見すると歴史浪漫と銀に彩られた美しい街だが実態は分厚いファンデーションで顔を隠したゾンビ・オイランだ。裏では陰謀と邪教がひしめき蠢いている。だからこそ訪れる価値があるんだがな。ぶち犯していい性悪女がごまんと集まるから。そして俺の持論だが性悪女はドブサイクか美人に二分される。中間はない。ドブサイクは関わってこない限りは放置し、美人をいただきますだ。
「まずは腹ごしらえ、いや荷物が重いしリスベットのところで整理してくるか」
「マロラグ!」
大声と共に腹にドンッ! と衝撃が走った。なんだぁ? 街中で暗殺者かぁ? と視線を落とすと茶髪の頭頂部が目に入る。そしてそれは俺の胸板を削る気だと言わんばかりにグルングルンと左右に揺れるように回っていた。
「ああ、私のお日様お星様! 会いたかった! すごく会いたかった!」
忙しい市場の只中にも関わらず周囲の視線が集まる。声がでかいんだよメンヘラ女。俺はそいつの背中をちょいと撫でる。
「ひゃん!?」
頭が上を向くように跳ねて戦化粧が描いてある可愛いお顔が見えた。
「ようムイリ。久しぶりだな」
俺はムイリの背に左手を回して右手で頭を撫でる。するとムイリは子供みたいな笑顔を浮かべた。
こいつはムイリ。バケモノみてーな婆さんが営む薬屋ハグズキュアの店員だ。
ちょっと長くなるがムイリとの出会いを回想しよう。
〜〜〜○〜〜〜
一年ほど前。
「すう〜〜〜ん、臭ェ! 豚小屋みてーな臭いのする街だなオイ!」
両手を上げて肺全体を空気で満たすように鼻から思い切り息を吸って言う。近くの衛兵の兜がこっちを向いたんで「ゴキゲンヨ!」と挨拶してから歩き始めた。
マルカルスに来たのはこれで二回目。ようやくこの街の目的を達成できる目処が立ったので訪れた。まあまずは別の目的が果たせるかどうかを確認するためにアンダーストーン砦に足を運び、ここから入れる死者の間に向かう。そこでちょうど管理人であるヴェルラスに会えた。
「やあ司祭殿。知人の墓参りがしたいんだが入ってもいいかな?」
「ああ、どうぞ。アーケイのご加護があらんことを」
うーん、まだか。俺は一応死者の間に入って墓参りしたフリをして出る。ああもアッサリした態度ってことはまだ例のクエストは動いてなさそうだ。
まあ、こっちはついでの確認だったから別にいいや。俺は砦内とは別の出口から外に出てすぐの階段を降りる。そこには目的の店であるハグズキュアがある。錬金術師が営む薬屋だ。
「いらっしゃい。ここには病気を治す薬、落ち着きのない子を治す薬、なんでもあるよ」
入るとカウンターに手をついた恐ろしいフェイスペイントをした婆さんが自慢げにセールストークを言った。
「ようボテラ。今日も美人だね」
「ヤダよマロラグ。こんな婆さんナンパしたって何にもなりゃしないよ」
軽く雑談。奥の方からはショリショリコンコンと乳鉢を剃る音が聞こえる。よし、目的の人物はいるな。しかけるか。
「街に来る途中でフォースウォーンに襲われたんで傷薬をいくつかと解毒薬欲しいのと、ちょいと聞きたいことがある」
「なんだい?」
俺は手作りの手配書を取り出して婆さんに見せる。
「アライン・デュフォンって詐欺師を探している。何か知らないか?」
乳鉢を擦る音が止まった。
「アライン・デュフォン? どんな奴だい?」
「気取った雰囲気のブレトンらしい。色々な所で詐欺を働いているらしくてね、奴の首に賞金がかけられたんで探している」
ボテラは腕を組んで考える。
「うーむ、知らないねぇ。ブレトンの気取り屋なんてこの街にはごまんと居るけど、アラインなんて名前の奴は来たことがないよ」
両手を低く横に広げて肩を上げるボテラ。なんでアメリカンスタイルなんだ? まあいいや。釣れるかどうかが問題だ。
「そうかい。悪かったね仕事中に。薬をもらったらすぐに出て行くよ」「ねえ! あの!」
「ムイリ?」
若い女の声。よし、食いついた。声のする方に目をやると、短い茶髪に青い瞳、目の周りにアイシャドウ、頬には細い線のフェイスペイントをしたブレトンの若い女がいる。こいつはムイリ。目的の人物だ。今日はこいつをヤる、あるいはその準備のために来たんだ。
「アライン……デュフォンを、探しているの?」
ムイリは目をかっ広げて震える指で俺を差しながら尋ねてくる。
「ああ。何か知っているのかい? お嬢さん」
「ええ、知っているも何も………」
ムイリはハッとした表情になってボテラに目をやった。そして気まずそうにモジモジする。
「ボテラ。少し、奥の部屋に下がってもいいかしら? 彼と、話したいことがあるの」
「ああ……構わないよ」「ありがとう」
ムイリに促されて俺は奥の部屋に通される。扉を締めるブレトンの女は後ろから見ると尚小さく見えるな。部屋で二人きりだと気をつけないと襲っちまいそうだ。
「んんっ! それで、アラインについて何を知っているんだ?」
自分の中のヤンチャビーストを黙らせるように咳払いをしてムイリに尋ねる。来る途中でフォースウォーン女ヤってきたし今はまだ出番じゃねぇ。大人しくしていろ。
「知っている? 知っているかですって? ええ、知っているわ! あの男のせいで私は全てを失ったのよ!」
激昂したムイリが振り向く。唇はめくり上がりドレモラめいた形相を浮かべていた。コワイ!
「落ち着きなよお嬢さん。そんなに興奮して、どしたん? 話、聞こか?」
「フーッ! フーッ! すう……すう……。ええ、そうね。どこから話そうかしら」
どうどうとムイリを落ち着かせ、その辺の椅子を二つ向かい合わせて座り話を聞く。まあ何でこんなに怒っているのかは知っているんだけどね。
ムイリは元々はウインドヘルムに住んでいたんだがアライン・デュフォンに騙され、親友のニルシン・シャッターシールドの家から金と家宝を巻き上げる詐欺に加担させられた。そして激怒したシャッターシールド家から街を追い出されたのだ。しかもアラインはムイリの純情を利用するやり方で騙した極悪人だ。世紀の大罪人だ。許せねえよなぁ!? 女は大事にすべきだよなあ!?
本来ならばドァキンが闇の一党に入党してから依頼を受けて殺しに行く流れだが俺はそれを先取りさせてもらう。あくまで個人的に偶然依頼を受けるだけだから一党からの接触はないと思いたい。
「なるほど、なるほど。ますますアラインに対する怒りが湧いてきたぜ」
まあぶっちゃけアライン個人に関しては何にも感想ないんだけどね。奴が女を騙そうが殺そうが俺の目的や仕事に関わってこないならホントはどーでもいいのよ。
「あいつの事を思い出すだけでも頭に血が昇る! のうのうと生きているって考えたら気が狂いそうになる!」
またもや興奮し出したムイリは自分の髪を掴んで頭を振り回す。俺は椅子から立ってムイリの肩と手を掴んで静止させる。
「おい、落ち着きなよ。深呼吸だ。あったかいシチューとか、リーチを流れる穏やかな川を考えながら深呼吸するんだ」
背中を撫でながら落ち着かせる。こんなカウンセラーみたいなことするのは面倒だがムイリとヤるためには好感度を稼ぎたい。
「フーッ! フーッ! ねえ! あなたはあの男を見つけたらどうするつもりなの!?」
興奮冷めやらぬ様子で叫んでくる。
「デッド・オア・アライブってやつさ。まあどうするかは状況によりけり」「ダメ! 絶対に殺して! まるで犬のように殺して! お金は払う! 望みがあるなら何だって従うから! 殺して!」
クワッと顔を上げたムイリが俺に縋り付いてくる。ち、ちょっと怖くなってきた。ゲームと違って生々しく荒々しく毒々しい怒りだ。こいつをヤるの止めようかな……。
「お、オーケー、オーケー。別にどっちでもいいから、君の希望通りに奴を殺すよ」
「そ、そう! なら…………これを使って!」
ムイリは懐から取り出した深緑色の瓶を
「これは?」
知っているけどすっとぼけて聞く。
「ロータス・エクストラクト。あいつを殺すために調合した毒。あいつの居場所がわかったら、これを矢に塗って使うつもりだった」
本来はアラインともう一人の分で二つもらえる筈なんだが、流石に犯罪者を追いかけているっていう一般賞金稼ぎに一般市民の殺しは頼まないのか、それとももう一瓶分はまだ調合していないだけなのか。
て言うかあれ? 「居場所がわかったら」って言った?
「奴が何処にいるのかは知らないのか?」
「ごめんなさい……個人的に調べてはいるのだけれど、あいつは上手く身を隠しているみたいで中々居場所がわからなくて……」
シュンとするムイリ。あ、かわいい。やっぱりヤる。絶対口説き落としてラブラブチュッチュする。
「任せておけって。こいつは絶対に奴に食らわせてやるよ。君はこの石壁に囲まれた街の中で、平和に暮らしながら吉報を待っていればいい。わかったかい?」
「……お願い、絶対に、お願い」
ムイリは俺の手を握って懇願してきた。よーし、まずは上手く行った。肝心なのはここからだがな。
◆
サブタイ詐欺になって悪いが俺はリーチからイーストマーチ地方に来ている。アラインの潜伏場所の心当たりがここくらいしかないからな。ついでにウインドヘルムに立ち寄ってソフィで遊んできた。立たせて後ろからケツの穴と窯を同時に責めてやったら生まれたての子鹿みたいにガタガタ震えて面白かった。
「止まりやがれ! ここは俺たちカットスロートのナワバリだぞ!」
ドワーフの遺跡の前で山賊が威嚇してきた。ビンゴ。ゲームだとここラルドサールを根城にしていたからな。現時点でここにいるか不明だったが大当たりだ。
数は階段下に三人、上には弓兵が五人か。弓兵の二人が女か。生捕りにできるかな? まあチャレンジだ。
「これはこれは。実は君たちカットスロートに用事があってね」
「なんだと?」「イヤー!」「かぱッ!?」「何!?」
俺は腕を鞭のようにしならせて手の中に隠していた武器を投げつけた。金色の閃光が走り階段下の一人の頭を真っ二つにした。うむ、流石はエイドリアンの品だ。
タグ詐欺にもなって悪いが今回はステゴロじゃない。武器を持ってきている。クロスした星形で外周部が刃になっている投擲武器。日本人なら誰でも知っているな? ス、シュリケンだよ。
材料は加工難度はそこそこ高いが鋼鉄より強くて大量に手に入るドワーフ金属。ホワイトランの戦乙女の炉でエイドリアンに俺の手描き設計図と材料を渡して二十枚ほど作ってもらったんだ。俺クラスの腕力の持ち主が投げれば弓より速くて強いからな。
「て、敵だ! こいつは敵」
「言わなくてもわかるだろうが! イヤー!」「「がッ!」」
シュリケンを同時に二枚投げて階段下の残りを一瞬で片付ける。百発百中だな。
「あのオーク何をしやがった!?」「何か投げたぞ!」「殺せ! 矢で殺せ!」
慌てて弓に矢をつがえようとする階段上の連中。させるかよ。
「イヤー!」「「「ぐげッ!」」」
シュリケンを同時に三枚投げて三人を殺害!
「イヤー!」「「けッ!」」
シュリケンを投げて二人を……ああ、殺害。手に当てるつもりが喉を切り裂いちまった。もっとコントロールの練習せんとな。
まあとにかく外のカスどもは片付けた。俺はしめやかにラルドサールにエントリーする。天井があるから空が見えないが、やはりマルカルスと同じような雰囲気だ。
しかし生活圏である街とは異なり恐るべき罠が数多く仕掛けられている。火炎放射器、吹き矢、爆発バリスタ、飛び出る槍。特に気をつけなくてはいけないのは殺人ビンタマシーンと殺人タケコプターだ。この二つは即死の危険がある。警戒しよう。
「お? 失礼」
「なんぐぼっ!?」
見張りをサボって寝ている奴がいた。しかも女。叩き起こしてまたすぐに気絶させ、縄で縛っておく。へへ、デザートゲット〜。アラインぶっ殺した後で楽しむとしよう。
他のカスを片付けながら奥の部屋に行くと、上等な服を着たブレトンが手下どもとノンキに酒盛りをしていた。上にあるバリスタをぶっ放せばまとめて消せる。だがそれではムイリの要望には応えられない。手間をかけることで仕事の質はアップするのだ。
「イヤー!」「「「うげッ!?」」」
シュリケンを投げてアライン以外を殺害した。アイサツ前のアンブッシュは一回まで許されるが俺は神的なあれなので三回くらいやっちゃっても許される。
「な、何が起きたんだ!?」
狼狽えるアライン。俺は何気ない足取りで奴の前に姿を表す。
「ドーモ、アライン・デュフォン=サン。はじめまして。バウンティハンターです」
アイサツは大事。星霜の書にも多分書いてある。
「今日は貴方を拷問した上で殺しに来ました」
更に目的を話すことで丁寧さを加算。これで非常に奥ゆかしくなる。
「何でだ!?」
「一応仕事というテイです」
「どいつからだ!?」
「貴方が騙した女性からです」
「サ、サンサか!? アリアか!? それともデナーリスか!?」
誰だかわからないほど騙してんのかこいつ。出来るだけ名前を絞り出して「敵討ちしました」って言って回ればいろんな女とヤれるかな? 気合が入るぜ。
「まあ取り敢えず両手両足の指をケジメしてから詳しく聞かせてもらおうかな」
「やめろォーッ!」
アラインが冷気を纏ったハンマー、エイジストベインを振り上げて飛び掛かってくる。あれがシャッターシールド家から騙し取った宝だ。だがその動きは素人そのもの。所詮はハッタリのみで生きる詐欺師ってわけだ。
「イヤーッ!」「ギャアッ!」
距離もあったんでシュリケンを二枚投げつけて膝を破壊した。あっという間のベイビー・サブミッション。鼻くそほじりながらでもできる簡単な仕事だった。
「あいあああああ! 俺の膝、膝がァァァアアアア」
取り敢えずハンマーは没収。証拠としてムイリに見せに行った後でシャッターシールド家に売りに行こ。
「うーん……」「ぐべっあっ!」
逃げようとしたアラインの背中を踏んづけながら俺は奥に続く道を見て考え込む。この先には伝説のお宝エセリウムに続く鍵がある筈なのだが、山賊をぶち殺す楽な仕事とは違ってドワーフのオートマトンを相手にするハメになる。手に入れられれば間違いなく富、名声、力を手に入れられるが、あまり無茶して死にたくない。どうすっぺか。
「ま、お前を拷問しながら考えるとするよ」
「止めろーッ! 止めてくれェーッ!」
アラインの髪を引っ掴んで入口の方へ引きずっていく。あーやだやだ。野郎拷問しても面白くないんだよなぁ。