「マ……オスッ!マカ……スッ!!!」
声が、聞こえる。ぼんやりとした頭でマカリオスは自分を呼ぶ誰かの声を聞いた。どこなのだろう?ここは。不思議と、体に力が入らない。
どうやら、自分は瞳を閉じているらしい。視界は真っ暗で何も見えない。
おかしい、どうして自分は瞳を閉じているのだったか。
疑問の答えは、体中を走る激痛になって返って来た。
「ギッ!?」
「マカリオス!?気付いたの!?」
痛みと共に、自分を呼ぶ声にも見当がついた。いまだに開けるのがおっくな瞳をどうにかこじ開ければ、霞んだ視界の先には、
「マカリオス、良かった」
「姉さん……」
己と同じ薄い茶色のはずなのに、どこか美しい髪を伸ばし、己と同じエメラルドの瞳に涙を湛えてこちらを揺するのは、マカリオスの姉、アデーレだった。
いつも見慣れた筈の姉の姿はしかし、服のそこかしこに血が飛び散り、それどころか体のそこかしこに傷を負っていた。
けれど、
「生きてる」
その事実が嬉しくて、何よりうれしくて、より致命傷に近い傷を負った己の状態どうでもよくなる位嬉しかったから、マカリオスは笑った。
「馬鹿ッ!私が、私がどれだけ!」
そう言いながらアデーレが抱きしめてくる。走る筈の痛みはしかし、抱きしめると同時に行使された治癒の魔術によって癒されていった。
そう、
疑似的な不死を持つオリュンポスの民が癒える事のない傷を負うという事はつまり、それは神に傷をつけられたという事で、
「ディオスクロイ……!」
痛みが癒えてくると同時に、記憶と怒りも蘇ってくる。そう、アデーレとマカリオス。そしてその両親、ニコス、アルテミシアは、戦ったのだ。人々の上に君臨し、慈しみ愛玩せんとする全能の大神たるゼウスと。人々と寄り添う事を良しとしたオリュンポスの神々と共に。
そして、その結果、神々はゼウスに敗れ、共に戦った人々もまた、蹂躙された。アデーレとマカリオスの両親たるニコス、アルテミシアもまた人に対して憎悪を抱く機神、ディオスクロイにて引き裂かれ、二人に庇われたアデーレとマカリオスがどうにか、命からがら地下、ハデスの領域に逃げ延びる事が出来たのだ。
はっきりしてゆく意識と癒えてゆく体と、共に、両親の死に対する悲しみを思い起こし、歯を食いしばりながらマカリオスはアデーレに問いかけた。
「他の皆は?」
「分からないわ。ただ、ここに居ないのなら」
「死んだか、追放された、か……」
アデーレによって傷を癒されたマカリオスが、つぶやく。見れば、アデーレ自身も血塗られた服はそのままに、傷はすっかり癒えていた。
二人して、見やる。沈黙が、降りた。
「私達、二人だね。もう、二人きりだね」
「ああ」
泣いているような、笑ってるようなアデーレの顔。
再び、抱きしめられる。先ほどのように無事を喜ぶ親愛のそれではなく、ただ、すがるような、唯一残った愛すべき弟の熱で孤独を忘れようとしているのだろうか、強く強く、抱きしめられる。
「姉さん」
「マカリオス」
抱きしめたまま、アデーレの顔が近づいてくる。予感があった。数千年、双子として共に生きてなお、超える事の無かった一線。両親が死に、自分たちの奉じていた神が敗北し、今、この地下のハデスの領域には
失ったものはあまりに多く、これからの不安がどれほどかなど語るまでもない。だから、だろう。マカリオスはアデーレの唇を受け容れたし、愛しい姉の舌の味を、歯の裏の感触を、肌の暖かさを、鼓動の速さを知った。
知ったのなら、もう後は転がり落ちるだけだ。血に濡れた服は邪魔で、生まれたままの姿にお互いなったのなら、もうそこからは早かった。
痛み、破瓜、血。
快楽、喪失、愛。
つまるところ、その日姉弟は、一線を越えた。世界が終わる遥か数千年前の話である。
―――例えばそれは、
「んっ……」
お互いに一線を越えて、泥のように眠ってどれくらいの時間が経っただろうか。薄暗いハデスの領域において、マカリオスは姉が身じろぎした気配で、目を覚ました。
傍らには、長く見慣れて、それでなおも美しいと思える双子の顔がある。
「姉さん……」
呟く。一体どれほどの年月を、二人で重ねて来ただろうか。
神を仰ぎ、湛え、その慈悲と技術と恵みにすがって生きる星間山脈都市、オリュンポスにおいて、マカリオスとアデーレは、変わり者の姉弟だった。
『退屈』だったのだ。変わらない日常が。昨日と違う明日が来ない事が。
例えばそれは、朝起きて、今日は何をしよう、と考える時によぎる思いだった。何をしたっていいのだ。芸術を研鑽する事も。歴史を学ぶことも。行政に携わる勉強をすることも。音楽を奏でる事も。なんだって。男であるマカリオスは、兵士としての教練だって受ける事が出来る。
そう、何でも出来て、しかしそれが何だというのだろうか。自分達は、不死なのだ。それが神の恩寵による疑似的なものとはいえ、永遠に近い時を生きる。
つまりは、
無限に存在する時間は、あらゆる選択肢を選ぶことを許容していて、だからこそ、
そう、オリュンピアには、『明日がない』。今日という日に何かを選択しても、明日は変わらない。変化とは、限りがあるから存在する。死があるから存在する。
死が存在しないオリュンポスには、何の変化もなかった。
だからこそ、アデーレとマカリオスは、このオリュンピアという世界に飽きを感じていた。
けれどどうやら、他の人々はそのような飽きを感じなかったらしい。永遠に続く今日。子供は成長せず、大人は老いず、老人は死なない。その変化のない日々を、人々は神の恩寵と崇め奉った。
双子の兄弟は、異端であった。
そしてそれが、二人を大神たるデウスに対抗する道を選ばせる事になる。
ヘスファイストス、アテナ、アポロン、ハデス、ヘスティア、アレス、ヘラ、デメテル、ポセイドン、アフロディーテ。それらの機神が、デウスに対して抗った、
アデーレとマカリオスは、神々の側につき、戦った。
遊星の脅威をゼウスの独断専行にて排除した
ハデスの領域の薄暗い場所においてなお、己の腕を枕にして眠る、光り輝くような美しさの姉の顔を見ながら、微笑みと共につい先日、散々たる敗戦に終わったその戦いの記憶を、マカリオスは思い返していた。
戦いは、決して茶番などではなかった。オリュンポスの人々は、神に傷付けられれば死ぬ。そして神々の側についた人々は、デウスの勢力と戦ったのだ。それはつまり、傷付き、至れば死ぬという事。
人と共に歩む事を良しとした神々に叱咤激励されながら、知恵を出し、力を集め、大神の先兵と戦う日々。昨日傍らにいたはずの戦友が、次の日には二度と帰らぬ人となっていた。
それは、たしかに死と隣合わせの恐ろしい日々であったが、同時に、『今日の選択が明日に繋がる日々』でもあったのだ。命を、魂を削りながら戦うそれは、マカリオスにとって色彩に溢れた日々だったのだ。
数千年の色あせた日々の中で得た、僅かに彩りに溢れた時間。今は……それでも両親を、総てを、愛する姉以外の全てを失った悲しみが強い。けれど、それでもなお、楽しかった。
「姉さんは、どうだった?」
答えのない問いを投げかける。
「……マカリオス?」
そして答えは確かに帰ってこなかったが、その言葉で姉が瞳を開いた。
「おはよう姉さん。起こしてしまった」
「いいわ。大丈夫よ。マカリオス」
それにしても、愛しい人が言葉を続ける。
「えへへ……その、やっちゃったわね?わっ……むぅ!?」
頬を赤らめて、いつもの控えめなそれよりわずかに深くなった愛しい人の笑みに、思わずマカリオスはキスをした。
いつもの親愛を示すそれではない。眠る前も貪るように交わした、舌と舌を絡め合う、大人のキス。恋人同士でするキス。
ややあって、唇を話す。
「もう、マカリオスったら」
「ごめん姉さん」
「謝る必要はないわ。その……私も嬉しかったし」
そう言うなり、二人とも顔を赤らめて押し黙った。ついに、一線を越えてしまったのだ。とはいえ、互いにいつかはこうやって結ばれる予感はあった。
そもそも、数千年の人生を共に生きてきて、同じ異端を抱えて、同じ周囲の孤独を感じて生きていた仲なのだ。戦いの興奮、命からがら逃げかえって来た事による安堵、敗けて、奪われ、もう互いしか大事な存在がいないという事実に対する一時的かつ強烈な独占欲に後押しされて、今日になっただけ。それだけの事だ。
そしてそうであるがゆえに、マカリオスは言ってのける事が出来た。
「姉さん」
沈黙からややあって、マカリオスが意志のある瞳でアデーレを見つめる。
「はい」
「俺は、姉さんを愛してる。その……女性として」
力の抜けた笑み。そしてそのまま抱きしめられて、
「それは、私だって、ずっと同じよ」
抱きしめられたまま、愛しい姉が、耳元で囁く。
「敗けちゃったね」
「そうだな」
「皆、いなくなっちゃったね」
「そうだな」
「神様達は、どうなったんだろう」
「分からない」
姉の表情が、泣き笑いに代わってゆく。
「けど!」
それが嫌で、マカリオスはアデーレの肩を強くつかんだ。
「けど……姉さんが居る」
「っ……そうね。そうよ。私には、マカリオスが居るわ」
だから大丈夫、と、愛しい人にアデーレは涙ながらも微笑んで見せた。
「それにきっと、あれだけの大戦の後だ。きっと、色々と変わっているさ」
そう、多くの神々が抗った戦いなのだ。当然ながら、オリュンポスの表層は、甚大な被害を受けていた。その被害は、ティタノマキアの比ではない。
それだけの傷を負ったのなら、きっと、何かが変わっているはず。もしかすると人々の意識も変化しているかもしれない。自分たちの退屈に、飽きに共感してくれる人もいるかもしれない。もしそうなら、きっとそういった人々を増やしていけば、今は負けたとて、いつかは、この日々を打破できるかもしれない。
それを信じて、二人は頷きあった。
二人がいたハデスの領域は、たまたま居住エリアだったらしい。衣食住はそこで満たすことができた。故に戦いからの傷を完全に癒すまでその場所に留まって、二人は必死に逃げてきた地上に出る事にした。流石にずっとこの場所に居る訳にもいかない。これからどうするにせよ、大戦後の地上がどうなってるかは、確認する必要があった。
大体1時間も歩けば、地上へと続く扉の前に着く。
「開けるよ、姉さん」
戦いの趨勢を決めた最後の戦いから、一月ほども経っているだろうか。アデーレはマカリオスの言葉に何も返さず、ただ握った手の力を強くすることで返した。
そう、二人は負けた側の人間なのだ。もしかすると地上に出てすぐに、ゼウスに補足されて神罰の雷が落ちるかもしれない。
恐怖。けれど、それで竦むわけにはいかない。何より、
「大丈夫だよ、姉さん」
そう言ってマカリオスは笑った。
「死ぬときは、一緒だから」
「何言ってるのマカリオス!絶対逃がすから!」
「何言ってるんだ姉さん!それなら、姉さんこそ逃げてもらうからな!」
軽い口論。その勢いのまま二人して笑って、
「行こう」
「ええ」
二人は、扉を開けた。光が差す。
そしてそこには、
「え……」
周囲には高層ビルが立ち並び、人々は笑い、そこかしこを行き交う。誰かは歴史を学び、誰かは大戦のあった後だからだろう、兵役の訓練に精を出している。誰かは美を追求し、そして誰も彼もが、変わりなかった。
子供は成長せず、大人は老いず、老人は死なぬ世界。神の作り出した愛玩の為の揺籃。星間山脈都市、オリュンポスは今日も健在であった。
「な……なぁあんた」
たまらず、呆然としている姉をよそに、マカリオスが道行く男に声をかける。
「ん?どうしたんだ?」
「つい最近まで、オリュンポスマキアがあったよな。それが、一体どうして?」
こんなに変わらない日常が続いている?言葉は、飲み込んだ。
切羽詰まったこちらの雰囲気に気おされたのだろう、男は一歩引いて気おされたように答える。
「お、おいおい。どうした?確かについ先日までオリュンピアマキアは起こっていた。けれどそれも、大神ゼウスの御威光によって治まった。逆らった者達や神々の残骸はアトランティスへと追放され、死した者達もまた、ゼウス様の意を受けたデメテル様の御威光によって皆が蘇り、オリュンポス自体も同様さ。いやぁ、良かった良かった。つまりは」
「つまりは―――」
「
その言葉を聞いた瞬間、マカリオスは姉の手を引いてその場から走り去った。
「あ、おい!あんた!?」
男が怪訝な顔をして叫ぶが、構う間もない。
ただ手を引いて、アデーレとマカリオス、そして両親の住んでいた家へとそのまま転がり込む。
そこは、以前と変わらぬ場所にあって、以前と変わらぬ調度品があって、けれどただ、両親だけが居なかった。
「……ッ!」
たまらず、そのまま乱暴に手を引いて、姉弟の部屋に入り込む。そしてそのまま、マカリオスはアデーレをベットに投げた。
「キャッ!?マカリオス!?」
焦った声を愛しい人が出す。それに構わず、覆いかぶさった。
「マカリオス……」
覆いかぶさる弟の姿を見て、アデーレは力を抜いた。その瞳の中にはありありと、恐怖がある。何一つ、変わっていない恐怖。永遠の停滞がそこにある恐れ。だから、二度目の行為を受け容れるように、アデーレは両手を広げた。
「来て」
そのまま、キス。そのまま舌を絡め、愛しい弟の右手が体の線をなぞるように、動く。
「ん……」
柔らかさは主張すれども、永遠に成長途上の控えめな胸の頂点を、触られる。思わず声が漏れた。二度目でも、つくづく思う。愛しい人に触られると、愛されるとこんなにも気持ちがいい。胸から背へと、甘やかな感覚が広がり、それがいつしか胎の奥に火をつける。
アデーレは、自分の大事な場所がじっとりと色を付け始めるのを感じた。
だから、キスをしたまま、自分をまさぐるマカリオスの手に、己の手を重ねる。そうしてそのまま、自分の大事な場所へと導いた。
お互いがお互いの舌を貪るから、言葉を交わす事が出来ない。けれど本能のままに、二人はお互いが望むところを分かっていた。
僅かに、マカリオスの人差し指がひそやかに包まれたアデーレの陰核を擦り、そしてそのまま、膣口へと入り込んでゆく。
「「んっ!?」」
自分の体の事なのだ。気付いたのは、アデーレの方がわずかに早かった。
「姉さん……?」
思わず、唇を離してアデーレを見つめる。そうすると、姉は静々と涙を流していた。
「ごめんね?ごめん、マカリオス。あげたのに、あげたのに、
「どうして、デウスよ!なぜ!」
瞬間、マカリオスの胸の奥で怒りの炎が燃え上がった。
そのまま、手を引き抜いて、服を脱いで、興奮しきって先走りすら漏らしていた己の怒張を、愛しい
ブツリ、破瓜の音がした。
「……ッ!」
まさか、ここまでとは思わなかった。アデーレとマカリオスの体は、疑似的な不死だ。神に生かされている、変わる事のない体。アンブロシアの恩恵。だから、アンブロシアを食した時に処女であったアデーレの体は、必ず処女へと癒される。
それはつまり、マカリオスがアデーレを、愛しい女を征服した証拠もまた消え去るという事で、それがあまりにも悔しく、悲しかった。
それでも、アデーレの処女地は、だからこそ強い締め付けを感じさせて、マカリオスはすぐに上り詰めた。
「姉さんッ……!」
「来て」
吐精。付け根に溜まった熱が、吐き出される。そうであってなお、処女だったアデーレの体は鈍かった。愛しい人の精が吐き出されたのに、子宮は『初めて感じる』膣の痛みに怯えておりて来やしない。ただ、『怖い、怖い。出て行って』と言わんばかりに膣内が肉棒を締め付けるばかりだ。
そしてそれ自体は、マカリオスの肉棒に対して心地良い刺激となっており、だからこそ腰を震わせ、弟は愛しい姉の中にすべての精を出しきった。
荒い息、生臭い男女の交わりの臭い。
汗で塗れた顔で、姉を見下ろす。
「ごめん、姉さん」
「ううん。いいの。それより……傷が癒えて来たわ。今は、今なら、今だけはきっと、『あげたまま』でいれるから。お願い、マカリオス」
このまま、奪い続けてください。姉は、弟に凌辱される事を受け容れた。
そしてそれからアデーレとマカリオスは、獣になった。
朝起きては、交わり、アンブロシアが配給されてはそれをお互いで咀嚼して、お互いの口で受け渡しながら交わり、夜は二人で湯あみをしながら交わった。
そうしたなら、アデーレの処女は『回復』せず、アデーレの膣も、少しずつ自分の体が、もはや愛しい弟のもので、本来の自分の役割が、弟の精を受け容れて子を孕むための搾精器官である事を教え込まれて、こなれていった。
勿論、アデーレは子を孕む事は出来ない。疑似的な不死を達成したオリュンポスにおいて、子を孕む事はご法度であった。そうしなければ、一瞬で人口が溢れてしまう。故にアンブロシアを食した者は、子を育む事すら神の意に従っていた。
オリュンポスにおいて住人が増えるのは、数年に一度、罪人の流刑地、アトランティスから特に認められたものがオリュンポスに復帰する位しか、なかった。
でも、それでも、1か月。ひたすらお互い体を貪りつくし、もはやアデーレの体はマカリオスに征服しつくされた。
だから、
「姉さん」
朝、台所に立つアデーレの後ろに、マカリオスが立つ。ここ最近は、お互いもはや服など纏っていなかった。
「まって、マカリオス。料理中よ?」
そう言って嫌がるようにアデーレが尻を振る。もちろん、あくまでこれからの行為を盛り上げるためのスパイスだ。
だから、台所に立つアデーレも、最近は出来合いのものを加工する程度で刃物は使っていない。
言葉に答えず、マカリオスがアデーレの尻を掴んだ。健康的な、すこし肉付きの薄いそれ。けれど十分その楽しませてくれる柔らかさを持ったそれを、撫で、こぜ、楽しむ。
そうすれば愛しい姉は簡単に腰が砕けて、足を震わせこちらに背を預けてくる。すかさず頤が持ち上がり、姉は愛しい弟の舌を待ちわびた。それにこたえるように、上から弟の口が姉の口を征服する。
最近は言葉よりも舌でお互いの意思を確認し合っていた。
そのまま、尻をこねくり回すように動く手とは反対の手がアデーレの前へと周り、そのまま男らしい指が小陰唇周りを撫でて、膣口へと入り込む。愛しい『旦那様』の指を受け容れて、キュウキュウと膣内が媚びた。
そのまま、指が、膣口の内側、プクリと膨れた場所を、掻きあげる。
「フゥッ……!」
アデーレの鼻から息が漏れ、震えていた足が内股から震えあがり、プシッと股から潮を吹き出し、ガクリと力が抜けた。
一旦唇を離し、マカリオスもしゃがんで、一気にアデーレの両の膝を両手で抱え上げた。
「あっ……」
この1か月、ただれた生活を続けたとはいえ、台所で、お互い裸のまま、愛しい弟に両膝で抱え上げられる。アデーレの口から恥ずかし気な声が出た。
恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆い、けれど、
「あ……ッ♥」
己の股に当たる熱に、思わず覆った手のすき間から、それを見やる。
愛しい男の、血を分けた弟の、マカリオスの、たくましい怒張がそこにあった。
「姉さん、いくから」
答えは聞いてない宣言が耳朶を打つ。
そのまま、一拍の拍子も置かず、マカリオスのチンポが、アデーレのおマンコに飲み込まれた。
「あくぅ……!」
この一か月、処女が復活する間も無い程に犯され続けてこなれた膣は、入れただけで絶頂しそうな程の快楽をアデーレに齎した。膣内は、『赤ちゃん♥赤ちゃん欲しい♥』と媚びてぎゅっと締め付ける。子宮口も、チンポを受け容れ、亀頭へと情愛のキスの雨を降らそうと降りてくる。
思わず叫び声が出そうになって、顔を覆った手を、口元へと移した。
そうしたなら、柔らかく、耳朶を噛まれる。
「ヒッ♥」
そのまま、体を動かさずに、まるで膣口を愛するように舌が耳の穴を愛撫する。グチュクチュと音が脳を犯し、それだけで腰は振るえ、膣は唸り、容易くアデーレはイッた。
「んっ!!」
ややあって、舌が耳から離され、愛しい弟の囁きが、耳に入って来た。
「姉さん、声を隠さないで欲しい」
「……ええ♥分かったわ」
そうしたなら、
―――ズンッ!
弟の腰が跳ねて、子宮に、アデーレ自体の重みが衝撃となって伝わった。
「カハッ♥」
思わず、肺から空気が漏れる。そのまま、ガツガツと男らしい荒々しさで、マカリオスが動いた。
「やっ♥あっ♥まって♥まってマカリオス♥♥まって♥」
「待たないよ姉さん!」
余裕のない声でマカリオスが叫ぶ。事実、マカリオスに余裕なんてなかった。この1か月、獣のように交わってゆくなかで、アデーレの膣内は、確実にマカリオス専用になっていた。アデーレの中は、その強すぎる快感にただただ、『やめて♥やめて♥』と懇願するように締め付けてくる。
たまったものではない。さらにはそのように拒む膣内とは裏腹に、その襞は『射精して♥射精して♥』と媚びるようにうねるし、子宮口に至ってはただひたすらに『好き♥好き♥』と亀頭、鈴口へと愛を伝えてくる。
「お”っ♥お”うっ♥」
「ね、姉さん!恥ずかしいよ姉さん!!弟に、お、弟に犯されてそんな獣みたいな声っ!」
「やっだか♥だから、口っ♥こ、声を隠させてってっへっ♥いぐッ♥♥」
あんなに優しくて、はかなげで、思いやりがあって、可愛らしい姉が、己の胸の中で顔を赤らめ、乳首を立てて、陰核をぴくんと尖らせ、股を濡らし、己の肉棒を受け容れながら、汚い声で喘ぐ。
それだけで、マカリオスは感極まっていた。もう我慢しきれない。射精の熱が、チンポの根元に籠っているのがわかる。
けれど今ここで果てるのは、弟として、アデーレの恋人として、アデーレの征服者として、男として、雄として許せなかった。
もう一突き。マカリオスはアデーレの子宮を叩き解した。
二突き、三突き、四突き、五、六、七、八、九、十。
一旦、動きを止めて、マカリオスは胸元、愛しい姉の顔を見下ろした。
顔を真っ赤にして、いつもまとめている髪は乱れ、目端からボロボロと涙をこぼす、その姿。感極まって、一言。
「イクよ。姉さん」
コクリと、頷き。
「来て」
ズンッ、と十一回目。子宮口を叩き潰して、マカリオスは射精した。
「あっ♥――――んんんッ!?!?!?!?」
瞬間、叫び声を上げようとしたアデーレの口を、マカリオスが占拠した。射精のよる快楽と酸欠で翻弄されたアデーレは、訳も分からず上り詰める。
お互いに、深い絶頂に飲み込まれ、ついにマカリオスも腰が砕け、壁に背を預け、そのままずるずると床に座り込んだ。
長い沈黙。
「可愛かったよ、姉さん」
荒い息のまま弟がそう言えば、
「もう!意地悪なんだから、マカリオス」
姉は、赤い顔ですねて見せた。
そしてその後は、二人して笑うのだ。爛れた、蜜月がそこにあった。
――――そうして、その蜜月は50年ほど続いた。
理由は明白だ。単純に、恐れていた事が起こっただけだ。
もし、これ以上情交を楽しんだのなら、きっといつか、致命的に飽きる。もしそうなったら、アデーレとマカリオス、二人の関係にすら疵が付きそうだったから、お互い同意のうえで、一旦情交は控える事となった。
そうして表面上は、仲の良すぎる姉弟に戻った二人は、それから50年かけて、ゆっくり。ゆっくりオリュンポスを見て回った。色々な人と多くの人と言葉を交わした。
交わした結果、二人は、アデーレとマカリオスは、『この永遠の停滞を色あせたものと感じるのは、どうやらやっぱり自分達だけである』と、結論付けた。
そして、もう一つの事を知った。それは、今も世界の中心に備わる世界樹が、この世界をつなぎとめているらしい事。
そしてその管理を行っているのはゼウス。
つまり、ゼウスを弑せば、明日を一歩踏み出せば、その日の内に世界を支える世界樹が燃え尽きて、この世界は終わる、という事だった。
「マカリオス、星が綺麗ね」
「そうだね、姉さん」
50年かけてその結論を導き出したその夜に、アデーレとマカリオスは都市を離れ、小高い丘にて星を見上げていた。星は、変わらずそこにある。双子が生まれてから、変わらず、そこに瞬いていた。それでも、美しいと思う。
「ねぇマカリオス」
「なんだい姉さん?」
静かに、問いかける。
「もう、諦めてもいいのかなぁ」
そういって、アデーレは伸びをする。そのまま、夜空を見上げ、言葉を紡いだ。
「私達、私達だけだよ?退屈しているのは、色褪せているのは、永遠の停滞に倦んでるのは。もう、さ。いいんじゃないかな?私達は、私達が我慢すれば、きっと、それでいいんだよ。この気持ちに蓋をして、暮らしていった方が、色褪せた世界に生きれば……」
きっと、そっちの方が楽。少女は、微笑みながら愛しい少年を見た。
「それは……」
「それに、仮に私達が一歩を踏み出せば、世界が終わる。私達は明日を欲しいけれど、それは、神々を殺し、多くの人々を裏切る事になる。それでも、いいのかしら?」
自分達立った二人が犠牲になれば、この世界は永遠に立ち止まったまま、平和に回っていくのだろう。それでいいのではないか。少女はそういって微笑みに、疲れた色を載せた。
少年は、相も変わらず夜空を見上げている。星を見上げているのだ。怖かった。少女の顔を見るのが。きっとそこには諦めの色があって、それを見たら、自分は折れてしまう。
(けど……)
折れる事が、悪い事なのか?そう、自問自答する。だって、数千年を生きてきて、たった一度、この揺籃を打破するために引き起こされたオリュンピアマキアの勝利を経て、ゼウスの、大神の支配は確実なものとなった。その中で経った二人、1000万人の中で二人だけで、ちっぽけな人間が意地を張って何になるんだろうか?
そして意地を張った結果、それで得られるのはきっと、1日に満たない僅かな未来で、その代償が、多くの神々と、人々の命。
だったら、諦めてもいいんじゃないか?
「そうだな」
ため息を一つ。少年は、結論を出した。色褪せた永遠に埋没しよう。だって、それ以外にどうすればいいのか。そうして空を見上げる顔を下げて、少女に向き直ろうとした瞬間、
「あ……帚星」
少年の瞳に、帚星が瞬いて、消え去った。そしてその美しさに、少年は魅入られたのだ。星の瞬きは、宇宙の気まぐれ。まったくの偶然。だからそれは、やっぱり
「マカリオス?」
「や……だ。いやだ」
倦いた心に、熱が灯る。色褪せた世界に、永遠に停滞した世界に、何の意味があるのだろう。やっぱり、そんなの間違っている。星々は相も変わらず美しい。けれど、そんなものよりも、マカリオスは帚星にこそ価値を見出した。
もはや、燃え尽きて存在しないからこそ美しい。戻らないから、失ってしまえば戻らないから。だからこそ、価値があるのだ。
それを、再び思い起こした。
勢いよく、マカリオスはアデーレへと振り向く。そのまま、強く肩を掴んだ。
「姉さん!!!!」
「な、何かしら?」
「俺は、姉さんが好きだ。愛してる!」
「そ、それは私だって!!!」
「だから、オレは!!!」
言葉に詰まった。けれど、言わなければならない。
「姉さんと、まだ見ぬ明日が見たい!共に、成長してゆきたい!」
その言葉に、アデーレはハッとした。
「わた……私だって!マカリオスと成長してゆく時間を共に歩みたいわ!」
「ああ、だから俺、やっぱり諦めきれない!!!」
少年が叫ぶ。
「けど、けれどそれはきっと、多くの人々を裏切って、神々すらも殺すことになるわ!」
もう、デウスしか残っていないのだ。デウスを、神を弑する事は今現在、世界の終わりを意味する。確かに明日へとは踏み出せるだろう。しかしそれは、破滅を意味する。
それに対して、少年はもうわかってるだろう?と笑みを見せて、少女は、仕方ないなぁとばかりに、力の抜けた笑みを見せた。
「「けれど、それでも」」
明日を、夢見る。それだけで、やっぱりこれだけ恋、焦がれる事が出来るのだ。双子は、思った。結局自分達は、狂人なのだろう。
神の作り出した揺籃で微睡んでおけばいいのに、それを良しとせず、揺籃ごと焼き尽くそうとするなんて。
ああ、でも。欲しい。一瞬でもいい。この色褪せた無間の牢獄の中、色に溢れた時間が、ただその一瞬が欲しいから。それはきっと何よりも価値あるものだから。
「「生きたい」」
だから、
――――一緒に死んで、くれますか?
―――――喜んで
そうして男は、愛しい女の処女を、50年ぶりに、破った。
「星が、綺麗ねマカリオス」
すべてが終わった夜空の下、そういってアデーレは微笑んだ。傍らには愛しい弟、マカリオス。後ろには、己達を慈しんだ、神妃たるエウロペが控えている。
既に、カルデアの面々は離脱した。もうここには、終わりを待つ自分達しかいない。
お互い、涙を流しながら向き合う。今しがた、大人になった姿を見たかったと、告白し合って、微笑む。
「それよりも、オレは姉さんの方が綺麗だ」
嘘偽りのない事実だった。ああ、どうして。マカリオスの胸中には言葉に出来ない焦り、悲しみが確かにあった。自分達は、この一瞬を得るために、今までを生きて来たのだ。後悔はない。後悔はないが、惜しい。
そしてその惜しさが、姉の、アデーレの、美しさを引き立てていた。
今、この瞬間が、見た事のない明日だ。得難い、二度と戻らない今を消費して、自分達は未来へと飛翔している。
お互い、神妃に見守られながら、手を絡ませて、寄り添う。
「生きているわね、マカリオス。私達」
「そうだな、姉さん」
「ありがとう、マカリオス」
泣きながら、アデーレが感謝を伝えてくる。事ここに至って何を言うのか。
「そんなの、オレだってそうさ。ありがとう姉さん」
「「生まれてきてくれて、ありがとう」」
言葉と共に、涙が溢れて来た。ああ、自分達はこれから死ぬのだ。けれどそれは、生きているからかこそ、死ぬのだ。一分一秒を消費して、死に向かう旅路を、今歩んでいる。
焦りがあった。悲しみがあった。喜びがあった。今にも大神殿は崩れそうで、お互いがお互いに愛の言葉を満足する程送る時間なんて在りはしない。
「ああ!もう!」
本当は万の言葉を尽くしたかった。けれど自分達にはそんな時間は無いから、マカリオスは焦ったように叫んで、涙を流す愛しい少女の手を取った。
「姉さん!綺麗だ!愛してる。今の姉さんは、帚星のように綺麗だ!」
燃え尽きるからこそ美しい。一度亡くしてしまえば、もう二度とは手に入らないかのように美しい。そんな美しさが、そこにはあった。
答えは、口付けだった。崩落は確実に加速している。もう、言葉を交わす余裕なんてなかったし、舌を交わす事実の方が、万の言葉に勝っていた。
そしてその口付けは明らかに恋人同士の激しい交わりのそれで、
「……」
微笑みのまま、そのまま抱き合う二人を、優しく神妃は、包み込んだ。
次の瞬間、瓦礫が落ちてくる。
(ああ……)
涙を湛えながら、時間が鈍くなってゆく。永遠に等しい一瞬の間に、二人は、瞳と、舌と、心を交わした。
――――例えばその帚星のような一瞬の感情に、名を付けるとしたらなんなのだろうか。答えは、ない。なぜなら答えを出す時間など、無かったからだ。ただ一つ確かな事は、それが、美しい事ばかりだった。