「・・・」
この前の行為での話の最中で、聞いた彼女の本音。
死に神ちゃんの記憶がありながらも、あの時の行為を行ったのは、間違いなく、彼女自身の意思。
それを考えれば、それはイシズさんから聞いた、ある状況によく似ていた。
「一つの身体に二つの魂が宿っている。
死に神ちゃんの力は、そういう意味でもあったのかな」
死に神ちゃんの力を使った結果が、それかもしれない。
そう、考えている時であった。
何やら、心ここにあらずの状態で、ふらふらと歩いている女性が1人見える。
気になる事もあり、ふと、そこに視線を向けていると、彼女に近づく影があった。
「あっ!」
それは、まさしく誘拐だった。
僕はすぐに、彼女を追いかけようとした。
連れ去られた先は、車であり、そこで誘拐しようとした現場であった。
「やばいっ、このままじゃ!」
なんとか追いつこうとした。
だが、既に彼女は連れ去られる。
「どうしたら」
『こういう時こそ、俺様ちゃんの出番だよぉ』
「えっ、どういう事?」
僕は思わず問いかけた。
『俺様ちゃんがこの場であの部屋へと招待すれば、あの子はこっちの空間に連れてこられる。
それで誘拐は防ぐ事ができるよぉ』
「うぅ」
『迷っている間に、もしかしたら、殺されちゃうかもしれないけど、良いのぉ?』
死に神ちゃんからの言葉に対して、僕は否定する事はできなかった。
「あぁ、分かった!お願い、死に神ちゃん!!」
『おけまる!それでは、ご招待!!』
その言葉と共に、あの空間へと、僕達は吸い込まれる。
吸い込まれた先、そこで彼女と初めて対面する。
「えっ、あれ、ここは?」
「あっえっと、その」
伊達メガネをかけていて長めの髪は束ねている彼女は、周りを見ていた。
「その、変な事にまきこんでしまって、本当にごめん!」
「えっ、いや、その、事情を話してくれないかな」
「分かった、それじゃ」
僕は、そのままゆっくりとこの空間の事について、そしてそれを使った経緯。
それらを全て話した。
それに対して、彼女は頷きながらも、聞いていた。
「そんな力があるんだ」
「ごめんね、こんな事に」
「うぅん、たぶん、その人はストーカーだと思うの。
以前の事件で、解決したと思ったけど、学校に退学になった途端に、狙われるなんてね」
「学校?」
それから、僕は彼女、佐倉愛里さんから詳しい話を聞いた。
実力主義の学校。
そこでの日々、そして、彼女自身が退学した経緯。
それらを全て聞きながら、自然と、その目には涙が溜まっていた。
「だからかな、自信を持てると思ったけど、やっぱり、1人でいると、私は」
それは、僕にとっては、どこか見覚えがあった。
いや、見覚えではない。
おそらくは、僕自身と同じだろう。
「・・・佐倉さん」
「なに?」
「今、その恋心、僕が貰っても良い?」
「ぇっ?」
正直に言うと、いきなり初対面の僕が、そんな事を言うのは可笑しいのは分かる。
それでも、僕は、この瞬間でも正直に言う。
「そんな、いきなり、言われても」
「戸惑うかもしれない、意味が分からないかもしれない、正直に言って、断っても仕方ないと思う。だけど、もしも変わりたいならば、一緒に」
そう、僕は彼女を見つめる。
それに対する答えは、自然と彼女もまた、ゆっくりと頷いた。
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