※この作品はR-18です。

【アークナイツ】赤毛の人形遣い   作:おくちだいすけ

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(エロは次の2話からです)




第一章 マゼランとメイヤー
【第一章】1話 - 胸騒ぎ


 

 ◆ ◆ ◆

 

 

(その日は正直に言うと朝から嫌な予感がしていた日だった。

 胸騒ぎというか、心がざわざわすると言うか。

 流れる雲の形が不吉に見えて、空から降る光もどこか弱く陰っていて……。

 嵐が過ぎたあと晴れ渡るはずの空が、朝起きたら未だにどんよりとすっきりしない空が広がっているような、そんな憂鬱で不吉な朝だった。)

 

 

 ―――― 、

 

 ――――四日前。

 

 

「遊撃部隊ぃ?」

 

 ロドス・アイランドの制御中枢にある作戦会議室でメイヤーが声を上げた。

 黒いピッチリとしたチューブトップ姿に、同じく黒いショートパンツに黒いタイツというスタイルだ。この部屋に男性がいたら目のやり場に少し困っていたのかもしれない。

 メイヤーの代名詞とも言えるロボットアームは外されており、ラフでいささか露出度高めの格好だが、そのスリムで美しい身体にフィットした装いに薄いブラウン色をした髪色が映えとても似合っていた。

 

 ――室内にはメイヤーを含め4名ほどの女性オペレーターが集まっていた。

 

「いや、あくまで遊撃というよりは哨戒及び陽動が主な目的の部隊だ。……龍門から強い協力要請を受けてな」

 

 そう答えるのはドーベルマン教官だ。

 軍服を身に纏い毅然とした声で答えるが、だがその表情にはどこか納得していない様子が浮かんでいる。

 

「……、まぁ、どっちでもいいけどさぁ~」

 

 その言葉を受け、手を頭の後ろに回したメイヤーがダルそうな声を上げた。ドーベルマン教官の表情からなにかを察したのかもしれない。

 後ろに体重をかけた会議室の硬い椅子からギシリと軋む音が鳴る。

 昨日も遅くまでミーボの整備を続けていたのだろうか、メイヤーの目には若干の疲れが浮かんでいた。

 

「……今回は龍門との共同作戦となる。我々ロドスの編成部隊が、西の廃墟群に潜伏していると思われるレユニオン部隊を、更に西の後方から叩き、小規模な攻撃を行う」

 

 教官が説明を続ける。

 

「……まずは哨戒、そして陽動。……廃墟群に潜んでいるレユニオンの反応が小規模であった場合はそのまま遊撃へと移る。 ……そしてもし大規模な部隊展開が行われているようであれば、龍門と我々ロドス混成の本隊が東から叩き殲滅戦へと移る。……まぁこちらが本筋だな」

 

 作戦会議室の大型のモニターには廃墟群を表す灰色のビル群が描かれ、そのビル群へと左から水色の矢印が差し込むように描写される。少し時間を置いて右から大きなオレンジ色の矢印が差し込まれ、挟み込むように展開していく。

 水色の矢印が今回の部隊、オレンジ色の矢印が混成の本隊だろう。

 

「そしてこの地点から北に現在位置するのが我々ロドス、そして龍門。更に北の荒野部にはレユニオンの幹部連中が潜伏していることがわかっている。恐らくこちらがレユニオンの本隊だろう。……まぁつまり今回の作戦はそのレユニオン本隊との挟撃を恐れての物だ。この廃墟群にも……兵の質はどうあれ本隊に相当する規模の部隊がいるとなると非常にまずい状況だ。必ず我々が先手を打ち、レユニオンを先に叩かなければならない」

 

「……そのへんを探索して、突っついておびき出して、相手が少なかったらそのまま倒せってこと?危険じゃない?あたし達良い様に使われてない?それに人数も……」

 

 そう声を上げたのはマゼランだ。

 マゼランもメイヤーと同じ様に露出が高めの格好をしていた。

 黒いタンクトップにパンツスタイルで、その豊満な稜線が惜しげもなく晒されている。そして黒一色のラフな格好に、濃いブラウンの髪に走るシルバーのメッシュラインがとても映えている。

 

 

「……危険なのは否めない」

 

 少し苦い顔をした教官が答える。

 

「まぁドクターが作戦を立ててくれるなら従うけどさぁ……」

 

 するとガタっと椅子から少女が立ち上がり、ピコリと大きな獣耳が跳ねる。

 

「それであたし達、ドローン編隊が組まれたってわけね!ってあたしのぴーちゃんはメカじゃないんだけど……!」

 

 作戦会議室にいる最後の一人、ビーンストークが可愛らしい元気な声を張り上げた。

 先程までの二人とは違いしっかりと勤務中の格好をしている。

 ブラウンのラインが走ったブラウスの上から白いカーディガンを羽織り、かわいらしいケモ耳が覗く特注のハットをかぶっていた。

 その言葉に教官が答える。

 

「そうだ、君たち召喚士と戦術家の手数で相手を多方面から調査、そして刺激し、陽動する。……繰り返すが、遊撃や迎撃に移るのは相手が小規模な場合だけだ。相手が大規模であった場合はすぐに撤退して構わない」

 

 教官が3人の顔を順番に見つめながら続ける。

 

「マゼランがドローンで空から敵の位置を探る」

 

「……わかったよ」

 マゼランがこくりと頷いた。

 

「そしてメイヤーとビーンストークが地上から」

 

「まぁしゃーないか……、ほ~い」

 

「そしてビーンストークは地上で二人の補助も担当してもらう」

 

「まっかせて!ぴーちゃんはそうゆうのも得意だよ!」

 

「うむ……、そして前衛として私が同行しよう。ライン生命から出向してきている身だと言うのにすまないな……」

 

 教官が俯き気味に謝罪の言葉を口にする。

 そう、マゼランとメイヤーはライン生命からロドスに出向をしてきている身なのだ。

 研究や探索が主なミッションではあるのだが、その腕を見込まれてオペレーターとして戦線にも参加している。きっと教官にもいろいろとしがらみが有るのだろう、そう感じさせる表情だった。

 

「んや~。それこそ教官もじゃん?私達もオペレーターとしてちゃんと働かなきゃだしね。まぁ気にしないで」

 

「すまんな、助かる。 ごほん……では、ドクターもそろそろ龍門から帰還する頃だ。ドクターが来たら更に作戦を詰めて行くぞ」

 

 その言葉を受け、机の上で頬杖をついていたメイヤーが目を丸く開き驚きの声を上げた。

 

「んえ?!……えっ、えっちょっ!ドクター来るの? ちょ、あっ……やばっ!」

 

 そう声を張り上げたメイヤーの視線が自分の脚、そして腹部へと巡る。そこにはちらりと可愛らしいおへそが覗いている。

 

「――ッ!あぁっ私上着取ってくるね?!ごめんねっ」

 

「あはは、いってらっしゃ~いメイヤーちゃん」

 

 ドクターが来るとは聞かされていなかったメイヤーがバタバタと作戦会議室から自らのラボへと引き上げて行った。そしてそんなメイヤーにマゼランがお見送りの声をかけた。

 大事な友人であり、そして恋敵でもあるメイヤーのそんな様子に、マゼランにも少し焦りの感情が芽生えた。

 

(……、あたしは大丈夫かな……?気にしすぎ?むしろ気にしないとダメ? ……うん、大丈夫だよね……?いい感じに刺激的……?)

 マゼランは自身の胸元の見つめ、露出が高すぎないかチェックをしていた。

 そしてその自己採点は"まぁ合格、大丈夫"といった範疇に収まったようだ。

 

 ―― その後、上着どころが全身着替えたメイヤーと、合流したドクターを交え、様々な状況に応じた作戦を組んで行った。

 

 

 そして作戦会議の日から二日後に出発の日を迎え、マゼラン達4名はロドスから作戦エリアに向かい出発した。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ドクター達に見送られ、ロドスから出発してから約二日、二度の野営を終え、ようやくマゼラン達は作戦エリアに到着した。

 ロドスや龍門のある方角から作戦区域を挟んだちょうど反対側。あまり調査も進んでいない荒野にマゼラン達一行は居た。

 

 まるで赤い砂漠のような荒れ果てた土地に、天災によるものか、大地にはまるで巨人の槍の様に大きな源石(オリジニウム)結晶や岩石があちらこちらに突き刺さっており、ささくれ立った大地が視界を遮る。

 そしてそのささくれ立った光景の更に先には、天災により壊滅した"街だったモノ"が広がっている。あの遠くに見える廃墟群が、レユニオンが潜んでいると予測されている西の廃墟だ。

 

 一行はマゼランのドローンによる上空からの探知データを元に、あの廃墟群からの射線を切るようなルートを使いここまで移動してきていた。

 そしてこの地点からは同じ様に隠れながら、あの廃墟の西端を目指すことになる。

 

 

「ん~。やっぱこんだけデコボコしてると空からのデータがあると便利だね~。ミーボも飛べるようにしちゃおうかな」

 

 一行の先陣を切り、上空をフヨフヨと漂うマゼランのドローンを見てメイヤーが言う。周囲には一行を取り囲むようにドローンが展開しており、付近一帯の情報を逐次スキャンしていた。

 

「あはは、そうするとかなり巨大な翼かフローターをつけないとだねぇ~。……まぁそのぶん操縦と解析の負担が……あるけどねっ。今日はあまり高く飛ばせないから余計に……? ……あれ?教官?どうしたの?」

 

 ドローンに続き先頭を進むドーベルマンがふいに立ち止まり、しきりに辺りを探るように見回している。

 眉間に深い皺が走り、緊張と警戒を露わにした険しい表情をしていた。

 

 目深に被った軍帽から鋭い視線が覗く。

 その様子を受け、他の三名にも緊張が走った。

 

「……マゼラン。付近に反応はあるか? 我々以外の……」

 

「えっ? ……っ、……いや。あたし達の他に反応は無いよ……!少なくとも300メートル四方はクリア」

 

 ドローンから送信されるデータを解析しているマゼランが教官の質問にそう答える。

 その言葉を受け、教官の警戒レベルがひとつ下がったようだ。

 

「そうか……。やはり少なからず何者かがあの廃墟群に潜伏しているのは間違いないようだな。 ……、この周囲に中規模程度の部隊が移動した痕跡がある」

 

「えっ?!」

「うそっ?」

 

 上空からの哨戒を行っていたマゼランと、地上でのデータ収集を行っていたメイヤーから驚きの声が上がる。

 

「時間の経過がわからないが、少なくとも民間人ではないだろうな……。統率された軍の部隊か……まぁ恐らくレユニオンだろうな」

 

「お~~。さっすが教官!あたしとぴーちゃんじゃ全然わからないや……すごい!」

 

 ビーンストークがぴょこぴょこと跳ね、ドーベルマンを称賛する。

 そしてメイヤーとマゼランにも驚きの表情が浮かんでいた。

 

「すごい……。ミーボからの地上データにマゼランちゃんから受け取った上空データを複合してもなにも出てこないや……。やっぱ時に人間の経験と感覚はデータを上回るね!」

 

「けっこう仔細にスキャニングしてるんだけどなぁ……。やっぱ探索以外のサンプル蓄積はまだまだか……」

 

 手元の端末やロボットアームにつけられた端末をいじりながら、二人が感嘆の言葉を口にする。

 

「ずいぶん鼻が利くんだなと、皮肉を言ってもらってもかまわんのだぞ? まぁ今回の場合は鼻ではなく目だが」

 

「ん~、へへへ……」

「あはは~はは……」

 

 ドーベルマン教官が自嘲混じりの笑えないジョークを言うと、左方にある岩陰へと近づいていく。

 

 

「……、そうだな、メイヤー。この痕跡を見てくれ」

 

 するとドーベルマンがちょうど窪みになっている地面を指差した。

 

「ん~~。どれどれっ?」

 

 ドーベルマンが指を差す先をメイヤーが見ると、自然に出来た窪みの中に、細く二重線の溝が走っている部分があった。

 

「土の成分が多い部分にしか残っていないようだが、この痕跡は型が随分古いが軍用ブーツの物だ。しかもこのような跡を残すにはその人物の総重量が120kgほどは無いと出来ない。更にはこの痕跡と同様の物が少し離れたあそこ……と、あちらにもある。これは角度からして同一人物ではあり得ないだろう。まぁ民間人ではないだろうな」

 

「なるほど、すごい……。 ……ミーボ!サンプリングして!」

 

 カシャカシャとメイヤーの後ろをついてきた機械川獺(かわうそ)が、教官が指を差す地面へ向けて光を投射しスキャニングを行う。そしてメイヤーはロボットアームについた端末を操作してデータの解析を始めた。

 

「メイヤーちゃん、解析できたらあたしにも送って?」

「オッケー。ちょっと待ってね……」

 

「み、溝……?ぴーちゃんわかる……?……そう、そうだよねぇ……」

 

 横からビーンストークと、小さなリボンをつけたハガネガニのピーケーキ、通称ぴーちゃんが痕跡を覗き込むが、すぐに二人共がっくりと肩を落とした。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「―――― 痕跡はたしかにあの廃墟群へと向かっているみたい。検知出来た範囲は約……幅30メートルくらいのエリアに点在しているね。そこまで密集はしていないから、20名~40名ってとこかな? 大規模とは言えないけど、まぁ小規模とも言えないね。その他の自然に出来た痕跡との比較からすると恐らく3~4日前かな……どうする教官?」

 

 上空から取得したデータによるマゼランの解析結果を聞き、ドーベルマン教官が思案する。

 軍服を身に纏い顎に手を当て、美しくスラリをしたシルエットで立つドーベルマン教官はまさしく猟犬といった雰囲気を醸し、周囲の人間に鬼教官の名に恥じない威圧と威厳を撒き散らす。

 

「4日前か……。ふむ、この情報を持ち帰る為、既に引き返しても問題無いとも言えるが……。せめてあの広い廃墟群のどの辺りに潜伏しているかは……はっきりさせておきたい所だな……?」

 

 教官がマゼランへとピリピリとした視線を投げかける。

 

「あうっ……。ご、ごめん、さすがに細かい位置まではもうちょっと接近しないと……、難しいかな……?」

 

 投げかけられた目線を横へとかわし、マゼランが頬をぽりぽりと掻きながら答えた。

 すると教官からピリピリとした威圧感がフっと抜け、柔らかい笑みを浮かべた。

 

「……、ふふっ。すまんすまん少し欲を出してみた。では……最大警戒でもう少し接近してみるとするか……!」

 

「オッケー!」

 

 

 ―― ここで引き返していれば……。

 この場にいる四人全員がこの時の事をそう思い返すこととなる。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ――――、

 

「うっ……うそでしょっ……!敵反応確認……4!八時方向!後方警戒!」

 

 敵の痕跡が広範囲に及んだ為、各自を散(・)開(・)し(・)た(・)調(・)査(・)を開始したまさにその時だった。

 マゼランが敵の接近を告げる声を上げる。

 

 メンバーそれぞれの距離が離れているため、直接その声が届いた者はいなかった。マゼランは同時に各自の端末へ情報を転送する。

 そしてマゼランが装着するインカムへ、間髪入れずドーベルマンからの通信が返ってくる。

 

『後方だと?! ちぃっ……!フォーメーション反転!各自敵影へ向かい三時方向へ!メイヤーは右へ転回しろ!』

『っ、了解っ!』

 

 教官の声に続き、メイヤーが応答する。当然だがその二人の声には焦りの色が濃く滲み出ていた。

 

「距離240!速い……! ……自隊認識不明!このままだと20秒で接敵するよ!」

 

 端末に表示される青い点に赤い点がグングンと近づいていく。

 おのずとマゼランにも焦りの気持ちが走る。だがここは冷静に状況の分析、及び連携をしなければならない。ドローンを操る手にジトっとした汗が走る。

 

『……!応戦する……!ビーンストークは私の補助に回れっ!後方に移動しろ!岩陰にハガネガニを配置!』

『わっ、了解っ!ビーン―ビガッガッ―ク小隊行くよぉー!』 ブツッ― ガガガッ

 

 ビーンストークの明るい声がマゼランのインカムから響く、だがその通信に強いノイズが混じった。

 

 (――ッ?!)

 

「ッ?!ジャミング!?―― 通信障害発生の可能性あり!全体後退!各自視認距離まで接近せよ!メイヤー、七時方向転身!!」

 

 ジャミング発生の可能性を考慮し、咄嗟にマゼランがドーベルマンの指示を上書きする。

 そして即時に各端末に各自の推奨移動ルートを展開する。だがその後インカムや手元の端末に反応が帰ってくることはなかった。

 

 (――ッ!!やっぱりジャミングだっ!)

 

 マゼランが無線で操縦するドローンをバっと見上げる。

 ―― 挙動に問題はない、まだ制御下のようだ。

 

 (―― 各自の通信帯域に絞ったジャミング……?無差別じゃないの?なんでそんなピンポイントな……。アラートも無しに即時なんて……)

 

 仲間の元へと移動を続けながら、マゼランは思案を続ける。

 

 (―― ジャミング……。 ッ!?もしかして敵のアーツ能力……?!)

 

 ――!!

 

 その可能性が頭に浮かび上がった瞬間、マゼランは残りのレーザーモジュールを搭載したドローン全てを上空へと展開した。

 各自の反応が消えたポイントまでの飛行ルートを目視で設定し、マゼランはドーベルマンのポインターが消えた地点へ向かい急いで駆け出した。

 

 

 ――――、

 

 ――――――、

 

 もしこの強力なジャミングが敵のアーツ能力なのだとしたら、敵の幹部級の可能性がとても高い。

 少なくとも相応の戦力で守られていないとおかしい強力なアーツ能力だ。

 つまり4つの敵影、すべてが相手の精鋭の可能性がある。

 

 (うかつっ……!廃墟までまだ距離があるから油断してた……!)

 

 

 マゼランの頭に様々な可能性が浮かぶ。

 

(――ジャミングする能力……? ――いや、通信……電波……そっちの……、…………。傍受されていた……?だとしたら……!)

 

 傍受されていたとしたら、各自が散開をしたタイミングを見計らい急に敵が現れたことの説明がつく。

 優秀なマゼランの頭脳はそう結論付けた。

 

 ――――、

 

 駆けるマゼランの元に、自身がポイントへ到着するより早く、現着したドローンからのデータが送信されてくる。

 

 (――――えっ……!?)

 

 そのデータを見たマゼランに驚きが走る。

 

 端末の画面に表示されたレーダーの反応。

 少し離れた位置に赤い反応が1、そして味方の青い反応が2。

 味方の反応はどちらも同地点で重なり合い限りなく密着し濃い青を表示していた。

 

 ドローンとの距離が近くなったことにより解像度が上がり端末画面へと浮かび上がるそのシルエットは、ド(・)ー(・)ベ(・)ル(・)マ(・)ン(・)教(・)官(・)に(・)首(・)を(・)掴(・)ま(・)れ(・)、宙吊りとなったビーンストークのシルエットを描いていた。

 

(どっ、どうゆうことっ!なんで教官が……!! ………っ!!?)

 

 そして即座にドローンからの通信が途絶し、端末からドローンの反応も消えた。

 その予想外で理解が出来ない状況に、思わずマゼランの足が止まる。

 

 ――――。

 

 同士討ち、ドローンの制御喪失。

 そして激しく混乱を続けるマゼランのもとに、さらなるイレギュラーが襲いかかる。

 

 端末の画面に、マゼランの元へ高速で移動するふたつの反応が表示されたのだ。

 ひとつは味方の青い反応、そしてもうひとつは敵の赤い反応。

 

 まるで青い反応を追いかけるように移動する赤い反応に混乱で停滞していた意識がバチリと弾けた。

 

(ッ!! メイヤーちゃん!!!)

 

 他に展開していたドローンを自身の元へ集結するよう指示を上書くが、自身の近くに飛ばしていたドローン以外は到底間に合わない。

 みるみるうちに端末に表示された二つの反応が近づいてくる。

 

 

「マゼラーーンッ……!!!!!にっ、げっ!!!」

 マゼランの元へと駆けるメイヤーの姿が離れた岩の陰から現れた、マゼランの名を叫ぶ顔には深い焦燥が浮かび、悶絶するかのような苦しみの表情を浮かべている。

 そして間髪入れずその後ろから小さな黒い陰がひとつ現れた。

 ――ミーボではない、敵だ。

 

 

 ――敵!!

 

「―― 照射ッ……!!!」

 

 ―― ビギッ………… ビュガッ---!

 

 すぐさま黒い陰へ向かいレーザーモジュールを搭載したドローンが光線を放つ。

 魔術的な力が付与された極太のレーザーが、敵を貫ぬかんと大気を奔り大地の上を穿った。

 

 ―― バッギャァァァッ!!

 

「なっ?!」

 

 だがそのレーザーは障害物に阻まれ敵に届く事はなかった。その予想外の光景にマゼランの瞳が見開かれる。

 敵の前を駆けるメイヤーのロボットアームが射線へ敵を庇うように駆動し、束になった複数本のアームがレーザーを受け蒸発するようにして吹き飛んだのだ。

 強烈な光と一緒に、信じられない光景が飛び込んできたマゼランの脳回路が混乱により再度停滞を起こす、優秀なマゼランの頭脳を持ってしても次点の動作が浮かばず、現在の状況に於いて致命的な "間" が産まれた。

 

 ――敵を攻撃、否。回避、味方を?――――――っ!

 

「マゼランっ!!! 逃げてェェーーッ!!!」

 

 混乱の中に沈むマゼランの元に、ロボットアームを背負っているなんて到底思えない驚異的な速度で、マゼランの身体へメイヤーがロボットアームごと突っ込むようにして接近する。

 

 そのアスリートのように駆けるメイヤーの足は、異様に筋肉が盛り上がり、今にも肉が破れて裂けてしまいそうな有様だった。

 

 マゼランの名を叫ぶメイヤーの、今にも泣き出してしまいそうな顔がマゼランの視界の中で大きくなりどんどんと接近してくる。

 

(なっ、なんで……?)

 

 ―― ゴガッッッ!!!!

 

 そして強烈な衝撃で意識を失う寸前、マゼランの脳内回路に浮かんだのは、終始「なにもわからない」という混乱だけだった。

 メイヤーとマゼランの頭部同士が激しく衝突し、地に沈む二人の視界の中には、黒いフードの下からニヤニヤと笑う少年の顔があった。

 

 

 

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