(エロは3話からです)
◆ ◆ ◆
龍門の繁華街に1台の大きな車両が到着した。
1軒のナイトクラブの前、ガヤガヤとにぎやかな一角にその車両が止まると、その車から5人の美女が降り立った。
するとその美女達はすかさず注目を浴び、周辺にいる観光客や客引きの男達から熱い視線が注がれた。
「や、やっぱりちょっと露出が高すぎる気がぁ……」
その中の1人、サイレンスがあわあわと弱々しく狼狽えた声を上げる。眼鏡の下からキョロキョロと辺りを見回すと、自分を見ている複数の男の視線に気付き顔を赤くした。
サイレンスは青いチャイナドレスを着ていた。露出が高く、肩やサイレンスの慎ましい胸の谷間が大きく露になっている。鮮やかな青地の艷やかに輝く生地の上に、白い刺繍でたくさんの羽根が描かれており、自らの頭髪に混ざったリーベリ族の羽との調和が実に美しい。普段はつけている眼鏡もコンタクトへ変え、少し切れ長な目と羞恥に垂れ下がった眉が実にキュートだ。
腰のクビレの真横まで入った大胆なスリットからはサイレンスのスリムで白い太ももが眩しく覗き、その上では黒い下着の紐の結び目がスリットの隙間からアクセサリーのように垂れ下がっていた。ぴったりとしたドレスはサイレンスの身体張り付き、その下にある浮き出たアバラの骨やヘソの形まで丸分かりだ。
そしてスラっと伸びたどこか少女めいた儚さを持つ肢体は、それを遠くから覗き見る周りの男たちに仄かな罪悪感を与えるほどだった。
「大丈夫だってぇ~。似合ってるよサイレンス」
そしてそんなサイレンスにそのチャイナドレスを選んだ張本人であるメイヤーが言う。
メイヤーもサイレンスと似たデザインの赤いチャイナドレスを着ていた。サイレンスより更に深いスリットはくびれの高さを超え、ヘソの高さまで達している。そのスリットからは白いのパンティー紐の結び目がアクセサリーのように覗いている、更にその下では模様が描かれた黒いニーソタイプのストッキングにつけられたガーターベルトもスリットから覗き、大胆に露出した挑発的な太ももが惜しげもなく晒されている。
メイヤーはドレスの露出の高さに難色を示したサイレンスを、自らも近いデザインのチャイナドレスを選ぶことで言いくるめていた。サイレンスと話すメイヤーはその瞳にイタズラな光を浮かべている。
2人は共にサイド以外のミディアムヘアーを後ろで小さな団子にまとめ、普段は隠れたうなじが見えるようにしている。
サイレンスにはクールな青が、メイヤーには快活な赤が実に似合っていた。2人は背やスタイルも近いこともあり、まるで姉妹のように互いが互いの鮮やかなドレスを強調しあった。
特に普段肌を晒さないサイレンスの装いは、ここにいないロドスのメンバーが見たら目を剥く事だろう。
「オリヴィアのそうゆう格好を見るのは新鮮ねぇ~~。あなた、パーティーにもあまり来ないから」
「あはは~。確かに! レアだね、レア。ドクターにも見せてあげたいね? 写真撮っちゃう?」
「やっ、やめてっ……!」
そう言うのはドロシーとマゼランだ。
2人はサイレンスとメイヤーの "脚" が強く強調されたデザインのドレスとは異なり、"胸元" が強調されたドレスを着ていた。
共に首の後ろに回した一枚の布がそのまま縦の2ラインで胸を隠すデザインとなっており、胸の谷間どころか左右外側の丸い膨らみまで惜しげもなく露わになっている。そしてその2本のラインはヘソの下で交わり、その下ではタイトなスカートが下半身を包んでいた。
ドロシーは黒を基調としたドレス、そしてマゼランは白を基調としたドレスを着ており、これもまた対照的だった。
特にマゼランは足元まで長くなっているドロシーの妖艶な印象のドレスとは違い、正面からパンティーが見えてしまいそうなほどにミニな意匠となっており、まるで水着のようだ、同性のサイレンスですら目のやり場に困ってしまう。
そしてドロシーのとりわけ大きい胸部はまさしく山のようだった。胸の上部も下部も2ラインとなったドレスが谷にかかる橋のように大きな隙間を開き、その見事で豊満な胸を演出している。黒く艶めかしく輝くドレスの生地と、白い肌と明るく美しい金色の髪とのコントラストが実に華美だ。
「…………。まぁさすがにトリマウンツのパーティーでもここまで大胆なドレスは着た事ないけれど……」
「そうねぇ~。"ドロシー・フランクス" がそんなドレスを着てトリマウンツのパーティーに現れたら、あなたのファンがクルビア中から殺到して大騒ぎになっちゃうわ」
そう語るのは最後の1人、ミュルジスだ。
5人の中で唯一自前のドレスを身に纏っている。
片肩から斜めにかけられた黒いレースのドレス地が薔薇の花びらのように層を作りその胸元を柔らかく包み込んでいる。全体的にアシンメトリーでボリュームのある意匠を施されたそのゴシック調のドレスは、幼い顔つきとは裏腹にスレンダーで長身なミュルジスに実に似合っていた。
5人の中では露出は比較的に控えめなほうだが、レースの生地の上に緑糸の刺繍でどこか "森と魔女" をイメージさせる意匠がいたるところに散りばめられており、片腕を指先まで覆うレースのグローブはどこか妖艶で謎めいた印象と、同時にどこか活発な少女めいた相反する印象を見る者に与えた。
そんな5人をここまで送り届けたタクシーの運転手は車内から呆けた顔で美女たちを背後から見つめていた。
5人は全員が大きく背中を開いたドレスを身に着けており、車内からの視界では下半身が隠れている運転手の視点からは全員が全裸であるかのような蠱惑的な光景が見えている。
思わずゴクリと生唾を飲み、車内に残された美女たちの残り香をしばらく楽しむと、運転手は目的地である酒場の名前を脳に刻み、いずれ訪れてみるかと思考を巡らせた。
――――、
――――――、
◆
クラブ「人形座」の店内はサイレンスの予想を超えて実に豪華だった。
いささか下品すぎたのでは? とサイレンスが考えていたドレスも、その豪華な内装の中にあると上品でオシャレな物に思えてくるから実に不思議だ。
店内にいる別の女性客達も5人と似たようなドレスで身を纏っており、どうやら「ストレス発散する女性に人気!」というメイヤーの評は正しかったようだ。客は女性が中心で、男性も女性と一緒でなくては入場出来ないシステムになっており、建前上男性はカップルでないと入場が出来ない。
その為女漁りが目的の下卑た男がいないと言うのはサイレンスにとってはとてもありがたい事だった。
(まぁそんな男だらけじゃストレス発散なんて出来ないしね…………。あ、いや少なくとも私はだけど……)
店内は広く、半地下の店内には劇場のような空間が広がっていた。
舞台に見立てたダンスを楽しめるエリアが少し下がった中央にあり、その舞台を座りながら眺める事の出来る座席が扇状に広がっている。恐らく「人形座」という店名もそこをモチーフにした物だろう。
扇の左右にはそれぞれバーカウンターがあり、そこでお酒を注文したり、カウンターへ座ってバーテンとの会話を楽しんだり出来るようだ。
そして壁面の少し高い位置には観覧席のごとく半円型の鳥籠状の小部屋が設けられており、サイレンスはその予約制の座席で皆とお酒を楽しんでいた。
「いいね。ここならそんなにうるさくないし」
「でしょ~? サイレンスはあんまりワチャワチャしてるの嫌いかなって思って」
お酒を飲むサイレンスとメイヤーが鳥籠の中から店内を見渡しながら会話を楽しむ。
舞台の上ではたくさんの女性が音楽に合わせダンスを楽しんでいる、お酒を片手に身体を揺らし、みながみな笑顔を浮かべ楽しんでいる。店内はその舞台を中心にガヤガヤと騒がしかったが、少し高い位置にあるおかげか、サイレンスのいる場所へは遠く響く音楽が聞こえるのみでいつもどおりの声量で会話も出来るほどだった。
「ああ~~。お酒も久しぶりねぇ~……。ん~~~~っ、とってもおいしい……」
そして隣では羽獣のフライをパクパクとつまみながらドロシーがカクテルをごくごくと飲んでいく。
ドロシーは手元の端末で次の注文をしながら、運ばれてくる料理やお酒をどんどんと消費していく。
「あはは~。ドロシー主任も楽しんでるようで良かったよ。 ちょ、ちょっとペース早いけど……。あっ、その揚げ物もオススメだよ」
マゼランがドロシーにおすすめのメニューを紹介すると、直ぐ様その料理のオーダーを行った。
――――、
――――――、
ドロシーとサイレンスはゆったりとお酒と食事を楽しみ、その他の3人はカウンターで飲んだり、舞台の上で踊ったり、鳥かごの中で休憩がてら談笑を楽しんだりと、各々がそれぞれの時を楽しんだ。
ライン生命の話、ロドスの話、そしてドクターの話に華を咲かせ、サイレンスは日頃の疲れとストレスを存分に癒やした。
(……ん~、杞憂だったかな……? やっぱ私の悪い癖だな……)
サイレンスは自らもお酒を楽しみながら、警戒していたのは杞憂だった、と楽しそうに酒を煽るドロシーを眺める。
やはり悪癖はよくないな……と、この場に誘われた時のメイヤーのマゼランの様子を思い返しながらそう考える。
鳥籠の中から奥のバーカウンターを見ると、カウンター席にはマゼランとミュルジスが居た。
2人はカウンターの中の大柄の男性バーテンダーと談笑をしながらお酒を楽しんでいるようだ。2人の見事なプロポーションは遠くから見ても際立っている。先程まで踊っていたのか、ほのかに汗ばみ大きく開いた背中が薄暗い店内で蠱惑的に輝いていた。
(……ん?)
するとそのカウンターから店員がグラスに入った酒を運んでくるのが見えた。
店員の背は小さく、少年と呼ぶような歳に見える。燃えるような赤毛が印象的な少年だった。
「あちらのお客様からのご注文です」
そして鳥籠まで来たその店員が、3つの赤い酒が入ったグラスをサイレンス達の前に並べていく。
少年店員が手を指したほうを見ると、カウンターに座ったマゼランがサイレンス達の方へ手を振っていた。それに3人も手を振り返す。
「マゼランちゃんセレクト! んっ、ありがと~~。……それはそうと、なんで店員やってんの……?」
「……。人手不足でして……」
その赤毛の少年店員にメイヤーが気安く声をかける。どうやら知り合いのようだ。
やはり近くで見ると少年がとても若い事がわかる。背も5人中では小柄なサイレンスより小さい。目はくりっと大きく、かなりの美形だ。
少年はメイヤーの問いに短く答え、チラリとサイレンスとドロシーの顔を見ると、そのまま元いたカウンターへと戻っていく。
「……知り合い?」
「あっ、うん。ちょっとねぇ~……。まぁいいかっ、飲も飲もっ。これはキクよぉ~~」
「ふ~ん……? ……わっ、これおいしい……」
「不思議な味がするわね? ……花の香りかしら? う~ん、度数が高いみたいだけど飲みやすいわぁ」
勧められるがままにサイレンスとドロシーは運ばれてきたカクテルを口にする。
「ちょっと強いからゆっくり飲んでね~! 身体に良いんだよ~これっ」
「なんかポカポカする……? 薬膳が入ってるのかな……?」
喉を通ったアルコールが胃へ落ちると、アルコールによる熱とは違った温かさがスーっとサイレンスとドロシーの身体を巡る。
首筋にもジワジワと汗が浮かびだした、だがその熱さは不快な物ではなく、軽い運動をした後のように爽やかだ。
「……うわっ!」
―― キュルルっ……
そして何口か飲むとサイレンスのお腹から空腹時のような音が鳴った。どうやら胃の活動が活発になっているようだ。
「凄い、なんかお腹空いてきたかも?」
「あははっ、サイレンスには
サイレンスが少し火照った顔でそう言う。フワフワと心地の良い酔いが周り、サイレンスが物珍しいニヤニヤとした笑いを浮かべる。
そしてサイレンス視界の先のバーカウンターでは、マゼランとミュルジスも同じグラスを手にしていた。
「―――― でもミュルジス主任とドロシー主任にはもっと相性良いみたい?」
そうメイヤーが笑顔を浮かべて言う。手にしたグラスに
「―――― えっ?」
―― パタンっ……!
そしてサイレンスがその言葉に疑問を浮かべるのと、隣からその音がしたのは同時だった。
「どっ、ドロひー……? ちょ、ちょっと」
サイレンスが横を見るとテーブルの上にドロシーが突っ伏している。手にしたグラスは既に空になっており、零してしまうことは無かったようだ。
「もう~ゆっくり飲んでって言ったのに、効きすぎちゃったかな? 大丈夫、人によっては眠くなっちゃうんだよこのお酒」
「そっ、そうな
サイレンスがドロシーの顔を覗き込むと、ドロシーはムニャムニャと口を動かしながら幸せそうな顔をしていた。
その顔を見てサイレンスは安心する、どうやら急激なアルコール摂取による急性症状などでは無いようだ。
「こ、これなら大丈夫ひょう……。びっくひした……」
だが自らも酔っているサイレンスは、自分の呂律が急激に回らなくなっていること、そして隣のドロシーがもぞもぞと下半身を不自然に揺らしている事には気付かなかった。
「あ……、あれ……? なん……」
そしてサイレンスの視界がぐにゃりと歪んだ。カーっとした熱が下腹部から上がり、フワフワとした浮遊感を覚える。身体から疲労感が溶けて抜けて行くような感覚を覚え、眠気とも違う不思議な感覚がサイレンスの意識を包んでいく。
「サイレンスも無理しないでね? 眠くなったら寝ちゃってもいいから」
「へ……? あえ……」
サイレンスはメイヤーのその優しい言葉を聞きどこか安堵感のような物を感じると、そのままフワフワとした浮遊感のまま眠りに落ちた。
カウンター席ではミュルジスも同じ様に睡魔に襲われ、隣のマゼランの肩へクタリとしなだれかかっていた。
――――、
――――――、