※この作品はR-18です。

下級生の性教育係なTS娘ちゃんが受精するまでの1日   作:ゆきかお

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TSおねショタは雨後の筍の如く増えるべきだと思ったので初投稿です。
直接的なR18展開は次回以降になります。
ご了承していただけると幸いです。


プロローグ

 

「────はい、今言ったこと、保護者の人に伝えてくださいね。

 それと、明日は防災訓練の────」

 

 青々とした夏空が橙に染まる、午後の夕暮れ時の、とある学校の5年生の学級にて。

 いよいよ下校の時刻が迫り、様々な事柄の周知を行ったHRも、終わりを迎えようとしていた。

 そんな中、この学級を受け持っている担任の女教師が、最後の連絡事項を生徒達に告げる。

 

「────じゃあ、最後に。

 今月の性教育係が担当する子と日時が決まりました。

 いつも通り予定表が職員室前の掲示板に貼ってあるから、女子のみんなは確認しておいてくださいね」

 

 その通達に、教室内がざわつく。

 男子達は一様にして、どことなく浮き足立った様子になり、女子達は素直に頷く者、嫌そうに近くの席の女子と顔を見合わせる者、頬を赤らめる者など、千差万別の反応を示す。

 

 そうやって、クラスの誰もがにわかに色めき立つ中、我関せずと言わんばかりに、腕を枕にして顔を伏せている女子が1人。

 右隣の席の女子に指で突っつかれても、起き上がる気配のない悪童だ。

 教室内の喧騒を軽く窘めようとした担任は、そのふてぶてしい女子の様子に気づき、呆れた様子でその不真面目な生徒を注意する。

 

「ミトさーん、あなたもよ?」

 

 担任に呼ばれた黒髪のショートヘアをした少女、ミトが顔を上げる。

 悠長にごしごしと瞼を擦ってなお、その整った顔つきをだらしないものにして。

 担任は嘆息した。

 

「……もうっ、ミトさん。あなたは女の子になってもう半年になるんですから。

 もう少し教育係として、真面目な姿勢をですね」

「はーい、分かってます」

「……はぁ、しっかりしてくださいね。

 ……それじゃあ皆さん、今月も立派なお母さん、お父さんになれるよう、頑張りましょう。

 起立、礼、さようならぁ」

 

 担任からの帰りの挨拶が送られ、児童達は晴れて自由の身となった。

 女子達は固まって世間話をしながら遅々として職員室へと向かっていき、男子達は個々に別れて足早に玄関へと歩いていく。

 

 そんなクラスメイト達の流れに乗ることなく、取り残された生徒が2人。

 教室に残ったのはミトと、彼女の右隣の席の友人、長い髪を後ろで纏めた少女、ハミだった。

 

「ミトちゃん、確認しにいこーよ……って、もーっ」

 

 担任からの注意を受けたというのに、懲りずにまた机に接吻をしようとしているミトの額を、隣の席の女の子、ハミが受け止めた。

 手で止められてなお落ちようとする首と、必至に止めようとする手の、力の拮抗が発生するが、ミトが直ぐに力負けし、頭を持ち上げられることとなる。

 不満気に顔をしかめ、睨み付けてくるミトに、ハミはにこやかに笑いかけた。

 

「ほら行こ?ミトちゃん!」

「ちゃんって呼ぶな。……オレほっといて先行けよ。

 というか、今行っても人多過ぎて見れないって……」

「行ってる間に人減るよ!早く見ないと私の係の予定が消えるかもしれないからー!」

「いや消えないから……って引っ張んなっ!」

 

 度重なる催促にミトは机にしがみつき断固拒否の構えを取るが、力の格付けが決まっている以上、いとも容易くハミに引き剝がされ、連れ出されていくこととなった。

 

 ランドセルを担ぎ教室を抜けて、目の前の廊下を左に突っ切り、後はその角を右に曲がれば、そこはもう職員室前だ。

 

 ────えー、アイツとするとか、最悪すぎてヤダ。

 ────やったっ、体育サボれる日じゃん!ラッキー!

 ────……今回で絶対惚れさせてやる。

 

 そこでは、ミトの想像通りがやがやとした黄色い声が群れをなしていた。

 ミトは到着するや否や、疲弊した。

 

 この学校では月の始まりに、職員室の前の掲示板に性教育係が今月担当する男子生徒の名前と、その仕事を全うする日取りが記された表が貼り出されるのが定例だ。

 

 表は学年毎に別れており、3年生から6年生までの計4枚分存在する。

 この表が貼りだされるとなると、ここ一帯はその学年の女子生徒で大きく賑わい、混雑する。

 大体の女子は表の前で居座り、教育係の話題1本で井戸端会議をするべく、たむろするからである。

 

 ちなみに、その混雑の中に男子生徒の影はない。

 後々に担当の教育係が誰かを個別で通知されるから、というのもあるが、1度この即席の女の園に入ろうものなら、園に住まうマセた同級生達からの、心無い暴言とからかいの雨が止むことがないからだ。

 1、2年生ぐらいのまだ無垢な年頃の男の子は、特に気にすることなく闖入していることがままあるが、希少な例である。

 

「……そら見たことかハミ、めっちゃいるじゃん。後で良くない?」

「うおおー!行くぞー!」

「人の話聞いてた?……はぁ、行くか」

 

 そんな混雑の渦中に飛び込んでいった2人は、群衆を掻き分けて、5年生の表の元にたどり着いた。

 2人もまた他の女子の例にもれず、予定日を確認するべく、表を目で追っていく。

 興奮状態にあるハミはすぐに自分の名前を見つけ、飛び跳ねることで歓喜を体で表現する。

 

「おっ、私は3年生たちとだっ!うれしー!」

「復帰したてなんだから、体に気を付けろよハミ。

 …………そんで、オレは……げっ」

「んー?どしたの」

 

 表に書かれていた内容にしかめっ面となるミト。

 その表情が向けられる先を、ハミも興味津々で覗く。

 

 ミトが見つけた自分の名前の横の欄。性教育の対象となる男子生徒の名前が記されるそこには、担当して久しい、下級生の男子たちの馴染みある名前が、つらつらと記されていた。

 そして欄の一番下で補足事項として、こめじるしに続いて表記された、5から6時間目は合同実習、の1文。

 この淡々とした文字列が、ミトの表情筋を強張らせていた。

 

「……オレも、ついに実習かぁ」

「ひゃー、ミトくんもついにちんちん入れられちゃうんだねー!お互い初めてだろうけど、お姉さんとして、手解きしてあげてね?」

「……ガキの世話するの、好きじゃないんだけどな」

「あ、出たっ、学校名物嘘つきミトくん。

 優しいって評判、弟からも聞いてるよー?」

「うるさい。てかなんだその名物…………」

 

 そっぽを向いたミトをつんつんと突っつきながら、ハミは未だ高まる期待と興奮を、声に乗せていく。

 

「年下の子って、いいよねえ、ミトくん。

 からかってくるウザい同級生とか、ムダに力強い学年が上の男の子より可愛いし、楽だしさー。

 あー、早く来ないかな!私の元へ!」

「久しぶりだからって夢見てたら怪我するぞ。

 それにな、あいつらは全然────」

 

 夢見る少女ハミに、滔々と現実を語ろうとするミト。

 会話に夢中になって、警戒のない彼女の腰に、忍び寄る幼い影1つ。

 

「えへへー!今月もよろしくね!

 ────お兄、ちゃんっ!」

 

 自身の腰ほどから声がしたとミトが察知した瞬間、突然己が身に着けているスカートがふわりと掬い上げられて、その内に潜められていた水色のショーツが露になる。

 その場に居合わせた群衆たちは、図らずともミトの今日の下着事情を知ることとなった。

 

 呆気にとられていたミトは数瞬経った後に我に返り、呆れと怒り、そして恥じらいを込めた叱咤が下手人へと飛んだ。

 

「あっおい!待てコラ!」

「あはははっ!じゃねー!」

 

 ミトの見知ったいたずら小僧は俊敏なる足の動きで、捕らえようとすかさず伸ばしたミトの手をするりと抜けて、2年生の下駄箱の方へと脱兎の如く走り去っていった。

 

「はあ、あいつ。次会ったら取っ捕まえ、て…………」

 

 ミトに突き刺さる、周囲からの好奇の視線。

 顔を真っ赤にして、元の膝上に戻ったスカートの裾を固く握りしめたミトは、いたたまれない視線の群れから逃げるように、足早に職員室前を去った。

 ハミもそれに駆け足で着いていく。

 

「忘れてたろ。ああいう小生意気な奴の世話もしなきゃいけないんだぞ」

「うーん、……私の母性で包み込めば!」

「無理だろ」

 

 無心で下駄箱に向かう道中。

 隣で歩くどこまでも楽観的なハミに、ミトはぼやいて呆れて、ほんの少し感心した。

 

 

 *

 

 

 学校の校門を抜け、住宅街の歩道を共に連れ立って、家までの帰路につくミトとハミ。

 人口増加に伴い、10年程前に整備されたニュータウンの一角に、彼女らの家は存在する。

 緑と共栄した住宅街の、何処からともなく聞こえてくるヒグラシの鳴き声が、彼女達の退屈な帰路にささやかな華を持たしていた。

 

 そんなヒグラシたちを見つけて手柄にしようと、躍起になって前を進んでいたハミは不意に振り返る。

 先ほどから無口で、ぼんやりとした様子のミトを気にかけたからだ。

 2人は自ずと立ち止まる。

 

「……ねえどうしたのミトくん?さっきから黙っちゃってさ。

 そんなにスカートめくられたのショックだった?

 元気だしてよー!私のスカートめくっていいから、ね……?」

「お前のパンツ見たらオレがパンツ見られたことチャラになんの……?

 いやとにかくそれは別に気にしてないから」

 

 スカートの両端の裾を持ち上げて、蠱惑気に微笑んだハミを一蹴するミト。

 ちえー、とハミは大人しく手を横に戻した。

 

「んじゃあ、どうしたの?なんか心配ごと?」

「まあ、そうかも。

 ……今日帰る前に、先生に叱られたときのこと、思い出してさ。

 オレがこうなってから、もう半年も経つんだな、って」

 

 ミトは己の手を夕暮れに向かって翳す。

 彼女の視界に映るのは、繊細できめ細やかで、日が透けて見えるような白く透明な肌を持った、末端に行くにつれて、細くたおやかなラインを描く、少女の手。

 かつてそこにあったのは、生傷の絶えないごつごつとした年頃らしい少年の手だった。

 

 しかし今はもう、生まれてきてからずっとあった筈のその手の形と、感覚を思い出すのは、難しい。

 

「女体化症になったとき、ちょうどよく私の家に泊まりに来てて良かったね、ほんと」

「まあ、そうだな。無駄に焦らずにすんだ」

「忘れられないなー。女の子になりたてのミトくんが急に抱き付いてきて、私の胸で泣いてたの」

「そんなもんは忘れろ、いいか今すぐ忘れろよ。

 おい聞いてんのかコラ」

 

 ミトは圧をかけるが、感慨深そうに頷くハミにそんな物はどこ吹く風だ。

 仕方なく、ミトは矛を納めることにした。

 

「……で、さ。初めは絶対慣れないだろって思ってたけど、1か月経てば案外すんなり慣れて。

 2カ月経つ頃には教育係もやるようになって、これもどんどん慣れていって」

「うんうん」

「4か月辺りには身長が伸び始めるようになって、なんか胸もでかくなって。

 ちょっと前には生理も来て」

「うんうんっ!そうだ……ぇ?」

 

 ミトの今までを全て把握しているハミは、彼女の語る追憶に同調しようとして、不意に何でもないように告げられた、未知の回顧に愕然とした。

 

「き、来てたの……!?聞いてないんだけど!」

「あれ?言ってなかっ……たわ。そういえば」

 

 先日の折に、休日ということで家でくつろいでいたミトは、ふと下腹部から股に向かって何か垂れていくような感覚を覚えた。

 その謎の感覚の正体を探るべく、恐る恐る身につけたショーツを下ろしたところ、クロッチに茶色く汚れた血が付着しており、それを見るなり大慌てで母親に報告した。

 そしてミトはそれが初潮であることを母親から教えられ、自分が子供を作れるようになったことを知った。

 

「ええー!どうして!教えてほしかったんだけど!

 友達の生理来たの祝わない女の子なんて、いないんだよ!?」

「そうなの……?」

 

 親しい仲であることを自負している分、友人に起きた重要な変化を知らなかったという、精神的なダメージがハミを揺るがす。

 ミトは申し訳なさそうに顔を伏せた。

 

「……今思うとちょっと、アレだった。ごめん。

 ほら、お前に言うと大げさに騒がれるから、って思って……」

「ひっどい!確かにアホみたいに騒ぐと思うけど!

 ……明日っ!赤飯もってミトくん家に駆け込むからね!絶対だからね!赤飯定食にしてやるからね!

 腹空っぽにして待て!」

「はいっ」

 

 息を荒げるハミをミトは、明日の自身の夕食を犠牲にすることで、何とか宥めることに成功した。

 彼女は気を取り直して、有耶無耶になりそうになった自分の内心明かしを、続けていく。

 

「まあそれで、いよいよ今回の実習でさ、初めてセックスする訳だろ。コンドーム使ってさ」

「するねー!どっきどきの初体験っ」

「そうやってさ、周りが将来子どもを作る為に練習できるようにしてくれて。

 この体も準備してるっぽいのに。

 ……当のオレだけ置いてきぼりっていうか、全然自覚なくって、やる気出なくて」

「……ん」

 

 己の内で浮かんでいた、言葉に出来ない不鮮明な懸念、心配、憂慮。

 ミトはハミに内心をさらけ出していくことで、その不明瞭だった思いを今、声にした。

 

「……近い内にお母さんになるっていうのに、こんなんでいいのかなって」

 

 女になった以上、いつかは自分も誰かと子どもを作って、産む。

 それは遠い遠い未来の話ではなく、少なくとも4年後には確実に起きることであると、ミトは理解している。

 しかし、自分がまだ男であるという無自覚な認識に加え、年少期の体感時間の長さが相俟り、その未来への筋書きはあまりに漠然としていて、夢物語のようだった。

 

「……まあ、分かってるなら、さっさとやる気出せよって話なんだけど」

「……うーん」

「ハミは、どう思う?……オレのこと」

 

 女性として、母親としての先達にミトは問う。

 実習でコンドームを使わない選択をし、同学年の誰よりもいち早く子を作り、1児の母となった彼女に、実のある体験と教訓から来る叱咤をもらうことで、ミトは己に強く意識させたかった。

 または、友達として、毒にも薬にもならない慰めが貰えることを、期待して。

 

「ミトくん、正直に言うね」

「……ああ」

「────別に、いいんじゃないかな!」

「…………ええー」

 

 寛容を通りすぎて投げやりですらある想定の斜め上の返答。

 ミトは困惑したが、ハミの真剣な表情を見て、彼女の次の句を待つ。

 

「だってミトくん熱心じゃないけど教育係の仕事、普通にこなしてる訳なんだからさー、誰も怒んないよ。

 というか、ミトくんみたいな女の子、結構いるから安心して?

 私も赤ちゃん作る前までそうだったし」

「そんなもん、なのか……?

 …………あ、そういや、ハミはどうして作ろうって思ったんだ?」

 

 一年ほど前の春に、ハミが実習で妊娠したということだけを聞かされた。

 当然どうして妊娠するに至ったかの経緯がミトは気になったが、男がズケズケと聞くのもどうかと考え、親しき仲にも礼儀ありということで、根掘り葉掘り尋ねることはなく、受け入れていた。

 だがそれが今になって、純粋な疑問として甦っていた。

 

「えーとね、うーん」

 

 ハミは困ったように、言葉をつっかえさせて。

 暫く口ごもってから、あっけらかんと答えた。

 

「…………その場の、ノリ?」

「そんなんで作ったのかよ!」

 

 ハミはミトの詰問に、もじもじと体を動かして、少し照れを出しながら答える。

 

「だってこう、えっちしてた男の子から必死に求められちゃってさー、嬉しくなって。

 赤ちゃん生んであげたいなーって思って、ゴム外して、中にいっぱい出してもらったの。

 そしたら一発!」

「お、おう……」

 

 身近な人の赤裸々な艶話には、噎せ返るような生々しさがいやに漂う。

 ハミが垣間見せた言いようのない色香に当てられ、ミトは口をつぐんだ。

 ちょっと聞きたくなかったな、という弱音を飲み込んで。

 

「それでね、赤ちゃんがお腹にいるってわかってからなんだ。

 一気に実感とか、責任感とかがやって来たの。

 お母さんとして頑張らなきゃ、しっかり生んであげなきゃ、ってそのときすっごく思った」

「……なる、ほど」

「だから、さ」

 

 ハミは送る。

 悩める子羊に、生涯の友人に、慈しみに満ちた笑みを。

 

「そういうのって、後々から来るもんだからさ。

 やってみないと、実感できないことに不安がってても、しょうがないと思うし。

 ……いつも通りの、ミトくんでいいよ」

 

 向けられているその笑顔は、母親を経験している少女にしか出来ないものだ、とミトは敬服する。

 大らかな母性を漂わせる、その笑みは。

 

「…………」

 

 釈然としないような、けれど、どこか腑に落ちたような。

 曖昧な感情をミトは抱いたが、上向きの楽観主義と、自分への愛念を込めたハミの微笑に、心を委ねることにしてみた。

 それは間違いなく、確かな友情が故だった。

 

「まだちょっと、スッキリしないけど。

 ……うん、ありがとな、ハミ」

「どういたしまして!

 ……ミトくんも案外、えっちしてたら急に赤ちゃん作りたいって思うかもね。私みたいに!」

「おお、そうなんのかなオレも…………」

 

 無垢な命で膨らんだ腹を大事そうに抱え、安らぐ自身の絵が、ミトの脳裏で描かれるが、直ぐに霧散する。

 やはり、己の内の将来は霧の彼方である。

 

「妊娠したそのときは、ミトくんもこの痕つけて、私とママトークしよっ?ね!」

 

 ハミはシャツの裾を持ち上げ、スカートを少し下にずらすことで、自分の腹を外気に曝け出させる。

 胃下垂によりぽっこりと膨らんだ腹の下部、へそより下の辺りには、切開と縫合の手術をされたことが一目で分かる、帝王切開の傷痕が克明に刻まれていた。

 

 ミトはその幾度となく見せられている母親の証に顔をひきつらせ、足を2歩後ろへと引き下がらせた。

 

「……何回もそんなもん見せるな!」

「恥ずかしがり屋さん!ほら、もっと近くで見て!」

「いやだ!っておい、こっち来るんじゃねえよ!」

 

 ハミの横を抜け、駆け出していくミト。

 にこやかに笑いながら、ミトを追いかけていくハミ。

 風が夕日に光って、蝉時雨が彼方へと消えゆく、少女たちのモラトリアム。

 

 それは家に着くまでの、ほんの僅かな間であったが。

 いつか思い出す、かつて見た憧憬として、2人の記憶の奥底に沈み込んだ。

 

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