下級生の性教育係なTS娘ちゃんが受精するまでの1日 作:ゆきかお
TS娘が生理管理アプリを使うシーンを絶対入れたかった結果話が膨らんでおねショタ展開がまだです。申し訳ございません。
……かの国の子供たちは物心ついた頃より、子を育むことは至上の喜びであり、親になることは立派であり、絶対であると、教育機関を通じて教え込まれる。
この教育理念自体は、他の国の多くも推進している普遍的な物であるが、かの国のそれは過度であり、そして強制的である。
その最たる例が、かの国の学校に存在する性教育係の制度と言えるだろう。
性教育係というのは、初等教育を受ける女子生徒を対象として、任命される係である。
男子生徒の性の発達を促進させると共に、彼女ら自身も体感を持って性への理解と経験を深めることが性教育係の役割であり、仕事だ。
性教育係には、かの国の学校に属する3から6年生の女子生徒は必ず参加しなければならない。
国が定めているカリキュラムの一環であるからだ。
そしてそれは、女体化症*1を患っている男子生徒も例外ではない。
しかし、元男という込み入った背景が存在することにより、同学年や上の学年の生徒と性交を行う精神的外傷とストレスを憂慮されており。
女体化した男子生徒が性教育係をするときは、幼く従順な下級生の世話が主要な仕事となっている。
性教育係の仕事は2つの段階が存在し、第一に男子の精通を促すことである。
幼く発達していない男性器に、手や口を用いて継続的に刺激を与えることによって、卵胞刺激ホルモン及びテストステロンの分泌を促し、精通へと段階を進めさせるのが主となっている。
そして第二に、実践を持って男子に性交の仕組みを理解させることだ。
精通を終えた男子が、実習という名目で性教育係の女子と幾度と性交することによって、互いに正しい知識と経験を深め、将来の子作りに備える。
この過程を終えて、少年はできるだけ多くに種を撒けるように、少女は種を安定して宿せるようにするのだ。
あくまでこれらは、幼い男女の心身がある程度成熟した第二次性徴以降、具体的には中学生の辺りより、過不足なく子作りに励めるようにするべくしての、下準備に過ぎない。
そのため、ただでさえリスクが伴う出産の危険度を高める時分に位置する、心身共に未熟な性教育係が、その仕事によって妊娠することは望ましいことではない。
よって基本的にはコンドームを用いての性交が推奨されているが、厳格な法によって定められている訳ではないので、性教育係たちの裁量次第である。
人口が増えるというのは、かの国においても、世界全体においても、喜ばしいことに他ならないからだ。
よって、勢いや合意によって性教育係が妊娠するケースは往々にしてよくあることだ。
その場合は、かの国の優れた医療技術と妊娠期から出産に至るまでに手厚いサポートによって、生まれてくる赤子とその母親に祝福が与えられる。
そして、かの国の法で定められた産後の手続きに則り、我が子を国の養護施設に預け報奨金を得るか、支援金を受け家庭で育てるかのどちらかを選択するようになっている。
……この一見無茶で非道徳的な教育は、世界共通の問題であり、そしてかの国も直面していた、年々低下していく出生率、そして反対に上昇していく少子高齢化による国家の先細りに対する、適切な施策となった。
結果、他の国と同じく緩やかな死に向かっていたかの国は息を吹き返し、世界有数の富国となった。
現在においても、その成長は著しくあり、止まるところを知らない。
故に、今日までこの性教育係の制度はかの国で継続され、維持されているのである。
*
ジージー、と。
どこかから、クマゼミたちの鳴き声が、窓を伝って部屋の中で残響していて。
そしてそれは、自分の耳奥を掠めていると知覚したとき。
ミトは自分が目を覚ましていることに気づいた。
「…………んん」
クーラーのタイマーは、今日も変わらず勤勉だったようで、部屋に満ちていた冷気は夜の暑気を帯びたことで、ぬるま湯のような空気になって、部屋に滞留しているのをミトは肌で覚える。
それと共に、浅い眠りから覚めたとき特有の、首もとに残る火照りも。
自分に被さった重たいシーツの中で蠢き、ミトは枕元の目覚まし時計を両の手で掴んで、眼前へと寄せる。
現在の時刻を確認するためだが、覚醒しきらない脳、寝ぼけ眼でかすむ視界のせいで、ぼんやりと時計の液晶を通して、彼方を見つめていた。
2分ほどそうしていると、ようやく脳が処理を終えたことで、眼前の薄暗い液晶には、アラームとして設定された時刻に向かって、じりじりと秒数のカウントを進めていることが分かった。
そしてその時刻は、後5分ほどでやってくることも。
となれば、早くも学校へと向かう準備を整えなければならない。
もう一眠りしたかったと、ミトは溜息とともに落胆した。
「……計るか」
喧しく鳴らないようにアラームを止めると、ハミは枕元に常備するようになった婦人体温計を手に取り、先端の感温部を、舌の裏側の付け根に当て、咥えた。
それは母親と担任に教えつけられた朝の習慣だ。
安定しない時期の入り口にいる自分の体調の変化を、詳しく知るための。
まだぼんやりとした朝方の、夏の陽光を受けて膨らんでいるカーテンを横目で眺めて、息を止めたまましばらく待つと、簡素な電子音が鳴り響く。
ミトは生ぬるい口内から引き抜いた体温計を確認する。
そこには昨日の朝1番に計ったときより、ほんの少し高い体温が表示されていた。
「あー、だる……」
ベッドの脇に転がっていた、学校から支給されているタブレット端末を拾い上げたミト。
その端末の内にインストールされた生理管理アプリを開き、今日の体温を基礎体温表に入力し終えると、アプリが予測する自身の生理周期が記されたカレンダーへ、指を進める。
何度も見返した7月9日、性教育係の日。
ついにやってきた今日この日には、可愛らしい卵のマークが付いている。
そのマークが指し示すところは、排卵日。
今日はミトの初めての、排卵日だ。
「うーん……」
ここ数日間続いていた、平均基礎体温よりがくんと下がっていた体温が、今日で僅かに上向いていた。
一般的に、低温相から高温相に移るときに女性は排卵すると言われている。
そしてそれは今のミトに当てはまっていて、信憑性が高い。
しかし、初潮以降からのしばらくの生理周期は得てして不安定なもので。
生理が1ヵ月遅れたり、月に2回来たりなどは珍しくないことであり、そもそも排卵を伴わない生理が多いのをミトは知っていた。
それにそもそも、今のところ感じられる排卵日の身体への影響は日常の生理反応と何ら変わらないもので。
よって、アプリが示すそれは、頭の片隅には置かれるが、彼女の危機感や実感を煽り、焚き付けることにはならなかった。
(…………どうなんだろ。
あ、良い匂いしてきた…………)
ミトは己の胎の中で巡り廻るお月様、引いては満ちる生命の潮流を、一旦忘れることにした。
気怠い体を起こしてベッドから転げ降りると、自室を出て、こちらまで漂ってきた甘く豊かな匂いの元であるキッチンに進む。
白味を帯びた朝日に照らされるコンロの前。
そこで調理をしている、エプロンを結んだ妙齢の女性、自身の母親の背中へと、ミトは声をかけた。
「おはよ、お母さん」
「────おはよう、ミト。早いわね。
もう出来るからご飯、茶碗によそってて?」
「うん」
ミトの母は火から下ろした卵焼き器より、出来立ての卵焼きをまな板に転がす。
そして持ち替えた包丁を翻し、まな板の上のそれを切り分けていって、平皿に整えた。
ミトが最近買い換えたばかりの花柄の小さめの茶碗を引き出して、炊飯器から多めにご飯をよそっている内に、手前の食卓は完成していく。
「はい、出来上がり」
味噌の芳しい匂いが乗った湯気が立つ味噌汁。
黄金色をした甘くふくよかな味付けの卵焼き。
切り込まれた足が綺麗に開いたタコさんウィンナー。
小鉢に数枚の海苔。ほうれん草の胡麻和え。
そしてそこに茶碗一杯の白米を付ければ、この国の古典的で、理想的な朝食となる。
眠っていた胃が空腹を訴えだして、ミトは矢継ぎ早に箸を持って、手を合わせた。
「いただきます」
「うん、しっかり噛んで食べてよ」
「ん」
女体化に伴う胃袋の縮小で食は前より細くなっているが、食欲は男の頃から衰えていない。
テレビやタブレットといった、目先の娯楽に囚われることなく、目前の母お手製の料理達を無心で味わっていく。
ミトが持っていく昼食の弁当の拵えを済ませていく中、後ろの正面に座った娘が朝食を黙々と食べ進めていく姿を横目で見て、ミトの母は満足げに微笑んで、1人ごちる。
「……そういうとこ、男の子のままで良かったわ」
「んぐっ、……何が?」
ぼそりと呟いたそれが聞かれているとは思わなくて、ミトの母は目を丸くして、思わずはにかんだ。
喜色に溢れた声で、彼女は娘に答える。
「ふふっ。いっぱい食べてくれて、うれしいってこと。
大好きよ、ミト」
米とおかずで膨らませていた頬を引っ込ませて。
ミトは母親の唐突で直接的な愛情表現に、照れくさそうに顔を伏せた。
「なに、急に……」
「ミト、ちょっと前に生理来たじゃない」
「え、うん……それが?」
「生理来てから、体が丸くなっちゃうのがイヤでね。
無理にダイエットしようとして、体調崩す子が結構いたから。まあお母さんのことなんだけど」
「あ、そうなの……」
保健の授業で嫌というほど教え込まれなかったのか、とミトは内心で疑問を抱きつつも、そういう反抗をしたい時期、それと体型を維持したいという普遍的な欲求に理解を示す。
女性の道を邁進してまだ半年のミトにも、そういった欲求を抱くことが、時折あるからだ。
とはいえ、教師と学校に逆らう程の気概はないが。
「それ引き摺ったせいで、私の初産のときは死ぬほど苦労したから。
ミトには、無事に赤ちゃんが産める体になって欲しいの。
だから、そうやってご飯しっかり食べてくれるのが凄く嬉しくて」
「……なるほど」
「あっ、でもミト。もし痩せたいって思うことがあったら。
そのときはそういう料理作るようにしたり、量減らすから。
お母さんに相談してよ」
肉親の温かな気遣いに素直に感謝を示すよりも、気恥ずかしさが勝るお年頃なミトは、それに対して曖昧な返事をした。
「…………多分」
「……変なとこで素直じゃないわね、ほんと」
誰に似たんだか、と口元の笑みを深めるミトの母。
それ以降会話はなくなって、親子の情で満ちた心地の良い沈黙がキッチンに訪れる。
ミトは、止まっていた箸を食卓へ進めなおそうとして、また止めた。
何気ない疑問を、尋ねるべくして。
「ねえ、お母さん」
「なーに?」
「……オレがさ。赤ちゃん作って産んだら、やっぱり嬉しい?」
娘のその投げ掛けに、淀みなかった母の動きが緩慢になり、やがて止まる。
手にしていた菜箸を置いたと思えば、ミトの母は振り返り、声だけでは分からない娘の様子を目で伺う。
互いの目線が合って、何を言うでもない時間が流れて、ミトの母が、答える。
「────嬉しいよ。愛しいミトの子だもん。
きっと可愛くて、かっこよくて、優しい子が生まれて、みんなを幸せにしてくれるわ」
「…………そっか」
「ほらミト、ご飯食べる。冷めちゃうから」
「……分かった」
ミトは母の言う通り、茶碗を持って完食へと臨む。
箸を止める前から後少しだったこともあり、彼女は瞬く間に食卓を並んでいた皿を等しく空にした。
ミトはグラスに注いだ麦茶を一息に飲み干して。
再び手を合わせる。
「ごちそうさま、美味しかった」
「それはよかった。弁当出来たから、ランドセルに絶対入れていってね。
それと、シャワー浴びるでしょ?下着とバスタオル、置いてあるから」
「了解、ありがと」
ミトが向かうは、キッチンを出て左のバスルームだ。
脱衣所で汗で湿ったパジャマを脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿となると、バスルームのシャワーヘッドを右手で握ると、温水の栓を開いた。
「……あー、すっきりする」
ゆっくりと温まっていく流水が頭を濡らし、顔を拭い。
上半身の汗を洗い落として、ぴちぴちとした肌が温水のつぶてを浴びては、弾いていく。
体がはっきりと目覚めていく感覚を覚えて、ミトは無意識にうつ向いていた頭を上げ、備え付けられた浴室の鏡に映っているものを見た。
そこにいるのは、シャワーで濡れて、しっとりと艶めいていく己の体。
細すぎず太すぎない、健康的な四肢。
皮下脂肪の増大でふっくらとした腹部、くびれが現れ始めている胴体。
ミトの手のひらいっぱいに収まって、持ち上げることができる大きな乳房。
腰からなだらかな線を描く、女性的な丸みを帯びつつある臀部。
小陰唇がぴったりと閉じた、1本の筋がその存在を主張する幼げな女性器。
髪と同じ色をした、薄っすらと生えつつある陰毛。
発達著しく成熟しつつあるが、まだ幼くあるからこそ両立する、児童らしいあどけなさと可憐さの中に、雌の色香をほんのりと漂わせる、立春の最中の青い少女。
大人と子供の曖昧な境界で揺れる、ついぞ男に戻ることのないその姿が、今のミトだった。
鏡の中の自分が上半身をあらかた洗い終わったら、次は下半身へとシャワーのヘッドを持っていくミト。
太腿、膝、膝の裏、足首、足、足の裏。
そして股へ。
後ろもろとも手っ取り早く洗えるように、ミトははしたなく両足を横に開いて、尻を着けない形で座り込むと、弱くしたシャワーを股に当てた。
弱くしてもなお怒濤の水量に負けて、恥丘に撫でつけられている産毛のような淡い陰毛を、ミトは手持ち無沙汰な方の手でくすぐる。
(剃った方が、良かったかな。
……ま、別にいいか。めんどくさいし)
今までは見せても胸ぐらいであったが、今回の実習にて初めて、彼らの前で女の子の大事な部分を、誰にも見せたことのない内側までさらけ出すこととなる。
なので、最初は何となく整えた方がいいのかと考えていたが、性交に支障を来さなければ、別にどうあっても構わないと知ったので、ミトはそのままにしていた。
それに、下手に剃毛することへの怖じ気もあって。
(こんなもんかな)
水を浴びてない部位がなくなれば、朝風呂は十分だ。
ミトはシャワーの栓を締めて、浴室を出る。
脱衣所に置かれていた厚手のバスタオルで充分に水気を拭いとり、洗面所の前にそのままの姿で居座って、ドライヤーで髪を懇切丁寧に乾かす。それが入浴後のお決まりだ。
髪の手入れは重要、とミトの知る女性から口酸っぱく告げられており、男の頃は意識もしなかったことに煩雑だと心底思いつつも、ミトは彼女らの熱に負けていた。
熱風を受けて乾かされていく内に、何をせずとも後ろ髪の毛先が外にハネていく。
女体化したときからこうであり、意図せずしていい具合の髪型が作られていくのは、髪型に関して無頓着なミトにとってありがたかった。
すっかり整った自分の髪型を鏡で一瞥すると、手早くドライヤーを片付けて軽く髪を鋤いて、歯を磨く。
「ミトー!さっさと服着なさいよー!」
「分かってるよーっ!」
自分のズボラな癖を把握している母からの非難に応え、歯を丁寧かつ手早く磨くと、傍に置いてあった、気に入っている水色のジュニアブラ、ショーツをミトは身に着けた。
着けなかった部分に着けたり、いやにすーすーとしたりと、最初は男の頃と比べに比べて、違和感しかなかったが、今はもうすっかりと慣れた物だ。
かつての男の頃の感覚が、磨耗する程に。
そうして、その下着の上から最後に着用するは地味な白のインナーと、下が紺のブルマとなっている、学校指定の体操服の上下。
性教育係の仕事は互いの体液で汚れることがままあるので、係の日は体操服での登校が義務付けられている。
発育途上の臀部に引っ掛かりながら腰まで持ち上げて、ショーツがはみ出ないように、ブルマの裾をピンと張った。
一般的な女子小学生の格好となったミトは、弁当を回収して、その装いのまま自室に一旦戻る。
ベッドの隅に立て掛けられていた、性教育係の教材と最低限の筆記用具だけの、いつもより軽いランドセルに母お手製の弁当を入れて、担ぎ。
肩に紐が付いた水筒と、実習が終わり次第着替えて下校する為の制服を詰めたナップサックを手に提げれば。
いよいよ、登校の時間だ。
「んじゃ、行ってくる」
「あっ、ミト。こっちおいで?」
「──え?うん、っ……あ……」
靴を履こうとしたミトの頭に、見送りに来ていた母の手が置かれる。
そして整った髪が乱れないように静かに柔らかく、手の平を短い間で往復させて、撫てていく。
言葉にしない、ならないミトの心の内の憂いをなだめるように、落ち着かせるように。
抵抗する気は起きず、ミトはされるがままで、ただ口から気勢の削がれた文句が漏れるだけだった。
「……もう、また急にさ。そういう年頃じゃないって」
「大事な日なんだから、これぐらいさせてよ、ね。
……ん。気をつけて、いってらっしゃい」
ポンポンと手の平でミトの頭を軽く撫で付けたのを最後に、母の手が、温もりが離れていった。
ミトは、赤白帽を深めに被る。
とんとん、と玄関で爪先を地面に振り下ろし。
靴をしっかりと履いたミトは、振り返って言った。
「……行ってきます、お母さん」
母に見送られて、彼女は家を出る。
今日は長い一日になる。そう、予感しながら。
女体化症というのは、遺伝子の突然変異によって発症する、ヒト特有の奇病である。
その名の通り、普遍的なヒトのオスが、普遍的なヒトのメスに変化する病だ。
現代の発達した医療科学を持ってしても治療法は存在せず、発症したら最後、女として生きることを余儀なくされる。
なお、容姿は勿論のこと身体機能も女性のそれとなっており、初潮が発生し次第、他の男性と交わることにより、妊娠、出産することが可能だ。
その特異で不可逆的な変化をもたらす症状が故に、他の国では差別されたり、迫害されることがままあるが、女性は多ければ多いほど良いとされる、かの国の社会に迎合しているがため、女体化症罹患者たちは無下にされることなく歓迎され、相応の支援を受けることが出来る。
古代中国の編纂書の如く、どれだけ大げさに数を盛っても男を淘汰するほどではない発症率の低さも幸いし、かの国では女体化した男性が、俗世間に生きる一人間として生活することは普通であり、彼らに認められた当然の権利なのである。
誤字報告、感想をいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。