※この作品はR-18です。

下級生の性教育係なTS娘ちゃんが受精するまでの1日   作:ゆきかお

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TS娘が年下の男の子にお姉さんするのいいよねってことで初投稿です。

追記:日刊ランキングに載りました。
皆様のご期待に応えられるようこれからも精進する所存です。
本当にありがとうございます。


始業

 

 玄関の外にあったのは澄み切った青の空。

 そして西から昇る日の光を浴びて、動き出そうとする街の遠景だ。

 夏特有の湿った空気を吸い込んで、大きく吐いて。

 ミトは歩き出した。

 

「……あっ、もういる」

 

 家を出てすぐの坂を下ったところにある、十字路の隅に見慣れた姿を発見して、ミトは地を踏みしめたばかりの足を早める。

 坂上から駆け下りてくる足音に気づいたのか、ミトの眼下の少女が手を振った。

 

「────おっはよー!ミトくん!」

「おはよっ、ハミ。待たせた?」

「さっき来たとこ!行こー!」

 

 そこにいたのは、制服を纏ったハミだ。

 四ツ路の看板の下は、共に登校するときの待ち合わせ場所となっていた。

 合流しあった2人は、まだどことなく眠気を引きずっているような、緩慢で疎らな往来を悠々と抜けて、ゆったりとした歩調で学校を目指していく。

 

「しっかしミトくん、いよいよだねー!」

「まあ、そうだな。ほんといよいよだ」

「弟には特に優しくするように言い付けたから!

 遠慮なく、ぐっちょんぐっちょんにしてあげて!」

「何その擬音……」

「あ、そうそう!ミトくんに話したいことがあってね。

 今日の朝、私の可愛い可愛い赤ちゃんが────」

 

 毒にも薬にもならない、愉快で幸せに満ちた世間話に花を咲かせば、退屈で憂鬱な登校時間もあっという間に過ぎゆくもので。

 ふと気づけば住宅街を既に抜けていて、学校はもう目の前であった。

 各々の歩調で学校へと乗り込んでいく生徒達の群れに、体操服を身に付けた女子生徒の姿が、ちらほらと見える。

 彼女らもまた、ミトと同じ役割を今日担う者たちだ。

 

「────あ、もう着いちゃった。

 まだ話したかったのにー」

「あんだけ話したのに……?

 まあ、帰りに話せばいいじゃん」

「帰りはミトくんのドキドキの初めてを聞きたいのー!

 ……ま、いっか!放課後に会おうミトくん!校門で待ってるからー!」

「おう。放課後でな」

 

 校門をくぐって下駄箱で靴を履き替えたなら、己の属する学級に向かうのが普段通りのルーティーンだが、性教育係の日は違う。

 玄関でハミと別れたミトは、彼女が進む方向の真反対へと歩み、職員室へと赴いた。

 

「あー、大人気……」

 

 職員室は体操服を身に付けた様々な学年の女子が、忙しなく出入りを繰り返すことでごった返していた。

 頭の片隅に浮かべていた、経験則からくるミトの職員室は間違いなく混んでいるという予想は、見事に的中する形となっていた。

 一念発起して、どうにかその体操服の白と紺が織り成す刺繡の僅かな隙間を縫うと、職員室の奥にある自身の担任の机へとミトはやって来ることに成功する。

 

 自分が受け持つかわいい生徒の訪問を、ミトの担任は笑顔で迎えた。

 

「ミトさん、おはよう」

「おはようございます、先生」

「時間通りね。はいこれ、しっかり持って行ってね。

 ────色々不安だと思うけど、初めての性行為実習、頑張って?」

「……はーい」

 

 ミトは5-3と記されたタグの付いた鍵と、机上に幾つか重ねられていた内の1つの、ミト用と書かれたメモが貼ってある段ボールを手渡された。

 担任に礼をして、新しく出来た荷物を両の手で抱えたミトは職員室の外へと出ようとする。

 目指すは、この荷物の行き先、鍵が示す場所。

 性教育係の日にだけ使う教室がある、5年生専用の別棟だ。

 

「…………どう、しよ」

 

 先程と同じように、女子の群れの隙間を縫おうと躍起になろうとしたそのとき。

 がやがやとした姦しい雑踏の向こうから、声変わり前の聞き覚えのある声がミトの耳に届く。

 

 か細いその声の元にいるのは、女子の波に遮られて、動けないでいる、この国ではあまり見かけない褐色の肌をした男の子。

 片目が隠れるぐらいに長い艶のある藍色の髪を、おどおどと不安げに揺らしている姿を認識したミトは、目を丸くして、早足で波を掻き分け駆け寄った。

 その少年は、ミトとの予期せぬ再会に驚いて、少しの間、声を失っていた。

 

「────えっ、……ミト、お姉ちゃん」

「どうかした?職員室に用がある感じ?」

「……う、うん。えと、先生に、わたさないといけないプリントがあって……」

「なるほど。……渡して、こようか?」

 

 荷物を腋に抱えることで、自由になった左手を彼の手に差し出して。

 目線が合うよう少しかがんで、普段よりも柔らかい声色でミトは伝えた。

 そんな提案に少年は、申し訳なさそうに眉を下げた。

 

「……ありがとう、お姉ちゃん。

 でも、先生に話さなきゃいけないこともあって。

 ボクが行かないとダメ、だから」

「そっか。……なら、一緒に行こう?通りづらいだろうし、ここは」

「……いいの?お姉ちゃんはもう、用ないんじゃ」

 

 抱えたダンボールを一瞥して、少年はおずおずと尋ねる。

 ミトは優しい笑みを口元に湛えて、答えた。

 

「いいんだよ。力になってあげたいから。

 ほら、いこう」

「……うん」

 

 差し伸べた手に少年は自身の手を合わせ、握った。

 固く結んだ手を離れないようにして、混雑を乗り越え職員室へ再訪したミトは一度手を離し、彼が彼の担任にプリントを手渡し、会話する様を後方で見守る。

 

「はい、しっかり受けとりました。

 ……ミトさんと仲がいいようで、先生は嬉しいです」

「……ぅ……はいっ」

「ふふっ。教室まで、気を付けて帰ってくださいね」

「分かりました。……じゃあ」

 

 担任との用はすぐに終わったようで、彼はミトの元へと直ぐに戻ってきた。

 何を言うでもなく2人は再び互いの手を繋いで、職員室から出る。

 

「……お姉ちゃん、ありがとう」

「どういたしまして。困ったときはお互い様だから」

「…………」

 

 少し共に歩いて、T字の廊下に差し掛かったところで、2人は立ち止まる。

 そこが彼女らの分岐路だ。目的のために、異なる道を踏みださなければいけない。

 それは暗黙の了解で、声に出さずとも共有していた。

 

 ただ、ひしと繋がれた彼の手はどうにも離れそうになくて。

 ミトは困ったように笑った。

 

「……まだ、一緒にいる?」

「ぁ、や、……ごめん」

 

 繋ぎとめているという現状は無意識からくる不本意なものだったようで。

 彼の手が、ミトの内からするりと抜けていく。

 別れる寂しさを拭ってあげる為、ミトは励ましの言葉を送る。

 

「今日、2人だけの時間できるしさ。

 そこで、いっぱい話そう?」

「…………っ、お姉ちゃん」

「なに?」

 

 僅かに遠ざかっていた距離を詰めて、ミトの手を掬うように取った彼は。

 伝えずにはいられない、頭の中でどうしても纏まらなかった散発的な思いの丈を、お姉ちゃんへとぶつけた。

 

「────今日っ、3時間目、絶対行くからっ。

 どこにも、……行かないでね」

「うんっ、待ってるよ」

「…………じゃあ、またっ」

 

 後ろ髪引かれる思いを振り切って、少年は教室に走って、向かっていった。

 ぽつねんと、取り残されたミトは、彼の温度がまだ混ざったままの己の手のひらを見つめた。

 

(────男子3日会わざれば、って言うけど。

 もう1時間目から来れるようになるなんて。

 ……凄いな、男の子って)

 

 かつて自分がそうであったことも忘れて、初めて会った頃の彼と今を比べて、ミトは感慨に浸りそうになったが、右腋に抱えていた荷物の重さが、途端にミトを現実へと引き戻す。

 

「……あ、やばい。さっさと行こう」

 

 目的地を思いだし、そそくさとミトは、その場から離れていった。

 彼の温もりが消えないように、手をしかと握りこんで。

 

 

 *

 

 

 活気溢れる賑やかな本棟の校舎に背を向けて。

 かつんかつん、と上履きの音が反響する、閑静な廊下をミトは行く。

 

「……あ、ミトさん。おはよう」

「おはよ。そっちも係か。頑張って」

「うん。今日で絶対彼を気持ちよくさせて、わたしのこと好きって言わせるから。

 期待してて」

「そ、そうなんだ。…………手加減してあげてね」

 

 目的地が同じ故に行き交う、顔見知りの女子の同級生に軽く挨拶をしたり。

 

「────おっ、ミトじゃん。ねえねえ今日も履いてる?青いパンツ」

「履いてっ、ねーよ!というかなんで覚えてんだよ忘れろよさっさと!」

「あっはは!おもしろ。……ま、パンチラにめげずがんばりなよー。じゃあねー」

「……あーもう!そっちもなっ!」

 

 からかわれたりしながらも。

 1人静かに進む。

 

 本棟に遮られることによって日光が直接的に差さない別棟は、陽の代わりに影が差す空間だ。

 光量と熱が高まりつつある本棟とは異なるここは薄暗く、ひんやりとした空気が立ち込めていて、訪れる者の頬を軽く撫ぜては、迎え入れたかのように馴染む。

 それは、幽世に迷い込んでしまったような感覚を本能に覚えさせ、忌避と躊躇を訴えさせた。

 ここが陽の元には出せない、陰でのみ許される秘め事、蜜事を行う場所が故に。

 

 ただその感覚は、大人に教え込まれ、身に着けた知性と常識によって錯覚だと認識され、無為なものへと変わっていて、気づくことはない。

 

「────よし、着いた」

 

 タグに記された通りの場所、5-3の教室にたどり着いたミト。

 スモークガラスが取り付けられた引き戸に、担任から受け取った鍵を差し込めば、抵抗もなくそれは回って、開錠された。

 

 扉の向こうには普段授業を受ける自分たちの教室を一回り小さくした空間が広がっていて、そこは1人どころか5人集まったとしても、持て余す程に広い。 

 部屋に入って正面の唯一の窓には、外から覗けないようにカーテンがしっかりと閉じ切られていて、生徒たちのプライバシーが尊重されている。

 そのせいで多少薄暗くはあるが、室内の蛍光灯をつけるまでもない光量が確保されていて、このままでも問題なく過ごすことができるだろう。

 

(とりあえずエアコンつけよ)

 

 道中の涼やかな空気はここでも立ち込めていて、今のままでも快適に過ごすことが出来るが、日が高くなれば、動いていれば、熱は高まって行くのは自明の理で。

 ミトはいの一番に扉近くの壁に掛けられていたリモコンを抜き取り、室内のクーラーを作動させた。

 急速に冷気が充満していく部屋の中で、ミトはエアコンからの冷風を一身に浴びる。

 ここまでに至る道中で熱を帯びていた体が冷えていくのはたまらなく心地よい物で、この冷気を独り占めできるというのは贅沢な話であった。

 

「あー、涼し。

 ……準備するか」

 

 ミトは荷物を置くと、まずは室内に前後の黒板、校内電話、スピーカー、姿見があることを確認し。

 そして部屋の片隅に置かれた、分厚く、見るからに重そうな準備品を見て、重くなる足を強引に向かわせた。

 

「……あーくそっ、なんでこんな力弱いんだよっ、オレ」

 

 ミトが掴むは、幾重にも折りたたまれていり、自分が手と足を目一杯広げても余りある程の大きさのマットレスだ。

 ずりずりと引き摺って部屋の中央で敷こうとするが、同年代の女子に容易くひねられる程度の筋力では持ち運ぶのも、広げるのも一苦労である。

 体全体を使っての奮闘の末、どうにかミトはマットレスを敷き切った。

 

「よいしょ、っと!っはあ、はあーっ……。

 ほんと、マットぐらい設置しといてくれないかな」

 

 開幕の重労働でじんわりと額に汗が滲むのを、腕で拭って誤魔化して。

 それに遠慮なく寝転がることで自身を労いたい気持ちをぐっと押さえて、隅によけていたダンボールを開く。

 その中身は、性教育を円滑に進める為の備品だ。

 担任が念入りに確認してくれているだろうが、内容物に問題はないか、不足はないか。

 性教育係として、チェックする義務がある為、ミトは中身を外に出すことで確認していく。

 

 今日行うことが記述されたページに付箋のついた保健の教科書。

 今日の感想を書く宿題となるプリント数枚。

 簡易的な歯ブラシ、コップ。

 性教育の過程を撮影し、提出する為の小型カメラ。

 ボトルにたっぷりと詰まったローション、そしてコンドームが入った紙箱。

 

「うわ、いっぱいある」

 

 箱を開いて中からミトが持ち上げたそれは、テカテカとしたビビッドで扇情的なピンク色の包装に包まれていて。

 よっぽどに無駄遣いしない限り、不足することがない数があった。

 薄さは包装にさりげなく表記されている通り0.01mmで、互いが擦れ合うときに生じる快感を極力阻害しないように、という学校側の計らいが、その文字には表れていた。

 

(…………使っちゃうんだな、今日)

 

 手や胸や口で扱うとき、互いの体液で汚れるのを防ぐため何度か使用したことはある。

 ただそれは副次的な使い方に過ぎず、ついに訪れたる今日にて。

 いよいよ本来の用途、妊娠を防ぎ、安全に交わりあうために使用する。

 それも使う側ではなく、使われる側になっている自身の現状に対してミトは、言い様のない感情を覚えた。

 

「……うん、全部オッケー。後は、っと」

 

 使用するものをマットレスの傍に置くことで、備品の整理及び確認は終了。

 最後は身だしなみだ。

 

 部屋の角においやられている姿見に、ミトは体操服を身に付けた自分を映す。

 

「────あっ、はみ出てる。いつの間に」

 

 ほんのりと曇ってはいるが、綺麗な鏡にはブルマから水色のショーツがこぼれているという、不格好であられもない少女の恰好が映し出されていた。

 

(これがあるから、ブルマ好きじゃないんだよな。

 というか、見られなくてよかった……)

 

 不必要にからかわれるのは不本意だ、といそいそと元に戻るように直し。

 体操服の皺を伸ばし埃を払い終えて、バスルームのときとは違う、完璧に整った今日の余所行きの自分をミトは見つめる。

 姿見の前で体を捻ったり、時にはくるくると回したり。

 おかしなところがないか己の今の姿を余すところなく観察し終えて、抱く感想が1つ。

 

(……やっぱ、かわいいよな、オレ)

 

 女体化症罹患者は女性になるにあたって、容姿、体形共に整ったものになる傾向がある。

 そしてそれはミトにも当てはまっており、現に鏡の中には、外ハネしたショートボブを揺らす美少女がいる。

 ただその可憐さはどうにもかつての自分と比べると不釣り合いで、持て余すばかりの日々だ。

 もちろん、毎朝、いや生涯見るようになる容姿が故に、綺麗で整ったものであることに、越したことはないのだが。

 

 有名なアイドルのような、可愛い笑顔を作ったり。

 頬を膨らませて、顔をあざとく怒らせてみたり。

 しなだれるような色っぽい視線を、鏡の中の自分に送ったりして。

 身だしなみの確認が、存分に自分を虚空に向かって披露することに刷りかわって数分が経った頃。

 ふいにミトは我に返った。

 

「……やめよ」

 

 黒板の上の時計を仰ぎ見る。授業開始までは、まだ時間があった。

 性教育の準備を終え、身だしなみを整えて、後は担当の男の子を待つだけとなった今。

 微妙に持て余す空白の時間特有の、緩慢な退屈に身を任せ、ミトは無造作にマットレスの上に寝転がると、心の整理を兼ねて、物思いに耽る。

 風が木々を擦り、蝉が遠くでさんざめく、夏の沈黙の中で。

 

(……それにしても、赤ちゃんができる体になったって言われても。

 やっぱ実感、わかないな)

 

 ミトは体操服越しの腹へと手を伸ばすと、へその下辺りに、手のひらを当てた。

 さらりとした生地を通して、手のひらの熱が肌へと伝わっていく。

 その熱の行く先には、男の頃になかった器官。

 子宮がある、らしい。

 そしてそれは、子供を作りたいと、月のものを通して自分に訴えている、みたいだ。

 

 女体化から半年ほど経って、男の頃の感覚との剥離による違和感を擦り合わせて、今はすっかりと、この体が自分のものだという実感が、ミトにはある。

 小さな足の爪先から、髪の一本に至るまで。

 

 ただ、教科書で学んだ知識を照らし合わせて、ようやく存在を認識できているそればかりは、些か自分の認識の外にいた。

 くるりくるり、と肌の上からポルチオを指で回るようになぞってみても、特に何も知覚することはなく。

 

 いっそのこと覗いてしまえば、直接手で確認してしまえば良かったが、膣鏡を自分のそこに突っ込むのも、無造作に指を挿入するのも、如何にも痛そうで、恐ろしくて、していない。

 

 鈍感で臆病。それが男の頃から変わっていない、ミトの性分だった。

 それは年下の男の子の、まだ未熟で未発達な性器を、何も許したことのない自分の、女の子の大事な場所に迎え入れるという土壇場に来ても、揺らぐことはない。

 

(……考えてても、しょうがないか……)

 

 物思いに耽るのを止めて、手慰みに、個別に貰っていた今日教育する下級生達のリストを寝転んだまま引き寄せるミト。

 そこには、性教育係を始めてから担当し続けている、見慣れた名前が並んでいる。

 

(1から4はいつも通り、4人分の世話をして。

 で、5、6時間目にあいつらもう一回呼んで、まとめてする、と。

 ……考えるだけで疲れてくるな)

 

 普段は軽いペッティング程度で済み、4時間目を最後に下校することが出来ていたミトだった。

 しかし今日に限っては、5から6時間目も活動し続ける、今までに体験したことのないハードな1日になるだろう。

 

(でも、頑張んないといけないか。あいつらの為にも。

 …………しっかし、まだ来ないのか。

 いつも通りだけどさ)

 

 仰向けのまま目だけを動かして、時計を見上げた。

 いよいよ、1時間目開始のチャイムがなるという瀬戸際の時間だが、今だこちらへと誰かがやって来る気配はない。

 本棟からここまでは少し遠いとはいえ、朝のHRが終了し次第、普段通りの歩調で向かえば、十二分に余裕をもって入室することができるだろう。駆け足でくれば、尚のことだ。

 事実、今からくる1人を除いて、他の3人が遅れてきたことは1度もない。

 

 ミトはカメラを手にして起き上がると、部屋の中央が映るように手慣れた手つきで設置し、起動した。

 これによって今から放課後に至るまで、このカメラはその冷たく無機質な瞳で、この部屋の出来事を淡々と撮影し続けるだろう。

 どれほど室内が色と熱を帯び、あられもなく剥き出しとなった少年少女達の痴態が繰り広げられようとも。

 

 カメラを仕掛けたミトが、マットレスに再び腰を据えようとした、そのとき。

 

────キンコンカンコン。

 教室のスピーカーから電子のチャイムが鳴った。

 

(…………あいつ)

 

 特に焦るでも、心配するでもなく。

 待ち人の来訪をミトは待つ。

 

 泰然自若とした定番のメロディが反復し終えて、スピーカーからの放送が止まろうとした瞬間。

 ガチャガチャと、忙しなく鍵が扉に差し込まれる音がした。

 

 この教室の扉を開けることが出来るのは、学校から鍵を貰った、ミトが担当する男子生徒しかいない。

 毎度毎度の、ギリギリどころか遅刻とみなされてもおかしく無い入室に、ミトは何度覚えたか分からない呆れを覚えた。

 

「────しつれいしまーす!」

「……どうぞー」

 

 溌剌とした礼儀と態度を示して、勢いよく扉を押し開き、入室する少年が1人。

 彼は性教育係の日程が発表された日に、ミトのスカートめくりを敢行したわんぱく坊主。

 1時間目の、性教育の対象。

 2年生のランタであった。

 




次からやっと本格的におねショタ展開が始まります。
誤字報告、感想をいただけると嬉しいです。
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